土曜日, 3月 21, 2026
ホームコラム「土浦の花火」中止に思う《見上げてごらん!》34

「土浦の花火」中止に思う《見上げてごらん!》34

【コラム・小泉裕司】来年2025年は土浦の花火100周年。土浦全国花火競技大会実行委員会事務局は、今秋中止した大会の支出に対する予算措置にめどが立っていないことや中止決定への信頼回復もままならない状況で、「予算的にも市民感情的にも記念事業を考える状況にない」という。

赤字支出への対応

中止にもかかわらず、予算総額3億円のうち、桟敷席の設営や椅子などの借上料、警備委託費、花火製作費など主たる経費のほぼ全額に加えて、チケット代金の返還手数料などが支出となる。収入に計上した有料席代金や広告料2億2000万円が未収となるため、同額近くの新規予算化が必要となる。

詳細は、記事「来年100周年、運営再検討へ」(11月5日掲載)をご覧いただくとして、不足分は土浦市から大会実行委への「補助金」として、市議会の議決を要する案件。補助金削減を進めて来た土浦市、しかも議員の一部から、責任問題を追及する意見も聞こえてくるので、議決までの道のりは簡単ではなさそうだ。

それでも期限が迫っている経費もあり、支出が可能となる12月下旬の市議会定例会の会期末までは待てないという台所事情もある。

支出を急ぐ方法としては、臨時会の開催、市長の「専決」、12月定例会での「先議」が考えられる。臨時会を招集するいとまがないことや専決できるほどの軽微な案件ではないことから、最終日の議決を待つのではなく、会期中の早い時期に他議案に先駆けて議決する「先議」になるのだろうか。

異常気象下の中止決定

今年は、10月に入ってまで日本を直撃する台風が多かった。このコラム入稿時の天気図も、南方海上にトリプル台風が発生、そのうちの1個は日本方面に向かう予報。かつて経験のない気象を引き起こす気候変動が、通常化しつつある。

かつて土浦の花火が開催されていた10月は、東京五輪1964の開会日10月10日が「晴れ」だったことから、晴天が集中する季節との伝説が生まれたが、特段に晴れが多い季節ではなかった。土浦は、気候変動の影響を考慮し、それから1カ月遅い11月に変更し、3年が経過した。

今年は11月2日。大会当日、台風21号が温帯低気圧に変わり、秋雨前線に沿って東進。打ち上げ時間に合わせるかのようにピンポイントで雨脚が強まった。同時刻に開催した「NARITA花火大会」(成田市)のライブ映像では、開花高度の高い花火は大部分が雨雲に覆われ、雲の下層部にたこ足のように開花する花火の一部が見え隠れした。

この映像を見て、第82回大会(2013年)10号玉の部でのノーコンテストトラブルを思い出した。このときも、雨雲に隠れて10号玉のほとんどが見えず、創造花火やスターマインも一部が雲に隠れた。審査委員会は、見えない作品は一律に審査標準玉の点数をつけたが、公表の可否を委ねられた市長は「公表」を選択。

大会終了後、ノーコンテストではないか、開催決断が間違っていなかったのかという批判が多数寄せられ、市長は「なにしろ自然が相手」と断った上で、雨天決行したがゆえに、見えない状況になったことを謝罪した。今大会、この時の二の舞を演じなかった英断に敬意を表したい。

花火師の無念さ

土浦に参加する花火師は、土浦仕様の作品を持ち込む。事務局が、すべての出品業者に連絡、謝罪した際、中止判断への否定的な言葉はなかったという。

雨天にあったわけではないので、仕込み済の花火が夜空を彩る新たな機会はあるだろうが、花火師は、そんなことよりも、土浦に出品するために、いくつかの危険な手作業の工程を経て完成した花火作品への思い入れ、そして観客の皆さんに披露することがかなわなかった悔しさを、言葉にしなかっただけ。花火師の無念さはいかばかりか。

11月11日(月)に大曲の花火実行委員会が開催した「大曲の花火 感謝の集い」に出席した花火師から、「土浦で上げたかった」との発言があったという。

花火師ファースト

実行委は、今回明らかになった「順延・中止」に対する課題の検証や対応策を検討するとのこと。気象条件の精査や警備体制の確保、予算の増額など、多様な検討が行われるのだろうが、軸足を「花火師ファースト」で意思決定する体制を再構築してはどうだろう。

言うまでもなく土浦は「競技大会」である。オリンピック同様、中止はあり得ないと思っている。荒天の場合、いつに順延するかの判断基準、たとえば設置した桟敷席や設備の安全確保、借り上げ料の増額、観客の交通・宿泊など、多様な検討材料が多いが、「土浦の花火」を競技大会として存続していくためには、欠かせないコンセプトに思う。

チケット代金が払い戻され、私たちが残念に思う気持ちは、徐々に希薄になるのかもしれない。しかし、1年かけて準備を進めてきた地元茨城の花火師や実行委の職員が、抜けるような晴天の中、花火筒の撤収や案内看板を回収した悔しい思いを、私は、長く心に留めておきたい。

今回はこの辺で、打ち上げならず「ザンネーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

<チケット代金の払い戻し>

実行委は、11月14日(木)10時から、第93回土浦全国花火競技大会の中止による有料観覧席の払い戻しの受け付けを開始した。来年1月14日(火)までの期限があるので注意が必要。実行委ホームページはこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

6 コメント

6 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

「霞ケ浦導水事業」を歩く《日本一の湖のほとりにある街の話》36

【コラム・若田部哲】1月末、霞ケ浦導水事業の見学会に参加しました。霞ケ浦を利根川-那珂川と結び、広域で水を融通する構想として昭和50(1975)年代に始まったこの事業の背景には、水需要の増大や水質への懸念、渇水時への備えといった、当時の社会的課題がありました。その後、長い年月の中で、事業を取り巻く状況や環境への向き合い方は変化を重ねていきました。 今回見学したのは、そのうちの一部、小美玉市の玉里立坑と、そこから地中に伸びる石岡トンネル。午前10時の集合時間には、親子連れや年配の方など、多くの参加者が集まっていました。 ヘルメットを着用し、全員で集合写真を撮影したのち、いざ、直径18メートル、深さ約45メートルの玉里立坑の縁へ。地上からのぞき込むと、円筒状の巨大な空間が足もとに垂直に落ち込んでいます。 5メートルごとに数字が記されたその光景は、想像を超えるスケール! ワイヤーメッシュの籠状の工事用エレベーターに乗り込み、ドアが締まると、歯車がきしむ音を響かせながらゆっくりと地下へと降下し、自然と緊張感が高まります。 底部に降り立つと、両側に大きく口を開ける「石岡トンネル」は、よく見ると直径が異なっており、片方は4.5メートル、もう片方は3.5メートルとのこと。計画や技術の変遷が、断面の違いに現れているのを感じます。 湖と人、技術と暮らしをつなぐ トンネルは、巨大な円筒形の「シールドマシン」によって掘り進められると同時に、工場製作のコンクリートの壁である「セグメント」を組み立てていく工法だそうです。全長31.5キロという数字に、その積み重ねの大きさを感じ、めまいを覚えます。 圧倒的なスケールの余韻を抱いたまま地上に戻り、見学会が終わろうとしたその時、これまでの工事を記録した映像が上映されました。 掘削、セグメントの組み立て、測量、機械の点検─さまざまな工種の作業員の方々が、真剣な表情で現場に向き合うその姿。巨大な土木構造物も、突き詰めれば一人ひとりの手仕事の積み重ねという、その確かな事実に改めて心を打たれました。 霞ケ浦導水事業をどのように受け止めるかは、人それぞれでしょう。ただ少なくとも、現場には確かに、人の手と時間が積み上げてきた現実があります。湖と人、技術と暮らしをつなぐ、長い対話の一端に触れることにより、この事業を「遠大な構想」ではなく、「目の前の風景」として思い描けるようになった取材でした。(土浦市職員)

琉球の希少植物と暮らしを紹介 筑波実験植物園で企画展

絶滅危惧種など150種 琉球列島由来の希少な植物を知ることができる企画展「琉球の植物−南国を育む植物たち」が20日から、国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保、遊川知久園長)で始まった。展示されているのは、同植物園が保有する琉球列島の植物約400種類の中から、自然界では日本に1株しか残っていなかったり、自生地ではすでに絶滅してしまった希少種など、絶滅危惧種に指定されている約110種を含む150種あまり。 琉球の植物の展示は2019年以来7年ぶりとなり、豊かな自然が育んだ「琉球文化」の紹介にも力を入れる。展示を担当した同植物園研究員の國府方吾郎さん(57)は「琉球列島の豊かな自然とともに、たくさんの植物を有効活用してきた地元の人たちの暮らしを知る機会になれば」と来場を呼び掛ける。会期は29日まで。 展示会場は、多目的温室と研修展示場の2カ所。温室では、海岸、海岸林、山地林、低地林、渓流沿いなど琉球列島にある五つの自然環境の自生種を展示する。葉の裏側に赤い小さな花をつけるハナコミカンボクは沖縄本島の1カ所にしか自生していない。ナガミカズラは西表島で1株の自生が確認されている。小指の先ほどの白い花をつけるオリヅルスミレは自然界では絶滅してしまった。新種のアマミマツバボタンは國府方さんが2013年に発見した。 國府方さんは、「(奄美諸島、沖縄諸島などからなる)琉球列島は種の多様性が高く、単位面積あたりの植物種の数は日本本土より45倍多い」とし、背景には三つの理由があるとする。一つ目は、本土に当てはめると青森から高知までに相当する広い緯度差と多様な自然環境だ。「北琉球」とされる屋久島、種子島は本土と同じ温帯で、それ以南は亜熱帯に属する。その中にも乾燥地、湿地、標高の高低などの違いがある。 二つ目は、島ごとの交流が限られることで生まれた独自の進化だ。かつて大陸と地続きだった時代から、島々が分離した時期によっても種の違いが生まれた。大東島に限っては一度も他の土地との接続がない。 三つ目は、沖縄の言葉で、混ざり合うことを意味する「チャンプルー」だという。遺伝的にオーストラリアにある植物と近い種は、北へ向かう渡り鳥が種を運び分布するようになったと考えられている。その他、動物や人の移動、海流などにより、日本本土や東南アジア、台湾、ユーラシア大陸など世界各地とのつながりが確認されている。國府方さんは「その様子は、アメリカや日本、中国と関わり合ってきた沖縄文化のよう」だと話す。 文化を自然科学的に研究する必要ある 自身も沖縄出身だという國府方さんが今回力を入れたのが、研修展示場で紹介する琉球列島の植物と共に営まれてきた「人々の暮らし」だ。 地域に自生するキク科の野草 ホソバワダンは白和えなどにして食べられている。商品として流通するのは葉の大きい栽培品種だ。自生種との遺伝的な違いを國府方さんが調べると、意外なことが分かった。流通する品種と遺伝的に近い種が、海を超えた奄美や屋久島、平戸、対馬にあったのだ。 「近い種が沖縄の自生種ではなかった。元になるのは一つの株だということも分かった。昔、おいしいホソバワダンと出合った誰かが株をひとつ持ち帰った。近所の人にも食べさせたいと思い、株を分け合った。そんな様子目に浮かぶ」と笑顔を浮かべる。 このほか、「どこの学校にもあった」という大きく枝を広げるガジュマルの木と、そこに宿るとされる精霊のキジムナーの物語、葉を編んで草履にしたアダン、扇や笠にしたビロウ、赤い実が飢饉を救い、味噌にも用いられてきたソテツなど、琉球列島の人々の暮らしを支え、文化をもたらしてきた身近な植物も丁寧に紹介している。 「文化というのは自然から生まれたもの。私たち研究者も、文化を自然科学的に研究する必要があると思っている」とし、文化を自然科学的に研究しようというプロジェクトも進行中だと話す。「琉球の植物に関するクイズもあり、特製のポストカードのプレゼントもある。お子さんにも楽しんでもらえたら」と話す。(柴田大輔) ◆企画展「琉球の植物ー南国を育む植物たち」は20日(金・祝)~29日(日)の10日間、つくば市天久保4-1-1 国立科学博物館 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時~午後4時30分(入園は4時まで)。入園料は一般320円、高校生以下と65歳以上は無料。詳しくは同植物園のホームページ、問い合わせは電話029-851-5159(代表)へ。

働く私たちのリアル《マンガサプリ》5

【コラム・瀬尾梨絵】新卒として社会に飛び出したとき、誰もが胸に抱く「理想の自分」。しかし、現実に突きつけられるのは、自分の無力さと、理想とはかけ離れた泥臭い現場であることも少なくない。そんな「やりたいこと」と「できること」のギャップにもだえ、悩み、それでも一歩を踏み出す姿を描いた、ねむようこ先生の「午前3時の無法地帯」(祥伝社、全3巻)を今回はご紹介したい。 主人公・ももこは、イラストレーターを夢見てデザイン事務所に就職したばかりの新卒会社員。彼女が思い描いていたのは、おしゃれでかわいい雑貨のデザインに関わるキラキラした毎日。しかし、配属された先は、パチンコ屋のチラシやPOPを専門に扱う、文字通り「無法地帯」のようなデザイン事務所。午前3時を回っても明かりが消えず、床には誰かが寝ており、タバコの煙と怒号が飛び交う。そこは、彼女の理想とは対極にある場所だった。 本作の最大の魅力は、新卒の誰もが直面する「理想と現実のギャップ」を、ねむ先生特有の柔らかくも鋭い感性で描き出している点にある。「私はもっとかわいいものを描きたいのに」「自分にはもっと才能があるはずなのに」。 そんなももこの心の叫びは、読んでいるこちらの胸をチクリと刺してくる。自分が本当にやりたかったこととは違う、派手でけばけばしいパチンコの広告デザインに追われる日々。その「やらされている感」と、それすらも満足にこなせない「実力不足」の板挟み。この葛藤は、クリエティブな職種に限らず、組織の中で自分の役割を見出せずにいるすべての若手社会人が共感できるはずだ。 今の仕事を本当にやりたかった? しかし、この物語が単なる「お仕事苦労話」で終わらないのは、その無法地帯な職場にいる人々との交流を通して、ももこが少しずつ「働くことの本質」に触れていくからである。 一見デタラメに見える先輩たちも、実はプロとしての矜持(きょうじ)を持って仕事に向き合っており、自分が嫌っていた仕事の中にも、誰かを喜ばせる工夫や、確かな技術が必要であること。そして、理想の場所にたどり着くためには、まずは目の前の「できること」を必死に積み上げていくしかないということ。ももこが少しずつ顔を上げ、自分の居場所を見つけていく過程は、読者に「今の自分も、あながち間違いじゃないのかも」という小さな救いを与えてくれる。 ねむ先生の描くキャラクターは、どこか抜けていて愛らしく、それでいて生々しい生活感を持っている。徹夜明けのボロボロの肌、深夜に食べるカップ麺の味、理不尽な上司への愚痴。そんな等身大の描写があるからこそ、ももこの成長が輝いて見える。 「今の仕事は、自分が本当にやりたかったことだろうか?」。そう自問自答して立ち止まってしまいそうな夜、ぜひこの本を手に取ってみて欲しい。午前3時の暗闇の中で、それでも灯りを灯し続けるももこたちの姿が、あなたの心にある「ギャップ」を少しだけ埋めてくれるはずだ。(牛肉惣菜店経営)

学校給食に金属製ナット混入 つくば市の義務教育学校

つくば市は19日、市内の義務教育学校で同日出された学校給食に異物が混入していたと発表した。教職員が職員室で給食を食べようとご飯のふたを開けたところ、直径8ミリほどの金属製のナットが混入していた。 同校の他の教職員や生徒、同日ご飯が提供された他校からもほかに異物混入の報告は無く、健康被害も報告されていないという。 市健康教育課によると、同日午後0時45分ごろ、教職員が個別の器に入ったご飯のふたを開けたところ、端の方に直径8ミリほどのナットが混入していた。 同市でのご飯の調理は、給食センターとは別に、米飯納入業者が炊飯工場でご飯を炊き、一人分をそれぞれ個別の器に入れ、ふたをして各学校の配膳室に配送している。配送された給食は、職員が配膳室から各教室や職員室などに運んでいるという。 どうして混入したかについて同課は、米飯納入業者が経緯を調査したが、19日時点で不明だとしている。 市は同日、ご飯の提供を受けた市内の各学校の保護者にお詫びの通知文を出した。