日曜日, 5月 18, 2025
ホームコラム一騎打ち? 三つどもえ? つくば市長選《吾妻カガミ》190

一騎打ち? 三つどもえ? つくば市長選《吾妻カガミ》190

【コラム・坂本栄】つくば市の市長・市議選挙(10月20日公示、27日投票)まであと2カ月弱に。「…3期目への立候補を表明」(2月27日掲載)にあるように、五十嵐市長は早い時期に続投意欲を示した。ところが対抗馬が現れず、無投票当選かと思っていたら、「星田弘司県議が立候補へ…」(8月8日掲載)と報じたように、中堅の県議が出馬を表明。やっと市長選の構図が出来上がった。

パフォーマンス型と問題解決型

「政治家は選挙で鍛えられる。政策も選挙で磨かれる」(私の造語)。市政の健全化のためにも、両氏の今後のためにも、一騎打ちの形になりそうなことを歓迎したい。五十嵐氏の続投理由、星田氏の挑戦理由を上のリンク先から引用すると…。

五十嵐氏は「(常住人口25万人突破、人口増加率全国1位など)つくば市が選ばれるまちになっていることが数字に表れている。様々な取り組みが評価され、私自身、昨年、経済協力機構によるチャンピオン・メイヤーに選出された」と、つくば市と自分のパフォーマンス(出来栄え)を自慢。

星田氏は「(県営公園が市営化された)洞峰公園のやり取りが象徴しているように、県との連携が十分でない。無償譲渡だが、毎年膨大な管理費がかかる。知事との直接のやり取りが一度もできず、直談判もせずに譲り受けており、連携不足を感じた」と、実務に疎い五十嵐市長を批判。

県との連携:3つの具体的事例

現職の仕事振りは市の広報紙や各種報道で知られている。そこでバランスを取り、星田氏が出馬会見で明らかにした5分野・37項目の公約を紹介すると…。

項目の一つ、県と連携した県立高校問題の課題解決については、「県議として市民団体の(市内にある県立高の学級数を増やしてほしいといった)要望を聞き、活動してきた。(県立高が難しいのであれば)市立高を新設したらとの意見もあり、大井川知事はそれを支援すると言っている。その可能性も追求したい」と述べた。

他の項目もっと企業を呼び込む工業団地の造成と企業誘致については、「否定はしないが、市内には物流倉庫が目立つ。(こういった業種よりも)半導体とか食品といった職を生む企業を誘致する必要がある」と、企業誘致に熱心な県知事との連携を図ることを強調した。

市営化された洞峰公園問題について質問されると、「県と市の連携ができていれば、(市と県が維持管理費を折半するなど)負担割合などで別の形もあった」とし、五十嵐市長が選択した完全市営化に疑問を呈した。

行政改革を主張する理系研究者

実は、前回市長選で2位に終わった酒井泉氏(元高エネルギー加速器研究機構准教授、元福井大学教授)も再出馬を検討している。水戸市、土浦市、守谷市に比べると、つくば市役所の人件費、職員数、管理職が多過ぎると怒り、役所に乗り込んで行政改革をやりたいと言う。すでに比較分析を終え、近く市民にその要約ペーパーを配布する。

ただ、現時点では、市長選に臨むか、議会改革も念頭に市議選に出るか、市井の市政監視人として活動するか、熟慮中と言う。政治家になることが目的ではなく、それは市政を正常化するための手段と考えている。理系学者が市政を論じる学園都市。実に面白い。(経済ジャーナリスト)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

41 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

41 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

名称が決定 筑波大野球・ソフトボール室内練習場

9月1日開所予定 筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)と関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長)が同大学内に整備を進めている野球・ソフトボール室内練習場について(24年10月18日付)、名称が「Invictus athlete Performance Center」(インヴィクタス・アスリート・パフォーマンス・センター)に決定した。 インヴィクタスはラテン語で無敵や逆境への抵抗を意味し、自らの力で運命を切り開くという意味が込められているという。 同施設はコーチング、バイオメカニクス、スポーツアナリティクスを融合したトレーニング・研究拠点で、今年9月1日開所予定。 平日昼間は大学の授業や部活動で使用され、夜間や週末は関彰商事が一般向けにスクールや動作分析プログラムを提供しタイムシェア方式で運用する。関彰商事が整備し、開所後は筑波大学に所有権が移転される。 名称について同大と同社は「スポーツを通じて自分自身の未来を切り拓く力を育んでほしいという思いから決定した」とし、「今後も教育、研究、地域連携を柱とした取り組みを推進し、スポーツを通じた社会貢献を継続したい」としている。

つくば市消防職員を懲戒処分 停職5カ月 酒気帯び運転の車に同乗 

つくば市は16日、市消防本部の20代男性消防職員を同日付けで停職5カ月の懲戒処分にしたと発表した。消防職員は、非番の日だった今年2月9日未明、水戸市内で、酒気を帯びた友人が運転する車に同乗して検挙された。運転者が酒気を帯びていることを知りながら同乗したなど、地方公務員にふさわしくない非行などがあったためとされる。停職5カ月は、酒気帯び運転の場合とほぼ同様の処分という。 市消防本部によると、消防職員は同日、友人と飲食し、ビールなどを飲んだ。友人が運転する車に同乗し、警察に車を止められ検挙されたという。検挙された当日、本人から上司に報告があった。5月14日に市職員分限懲戒審査委員会が開かれ、処分が決定した。消防本部の調べに対し本人は、酒気帯び運転と知りながら同乗したことを認めているという。 青木孝徳市消防長は「市民の皆様に多大なるご迷惑をお掛けし心から深くお詫びします。今後の再発防止に万全を期すと共に、市民の不信を招くような行為を厳に慎むよう、さらなる綱紀の保持を徹底します」などとするコメントを発表した。

つくばの県立高4校が魅力を紹介 18日、市民団体が「高校進学を考える集い」

学校選択テーマ 人口増加が続くつくば市で県立高校が不足している問題を県などに訴えてきた市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)が18日、同市役所コミュニティ棟で「第6回つくばの高校進学を考える市民の集い」を開催する。今回は学校選択をテーマに、市内の県立高校4校の校長が各校の魅力をそれぞれ紹介するほか、片岡代表が今春の入試問題をもとに県立中学や県立高校入試にどう構えたらいいかなどを話す。 これまでの市民の集いとは趣向を変える。これまで年1回開催してきた集いは、県立高校の募集定員不足問題を考える場とし、参加者から出された意見などをもとに県教育庁に要望活動をしてきた。県議や市などと連携し牛久栄進高の学級増やつくばサイエンス高の普通科新設などを少しずつ実現してきた。一方生徒や保護者からは、募集定員不足の問題にとどまらず、「実際の高校の話を聞きたい」「中学受験をどう考えればいいのか」「通学の費用が大変」など幅広い声が出ているなどから、今回は学校選択を考える。 集いは2部構成で、第1部は高校進学説明会を開催する。筑波高、つくばサイエンス高、竹園高、茎崎高の市内4校の校長が一堂に会し、各校の魅力をぞれぞれ説明するほか、牛久栄進高が資料を配布する。 第2部は、伝統校が中高一貫校になり中学受験の波が押し寄せていることから、入試への構えのほか、伝統校の中高一貫校化によって学校選択に波紋の広がり、特に土浦一高の定数削減で受験生に何が起きているのかなどについて、元高校教員でもある片岡代表が話す。 片岡代表は「県立高校が不足しているところに土浦一高の定員削減という状況が起こり、(同校の)定員削減1年目に土浦二高と竹園高に、2年目に牛久栄進高に受験生の波が向かった。3年目の来年の入試でどこに向かうのが心配」だとし「つくばサイエンス高と筑波高校の魅力アップは地域の発展にとっても重要」とする。さらに「県は2019年の県立高校改革プランでつくばエリアの10校を26年までに2学級増やすと発表したが、実際は県立中が増えただけ。県平均の県立高校収容率で試算するとつくばエリアには30年までに12学級増が必要になり、いろいろな人の意見を出してもらって県と対話したい」と話し参加を呼び掛ける。 ◆つくば市の小中学生の高校進学を考える会は18日(日)午前10~12時、つくば市研究学園1-1-1、つくば市役所コミュニティ棟1階会議室1・2で開催。資料代300円。詳しくは電話029-852-4118(新日本婦人の会つくば支部内)へ。

20年前と20年後の舞踏会《映画探偵団》88

【コラム・冠木新市】中学1年生の時、シナリオに関する本で「舞踏会の手帖」なるフランス映画の名作があることを知った。夫を亡くした貴婦人が、昔踊った男性たちの名前の書かれた手帖を見つけ、男たちを訪ねる旅に出るお話である。監督は名匠ジュリアン・デュヴィヴィエ。だが私が作品を見たのは、50年以上の歳月が過ぎてからである。確かテレビ放映で見たと思うのだが、記憶は定かでない。でも内容ははっきり覚えていて想像を超える名画であった。 製作は1937年。日本での公開は1938(昭和13)年。昭和恐慌で農村は疲弊し、満洲への移民政策が本格化し、淡谷のり子の「別れのブルース」「雨のブルース」に兵士たちが熱狂していた時代だ。この年、「舞踏会の手帖」はキネマ旬報の外国映画の第1位に輝く(チャップリンの「モダン・タイムス」が第4位)。しかし、後に軍部から退廃的とされ、上映禁止となる。 作品は、クリスティ一ヌ(マリ一・ベル)が、16歳の時に踊った8人の男性を20年ぶりに訪ねるという、オムニバス構成の物語である。 1人目のジョルジュは、失恋で自殺し写真のみの登場。2人目のピエールは、元弁護士で今は犯罪に手を染めるキャバレーの支配人。3人目のアランは、元作曲家で今では子どもたちに合唱を教える神父。4人目のエリックは、元詩人で今では山岳ガイド。5人目のフランソワは、国の政治家を目指す野心家だったが、今は田舎の町長で不良の養子に悩まされている。6人目のティエリ一は、堕胎で稼ぐ闇医師。7人目のファビアンは、昔と変わらぬ美容師。そして、8人目のジェラールはつい最近亡くなり、クリスティ一ヌは父親そっくりな息子と出会い養子にする。 なぜか、最後の8人目のエピソードがあっさりと終わる。私の見た版は2時間11分。オリジナル版は2時間24分。13分短いので、そこがもっと描かれていたのではなかろうか。だがそれでも、衝撃的な仕上がりであった。 二つの時代が同時に押し寄せる 普通のオムニバスだと7つのエピソードのどこかに乱れがあるものだが、それがなく密度が濃く7本の映画を見ている感じである。クリスティ一ヌと男たちの20年前の出来事の記憶と20年後の現実の物語。この二つの時代の話が同時に押し寄せて来て、観客は人の変貌という時の残酷さを体験することとなる。これは若い世代には重すぎる内容かもしれない。だから、50年過ぎて見たのが正解だったと思う。 ある婦人たちの話では、昔の男性に訪ねて来られるのは女性にとっては迷惑だと一致しているようだ。とすると、映画のクリスティ一ヌは男性の思いを表現しており、8人の男性とは、実は女性たちなのかもしれない。女性の物語に見せかけた男性の物語ではないのか。 クリスティ一ヌは、昔踊った舞踏会場を訪ねた時、狭苦しく野暮(やぼ)ったく見え、20年前に感じた華やかで光輝く舞踏会とは、16歳の時に見た幻想の現実であると気づく場面は切ない。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)