金曜日, 5月 1, 2026
ホームつくばつくばから全国へ 「ヴィーガン」で「クィア」の2人が贈るレシピ集(上)

つくばから全国へ 「ヴィーガン」で「クィア」の2人が贈るレシピ集(上)

悩み、孤独を感じる人へのエンパワーメントに

動物由来の食べ物を摂ったり、製品を身につけたりしない「ヴィーガン」を身近に感じてもらおうと、つくば市在住のユミさん(27)と、パートナーで韓国出身の大学院生ヨニイさん(25)によるヴィーガン料理のレシピ集「韓国フェミめし:光州とヴィーガンを巡って」(全32ページ)が3月に出版された。ヨニイさんの故郷・韓国の文化紹介とともに、ヴィーガン風にアレンジした韓国料理が9品掲載されている。

出版元は同市天久保のブックカフェ「本と喫茶サッフォー」(23年9月18日付)で、個人や小規模の団体が少部数で製作する「ZINE(ジン)」と呼ばれる小冊子だ。SNSや口コミで広がり発売1カ月で2刷を迎えた。現在までに関東を中心に全国19書店で取り扱われている。

日々の食卓をSNSで発信

2人はヴィーガンであるとともに性的マイノリティの当事者であることを公表し、「ハンガン・ヴィーガン」というユニット名で日々の様子をSNSで発信している。自身の属性への周囲の無理解から悩みを抱えてきたと言い、今回の出版を「私たちの普通の暮らしを知ってもらうことで、悩み、孤独を感じる人たちへのエンパワーメントにつなげたい」と話す。

自宅で料理をするヨニイさん(右)を手伝うユミさん

2人のSNSには日々の食卓が紹介される。調理を担うヨニイさんは「冬は鍋が多かった。タンパク質は豆腐、厚揚げ、がんもどき。だし汁をカツオから昆布にしたり、肉の代わりに豆腐にしたり工夫している」と話す。ユミさんは「ヴィーガンになって肉料理が多い韓国料理から遠ざかっていた。でも、ヨニイと出会ってまた食べられるようになった。『ヴィーガンでも韓国料理ができるんだ』って感動している」と笑顔を浮かべる。

自分の感覚はおかしくない

ユミさんは大学4年でヴィーガンになった。戸惑ったのが食事だった。「(当時)ナッツを乗せたサラダしか食べなかった。1週間後には体も心も辛くなってしまって…」。その後、ヴィーガン料理のあるレストランや本で情報を得ながらメニューを覚えるが、「当時は情報が少なかった。何を食べていいかわからなかった私のような人は、今もいるはず」と話す。今回の冊子では「家庭で作れる普通のヴィーガン料理を紹介したかった」という。だが2人にはもう1つ、冊子に込めた想いがある。「ヴィーガンであることで孤独にならなくていいんだよ」と、当事者たちを励ますことだ。ユミさんがこう話す。

「私はヴィーガンの人と出会えず、ずっと孤独を感じてました。肉を食べないと『ヤバい人』になったのではと思われることもある。でも肉を食べなくても生きていくことはできる。SNSや映画で他のヴィーガンの暮らしを知ることで、『自分の感覚はおかしくない』と思えた。だから私たちも、普通の人が普通にヴィーガンでいる様子を見てもらい、同じ考えを持つ人のエンパワーメントになるものを作りたかった」

2人はヴィーガンレシピで作った韓国料理のビビンパを、毎月第3日曜日に「本と喫茶サッフォー」で提供している

社会問題が身近に

ユミさんがヴィーガンになったきっかけは、大学時代に短期留学した台湾での経験だ。それまで食べていた好物のガチョウが、目の前を楽しそうに歩いていた。とてもきれいで可愛い。「犬や猫など可愛いペットは食べてはいけないのに、なぜガチョウは食べていいと勝手に思っていたのだろう」と疑問が湧いてきた。いろいろ勉強するうちに「動物は軽率に食べていいものではない」と感じ、ヴィーガンの食生活へと移っていったという。

ヨニイさんはある映画がヴィーガンへの考えを深めるきっかけになった。食用や衣類、実験用にされる「殺していい動物」と、ペットなどの「殺してはいけない動物」を取り上げた映画で、人間の考え一つで動物の命の価値が決まることに疑問を感じた。劣悪な管理下にある動物の実情についても知ることになった。「殺していい動物といけない動物の間に引かれる線は何なのか。勉強する中で、自分が殺せないなら食べるのはやめたい」と考えるようになった。

「動物への差別」を意識したユミさんの関心は、社会の中にある他の差別や環境問題へと広がった。「私はヴィーガンであることで社会問題に関心を持った。暮らしの中にある様々な差別に意識的になることで社会は変化すると思っている。多くの人が日常にある課題に問題意識を持つのがいいはず。今回の本は、その入り口になればという思いもあった」と語る。ヨニイさんは「差別は構造の問題。そこに対してもっと関わっていきたい」と言う。

「ビビンパは韓国語で『混ぜご飯』という意味。よく混ぜて食べるのが美味しいんですよ」とヨニイさん

おばあちゃんの味を再現

掲載するレシピは9品。その中に、韓国に暮らすヨニイさんの祖母と母の得意料理が3品ずつ並んでいる。

「ヴィーガンになると、家族と同じものが食べられなくなるんじゃないかと心配がある。そこでつまずいてしまう人もいる。でもヴィーガンになっても家族のレシピは繋いでいけるし、家族の伝統は守れるんだと言いたかった」とユミさん。

ヨニイさんは「レシピには、大好きなおばあちゃんが作る、私が好きな料理も選んだ。最近、レシピ集を見てくれた在日コリアンの方々から『私のおばあちゃんも(掲載されている)カボチャのスープを作ってくれたんですよ』と感想をいただいてうれしかった」と話す。

「社会人として残業しながら働いていると、社会問題に関心を持ち続けるのも自炊するのも難しい。外食は高いし、料理する時間を作れる人は限られる。自分ができる範囲で、気負わずにできれば。まずは一食から。その時にこのレシピが役に立てばうれしい」とユミさんは、これから一歩を踏み出そうとする読者に語り掛ける。

記者が作ってみた

「ヴィーガン料理、なんだか難しそう…」と漠然と感じていた記者が「韓国フェミめし」を参考に韓国の海苔巻き「キンパ」を作ってみた。ヴィーガン料理を作るのも、食べるのもこれが初めて。レシピに従い、さいの目に切った厚揚げと油揚げを油で揚げて、炒めたにんじん、にんにくスライス、生レタスを海苔に広げたご飯の上に並べていく。甘辛い韓国味噌「サムジャン」を適量垂らして巻きすで巻くと完成だ。

記者が作った韓国海苔巻き「キンパ」

米を炊く以外、正味30分程の調理時間。一口サイズに切り分けて口に運ぶと、よく揚がった厚揚げは鶏の唐揚げのような味と食感。サムジャンの旨味と合わさり食べ応えも十分だ。味にも感激したが、手軽さに驚いた。(柴田大輔)

続く

◆「韓国フェミめし:光州とヴィーガンを巡って」は880円(消費税込み)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

バイシクル・ダイアリーズ《ことばのおはなし》92

【コラム・山口絹記】大切な人から本格的な自転車を譲り受けた。いわゆるロードバイクというやつだ。防犯登録のため家の近くの自転車屋さんへと向かう道すがら、さっそくギアチェンジのやり方がわからない。軽くはできるのに重くできないものだから、高回転でペダルを漕(こ)いでいるのにスピードは徒歩と変わらない安全運転。前方から歩いてきた家族連れが怪訝(けげん)な顔でこちらを見ている。見せもんじゃねぇぞ。 登録手続きをお願いしながら手近な柱に自転車を立てかけようとすると、慌てた店長さんに制止された。(私の自転車の)フレームに傷がつくからやめてくれということらしい。「そんなたいしたものじゃ」と言いかけて、自分がこの自転車の価値を知らないことを思い出す。 無知を隠すつもりはないので、一からこの自転車の扱いを教えて欲しい旨を伝えると、店長さんが申し訳なさそうに「当店で購入されたものではないので、説明も有料になってしまうのですが」と言う。知識の提供に対価を支払うのは当然のことである。私は「払います。必要なものも全部買うので教えてください」と答えた。こちらはハナからいくらかかっても構わない腹づもりなのだ。 自転車のエンジンは自分自身 店長さんは自転車をスタンドに乗せると、丁寧にすべてのパーツの名称からその仕組みと役割、ギアチェンジの方法まで教えてくれた。また、年式を考えると、油圧ブレーキのオイルを交換した方がよさそうなで、ギアを切り替えるパーツも分解清掃した方がよさそうということらしい。そこまで自転車を操作しながら話していた店長は、立ち上がると私の顔を見て言った。 「正直に言うと、一度すべて分解して油を指し直して組み直した方がよいと思います。このバイクにはそれだけの価値がある。そうさせてもらえるなら、私もうれしいです」。私の答えはとうに決まっていたのだけど、先に聞いてみたいことを聞くことした。 「この自転車で、筑波山を登ることはできますか」「もちろん。3、4往復は普通にできます」。店長さんは誇らしげに答える。「それって、一度にってことですか?」。私が唖然(あぜん)として聞き返すと、「自転車のエンジンは自分自身ですから、もちろん自分自身を鍛える必要はありますが、このバイクはそれくらいのことを普通にこなしますよ」と、不敵な笑みを浮かべる。 ああ、この店に来て良かったと思った。ものごとの始まりにはいつだって、こういうやりとりが必要なのだ。私は「長く大切に乗りたいので、ぜひお願いします」と頭を下げつつ、「あ、空気入れもください。あと、空気の入れ方も」と付け加えた(言語研究者)

他食品の臭いが移ったと推定 牛乳の異味 土浦市学校給食

土浦市内の小中学校の学校給食に20日出された牛乳を飲んだ児童、生徒から「いつもと牛乳の風味が違う」など異味の申し出があり、そのうち8校の20人から体調不良の訴えがあった問題(4月22日付)で、同市教育委員会は30日、提供された牛乳の検査結果に異常はなく、異味の原因は、牛乳を製造したいばらく乳業(水戸市)が委託した先の冷蔵庫内で、野菜や果物など他の食品の臭いが牛乳パックに移行し異味を生じさせたと推定されると発表した。 これを受けて市は、4月21日から停止していた学校給食での牛乳の提供を5月7日から再開する。 同市学務課によると、いばらく乳業と第三者検査機関がそれぞれ、当日回収された牛乳や同社が保管していた牛乳の大腸菌群、生菌数、黄色ブドウ球菌などを検査した。検査結果はいずれも陰性だったなど異常はなかった。一方、風味については、いばらく乳業が官能検査を実施したところ、わずかな風味の差異があったという。製造設備や衛生管理に問題はなかったとしている。 同市はいばらく乳業に対し、冷蔵庫内で臭いの強いものと混蔵しないなど品質管理の一層の強化を申し入れたとし、いばらく乳業は、現在使用している委託先の冷蔵庫の運用を中止したとしている。 市によると、体調不良の申し出があった8校の20人は24日時点でいずれも通常通り登校している。

新業態のカフェオープン つくば市の建設業者

店内にガーデニングの新技術展示、営業時間外は時間貸し検討 つくば市内の土木・建設会社が5月9日、同市羽成の会社敷地内に新業態のカフェをオープンする。ガーデニングなども手掛ける浅野物産(浅野一重社長)で、浅野弘美専務は「郊外に立地するためカフェ単独での経営は採算的には厳しいものがあるが、店内でお客様とコミュニケーションし商談につなげるなど、企業全体としての相乗効果を考えたい」と話す。 カフェ店内や店頭には、ポット栽培の花が配置される。土を用いず、頻繁に水差しをしなくても保水を長期間維持できるスポンジと瓦チップを利用したポットで、ガーデニングの新技術を紹介する。地球温暖化を考える場とも捉え、来店客に温暖化対策を施した店舗であることを説明していく。カフェが営業していない時間帯は、店内スペースを団体や個人に時間貸しするなどの使い方も検討している。近隣の観光施設「つくば牡丹園」とも連携し、ちらしを置くなど相互に協力する。 カフェの名前は「Seasons(シーズンズ)つくばカフェ」。穏やかで心温まる豊かな時間を紡ぐ場所にしたいとネーミングした。6年前、中小企業診断士から、環境に配慮したカフェをつくったらどうかとの話があり、ずっとアイデアを温めてきた。昨年、実行に移した形だ。 建物は2階建てで、1階がカフェ、2階は事務所など。カフェの店舗面積は108平方メートル。客席は室内に20席、野外に15席設置する。2025年度の事業再構築補助金の採択を受け、自社で建築した。 メニューはドリンク、軽食を中心に、スープランチ、ホットサンドなどを提供する。お薦めはフルーツティー、ハーブティ、ソフトクリームなど。 浅野専務は「ガーデンニングも建築も自社で出来るのが強み。土木と建築がハード、会社敷地内にある庭・外構展示場『ここちテリア』がソフト、カフェがハブと位置付け、相互に連携させながら相乗効果を生み出していきたい」と話す。基本が建設業であることから、「居・食・住」を通じて心地よい暮らしと人のつながりを育む場所にしたい意向だ。 5月9日 ガーデンフェスタ 5月9日のオープン当日は花木の直売イベントなど「ここちガーデンフエスタ」を開催する。フラワーマーケットのほか、端材市、重機体験、いばらき若旦那のコンサートなどが催される。浅野物産は来年65周年を迎え、ガーデニング部門のここちテリアは今年10周年を迎えることから記念のイベントとする。 同社はこれまでも、全国の花木生産者を集めて直売イベントを開くなど敷地内のここちテリアでイベントを開いてきた。浅野専務は「以前は公共事業の受注がほとんどだったが、イベントを開催するようになったら、一般のお客さんも増えた。イベントはお客さんに事業内容を知らせる良い機会。当日はみなさんに楽しんでもらいたい」と来場を呼び掛ける。 浅野物産は1962年に運送業として創業、68年建設業にも事業の幅を広げ、2016年には、理想の庭づくりを提案する「ここちテリア」を始めるなど、幅広い活動をしてきた。会社敷地内にはすでにギャラリーや貸スペースもあり、親子リトミックや園芸教室に貸し出すなど市民活動も応援している。独自の企画として年に1回「ここちガーデンフェスタ」を開催している。(榎田智司) ◆Seasonsつくばカフェは、つくば市羽成418-3の浅野物産敷地内に5月9日(土)オープン。営業時間は午前10時~午後5時。定休日は火曜と水曜。9日(土)、10日(日)、11日(月)はオープニングデーのため通常メニューと異なる、14日(木)から通常営業。 ◆ここちガーデンフエスタは5月9日(日)午前10時~午後4時、同社敷地内ここちテリアtsukubaで開催。問い合わせは電話029-838-1128(同社)へ。

水戸市とつくば市の今年度予算を比較《水戸っぽの眼》12

【コラム・沼田誠】3月議会が議了を迎え、新しい年度の予算が固まりました。みなさんの税金が、どの事業にいくら配分されるか、自治体ごとに一斉に決まる季節。元広報担当としては、個々の項目よりも、市のトップが市民に向けて予算をどう語ったかが、とても気になります。 今回は、水戸とつくばの市長が2026年度予算をどのように語ったのかを見ていきます。その前に、両市の一般会計当初予算の大枠を確認します。水戸は1308億円で、2年連続して過去最大となりました。つくばは1227億円で、7年連続で更新してきた「過去最大」が止まることになりました。 ただ、つくばの市税歳入は593億円(+4.5%)と過去最大を更新しており、総額の減少は税収の頭打ちではなく、大型投資が一段落した結果に見えます。具体的には、TX沿線の教育施設整備が一段落しました。詳細は本サイトの記事「…つくば市26年度当初予算案」(1月30日付))をご覧ください。 対照的な両市長の「語り口」 では、両市はこの予算をどのように語っていたでしょうか。その語り口は対照的です。水戸市長は、最重要課題に「人口減少問題」を据えた上で、「選択と集中」の下、限られた財源を「みとっこ未来プロジェクト」と「若い世代の移住・定住加速プロジェクト」に重点配分すると宣言しています。 具体的には、「医療・福祉」「教育」「救急体制」「防災・減災」などの言葉が並びます。減りゆく人口に抗うために、暮らしの「今」の基礎を厚く守る構えと言えるでしょう。 一方、つくば市は「未来への持続可能な投資」をテーマに、「量的拡大から質の高いサービスへ」「誰一人取り残さない」と理念を掲げた上で、児童発達支援センター、陸上競技場、スマートモビリティ、芸術文化創造拠点などの事業を将来の果実として説明しています。 会見で市長は「新規事業に大胆な投資をするというよりは、これまで行っている事業を着実に未来へつなげていく」とし、「査定は非常に厳しくし、予算要求からはかなり削らなくてはいけなかった」とも述べました。「未来」を掲げ、「量から質への転換」として語り直す姿勢が印象的です。 事業のビルド&スクラップ さて、「SIMふくおか2030」という、自治体財政について体験するシミュレーションボードゲームをご存知でしょうか? このゲームは、福岡市を舞台に参加者が担当部長役となり、話し合いで事業を選び・削り、傍聴者のジャッジを受けながら破綻しないように予算を組むというものです。福岡市の元財政課長が各地で開いていた「出張財政出前講座」が7年前に土浦であり、私はその際に体験しました。 そこで印象に残っているのは「ビルド&スクラップ」という言葉でした。自治体の財政規模は無尽蔵ではなく、社会の変化や災害などの緊急事態に対応するには、既存事業を止めざるをえない状況もありえます。ある政策を行うということは、別のある政策を行わないということと、意識的に判断しているのです。 「今を守る」vs.「未来を強調」 「今」を守る水戸市、「未来」を強調するつくば市。その結果、予算に載らなかったものは何か? 予算を見るとき、そのことにも想像力を向けてみる必要があると思います。(元水戸市みとの魅力発信課長)