日曜日, 11月 8, 2026
ホームコラム「土浦の花火」中止に思う《見上げてごらん!》34

「土浦の花火」中止に思う《見上げてごらん!》34

【コラム・小泉裕司】来年2025年は土浦の花火100周年。土浦全国花火競技大会実行委員会事務局は、今秋中止した大会の支出に対する予算措置にめどが立っていないことや中止決定への信頼回復もままならない状況で、「予算的にも市民感情的にも記念事業を考える状況にない」という。

赤字支出への対応

中止にもかかわらず、予算総額3億円のうち、桟敷席の設営や椅子などの借上料、警備委託費、花火製作費など主たる経費のほぼ全額に加えて、チケット代金の返還手数料などが支出となる。収入に計上した有料席代金や広告料2億2000万円が未収となるため、同額近くの新規予算化が必要となる。

詳細は、記事「来年100周年、運営再検討へ」(11月5日掲載)をご覧いただくとして、不足分は土浦市から大会実行委への「補助金」として、市議会の議決を要する案件。補助金削減を進めて来た土浦市、しかも議員の一部から、責任問題を追及する意見も聞こえてくるので、議決までの道のりは簡単ではなさそうだ。

それでも期限が迫っている経費もあり、支出が可能となる12月下旬の市議会定例会の会期末までは待てないという台所事情もある。

支出を急ぐ方法としては、臨時会の開催、市長の「専決」、12月定例会での「先議」が考えられる。臨時会を招集するいとまがないことや専決できるほどの軽微な案件ではないことから、最終日の議決を待つのではなく、会期中の早い時期に他議案に先駆けて議決する「先議」になるのだろうか。

異常気象下の中止決定

今年は、10月に入ってまで日本を直撃する台風が多かった。このコラム入稿時の天気図も、南方海上にトリプル台風が発生、そのうちの1個は日本方面に向かう予報。かつて経験のない気象を引き起こす気候変動が、通常化しつつある。

かつて土浦の花火が開催されていた10月は、東京五輪1964の開会日10月10日が「晴れ」だったことから、晴天が集中する季節との伝説が生まれたが、特段に晴れが多い季節ではなかった。土浦は、気候変動の影響を考慮し、それから1カ月遅い11月に変更し、3年が経過した。

今年は11月2日。大会当日、台風21号が温帯低気圧に変わり、秋雨前線に沿って東進。打ち上げ時間に合わせるかのようにピンポイントで雨脚が強まった。同時刻に開催した「NARITA花火大会」(成田市)のライブ映像では、開花高度の高い花火は大部分が雨雲に覆われ、雲の下層部にたこ足のように開花する花火の一部が見え隠れした。

この映像を見て、第82回大会(2013年)10号玉の部でのノーコンテストトラブルを思い出した。このときも、雨雲に隠れて10号玉のほとんどが見えず、創造花火やスターマインも一部が雲に隠れた。審査委員会は、見えない作品は一律に審査標準玉の点数をつけたが、公表の可否を委ねられた市長は「公表」を選択。

大会終了後、ノーコンテストではないか、開催決断が間違っていなかったのかという批判が多数寄せられ、市長は「なにしろ自然が相手」と断った上で、雨天決行したがゆえに、見えない状況になったことを謝罪した。今大会、この時の二の舞を演じなかった英断に敬意を表したい。

花火師の無念さ

土浦に参加する花火師は、土浦仕様の作品を持ち込む。事務局が、すべての出品業者に連絡、謝罪した際、中止判断への否定的な言葉はなかったという。

雨天にあったわけではないので、仕込み済の花火が夜空を彩る新たな機会はあるだろうが、花火師は、そんなことよりも、土浦に出品するために、いくつかの危険な手作業の工程を経て完成した花火作品への思い入れ、そして観客の皆さんに披露することがかなわなかった悔しさを、言葉にしなかっただけ。花火師の無念さはいかばかりか。

11月11日(月)に大曲の花火実行委員会が開催した「大曲の花火 感謝の集い」に出席した花火師から、「土浦で上げたかった」との発言があったという。

花火師ファースト

実行委は、今回明らかになった「順延・中止」に対する課題の検証や対応策を検討するとのこと。気象条件の精査や警備体制の確保、予算の増額など、多様な検討が行われるのだろうが、軸足を「花火師ファースト」で意思決定する体制を再構築してはどうだろう。

言うまでもなく土浦は「競技大会」である。オリンピック同様、中止はあり得ないと思っている。荒天の場合、いつに順延するかの判断基準、たとえば設置した桟敷席や設備の安全確保、借り上げ料の増額、観客の交通・宿泊など、多様な検討材料が多いが、「土浦の花火」を競技大会として存続していくためには、欠かせないコンセプトに思う。

チケット代金が払い戻され、私たちが残念に思う気持ちは、徐々に希薄になるのかもしれない。しかし、1年かけて準備を進めてきた地元茨城の花火師や実行委の職員が、抜けるような晴天の中、花火筒の撤収や案内看板を回収した悔しい思いを、私は、長く心に留めておきたい。

今回はこの辺で、打ち上げならず「ザンネーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

<チケット代金の払い戻し>

実行委は、11月14日(木)10時から、第93回土浦全国花火競技大会の中止による有料観覧席の払い戻しの受け付けを開始した。来年1月14日(火)までの期限があるので注意が必要。実行委ホームページはこちら。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho





spot_img

最近のコメント

最新記事

少し変わった「キツツキ」《鳥撮り三昧》19

【コラム・海老原信一】見た目はそうでないけれど、れっきとしたキツツキの仲間。その名はアリスイ。爬虫(はちゅう)類に似た雰囲気があり、図鑑でキツツキの仲間だと知ったときは驚いた。林などをすみかにする他のキツツキ類と違い、ヨシ原のような湿地が好みらしい。初めて観察できたときは、「なにこれ?」と驚いた。 その後、何度か観察する機会があり、湿地の灌(かん)木などにいるアリの巣に、長く伸びる舌を差し込み、舌の粘膜にアリをからめとって食べる様子を観察できた。動物のアリクイのように、この仕草からアリスイの名がついたのだろう。ここに鳥見の楽しさがある。隠れているなら見つけてやるぞ…と。 もちろん、ガサゴソと彼らの近くへ踏み込むことはしない。望遠鏡を使い、丹念に居そうな場所を探す。他の隠れるのがうまい鳥を探すとき同様、静かに、丹念に。冬鳥たちの観察が楽しくなるシーズンに、これから入る。 隠れ上手なタシギ 保護色となると、冬枯れの緑の消えたハス田でタシギを見かける。危険を避ける場所を探し、レンコンの葉や茎が重なり合ったところに隠れている。うまくカモフラージュされているのだ。「うまく隠れるものだなあ」と思ったりするが、「頭隠して尻隠さず」の言葉があるように、隠れ上手のタシギも「尻隠さず」のことがある。 タシギにしたら隠れた気分なのだろう、こちらから体は丸見えなのに、目だけが隠れている。それを見て、うれしくなっている自分がいる。鳥見は楽しいと思える日々が、気力と体力と相談しながら、もう少し続くようにと願うこのごろ。(写真家)

シミュレーションゴルフ施設 つくば市梅園にオープン 24時間 完全個室型

市内初、ガソリンスタンドに隣接 室内に設置されたスクリーン上に国内外の有名ゴルフコースを映し出し、スクリーンに向かってショットを打つことで、弾道や飛距離を再現するシミュレーションゴルフ施設「DOOR TO GOLF(ドアトゥゴルフ)アドバンスセルフつくば梅園店」(岡野広大店長)が6日、つくば市梅園のガソリンスタンド隣りにオープンした。つくば市内で初のシミュレーションゴルフ施設となる。 世界のトッププロも使用するゴルフシミュレーターを導入し、スイングやボールの弾道などを高精度なAIで分析する。ヘッド軌道、インパクトデータ、ボール初速、打ち出し角などを瞬時に可視化し、感覚だけに頼らない効率的な練習をサポートする。完全個室のため、周囲の目を気にせず自分のペースで練習に集中でき、初心者から上級者まで、それぞれのレベルや目的に応じて利用できる。 セキショウグループの一員で、ガソリンスタンドなどを展開するアドバンス・カーライフサービス(つくば市、関太士社長)が、ガソリンスタンド「Dr.Drive(ドクター・ドライブ)アドバンスセルフつくば梅園店」に隣接して開設した。グループ初のシミュレーションゴルフ施設となる。 年中無休で24時間営業する。施設は個室型で完全貸し切り。個室の面積は約43平方メートル(13坪)、3人まで一緒に利用できる。利用は会員制で、インターネットで空き状況を確認し予約、鍵アプリを利用し入室する。 施設のオープンを記念して6日、導入式が催され。エネオス関東第一の南秀樹副支店長が第1号を試打。打球は正面大型スクリーンに映し出され、ボールの速度、弾道などの数字が瞬時に表示された。自身のフォームなども側面のディスプレイに映し出されていた。 アドバンス・カーライフサービスの坂林康二副社長は「ゴルフの盛んな茨城県に合わせこの施設を考えた。元の施設は整備工場だった。セルフ給油所隣接ということもあり、ここも(最新の設備やシステムを導入し無人化するなど)人をあまり使わずに出来る施設を考えた。まずは会員数を伸ばしていきたい。状況を見て2号店と、今後も増やしていく可能性がある」と話した。(榎田智司) ◆「DOOR TO GOLF アドバンスセルフつくば梅園店」はつくば市梅園2-25-12、電話029-855-2236。料金プランは▽ライト会員(月4回枠) 1万1000円▽スタンダード会員(月8回枠)1万7600円▽アドバンス会員(月12回枠)2万4200円▽ナイト⑷会員(月4回枠/利用時間 午前0時10分~7:00)6600円▽ナイト⑻会員(月8回枠/利用時間 午前0時10分〜7時)1万1000円 。入会金は通常1万1000円。料金はいずれも消費税込。家族(または同伴者)は3人まで無料で利用できる。

オタクと研究者 認知症になるのはどっち?《看取り医者は見た!》57

【コラム・平野国美】「著名な研究者と部屋にこもるオタク、どちらが認知症になりやすいと思いますか?」。講演などでこう問いかけると、大半の方は「人付き合いをせず閉じこもるオタクのほうが危ない」と答えます。世間では、頭脳労働や社会的地位こそがボケ防止の切り札であり、孤独は万病の元だと信じられているからです。 認知予備能の崖落ち しかし、老年医学や地域医療の現場で多くの人生の黄昏(たそがれ)を見つめていると、こういった常識はしばしば裏切られます。特に理工系の大学教授や研究機関のトップを務めたような碩学(せきがく)が、定年退職を迎えた途端、まるで断崖絶壁から転落するかのように、急速な認知症を発症・進行させてしまう事例は少なくありません。 医学的には「認知予備能(コグニティブ・リザーブ)の崖落ち」と呼ばれる現象です。彼らは高い知性によって、脳内に蓄積する病変を長年カバーし続けています。しかし、その知性は「研究室」という手厚い外部環境に依存していました。巨額の実験装置、論文執筆を促す締め切り、身の回りの手続きなどを整えてくれる秘書や学生など、その「足場」が退職とともに失われたとき、長年覆い隠されていた脳の機能低下が隠しきれず、一気に決壊してしまうのです。 内発的情熱のドパミン 一方、世間から「孤立のリスク」と心配されるシニアのオタクたちはどうでしょうか? 彼らの姿を見ていると、その驚くべき自立性に目を見張ります。 オタクの探求は、初めからすべて自己完結しています。自室の机の上、パソコンの画面、ネット上のコミュニティ…。退職したからといって、奪われる設備も権威もありません。むしろ、「これで誰にも邪魔されず、一生分の模型作りに没頭できる」「あの資料を心ゆくまで読み解ける」と、定年を人生の黄金期として迎え入れます。 彼らは、誰かに頼まれて動いているわけではありません。内発的な情熱からドーパミンを自前で分泌させ、指先を動かし、情報を分類・アーカイブし、至福の時間を過ごします。世間的な意味での「お付き合い」は希薄でも、関心で結ばれたネットの仲間と知的な交信を保ち、退屈という最大の毒を軽々と無力化してしまうのです。 偏愛と探求の場を持つ 高齢者施設に足を運ぶと、かつて社会を動かした大人たちが、折り紙や童謡、風船バレーといった幼稚園の遊戯のようなレクリエーションを強いられ、書き上げた書道に赤ペンで「花丸」をつけられ、自尊心を削られている光景に出会います。大人のプライドを無視した一律のケアが、どれほど人を無気力に追い込むことか。 知性の高さそのものが脳を守るのではありません。自分の手元に、誰にも奪われない「偏愛と探求の場」を自前で持っているかどうか。定年後の認知機能を支えるのは、かつての肩書ではなく、一人で面白がれるオタク的な「したたかさ」なのだと感じています。オタク、恐るべし!(訪問診療医師)

市南部にも1000メガワット つくば市、新たなデータセンター集積地誘致

つくば市北部の大穂地区に国内最大級となる1000メガワット(100万キロワット)のデータセンター建設計画が進み、周辺住民から不安の声が出ている中、つくば市は2日、市南部の高須賀、上郷地区約74ヘクタールに、新たなデータセンター集積拠点を誘致するため、民間事業者の募集手続きを開始した。市南部に誘致するデータセンターは受電容量が最大1000メガワットで、大穂と同規模になる。 圏央道つくば西スマートインターチェンジ(IC)周辺の、同市高須賀、上郷に誘致する。開発にあたっては、事業者(企業グループ)が一括して、用地買収、土地造成、建設、管理運営などを実施する。付属施設として排熱を利用する施設や蓄電池を設置・保管する施設などデータセンターと関係のある施設などは立地を認める。 計画地は現在、田んぼ、畑、山林、宅地などで、面積の半分が農業の振興を図るべき農業振興地域の農用地区域となっている。地権者は計251人。産業用地とすることについて意向を確認したところ、96.8パーセントの243人から同意を得ているという。未同意の残り8人は所有者不明や未相続など。一方、2025年1月からこれまで4回地権者説明会を実施しているが、データセンター集積地とすることを地権者に説明したのは10月31日が初めてという。 今後のスケジュールは、12月中に事業者から参加申込を受け付け、市が事業提案書やプレゼンテーション、ヒヤリングなどで審査を実施、来年3月までに事業者を選定する。その後、用地買収価格などについて市及び地権者団体と協議し、市と協定書を締結する。2027年度以降、用地買収を開始し、28年度に農業振興地域の除外申請や開発許可などの手続きを実施、29年度に造成工事に着手し、30年度に建設工事に着工、32年度に1棟目のデータセンターが操業を開始する想定だ。 同地区は2024年12月、地域経済をけん引することを目的とする地域未来投資促進法に基づく重点促進区域となり、開発の際に農業振興地域の除外などの手続きが簡素化されたり、税制優遇などを受けることができる地域となった(25年1月10日付、25年1月26日)。さらに今年9月、つくば市が、脱炭素電源を核とするデータセンター集積型のGX戦略地域に認定されたことを受けて、市が事業者に伴走しながら環境配慮・地域共生型のデータセンターを目指すとしている。 具体的な環境配慮として、自主的な環境影響評価の実施、サーバーや機器の冷却は液冷却や液浸冷却など高効率な技術を導入、排熱の活用、環境データの測定など。地域共生として住民説明会の開催、地域振興施設の整備、市内の大学や研究機関との連携、想定される市税、用地買収価格などを審査し、事業者を選定する際の加点にするなどとしている。 市立地推進課によると、昨年6月から9社を対象にサウンディング調査を実施、併せて50社以上にヒヤリングを実施してきた。当初、製造工場や物流施設の誘致も検討したが、資材高騰などの中、データセンター以外を一括開発により誘致するのは厳しいと判断したという。データセンターに関しては、すでにかなり多くの企業から問い合わせなどがあるとしている。 大規模データセンターの立地に対しては、莫大な電力使用や排熱、水利用、騒音、振動などの環境影響について専門家が課題を指摘、大穂地区では大きな不安の声が出ており、住民団体「データセンターから市民を守る会」が結成されている。(鈴木宏子)