つくば市の広報紙「かわら版」のキャッチフレーズは「もっと知りたい!」「皆さんのギモンに市長が答えます」です。 30号のテーマは「洞峰公園のこと、もっと知りたい!」(2月15日発行)でした。洞峰公園は県とのバトルを経て市に無償譲渡されましたが、この広報紙では、県の考え方や県と市のやり取り、譲り受けた後に市が負担しなければならない維持管理費など、市に都合の悪い事実は何も書いていません。
「かわら版」にウソは書いてないと思いますが、市に都合のよい情報だけを選び、都合の悪い情報は隠しています。これは報道、学術、行政など、市民のための情報を扱う世界では禁忌(絶対にやってはいけないこと)であり、「知っていたけど言わなかった」責任は重大です。
隠された事実A:県の当初計画
① 県が負担してきた費用は年1億5000万円:建物管理費と緑地管理費が半々。
② 県が構想した公園民間委託(PFI)では、このうち6000万円が節減できる。
③ 残り9000万円は県が負担するので、つくば市に維持管理費用は発生しない。
④ PFIのグランピングに利用されるのはあまり使われていない野球場区画だけ。
隠された事実B:県とのやり取り
県の洞峰公園PFI構想に対し、市は2021年12月28日、県に質問状を出しています。22年2月7日、県都市整備課長から26項目の回答書が送られてきましたが、これに対してつくば市は何も反論をしていません。このため、同課長は「その後、市から(公式な追加質問や反論は)なかったので、市は(洞峰公園リニューアルについて)納得しているという認識だった」と述べています。
ところが22年3月24日に、市長は「洞峰公園は既に完成された環境で、ゆっくり過ごす空間や静かな散歩やランニングコースとして定着している」「(県に)現状を維持する様に(懸念を)伝えた」と、SNS上でコメントしました。
さらに市長は、22年4月13日の記者会見で、PFIの目玉であるグランピング施設やバーベキュー施設について「周辺に対し匂いやアルコール等懸念がある」と述べ、県のグランピング施設整備について、園内地域の用途変更を認めない考えを表明しました。
知事はこの発言に驚き「(五十嵐市長の発言は)突然」であり、「意外な感は否めない」と戸惑いを露わにしました。
隠された事実C:市議会での議論
無償譲渡によって市営化された場合、洞峰公園の維持管理費の負担額について、市議会で重要な議論がありました。
山中真弓議員;市のスポーツ施設の長寿命化計画によると、年間の維持管理費は1億2600万円となり(残り37年間で総額47億円)、市が(市営化された洞峰公園の維持費について)言っている年額3500万円とはかけ離れた数字になる。
飯岡宏之議員;県の(洞峰公園の維持に今後いくらかかるか試算した)健全度調査では施設更新費が約34億円、近年の資材高騰を考慮すると約50億円になる。
市の情報操作は市民への背信行為
書かれていない事実A、B、Cを見ると、「洞峰公園の自然を守る」にはもっと他の方法(緑地を市が管理し施設は県が管理する)があったはずです。今後の問題解決のためには正確な情報の共有が必要です。
民主主義社会は、市民が互いに情報を共有して公平な議論をすることで、より良い意思決定と安定した社会が得られます。行政が都合の悪い情報(データ)を隠して市民社会に対して情報操作をすることは、市民社会に深刻な不利益をもたらす重大なルール違反です。(元高エネルギー加速器研究機構准教授、元福井大学教授、つくば市在住)