月曜日, 10月 19, 2026
ホームコラム「土浦の花火」中止に思う《見上げてごらん!》34

「土浦の花火」中止に思う《見上げてごらん!》34

【コラム・小泉裕司】来年2025年は土浦の花火100周年。土浦全国花火競技大会実行委員会事務局は、今秋中止した大会の支出に対する予算措置にめどが立っていないことや中止決定への信頼回復もままならない状況で、「予算的にも市民感情的にも記念事業を考える状況にない」という。

赤字支出への対応

中止にもかかわらず、予算総額3億円のうち、桟敷席の設営や椅子などの借上料、警備委託費、花火製作費など主たる経費のほぼ全額に加えて、チケット代金の返還手数料などが支出となる。収入に計上した有料席代金や広告料2億2000万円が未収となるため、同額近くの新規予算化が必要となる。

詳細は、記事「来年100周年、運営再検討へ」(11月5日掲載)をご覧いただくとして、不足分は土浦市から大会実行委への「補助金」として、市議会の議決を要する案件。補助金削減を進めて来た土浦市、しかも議員の一部から、責任問題を追及する意見も聞こえてくるので、議決までの道のりは簡単ではなさそうだ。

それでも期限が迫っている経費もあり、支出が可能となる12月下旬の市議会定例会の会期末までは待てないという台所事情もある。

支出を急ぐ方法としては、臨時会の開催、市長の「専決」、12月定例会での「先議」が考えられる。臨時会を招集するいとまがないことや専決できるほどの軽微な案件ではないことから、最終日の議決を待つのではなく、会期中の早い時期に他議案に先駆けて議決する「先議」になるのだろうか。

異常気象下の中止決定

今年は、10月に入ってまで日本を直撃する台風が多かった。このコラム入稿時の天気図も、南方海上にトリプル台風が発生、そのうちの1個は日本方面に向かう予報。かつて経験のない気象を引き起こす気候変動が、通常化しつつある。

かつて土浦の花火が開催されていた10月は、東京五輪1964の開会日10月10日が「晴れ」だったことから、晴天が集中する季節との伝説が生まれたが、特段に晴れが多い季節ではなかった。土浦は、気候変動の影響を考慮し、それから1カ月遅い11月に変更し、3年が経過した。

今年は11月2日。大会当日、台風21号が温帯低気圧に変わり、秋雨前線に沿って東進。打ち上げ時間に合わせるかのようにピンポイントで雨脚が強まった。同時刻に開催した「NARITA花火大会」(成田市)のライブ映像では、開花高度の高い花火は大部分が雨雲に覆われ、雲の下層部にたこ足のように開花する花火の一部が見え隠れした。

この映像を見て、第82回大会(2013年)10号玉の部でのノーコンテストトラブルを思い出した。このときも、雨雲に隠れて10号玉のほとんどが見えず、創造花火やスターマインも一部が雲に隠れた。審査委員会は、見えない作品は一律に審査標準玉の点数をつけたが、公表の可否を委ねられた市長は「公表」を選択。

大会終了後、ノーコンテストではないか、開催決断が間違っていなかったのかという批判が多数寄せられ、市長は「なにしろ自然が相手」と断った上で、雨天決行したがゆえに、見えない状況になったことを謝罪した。今大会、この時の二の舞を演じなかった英断に敬意を表したい。

花火師の無念さ

土浦に参加する花火師は、土浦仕様の作品を持ち込む。事務局が、すべての出品業者に連絡、謝罪した際、中止判断への否定的な言葉はなかったという。

雨天にあったわけではないので、仕込み済の花火が夜空を彩る新たな機会はあるだろうが、花火師は、そんなことよりも、土浦に出品するために、いくつかの危険な手作業の工程を経て完成した花火作品への思い入れ、そして観客の皆さんに披露することがかなわなかった悔しさを、言葉にしなかっただけ。花火師の無念さはいかばかりか。

11月11日(月)に大曲の花火実行委員会が開催した「大曲の花火 感謝の集い」に出席した花火師から、「土浦で上げたかった」との発言があったという。

花火師ファースト

実行委は、今回明らかになった「順延・中止」に対する課題の検証や対応策を検討するとのこと。気象条件の精査や警備体制の確保、予算の増額など、多様な検討が行われるのだろうが、軸足を「花火師ファースト」で意思決定する体制を再構築してはどうだろう。

言うまでもなく土浦は「競技大会」である。オリンピック同様、中止はあり得ないと思っている。荒天の場合、いつに順延するかの判断基準、たとえば設置した桟敷席や設備の安全確保、借り上げ料の増額、観客の交通・宿泊など、多様な検討材料が多いが、「土浦の花火」を競技大会として存続していくためには、欠かせないコンセプトに思う。

チケット代金が払い戻され、私たちが残念に思う気持ちは、徐々に希薄になるのかもしれない。しかし、1年かけて準備を進めてきた地元茨城の花火師や実行委の職員が、抜けるような晴天の中、花火筒の撤収や案内看板を回収した悔しい思いを、私は、長く心に留めておきたい。

今回はこの辺で、打ち上げならず「ザンネーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

<チケット代金の払い戻し>

実行委は、11月14日(木)10時から、第93回土浦全国花火競技大会の中止による有料観覧席の払い戻しの受け付けを開始した。来年1月14日(火)までの期限があるので注意が必要。実行委ホームページはこちら。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho





spot_img

最新記事

各国で収めた人々の暮らし 石川多依子さん写真展「一期一会2」

土浦在住の写真家、石川多依子さんが海外で出会った人々や印象に残った光景を写真で表現する「一期一会2」展が、20日から土浦駅西口前の土浦市民ギャラリー(同市大和町)で開かれる。今回はグアテマラ、ポルトガル、オマーンの3カ国で撮影した写真が並ぶ。 カラフルな民族衣装に刺激 グアテマラ 石川さんの「一期一会」展は、旅先で出会った人たちの普通の姿や、その国の日常のありふれた様子を撮ったもので、年1回のシリーズを予定している。昨年の第1回では11の国と地域をそれぞれ4~5枚の組写真で紹介した。今回の第2回ではもっとじっくり見てほしいと、3カ国に絞り、各20枚ほどで構成する。 石川さんがグアテマラを訪れたのは2002年。メキシコ・グアナファート大学の文化祭でパッチワークキルト展を開催した際、せっかく来たのだからと、3週間の滞在期間のうち1週間を隣国のグアテマラへ足を延ばした。 「マヤ文明のピラミッド型神殿で知られるティカル遺跡付近の山中では、火を焚いて古いマヤの宗教儀礼が行われていた。高山地帯の美しいアティトラン湖畔の村々の女性の衣装は村ごとに異なっていて、少女からおばあさんまでが赤や藍色を基調とした同じ模様の民族服を着用。村でも街でも女性の民族衣装のカラフルで独特な色遣いにとても刺激を受けた」と石川さん。 迷路のような街並みを歩く ポルトガル ポルトガルの旅は2018年。リスボンの旧市街アルファマは丘の中腹にあり、迷路のような路地や坂道が続く趣のある街。ただでさえ狭い道に自動車も路面電車も走り、車に路上駐車されると電車は通れないので、運転手は電車から降りて車の持ち主を探しに行くという。 ここでの石川さんの目当ての一つは、伝統的装飾タイルのアズレージョ。「首都リスボンでも建物の外壁や床、天井など至るところに飾られている。古い時代のものは青一色の幾何学模様だが、フリータッチの筆遣いや子供が好きなメルヘンチックなアズレージョにも遭遇した」 もう一つの目当てはファド。「ポルトガルギターの伴奏で情感たっぷりに歌う伝統歌謡で、アルファマはファド発祥の地としても知られ、夜になるとあちこちのバーやレストランからファドの生演奏が漏れ聞こえる」 廃墟と灌漑に魅せられる オマーン オマーンのオアシスの街、ビルカット・アル・マウズを訪ねたのは2019年。ここにファラージと呼ばれる灌漑システムがある。紀元前にはすでに使われていたといい、山から湧き出た水が水路を勢いよく流れ、人々の生活用水になったり、デーツ(ナツメヤシ)林を潤している。ビルカット・アル・マウズから車で20分ほど離れた二ズワの街は、ファラージが世界遺産になっている。 「ビルカット・アル・マウズには3つの廃墟がある。ここを拠点としていた人たちは、1950年代の内乱のとき空爆を受けて村を離れたのだそうだ。廃墟の中を歩いてみると、ドアが取り付けてあったり洗濯物が干されていたりなど、今でもあちこちに生活の気配がある。時代が経ても利用され、住んでいる人がいることに驚かされた。二ズワの廃墟も同様に再利用されていた」 (池田充雄) ◆石川多依子写真展「一期一会2」は20日(火)~25日(日)、土浦市大和町1-1、アルカス土浦1階、土浦市民ギャラリーで開催。開館時間は午前10時~午後5時(初日は午後1時から、最終日は午後4時まで)。入場無料、駐車料金は2時間無料(駐車券を事務室に提示)。問い合わせは電話029-846-2950(同ギャラリー事務室)

土浦の花火100年の紡ぎ ⑽《見上げてごらん》57

【コラム・小泉裕司】土浦の全国花火競技大会は1992年以降、新たな挑戦の歴史に入る。今回は、その主な動きを記しておきたい。 1992年:土浦と大曲の大会名の違い 秋田県大仙市の大曲の花火大会名は「全国花火競技大会」だが、土浦は「土浦」を冠している。同じ内閣総理大臣賞が授与される大会なのに、なぜ名称が違うのかと疑問に思う方もいるかもしれない。実は、かつては両大会とも「全国花火競技大会」の名称で開催されていた。1992年、両大会の区別を明確にするため、土浦が現在の名称に変更し、今では全国的に定着している。 2000年:審査基準の差別化 内閣総理大臣賞の創設に当たり、国から「明確な審査基準を設けなければ、賞を授与することはできない」との条件が示された。そこで、大曲の審査基準を参考にしながらも、土浦らしい基準を熟考。3部門の優勝者から、煙火技術の向上に寄与するとともに、観客に感動を与えた作品を総合的に判断して選ぶこととした。 一方、大仙市の大曲「全国花火競技大会」では、全4部門の総合評価(合計得点)が最も高かった花火業者に、内閣総理大臣賞が授与される。 2000年:土浦花火づくしの感動 この年に始まった「土浦花火づくし」(9月20日付コラム)は、当初一度限りの予定だったが、反響が大きかったことから継続開催が決まった。現在も日本煙火協会茨城地区会の6社が企画・打ち上げを担い、競技花火とともに観客に感動を届けている。 2011年:余韻に浸るエンディング花火 第80回記念大会では、来場者への感謝を伝えるとともに、花火の余韻に浸りながら帰路についてもらおうと、「エンディング花火」を企画した。7号玉80発を音楽に合わせて打ち上げた。この企画を機に、翌年以降も大会回数と同じ数の花火を打ち上げることとなった。 2014年:競技開始前にレクチャー花火 第83回大会からは、花火をより身近に感じ、競技大会を一層楽しんでもらうための取り組みも始まった。「レクチャー花火」は、花火の種類や星の開き方などを事前に解説し、理解を深めてもらう企画で、伝統的な菊花火から最新の点滅花火、人気の冠菊など10種類の5号花火を打ち上げる。 2014年:超人気の花火師登場 花火師たちを紹介するとともに、前大会の内閣総理大臣賞受賞者があいさつし、花火師たちの意気込みを伝えるものだ。当時、県外の花火大会では、打ち上げ終了後に花火師と観客がエールを交換する取り組みが始まっていた。堤塘(ていとう)など地形的な制約から同様の演出が難しい土浦が、知恵を絞って生み出した企画である。いずれも好評を博している。 2025年:規制退場待ちにアフタートーク 2025年の100周年記念第94回大会では、コロナ禍を経て導入された規制退場に協力し、退場を待つ来場者への「おもてなし」として、花火鑑賞士やラジオ解説者によるトークショーを場内放送した。当日の競技大会の感想や審査結果の予想などを語る企画は好評を博し、今年も実施に向けて準備を進めている。 営々と築かれた歴史に安住せず、「新しい挑戦」と「おもてなし」を追求する実行委員会。「お越しいただいた皆さんに楽しんでもらいたい」という一心で創り上げられる「土浦の花火」の進化は、これからも止まらない。 さあ、今年も土浦の夜空を舞台に、心を揺さぶる感動の時間が幕を開ける。本日はこれにて打ち留めー!(花火鑑賞士、元土浦市副市長) <参考文献>「花火と土浦」(土浦市、2018年)「土浦と大曲の友情物語」(2023年製作)※YouTube動画(15分)配信中

帰郷の理由《短いおはなし》56

【ノベル・伊東葎花】都会暮らしをやめて、故郷に帰ることにした。忙しさを言い訳に、かれこれ15年も帰っていない。 「もしもしお母さん、明日帰るから」 「えっ、何で帰るの?」 「何でって、何でもいいでしょう」 「よくないでしょう。何で帰るのよ」 「なに、迷惑なの?」 「違うよ。何で帰るのか、聞いてるだけよ」 「もういい。とにかく帰るから!」 覚悟を決めて電話したのに、何だか拍子抜け。娘が実家に帰るのに理由が必要?しかも15年ぶりに帰る一人娘に、第一声がそれ?まあ、帰らなかった私も悪いけど、「待ってるよ」くらい言ってもよくない? そもそも理由なんてひと言じゃ言えない。40歳手前で10年付き合った男と別れて、仕事に生きようと思ったら新任の上司とそりが合わずに転職。転職先は信じられないブラック企業で即辞表。おまけにアパートのオーナーが変わって、立ち退きを要求された。ここ1年でいろいろあって疲れちゃった。貯金があるうちに、地元に帰ってやり直そうって思った。とりあえず帰って、落ち着いてからゆっくり話すつもりなのに、いきなり理由を聞くなんて。もしかして、15年も帰らなかった仕返し?まあいい。とにかく帰る。今の私にはそれしかないんだ。 在来線に揺られること3時間。乗り継ぎのローカル線で30分。懐かしい駅は変わっていない。ああ、なんて静か。のんびりしている。山が近い。実家はここからバスで30分。時刻は午後5時。もう辺りは暗いし、少し寒い。早く帰ろうとバス停に向かったら、バス停がない。嘘でしょう? 通りかかった自転車の高校生に尋ねてみた。「バス、ないですよ。3年前に廃線になって、今はありません」なんですって? 確かに私がいたころから乗る人まばらだったけど、まさか廃線?すぐに母に電話をかけた。しゃくだけど迎えに来てもらうしかない。 「お母さん、バスないんだけど」 「そうそう、なくなっちゃったのよ」 「あのさ、悪いけど迎えに来てくれる?」 「無理よ。お母さん、70歳過ぎてから免許返納したんだわ。今はほら、ネットスーパーもあるし、乗り合いタクシーもあるからね」 「えー、じゃあ私、どうしたらいいの?」 「だから聞いたでしょう。何で帰るのって(バスないけど)」 「えっ、何で帰るって、そういう意味?」 「あんた、電話切るの早いから。タクシー乗りなさい。5千円くらい持ってるでしょ」 げげ、タクシー代が5千円? 田舎なめすぎてた。 私は、山道を走るタクシーのメーターが、どんどん上がるのを眺めながら思った。 「まずは免許取ろう」 懐かしい家に帰ると、お母さんはご馳走を作って待っていた。 「ああ、久々のお母さんのご飯、おいしい」 「ところであんた、何で帰って来たの?」 「え、電車とタクシーだよ」 「そうじゃなくて、何で帰って来たの?」 「だから電車とタクシー」 「いや、だから、そうじゃなくて何で帰って来たの?」 「だから、電車と……」 日本語ってややこしい。  (作家)

新たにモバイルバッテリーの発火想定も 大規模地震想定しTXが総合訓練

大規模地震で走行中の列車が被災した事態を想定し、つくばみらい市筒戸にあるつくばエクスプレス(TX)総合基地で16日、2026年度異常時総合訓練が開かれた。実施したのは、TXを運行する首都圏新都市鉄道(東京都千代田区)。開業翌年の2007年から始まり、今年で19回目。乗客の避難誘導や負傷者の救護、連絡・通報体制などを、地元の消防、警察と連携して確認した。今年は新たな取り組みとして、近年、列車内でも発生が相次ぐモバイルバッテリーの発火を想定した訓練も実施された。 訓練は、守谷―みらい平駅間の高架上を走行中の列車が緊急地震速報を受信して停止。直後に発生した震度6強の地震で車両の一部が脱線、架線や線路も損傷し、乗客11人が負傷したとの想定で行われた。地震の揺れで乗客が落としたモバイルバッテリーが発火した想定も加え、車内での初期消火などを訓練した。TX職員のほか、常総市水海道地区、守谷市、つくばみらい市の3市を管轄する常総広域消防本部、県警常総、取手両警察署などから約200人が参加した。 乗客が初期消火、障害者や外国人の避難誘導も 午後1時20分、緊急地震速報を知らせるサイレンで訓練が始まった。緊急停車した列車内で、乗務員が乗客や車両・設備の状況を確認。その最中に乗客のモバイルバッテリーが発火し、居合わせた乗客が初期消火に当たった。 消火を確認した後、先頭車両正面の非常用扉と次号車から非常用はしごを使って避難誘導を開始。乗務員と駆け付けた駅係員らの先導で、まず視覚障害者、聴覚障害者、軽症者の役を務める参加者らが、乗務員やほかの乗客の手を借りながら降車した。外国人乗客役には、あらかじめ登録したメッセージを多言語に翻訳して発信できる「多言語メガホン」を使って避難を呼びかけた。 続いて、5号車に残る重症者役の2人を担架で搬送し、はしご車を使って高架下へ移送した。車内に残った鎮火後のモバイルバッテリーは、到着した消防隊員が、隣接する守谷駅から持参した耐火バッグに収納して車外へ搬出した。 このほか、油圧ジャッキを使って脱線車両を線路に戻す作業や、破断したレールの修復なども行われた。 「乗客と一緒に考えていかなければ」 訓練後、首都圏新都市鉄道の渡辺良社長は、実際の災害では複数の事象が重なり、状況が複雑化する可能性があると指摘した。現場での状況把握や情報共有、迅速な対応を訓練を通じて磨くとともに、消防や警察との連携を深め、限られた作業スペースで負傷者を安全に搬送するなど、実践的な対応力を高めていく考えを示した。 また、モバイルバッテリーの発火については、乗務員がすぐに対応できない車内で火災が起きた場合、周囲の乗客の協力も重要になるとし、車内の通話装置を使って乗務員に連絡することが基本となる一方、乗客にどこまで協力を求められるかは難しい課題だとした。その上で、「電車は、閉鎖された空間の中で高速移動しているという特殊性がある。その中での心構えといったことを、お客様と一緒に我々も考えていかなければならない」と述べた。鉄道各社や国とも連携し、乗客と協力して対応する方法を検討する必要性を強調。外国人や障害のある乗客への対応も含め、緊急時に備えた取り組みを進める考えを示した。 同社の安部雅俊鉄道事業本部長は、モバイルバッテリーの発火が近年増加していることに触れ、「どんな事象が起きても、今日の訓練を生かして冷静沈着に判断し、迅速かつ的確に対応していきたい」と語った。 つくばみらい消防署の森田誠署長は、今回の訓練について、「列車の脱線に伴う火災と負傷者の発生を組み合わせた複合的な想定だった」と説明。「実際の災害では複数の事象が同時、あるいは連続して発生する可能性があり、乗客の避難誘導や救出・救護、初期消火、情報収集など、多岐にわたる対応が求められる」と述べた。その上で、「乗客の安全を最優先に現場の状況を把握し、関係機関が情報を共有しながら活動することが重要。今回の訓練では、TX職員や消防、警察など各機関が役割分担や情報伝達の方法を確認できた。今回確認した事項を今後の訓練や対応計画に反映し、より実効性のある体制づくりにつなげる必要がある」と語った。(柴田大輔)