圏央道つくば西スマートIC周辺
つくば市が検討している、工場や物流倉庫などが集積する新たな産業用地について(1月10日付)、市内4カ所の候補地のうち最も評価が高い「圏央道つくば西スマートIC周辺地区」(同市高須賀など約74ヘクタール)で25、26日の2日間、地権者説明会が開かれた。
地区別に計4回開かれ、地権者約250人のうち4回で計約200人が出席した。市は併せて地権者の意向調査を実施、集計はこれからだが、市によると、ほとんどの出席者から計画に賛同する意向確認書が書面で出されたという。
市は今回の地権者説明会の意向確認を元に今後、事業を進めるか否かを決める。事業計画や開発手法、今後のスケジュールなどは未定だが、地権者全員の同意を得て、全面買収で実施する方針だ。
27年来の懸案
同地区は昨年12月26日、地域経済をけん引することを目的とする地域未来投資促進法に基づく重点促進区域として経産省が同意した。重点促進区域になれば、開発の際に手続きが簡略化されたり、税制優遇などを受けることができる。一方、昨年12月の市議会定例会議では、市が提案した同地区の埋蔵文化財試掘調査費に対し、議会から「地権者への説明が先」だとする意見が出て、調査に待ったがかかった。
25、26日の説明会では、市から事業の目的や対象区域、経緯などについて説明があった。ほかに地元住民から、今月11日、地権者の合意形成を図ることを目的に、同地区の区長や土地改良区の役員らが住民団体「圏央道つくば西スマートインターチェンジ周辺地区連絡協議会」(木村守昭会長)を結成したこと、同地区内に農業の振興を図るための農振農用地37.4ヘクタールなど集団農地をもつ真瀬土地改良区が23日に理事会を開き、事業計画を推進することを決議したなどの報告があった。
説明会で連絡協議会の木村会長(78)は「27年前、7人の区長から『この地域は(TX沿線開発などの)開発から取り残されてしまうので、にぎやかにしてほしい』との要望が出され、昨年亡くなられた会長が市につないで、63ヘクタールのアグリパーク計画(バラ園や市民農園など)が立てられ設計までされた。第1期の20ヘクタールは地権者全員の同意までいただいて、市は約19億7000万円の予算を市議会に上程したが、1票差で否決されアグリパークはできなかった。その後も地域の皆が喜ぶものを完成させたいと、昨年亡くなった会長が市と話し合いながらここまできたという状況」と27年来、地域の懸案だった経緯を話し、「会長の遺志を継いで、皆が喜ぶようにやっていきたい」と述べた。
真瀬土地改良区の山田守理事長は「74ヘクタールのうち半分が農用地。農振(農業振興地域)を除外するのは大変な仕事で、農水省と話をすると何年もかかるが、地域未来投資促進法という法律で特例を受けることができる。地域住民から陸の孤島だと言われていた真瀬地区に開発の話が出るのは初めて。今、農業者の平均年齢は70歳前後で、あと5、6年で農業ができなくなる。土地を有効活用してほしいという声があり、土地改良区としても全面的に(産業用地計画を)やっていきたい」と話した。
出席した地権者から反対意見は出ず、質問も少なかった。
高齢化し農業で食べていけない
説明会に参加した地権者の男性は取材に対し「せっかくのチャンスなので、やってもらった方がいい」と話していた。木村会長は「農業では食べていけない状況があり、農家は高齢化し、いくら土地をもっていても、草刈りをやらなければならなかったり、税金がかかる」と話し、産業用地の開発について今後「地元の雇用が拡大するよう、製造業の立地を要望するなどしていきたい」と話した。
市によると、区域内に上郷院内山遺跡があることから、市議会に再度、予算を提案し、5月中旬から9月上旬ごろまでの間、文化財の埋蔵状況を確認するための試掘と確認調査を実施する予定だという。(鈴木宏子)