水曜日, 8月 20, 2025
ホームつくばつくば自動車研用地に茗渓学園が移転へ TX研究学園駅南側、大和ハウスが開発

つくば自動車研用地に茗渓学園が移転へ TX研究学園駅南側、大和ハウスが開発

日本自動車研究所(JARI)がTX研究学園駅南側に保有している未利用地(つくば市学園南2丁目、15.5ヘクタール)の売却先が決まった(4月19日付)。公募型プロポーザル(事業提案による入札)で選ばれたのは、つくば市内で多角的に事業展開する大和ハウス工業(本社大阪市)。同社はこの一等地に茗渓学園学校(つくば市稲荷前)を誘致するほか、マンション、商業施設、研究施設などを建設する。

未利用地の取得価格は142億円

JARIが20日、公募に応じた3企業グループから提案された事業計画の審査結果を公表した。それによると、取得価格や提案計画などを総合的に審査した結果、大和ハウス・グループが1位だった。JARIが提示していた最低価格92億4000万円に対し、同社は142億円の取得価格を提示した。11月に売買契約が結ばれ、未利用地は12月に引き渡される。

JARIはTX研究学園駅の南側に80ヘクタールの土地を保有している。今回売却されるのは、敷地のほぼ中央を縦断する市道5-1711号線の右側にある未利用地。TX鉄道とエキスポ大通りに挟まれた場所にあり、どこがどう開発するか注目されていた。

自動車研未利用地図(JARI提供)

中高学校+マンション+商業施設…

大和ハウスによると、開発のコンセプトは「活発」「学術」「加速」。具体的には、マンションで構成される居住区画、スーパーマーケットなどで構成される商業区画、中高一貫高などで構成される学術区画、先端研究施設などで構成される産業区画を設ける。総投資額は明らかにしていないが、用地取得代も含めると300~400億円になりそうだ。

土地の造成などを経て、2024年秋に建物の建設に入り、スーパーや運動ジムなどが入る商業施設は26年夏、中高層マンションは28年初の完成を目指す。用地の北・左側から南・右側に走る道路も計画されている。

TX駅前は便利で魅力的=茗渓学園

開発では「中高一貫校」が目玉になる。計画書に学校名は明記されていないが、中高一貫校の茗渓学園(現在の生徒数は1526人)を誘致する方向で話が進んでいる。

大和ハウスは、全体用地15.5ヘクタールの28%に相当する4.3ヘクタールを茗渓学園用に確保している。茗渓学園側も、TX駅側に移れば東京都や千葉県からの通学が容易になり、駅から徒歩で通えるのも魅力的と判断している。大和ハウスが用地を確保したことを踏まえ、近く、移転の可否を理事会と評議員会に諮る。

現在の茗渓学園は赤塚公園の西側、気象研究所の南側に位置し、開校は1979年4月。事務局によると、開校から45年ということもあり、建て替えも検討していたところ、大和ハウスからこの話が舞い込んだ。移転すると敷地は少し狭くなるが、学校棟の高層化により、寄宿舎やラグビー場などから成る施設は十分確保できそうだ。(岩田大志)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

9 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

9 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

高校生と一緒に土浦を活性化したい 教員 酒井慶太さん【ひと】

放課後こども食堂など開催 つくば国際大学高校(土浦市真鍋)の教員、酒井慶太さん(27)は、若者による土浦のまちの活性化に取り組みたいと「土浦わかもののまちプロジェクト」を立ち上げ、高校生らがボランティアで運営する「放課後こども食堂」や高校生主体のイベントを開催している。今年7月にはNPO法人化した。 土浦に戻ってきた 20代前半は、全国各地の様々なところに住みたいと思い、大学卒業後、沖縄の高校で教べんをとった。「故郷の土浦が好きで、土浦を活性化させたいという思いが強くなり」、2023年4月、土浦に戻ってきた。「人口減少によって無くなる町があると知り、土浦は無くなってほしくないという思いもあった」という。 高校教員である自分なりのアプローチとして、高校生の活動によって土浦の活性化を図りたいと考えた。「高校生にとっては、地域のいろいろな人たちと関わって成長していく社会教育にもなる」と思い、2023年9月、一人で同プロジェクトを立ち上げた。まず思いついた活動が「地域の子どもたちに放課後の支援ができて、高校生が地域の人と関わり社会課題にも触れることができる放課後こども食堂の運営だった」。 やってみよう、やればできる 市内の一中地区や神立地区などのこども食堂を訪れ見学した。新たに開設する放課後こども食堂の会場として、土浦駅前の市役所2階ガスタ東部ガスライフスタジオのキッチンと、同じ階にある市役所研修室の利用をそれぞれ依頼した。食材はJA水郷つくばやレンコン農家に提供を願い出た。子どもたちに向けては、土浦駅近くの土浦小と土浦二小にちらしを配り、高校生ボランティアは、まず勤務先のつくば国際大高で声を掛けてボランティアを募った。 2023年11月に第1回目のこども食堂を開催した。酒井さんのSNSで活動を知った土浦日大の教員が声を掛けてくれ、両校の高校生ボランティアが合わせて約10人が集まり、小学生約30人が参加した。 酒井さんは「やってみよう、やればできると思って行動した。とにかくいろいろなところに足を運んだ」とし「やってみると皆が助けてくれる。人が人をつないでくれると実感した」と語る。現在は一緒にやってくれる人が少しずつ増え、メンバーが10人になった。現在、食材は、活動を知った農家が野菜の寄付などを申し出てくれているという。 小学生の新しい居場所に こども食堂は毎月1回、平日の午後4時から7時までで開催し、今年6月までに計18回開催している。これまで提供した食事は「コーンご飯と鶏の照り焼き、ポテトサラダ」「豚しゃぶおろしそばとフルーツポンチ」など。高校生らが毎回、30~35人分を自主的に調理する。献立は栄養を考え旬の食材を取り入れながら酒井さんが考えている。最近は、当初から関わってくれていた高校生が大学生になり、メニューを提案してくれているという。 高校生ボランティアは、調理するチームと小学生と遊ぶチームに分かれて活動する。小学生は出来上がった食事を研修室で食べた後、高校生と絵を描いたり、トランプをして一緒に遊んだり、勉強を教えてもらったりする。 小中学生には「気楽に来てほしい」という思いから、事前の予約はとらない。参加費は小中学生は無料、高校生以上は300円。小学生は土浦駅近くの土浦二小の児童が多いが、神立や荒川沖からの参加者もいる。毎月楽しみにして通っている小学生も多く、きょうだいの中学生が一緒に来て、高校生に進路や勉強方法などを相談することもある。 酒井さんは「放課後こども食堂は、子どもたちにとって単に食事がとれる場所ではない。月に一度だが高校生に勉強をみてもらったり、一緒に遊べたりと安心できる放課後の新しい居場所として機能している」と話す。今後は他の高校にも声を掛けていきたいという。 高校生の企画を全部かなえる 「まちの活性化のためにも土浦の高校生たちにそのまま住み続けてほしいという思いがある」と酒井さんは語り、「土浦は水戸に次いで高校が多い都市。近隣市町村から通ってきている高校生も多く、彼らにも土浦に住んでもらいたい」と語る。そのためにも土浦で楽しい思い出をたくさんつくってほしいという願いがある。 そこで高校生が土浦で楽しむイベントをしたいと、2024年7月に「土浦ティーンズフェス2024」を市役所前のうらら大屋根広場で開催した。「どうしたら高校生が土浦のイベントに来て、楽しめるか」を高校生自身が考え、企画、運営するイベントだ。運営には土浦三高、土浦日大、つくば国際大高から40~50人が集まり、「洋服屋さんやアクセサリーショップがあると楽しい」「自分に似合う服やメイクの色を診断して教えてもらえるパーソナルカラー診断があるといい」「ステージで有名人を呼びたい」「自分たちも出し物をしたい」など様々な企画が出た。 酒井さんは「自分の仕事は高校生が考えた企画を全部かなえること」だと考え、できる限り実現できるよう奔走した。ほぼすべての企画が実施でき、衣料品店やアクセサリーショップ、カラー診断は県内の店が出店、キッチンカーは県内で移動販売を実施するワッフル店や市内のおにぎり専門店が出店してくれた。出店してもらうだけでなく高校生も一緒に接客する経験もした。ステージには、SNSのTikTocで高校生に人気の配信者やシンガーソングライターの丸山純奈さんなどを招いた。高校生による出し物は、土浦日大高校ストリートダンス部の演技や、高校生がモデルをするファッションショーなどを行った。司会進行やテント設営なども高校生自らが行った。 参加費は無料とし、イベント費用はクラウドファンディングで調達した50万5000円を充てた。市内の高校生だけでなく、近隣の20代、30代の若者などが遊びに来ていたのが印象的だったという。  2回目となる今年度は「夏の猛暑や秋の文化祭シーズンを避け、来年3月も開催する予定だ。前回好評だったファッションショーを行う予定で、モデルは世代交流の意味を含め子どもからお年寄りまであらゆる世代が出られるようなショーにしたい」と酒井さんはいう。 次の目標はユースセンター さらに、高校生が活躍する地域イベントをティーンズフェスとは別に年に1回開催したいと考えている。今年は、高校生が集まって土浦をどうしていきたいかを考える「若者会議」の開催を県県南生涯学習センターとの共催で計画している。開催は12月の予定で、「土浦の今と理想のイメージを考え、土浦でしたいこと、あったらいいことを考える」をテーマに、9月に参加者15人程度を市内10校から募る。内容は発表して終わりにするのでなく「有名なカフェの誘致は無理だとしても、東部ガスのキッチンでカフェを開く」など少しでも実現していくようにしたいと酒井さん。 今後は放課後こども食堂を継続するとともに「学校と家以外で中学生や高校生が無料で毎日集まれる場所となるサードプレイス(第3の場所)として、ユースセンターを土浦につくることが目標だ」と意気込みを話す。市の施設や企業の空きスペースなどを利用し、大学生にインターンとして常駐してもらいたいと考えており、「補助金や企業の協賛金を利用して運営できたら」と語る。 【取材後記】酒井慶太さんのことは2年前から知っていて、前々から取材したいと考えていた。実際に話を聞いてみて、行動力に驚いた。単に考えるだけでなく「すぐに動く」「人に会う」「人と協力する」ことができるのは、27歳という若さだけではない。「土浦を活性化したい」思いや情熱からくるものだと実感した。そして人の情熱は、行動すれば周囲の人に伝わっていくことを改めて認識した。若い人の活躍や思いを聞く取材は、自分自身への刺激にもなった。(伊藤悦子)

ホモ・ルーデンス《デザインを考える》23

【コラム・三橋俊雄】学生のころ、家庭教師から帰る途中、乗る予定だったバスが目の前で発車してしまい、私だけが取り残されていました。ふと夜空を見上げると星は果てしなく遠く、宇宙は限りなく大きいのに、人はなぜ些細(ささい)なことばかり気にしたりして…。その時、なぜか、大学で学んだ「ホモ・ルーデンス」という言葉を思い浮かべていました。 「ホモ・ルーデンス(Homo ludens:遊戯人)」とは、1938年にオランダの歴史家・文化人類学者のヨハン・ホイジンガが提唱した〈人間とは何か〉を表す概念で、それ以来、私は人間として持っている〈遊び心〉を大切にしながら、人生を歩んできたつもりです。 人間の本質を表現する言葉には「ホモ・サピエンス(Homo sapiens:英知人)」「ホモ・ファベル(Homo faber:工作人)」「ホモ・デメンス(Homo demens:狂気人)」など、さまざまな定義があります。日本においては、「遊び」という概念が、すでに平安時代末期までに確立されていたと考えられます。 それが、後白河法皇によって編さんされた『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』です。そこには「遊びをせんとや生まれけむ 戯(たわむ)れせんとや生まれけん 遊ぶ子どもの声聞けば 我が身さへこそ揺るがるれ」という一節があり、無邪気に遊ぶ子どもたちの声を聞きながら、彼らはまるで遊ぶために生まれてきたのではないかとの、遊女の思いが詠(うた)われています。 以下、私が京都で出会った「ホモ・ルーデンス=遊び心」のお話をご紹介します。 ゼンマイ飛行機 年に数回、私は京都府北部の農山漁村に学生とお邪魔し、「フィールドワーク」の授業を行ってきました。この授業では、自然と共に暮らしてきた人々の生き方や、生活の知恵を学びます。ある年の夏、由良川に流れ込む小さな川沿いを巡っていた際、山道で出会った地元の方が、その場であっという間に作って見せてくれたのが、写真左のゼンマイ飛行機でした。 ゼンマイは、春、新芽を煮物や油炒めなどにして食べる代表的な山菜のひとつです。成長すると、写真右のように大きな葉になりますが、よく見ると、軸の両側に細い羽軸が出ており、その羽軸の左右に小さな葉(小羽片:しょううへん)が付いている、シダ類特有の形状になっています。 ゼンマイ飛行機は、羽軸を左右それぞれ長短2本ずつ残し、羽軸の片側から小羽片を取り除くことで、残った部分が飛行機の主翼と尾翼のような形になります。私も一つ作ってみましたが、思いのほかよく飛んでくれました。 かつての子どもたちは、野や山で、石や木、葉などの自然物の造形を道具に見立てて遊んでいました。このゼンマイ飛行機も、「ホモ・ルーデンス」の心で、植物の葉の形や構造から巧みに飛行機の造形を連想し、創り出されたものに違いありません。(ソーシャルデザイナー)

事前審査に3陣営 県議補選つくば市区

知事選と同日の9月7日投開票で行われる県議補選つくば市区(欠員1、8月29日告示)の事前審査が18日、つくば市役所で行われ、3陣営が立候補届け出書類の確認を実施した。3陣営は、元県議で自民党公認の塚本一也氏(60)、元県議で共産党公認の山中たい子氏(73)、つくば市議で無所属新人の樋口裕大氏(37)。同市区の有権者数は20万538人(6月2日現在)。 塚本氏はつくば市出身。県立土浦一高、東北大学工学部建築学科を卒業後、筑波大学大学院環境科学研究科修了。1991年にJR東日本に入社し、2006年に大曽根タクシー社長に就任。18年から県議一期を務めた。現在は同社社長のほか、茨城県ハイヤー・タクシー協会会長などを務める。今回の県議補選では「県が主導し仲介することで、国や世界的な企業を誘致できる。県とつくばの橋渡しの役目を担う」とし、国や県との連携を重視する中でつくばの産業育成を掲げる。 山中氏は福島県小野町出身、日本大学Ⅱ部法学部新聞学科を卒業後、千葉県商工団体連絡会に勤務。つくば市に転居後、1984年から旧桜村議・つくば市議4期を務め、2003年から県議4期を務めた。前回2022年12月の県議選は次点だった。現在、共産党県常任委員などを務める。県議補選では、国保税、介護保険料、後期高齢者医療保険料の引き下げ、児童生徒数増に見合う県立高校新設とクラス増設、東海第2原発の再稼働をストップし廃炉にするなど、食と農・環境を守るーなどを掲げたいとする。 樋口氏は千葉県千葉市出身、敬愛大学国際学部を卒業し、ファイナンシャルプランナーとしてDoitプランニング社に勤務。24年のつくば市議選に無所属で立候補し、2434票を得て初当選を果たした。所属会派はNextつくば。樋口氏は「谷田部地区に県議会議員がいないことから、地域の声を拾う人がいなくなってしまうということを危惧していた」と話す。つくば市内の人口増加により交番の適正配置を再考する必要があるとし、みどりのへの交番の設置を目指すとともに、つくばエクスプレス(TX)沿線に高校を新設することやTX東京延伸に取り組んでいきたいとする。(柴田大輔) 【追加:19日午後5時17分】18日の事前審査を実施した3陣営のうち、樋口氏は19日、NEWSつくばの取材に対し立候補しないことを明らかにしました。これを受けてNEWSつくばは写真を差し替え、小見出しの「つくば市議の樋口氏も」を削除しました。

不適切のデパート つくばの生活保護行政《吾妻カガミ》209

【コラム・坂本栄】つくば市は6月、「生活保護業務等の不適切な事務処理に関する報告書」を公表しました(青字部をクリックすると全文が現れます)。あらましは記事「不適正額7件で4741万円に…」(6月23日付)をご覧ください。報告書は1市職員から総務部局に出された公益通報に対する回答とも言えるものですが、内部告発した職員による市議会への請願書はコラム「…つくば市政の実態」(24年9月30日付)内のリンク先で読めます。 生活保護業務の不適切な事案は大きく三つに分類できます。上の報告書は専門用語が多く使われており、この分野に疎い人には理解しにくいところがあります。かみ砕いて整理すると、つくば市役所では以下のようなことが起きていました。 口裏を合わせ県にウソの報告 一つめは、時間外勤務をしたのに手当てが払われていなかったり、生活保護受給者の自宅を訪れるといった特殊勤務の手当ても払われていなかったという事案です。担当職員のやる気を削ぐような慣行が市役所内に広がっていたのです。 調査を受けた職員の回答を読み、「管理職からの指示で(時間外を)一部しか申請できなかった」(職員)、「指示はなかったが申請できる雰囲気でなかった」(同)、「(特殊勤務手当ての)申請は本人の判断に委ねていた」(管理職)といった答えのオンパレードには驚きました。ただ働きは当たり前ということですから、役所の体を成していません。 二つめは、認定ミスで規定よりも多めの金額を生活保護者に払ってしまい、払い過ぎた分を返してもらおうと掛け合ったものの、返してもらえなかったというケースです。加えて、国がその分を穴埋めしてくれる場合もあるのに、市は国に申請していませんでした。こういったダブルミスは市の財政にマイナスの影響を与えます。納税者市民にとっては見過ごせない怠慢と言えるでしょう。 三つめは、生活保護費を現金で渡してはいけないというルールがあるのに、現金支給が横行していたという事例です。もっと問題なのは、生活保護業務を監査する県から「おかしなことやっていない?」とチェックを入れられたのに、「やっていません!」と虚偽(ウソ)の報告をしていたことです。 しかも、調査を受けた職員は「課長からは、現金支給していることは外で言わないように、記録にも記載しないようにと指示を受けた」「県監査での対応についても、課長から口外しないよう注意された」と答えています。組織として県にウソをつき通すという構図です。知事と市長の意思疎通の悪さは周知のことですが、これで県の信用も失いました。 市であることの重い行政責任 生活保護は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法25条)を国民に保障する制度です。行政としては基本業務なのに、担当職員に必要な手当を払わない、過払いの穴を埋める事後処理もやらない、県のチェックには組織ぐるみでウソをつく。こういった粗雑な行政を放置してきた執行部のガバナンス(管理監督)不全は深刻です。また、議会は市職員の請願を採択せず、問題解明の仕事を放棄しました。こちらは機能不全です。 市制移行を進めている阿見町長に聞いたところ、町や村の場合、役場内に社会福祉課はあるものの、生活保護については窓口に過ぎず、実務は県の県南事務所がやってくれているそうです。2027年秋の市制実現に向け、実務の勉強と準備を怠らないよう職員に厳しく指示していると言っていました。 市になること(市であること)は行政責任が大きくなる(大きい)ということです。つくば市は不適切事案の責任を明確にし、生活保護に対する市民の信頼を取り戻す必要があるでしょう。(経済ジャーナリスト)