国立科学博物館が所蔵し、筑西市の科博廣澤航空博物館に展示されている人力飛行機「日大式ストークB」が4月16日、一般社団法人日本航空宇宙学会から「航空宇宙技術遺産」に認定された。ストークBは1975年から77年にかけて、日本大学理工学部の学生たちが卒業研究として開発した人力飛行機で、77年1月に2093.9メートルを飛行し、未公認ながら、当時の人力飛行世界記録を樹立した。今回の認定では、人力飛行を世界に広く認知させ、その成果が航空技術者の育成にも寄与したと当時の学生たちの挑戦が再評価された形だ。
世界記録打ち立てた35.9キロ
ストークBの機体重量は35.9キロ。0.3から0.4馬力ほどの人力で飛行するため、和紙など日本独自の素材や技術を取り入れることで極限まで軽量化が図られている。現在は、筑西市のテーマパーク「ザ・ヒロサワ・シティ」内にある科博廣澤航空博物館で一般公開されている。展示では、飛行中を思わせるように天井から吊り下げられており、大きく広がる翼を見上げた来館者からは「これが本当に人力で飛ぶのか」と驚きの声も上がるという。

同博物館では、戦後初の国産旅客機「YS-11」量産初号機や、映画「南極物語」の題材にもなった、カラフト犬のタロとジロの生存発見・救出に活躍した実在の大型ヘリコプター「シコルスキーS-58」、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)など、日本の航空史に名を残す実機が約10点展示されている。そのうち7点が国立科学博物館によるものだ。展示品で同遺産に認定されたのは、YS-11、JAXA から提供された国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟に続き、3例目となる(24年2月1日付、同4月26日付)。
施設を運営する広沢商事の野口稔夫専務は「日本大学の学生の皆さんが、自分たちの手で作って空を飛んだ機体。当時の若い人たちが、本気で『空を飛びたい』と思い挑戦した。その思いが詰まっている」と語る。
認定後の大型連休には、「ストークを見に来ました」という来館者の姿も見られたとし、「写真や映像で見たことがあっても、本物を目の前で見ると迫力が違う。天井から吊り下げているので、本当に飛んでいるように見える。下から見上げると、翼の大きさや機体の軽さに驚かれる方が多い」。和紙で作られていることに驚く人も多く、「こんな素材で飛んだのか」と足を止める来館者もいるという。
実物が残るから、挑戦は伝わる

ストークBを所有する国立科学博物館・産業技術史資料情報センターでセンター長を務める前島正裕さんは、今回の認定について「私たちが大切に残してきた資料の価値を、学会にも認めていただけたようでありがたい」と受け止める。国立科学博物館では航空機や実験装置、部品など、日本の科学技術の歩みを伝える資料を収集・保存している。ストークBは以前、東京・上野の国立科学博物館で展示されていたが、大型機体のため長く収蔵庫で保管されていた。前島さんは「ヒロサワ・シティの協力で、また多くの人に見てもらえるようになったことがうれしい」と笑顔を見せる。
さらに「機械や部品は、美術品のように見てすぐ価値が分かるものではないからこそ、この資料がどういう研究や挑戦に使われたのか、誰がどんな思いで作ったのかを伝えていく必要がある」とし、「実物が残っていなければ、その挑戦があった証拠も残らない」と、資料保存の意義を強調する。ストークについても「今は、テレビの『鳥人間コンテスト』などで人力飛行機を目にする機会があるけれど、最初に挑戦した人たちは、本当に飛べるのかも分からない中で挑戦していた。『こんなに大きな翼が必要なんだ』『こんなに軽いんだ』ということは、実物を見ると一瞬で伝わる。言葉よりも本物には力がある。是非、間近で見ていただきたい」とし、「ストークを作ったのは特別な誰かではなく、当時の大学生たち。今の子どもたちから見れば、少し年上の『先輩』ですよね。『こんな挑戦をした人たちがいたんだ』と感じてもらえたら」と語った。(柴田大輔)






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