土曜日, 6月 7, 2025
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市民より職員が大事? つくば市の不思議《吾妻カガミ》183

【コラム・坂本栄】元国立研究機関研究者の投稿「つくば市の過剰な管理職数の問題を考える」(5月1日掲載)はとても勉強になりました。市の予算配分と職員構造の問題点を分かりやすく分析してくれたからです。NHK連続ドラマ「虎に翼」の主役の口癖を借りれば、つくば市の「はて?」をいくつか提起してくれました。

縦横斜めから職員人件費を分析

元高エネルギー加速器研究機構准教授の酒井氏は投稿の中で、現市長下で市職員の人件費が大幅に増えたと指摘しています。1期目~2期目半ばの6年の間に、人口が8%増えたのに伴い歳出は24%増え、職員の人件費も20%増えた―と。

前市長の2期目終年と3期目終年を比べると、人口は5%増、歳出は19%増と、現市長下と似たようなトレンドでしたが、人件費の方は2%増にとどまっていました。現市政でお留守になった行政改革が徹底していたからでしょう。

上の数字は現市政と前市政の比較です。そこで、歳出に占める人件費の割合(2022年度)を調べたところ、土浦市は15.1%、水戸市は13.5%なのに、つくば市は18.8%でした。縦(前市政と現市政)で比べても横(つくば市と他2市)と比べても、現市長下の人件費支出は突出しています。

この問題を斜めから(市民目線で)チェックすると、「2024年度予算では…市民1人当たり8.3万円になります。(前市長時代の)16年度は7.1万円ですから、現市長下で17%も増えた…」(酒井氏投稿)ということですから、つくば市民は甘く見られたものです。

行革の緩さは市長2期目に加速

ここまで書いてきて、五十嵐市長が市民を名誉毀損(きそん)で提訴した一件を思い出しました。元市議の亀山氏が発行したミニ新聞の市政批判記事はウソが多いと、同氏を訴えた裁判沙汰です。その概要は、126「…市民提訴 その顛末を検証する」(2022年2月7日掲載)をご覧ください。

名誉を傷付けられたと訴えた箇所は全部で22ありました。うち、ミニ紙が「(五十嵐市政3年目の人件費は前市長時代に比べて年間)7億6500万円も増えており、(市原前市長時代の行政改革の)努力が水泡と消えてしまいます」とした箇所について、五十嵐市長側は「あたかも原告(市長)の施策により税金を無駄に使っているように(読者を)誘導するもの」と論述していました。

引用した金額は酒井氏が示した数字とは違いますが、ミニ紙も人件費支出の甘さ=行革の不徹底を突いているという点では同じです。この記事は市人事課の資料を使って書かれていましたから、ファクト(事実)でありフェーク(虚偽)ではありません。五十嵐市政1期目の行革の緩さは2期目も続いているどころか、加速しているようです。

横柄な市民対応は構造的な問題

冒頭リンクを張った酒井氏の投稿は、人件費過剰問題よりも管理職過剰問題に紙幅が割かれています。係長級(係長・主任主査)も管理職なのかどうか、コメント欄で論争がありましたが、係長級以上を管理職とする酒井氏の定義には説得力がありました。つくば市の場合、その割合が正職員全体の53%というのは驚きです。

土浦市はこのシェアが32%(2021年度)だそうですから、つくば市の「過半」は異常です。こういった職員構造が横柄な市民対応の原因なのだとすれば、はて? (経済ジャーナリスト)

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ごみ出し支援スタート つくば市 高齢者や障害者対象に

高齢化が進み高齢者のみの世帯が増える中、自宅からごみ集積所にごみを運ぶことが困難なお年寄りや障害者を支援しようと、つくば市は5日からごみ出し支援事業をスタートさせる。週1回決められた曜日に市指定のごみ収集業者が、自宅の玄関先などにごみを回収しに来る。 要介護の認定を受けているお年寄りや身体障害者、精神障害者のうち、家族や親族、ヘルパーなどの協力を得ることができない世帯が対象で、無料で利用できる。 週1回の収集日に燃やせるごみ、燃やせないごみ、プラスチック製容器包装、ペットボトル、缶、びん、古紙、古布などを一括して回収する。それぞれ分別し、燃やせるごみなどは指定のごみ袋に入れて出すことが必要になる。 3~4年前から、ケアマネジャー、民生委員、医療関係者などが集まる市の地域ケア会議で「ごみ出し支援ができないか」などの意見が出て、検討してきた。 市地域包括支援課によると、ごみ出しが困難な世帯はこれまで、近所の人がごみ出しを手伝ったり、ホームヘルパーがごみ出しの時間に合わせて訪問したり、親族がごみを持ち帰ったりするなどそれぞれ対応しているが、収集日にごみを出すことが困難な世帯もあったという。 市は今年度、100人の利用を想定してごみ出し支援に1132万2000円を計上した。スタート時の5日時点では民生委員やケアマネジャーなどから申請があった高齢者など4世帯が利用する。本人のほか、親族、ケアマネジャー、民生委員、相談支援員などから随時申請を受け付け、利用者を増やしていく。 複数回にわたりごみが出されない世帯があった場合は、市が安否確認を行う方針だ。 ごみ出し支援事業は2023年度時点で県内44市町村のうち25市町村ですでに実施しているが、対象や方法などはそれぞれ異なっている。土浦市の場合、2012年度から単身の視覚障害者を対象にごみ出し支援を行っており、週1回、市職員が無料で回収している。現在5人が利用しているという。(鈴木宏子)

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【コラム・平野国美】疎開先の長野県松本で捕まえた1匹のオケラから、この少年の物語は始まります(コラム40)。それからは山を歩き回り昆虫を捕まえる日々でした。夜は、それらを観察しながら遊ぶ日々。授業中も校庭に出て虫を探す日々。不思議なことに成績は良く、母の助言もあり昆虫学を究めていくのです。 大学院を出て、それからはつくば市の研究所の日々。海外へも視察に出かけ、虫と戯れる日々。若いころの博士を知る人に尋ねると、「仕事と趣味が一致していて、あんな幸せそうな人は見たことがない」と。学術的なことは分かりませんが、博士が執筆した一般向けの新書を読むと、虫に対する愛情とウイットに富んだ表現が魅力的です。 こんなやり取りもありました。「博士、生まれてくるのが早かったですね。あと50~60年遅かったら、昆虫のかぶり物を着て『こんちゅう君だよ!』ってテレビに出るか、YouTubeで人気が出たかも知れませんね」。「私は4本の手足しかありません。昆虫になるには6本が必要です。最近の虫を擬人化する動向には賛成できません」とお怒りになりました。 奥様によると、定年後、研究仲間の逝去を聞くと、気力が落ちていくのが分かり、見ていて辛かったそうです。最近の診察に際しても、その寂しさを嘆いていました。 博士を信じる母、支える奥様 「悠仁さまも筑波大に御入学されたわけで、お呼びがかかるかも知れません。授業の準備でもされたらどうですか」と聞くと、現役時代に皇室に何度か出向かれ、皇室の方がつくばに視察に来られたときにもお話をしているそうです。奥様は「菊の御紋の入った盃(さかずき)をいただいたこともあります。夫はあまり関心を示しませんでしたが、姑(しゅうとめ)が涙を流して喜んでおりました」と話していました。 この姑さんが博士の母で、夫が原子力や医学分野への進学を進める中、息子が昆虫の道に進むことを勧めた方です。博士が大成したのは、彼を愛して信じる母と、その後を支える奥様の愛情が重要なのだと思われます。 子供時代のさかなクンと母の関係について、こんな話を聞いたことがあります。学校の先生が「もっと授業に集中してもらいたいです」と母に伝えても、母は「いや、うちの子は魚が好きで、絵を描くのが大好きなので、それでいいのです。みんな勉強ができて、みんな同じように育ったら、ロボットみたいじゃないですか」と言ったそうです。 ここまで言える母親はなかなかいませんね。私には教育に口を出す資格はありませんが、現代の金太郎飴(あめ)を製造するような教育は、限界にきているのではないでしょうか。(訪問診療医師)