日曜日, 1月 18, 2026
ホームつくばつくばから全国へ 「ヴィーガン」で「クィア」の2人が贈るレシピ集(上)

つくばから全国へ 「ヴィーガン」で「クィア」の2人が贈るレシピ集(上)

悩み、孤独を感じる人へのエンパワーメントに

動物由来の食べ物を摂ったり、製品を身につけたりしない「ヴィーガン」を身近に感じてもらおうと、つくば市在住のユミさん(27)と、パートナーで韓国出身の大学院生ヨニイさん(25)によるヴィーガン料理のレシピ集「韓国フェミめし:光州とヴィーガンを巡って」(全32ページ)が3月に出版された。ヨニイさんの故郷・韓国の文化紹介とともに、ヴィーガン風にアレンジした韓国料理が9品掲載されている。

出版元は同市天久保のブックカフェ「本と喫茶サッフォー」(23年9月18日付)で、個人や小規模の団体が少部数で製作する「ZINE(ジン)」と呼ばれる小冊子だ。SNSや口コミで広がり発売1カ月で2刷を迎えた。現在までに関東を中心に全国19書店で取り扱われている。

日々の食卓をSNSで発信

2人はヴィーガンであるとともに性的マイノリティの当事者であることを公表し、「ハンガン・ヴィーガン」というユニット名で日々の様子をSNSで発信している。自身の属性への周囲の無理解から悩みを抱えてきたと言い、今回の出版を「私たちの普通の暮らしを知ってもらうことで、悩み、孤独を感じる人たちへのエンパワーメントにつなげたい」と話す。

自宅で料理をするヨニイさん(右)を手伝うユミさん

2人のSNSには日々の食卓が紹介される。調理を担うヨニイさんは「冬は鍋が多かった。タンパク質は豆腐、厚揚げ、がんもどき。だし汁をカツオから昆布にしたり、肉の代わりに豆腐にしたり工夫している」と話す。ユミさんは「ヴィーガンになって肉料理が多い韓国料理から遠ざかっていた。でも、ヨニイと出会ってまた食べられるようになった。『ヴィーガンでも韓国料理ができるんだ』って感動している」と笑顔を浮かべる。

自分の感覚はおかしくない

ユミさんは大学4年でヴィーガンになった。戸惑ったのが食事だった。「(当時)ナッツを乗せたサラダしか食べなかった。1週間後には体も心も辛くなってしまって…」。その後、ヴィーガン料理のあるレストランや本で情報を得ながらメニューを覚えるが、「当時は情報が少なかった。何を食べていいかわからなかった私のような人は、今もいるはず」と話す。今回の冊子では「家庭で作れる普通のヴィーガン料理を紹介したかった」という。だが2人にはもう1つ、冊子に込めた想いがある。「ヴィーガンであることで孤独にならなくていいんだよ」と、当事者たちを励ますことだ。ユミさんがこう話す。

「私はヴィーガンの人と出会えず、ずっと孤独を感じてました。肉を食べないと『ヤバい人』になったのではと思われることもある。でも肉を食べなくても生きていくことはできる。SNSや映画で他のヴィーガンの暮らしを知ることで、『自分の感覚はおかしくない』と思えた。だから私たちも、普通の人が普通にヴィーガンでいる様子を見てもらい、同じ考えを持つ人のエンパワーメントになるものを作りたかった」

2人はヴィーガンレシピで作った韓国料理のビビンパを、毎月第3日曜日に「本と喫茶サッフォー」で提供している

社会問題が身近に

ユミさんがヴィーガンになったきっかけは、大学時代に短期留学した台湾での経験だ。それまで食べていた好物のガチョウが、目の前を楽しそうに歩いていた。とてもきれいで可愛い。「犬や猫など可愛いペットは食べてはいけないのに、なぜガチョウは食べていいと勝手に思っていたのだろう」と疑問が湧いてきた。いろいろ勉強するうちに「動物は軽率に食べていいものではない」と感じ、ヴィーガンの食生活へと移っていったという。

ヨニイさんはある映画がヴィーガンへの考えを深めるきっかけになった。食用や衣類、実験用にされる「殺していい動物」と、ペットなどの「殺してはいけない動物」を取り上げた映画で、人間の考え一つで動物の命の価値が決まることに疑問を感じた。劣悪な管理下にある動物の実情についても知ることになった。「殺していい動物といけない動物の間に引かれる線は何なのか。勉強する中で、自分が殺せないなら食べるのはやめたい」と考えるようになった。

「動物への差別」を意識したユミさんの関心は、社会の中にある他の差別や環境問題へと広がった。「私はヴィーガンであることで社会問題に関心を持った。暮らしの中にある様々な差別に意識的になることで社会は変化すると思っている。多くの人が日常にある課題に問題意識を持つのがいいはず。今回の本は、その入り口になればという思いもあった」と語る。ヨニイさんは「差別は構造の問題。そこに対してもっと関わっていきたい」と言う。

「ビビンパは韓国語で『混ぜご飯』という意味。よく混ぜて食べるのが美味しいんですよ」とヨニイさん

おばあちゃんの味を再現

掲載するレシピは9品。その中に、韓国に暮らすヨニイさんの祖母と母の得意料理が3品ずつ並んでいる。

「ヴィーガンになると、家族と同じものが食べられなくなるんじゃないかと心配がある。そこでつまずいてしまう人もいる。でもヴィーガンになっても家族のレシピは繋いでいけるし、家族の伝統は守れるんだと言いたかった」とユミさん。

ヨニイさんは「レシピには、大好きなおばあちゃんが作る、私が好きな料理も選んだ。最近、レシピ集を見てくれた在日コリアンの方々から『私のおばあちゃんも(掲載されている)カボチャのスープを作ってくれたんですよ』と感想をいただいてうれしかった」と話す。

「社会人として残業しながら働いていると、社会問題に関心を持ち続けるのも自炊するのも難しい。外食は高いし、料理する時間を作れる人は限られる。自分ができる範囲で、気負わずにできれば。まずは一食から。その時にこのレシピが役に立てばうれしい」とユミさんは、これから一歩を踏み出そうとする読者に語り掛ける。

記者が作ってみた

「ヴィーガン料理、なんだか難しそう…」と漠然と感じていた記者が「韓国フェミめし」を参考に韓国の海苔巻き「キンパ」を作ってみた。ヴィーガン料理を作るのも、食べるのもこれが初めて。レシピに従い、さいの目に切った厚揚げと油揚げを油で揚げて、炒めたにんじん、にんにくスライス、生レタスを海苔に広げたご飯の上に並べていく。甘辛い韓国味噌「サムジャン」を適量垂らして巻きすで巻くと完成だ。

記者が作った韓国海苔巻き「キンパ」

米を炊く以外、正味30分程の調理時間。一口サイズに切り分けて口に運ぶと、よく揚がった厚揚げは鶏の唐揚げのような味と食感。サムジャンの旨味と合わさり食べ応えも十分だ。味にも感激したが、手軽さに驚いた。(柴田大輔)

続く

◆「韓国フェミめし:光州とヴィーガンを巡って」は880円(消費税込み)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

川口公園で火災 芝生2500㎡焼ける つくば市

17日午前10時53分ごろ、つくば市が管理する同市上郷、川口公園で芝生が燃える火災が発生し、同公園北側の芝生の一部約2500平方メートルが焼けた。消防車6台が出動し、火は午前11時23分に鎮火した。けが人はいないという。 市公園・施設課と市中央消防署豊里分署によると、出火時、公園内に人がいたどうかは不明という。現在、消防署で出火原因などを調査している。 同公園は広さ約5ヘクタールで、小貝川の近くにあり、公園内には三つの池がある。周囲は田んぼや林などに囲まれている。

研究者、経済人、政治家が集い つくばで賀詞交歓会

つくば市商工会主催による「つくば市新春賀詞交歓会」が17日、市内のホテルグランド東雲で開かれ、国や民間研究機関の関係者、市内に支店を置く大手企業や地元企業の関係者、国会・県会・市会議員など約400人が参加した。恒例の賀詞交歓会は昨年まで、市、商工会、研究機関交流協議会、筑波大学の4者共催だったが、今年から商工会の単独主催になった。 今年から商工会が主催 最初にあいさつした桜井姚商工会会長は、研究学園の可能性について「熊本県に半導体工場が集中しているが、これは水の質がよいからと聞いている。市内にある研究機関の技術力を動員すれば、自然と同じぐらいの質の水は人工的にできる。今やつくば市は、世界が必要とする半導体を全部つくれるぐらいの学園都市に育った」と述べ、研究力を駆使した事業地域化構想をぶち上げた。 また、五十嵐立青つくば市長は、主催を商工会に移譲した理由について「行政が主催すると、(ビジネスなど)次につながらず、形式的なところで終わってしまう。これだけ地域の皆さんが集まるところだから、地域経済の糧になる、市の魅力を形にできるような賀詞交歓会にするには、主催者は市でない方がよいのではないかと思い、桜井会長に相談したら『まかせておけ』と引き受けてくれた」と説明した。 立ち話の話題は衆院総選挙 国会議員で開会時から参加したのは、いずれも茨城選挙区の上月良祐、加藤明良、桜井祥子の参院議員3氏だけだった。国光あやの衆院議員(比例)は副外相の仕事で外国訪問のため欠席、青山大人衆院議員(茨城6区)は開会式の途中で駆けつけた。 参加者の間では、総選挙が大方の予想より早まって2月になること、立憲民主党と公明党が一緒になり「中道改革連合」が誕生したこと―など中央政局の話題と、つくば市が入る茨城6区の票の行方に話題が集中、各種情報を基に票読みがなされた。6区では青山氏(立憲)と国光氏(自民)のほか、堀越まき氏(参政)の立候補も確実になっており、桜井議員と一緒に名刺を配る同氏の姿も見られた。 筑波大学長が「2つの約束」 国会議員のあいさつの後、永田恭介筑波大学長は「ここで2つの約束をしておきたい」とし、①つくば市には科学技術の研究所がたくさんあるが、それらが一堂に会して全体でパワーを示すシステムを4月にスタートさせたい、②大学には文学系の学生も体育系の学生もおり、多様な学生たちに参加してもらい、大学としてもつくば地域の未来に貢献したい―と述べた。しかし、新たなシステムの詳細は明らかにしなかった。(坂本栄)

今年からSNSへの試験問題投稿禁止 出願手続きオンライン化も 共通テスト始まる

2026年度の大学入学共通テストが17日、始まった。試験は18日までの2日間。会場の一つ、筑波大学(つくば市天王台)では、2日間で6093人が受験する予定だ。 今回から新たに、試験終了後であってもSNSなどインターネット上に試験問題を投稿することが禁止された。 また出願方法が「オンライン出願」に変更され、これまでの高校経由の郵送出願は廃止になった。それに伴い大学入試センターでは、受験生は自分で受験票を印刷し、本人確認ができる顔写真付きの身分証と併せて持参するよう呼び掛けた。万が一、試験当日に受験票を持参し忘れた場合には、試験場本部で身分証を確認の上で仮受験票が交付される。 初日の17日は、地理・歴史・公民、国語、外国語、2日目は理科、数学1、数学2、情報が実施される。体調不良者などへの追試験は今月24日と25日に予定されている。 受験予定者数は、筑波大学で昨年より160人少ない。県内では昨年とほぼ同数の1万2226人。全国では昨年より1066人少ない49万6237人が受験を予定している。減少の理由として少子化のほか、推薦入試を選ぶ受験生が増えていること、思考力を重視する方向に転換した共通テスト離れがあることなどが指摘されている。 いつもの力を発揮したい この日、最高気温16度が予想されたつくば市では、小春日和の青空の下、午前8時には開場を待つ受験生が筑波大学に集まっていた。 自転車で来たという市内在住の高校3年男子生徒は「おとといは緊張で眠れなかったが、昨日はよく眠れた。緊張とワクワクが混ざった不思議な気持ち。意気込みが空回りしないよう、いつもの力を発揮したい」と語った。市内から来た女子生徒は「オンラインでの出願や受験票の印刷は学校でみんなでやったので問題なかった。まだ本番を迎えた実感が湧かないが、会場に入っても緊張せずに頑張りたい」と話した。(柴田大輔)

土浦三高の生徒が考案 「まごころ弁当」21日からイオンで販売

県立土浦三高(同市大岩田、渡邊聡校長)の生徒とイオンリテール北関東・新潟カンパニー(永山久美子支社長)が共同で、弁当「愛の彩り まごころ弁当」を開発した。21日から27日まで、茨城、埼玉、群馬、栃木県内のイオンなど31店舗で販売される。 販売に先立ち、開発した生徒らが16日、土浦市役所を訪問し安藤真理子市長に報告した。弁当の開発は、イオンが2011年に茨城県と締結した地域活性化包括連携協定に基づいて実施され、同校商業科の3年生10人が授業の一環で1年掛けて取り組んだ。 販売される弁当は、単身の男性をターゲットに「子どものころ、家族が心を込めて作ってくれた愛情いっぱいのお弁当を再現」した。ご飯は、しょうゆを使っただし汁で炊いた茶飯にサツマイモとゴマをトッピングしている。おかずはカレーソースで仕上げた唐揚げをメーンに、ハート型オムレツ、菜の花とコーンのマヨマスタード和え、ポテトサラダ、昔ながらの赤いウインナーなど彩り豊かで多彩な副菜を取り入れた。メンバーで唯一の男子生徒、成嶋孝弘さんは「男性が好きなものばかり入っている。嫌いな人はいないと思う」と話す。 温かみ感じる商品を 開発メンバー代表の永島葵さんは「企画で大変だったのは、お弁当を買う人のターゲットを決めたり、コンセプトを考えたりすることだった」と振り返り、「単身の男性や忙しい方がお弁当を買うのではと考え、その中でコンセプトを練った。喜ぶメニューは何かを考え、人の温かみをお弁当や食材から感じる商品を作ろうと決めた」と話す。メニューはメンバーで案を出し合い、学校で試作品を作りながら決めていった。 同行した渡邊校長は「土浦三高商業科は1年生で商品開発、マーケティングの基礎を学び、3年生になると課題研究科目で学びの総まとめとして、調査や研究、実践、商品制作などを行う。今回は学校だけで終わる学びではなくイオンリテールさんの力を借りて実際に商品化し販売できる。真の生きる力を育めたのではと感じている」と語った。 試食した安藤市長は「おいしい。皆さんが一生懸命考え、高校生活の集大成だと思うと胸がいっぱいになる。ハート形のオムライスなど見た目も楽しめる。食べる人がホッとするというか、愛を感じると思う」と話した。 イオンリテールの中鶴英治エリア制作推進グループマネージャー代行は「茨城県との包括連携を通じて青少年の育成に寄与するものということで、実際に売り場で販売するなども生徒にとって役に立つと思っている。コンセプトを決めたり、ターゲットを決めたりといったところから始まっているのでおいしいお弁当ができたと思う。来週の発売が非常に楽しみ」と話した。 「愛の彩り まごころ弁当」は645円(税込み)。全部で1550個を販売する予定だ。24日午前10時30分からは同市上高津のイオンモール土浦1階お惣菜売り場の弁当コーナーで同校生徒による推奨販売が実施され、45個を販売する予定。予定数量に達し次第、終了する。(伊藤悦子)