土曜日, 9月 12, 2026
ホーム土浦世界のジンをつなぐ 大滝航さん 土浦発、オンライン書店を運営

世界のジンをつなぐ 大滝航さん 土浦発、オンライン書店を運営

作家の孤独に向き合う

土浦を拠点に、ニューヨークや香港、韓国など国内外のアートブックフェアを巡り、世界中の作家と直接やり取りを重ねる土浦市在住の大滝航さん(42)。個人や小規模の団体が少部数で制作する作品集や同人誌などの小冊子、ジン(ZINE)の出版・販売を手掛け、主にアート系の作品を販売するオンラインショップ「クレバス(crevasse)」を一人で運営する。扱うのは、世界各地で孤独に向き合い、生み出された作品だ。

深い氷の裂け目を意味する「クレバス」という名前には、作品作りに打ち込む作家の孤独を重ねている。誰かに頼まれたわけでもなく、自宅で一人、作品を作り続ける。そんな姿を大滝さんには「谷に落ちている」ようだという。「この話、すぐ伝わる人と、全然伝わらない人がいる。でも、一瞬で分かってくれる人もいる。そういう人とは波長が合うんですよ」と大滝さんは笑う。

2022年に出展した米国ニューヨークでのアートブックフェア(大滝航さん提供)

「間違っていない」と伝えたい

「写真を見て良いと思ったら『この本を買いたい』とメッセージを送る。返事があれば見積もりを出してもらって『ペイパル(オンライン決済サービス)で払うね』ってインスタのメッセージでやりとりする。その人がどこの国に住んでいても変わらない」と大滝さんが話す。作品集などの写真は、オンライン上で見たり、イベントなどで実際に見て判断している。

クレバスの販売サイトを開くと目に入るのは、国内外の作家が手がける、大きさや形も様々な写真集だ。今を生きる若者たちのリアルな日常を映し出すものや、写真や本のあり方を根本から問い直すものなど、多様な世界に触れることができる。

「作品は、そこに行き着くストーリーがあって、嘘がないものがいい」と話す大滝さん。写真家の林朋奈さんによる「母子手帳」は、直径8センチほどの、円形の写真集だ。単語帳のように金属リングでとじられたページには、幼い子どもを抱きながら、もう一つの手に持つスマートフォンで、街中にある鏡に映る林さん自身の写真がある。対になるのは、おもちゃやベビー服など、子どもが使う日用品。それぞれが、明るい原色の背景とともに映し出されている。

「子育てが始まりカメラを持ち歩けない中で、アイフォンで撮ったのがこの写真。大きさ、丸い形、ポップな色使い、どれも写真のテーマとマッチしてる。表現するのに不必要なものがない。美しさを感じる」と大滝さんが解説する。

「合理性を無視して作るのがジン。自分の表現のために、一人、黙々と。その過程で孤独を感じる人に、『俺はいいと思った』と伝えたい。『この作品はいい。間違ってない』って」

ジンとの出合い

現在はオンラインショップを軸に、国内イベントに毎月出展するほか、年に数回、海外でのブックフェアに出展する。作家のジンを制作したり、買い付けたジンを国内外の書店に卸したり、作家とのイベント企画も手掛ける。「出版業でもデザイナーでもなかった僕が、出会いをきっかけに必要なことを少しずつやってきた」と話す。

ジンの魅力を「文化的背景を取り込みながら、それぞれの国や地域で生まれる異なる人のあり方を見ることができる、民主的に、自然発生的に生まれてくる本。手に取った人が、自分でもこんなものを作りたいとその気をさせてくれる」と語る。

大滝さんが制作するカセットテープサイズの写真集

福島県出身の大滝さんは大学進学を機に茨城県に移ってきた。高校で絵を学び、大学でも美術を専攻した。学外で個展を開催し、友人の展示を企画するなど活動を広げてきた。卒業後は一般企業に就職し、一時活動から距離を置くこともあったが、2016年にクレバスを立ち上げた。現在、専業で活動する。

初めてジンと出合ったのはクレバスを始めた前年のことだ。古書店で何気なく手にしたのが、コラージュ作品が掲載された20ページほどの手製の本だった。調べると、スイス・チューリッヒに拠点を置く独立系出版社ニーブスが作ったジンだった。

「200部、150部しか作っていない。僕自身が創作活動をしてきて、例えば自宅で作った200部ほどの二つ折りの本が地球の裏側に届くなんて想像もできなかった。自分もやりたいと思ったのが、活動のきっかけ」だと振り返る。

オンライン書店からスタートした。活動の中で出会った作家たちが作る本を販売したかった。さらに、ニーブスのように地球の裏側へも届けたいと思い、書店にも売り込んだ。でも返ってきたのは「アート系って売れないんだよね」という冷たい反応ばかり。「いいと思ってるのは自分だけなのか…」と、気持ちは落ち込んだ。

転機は2018年、初めて出展した海外のブックフェア。場所はドイツのベルリンだった。「僕が好きな日本の作家の作品を持って行った。日本では冷たい反応ばかりだったけど、ドイツのお客さんは『こんなのあるんだ!』って喜んでくれた。いいと思っていたのは僕だけじゃない。世界のどこかに同じ思いを持つ人がいる」。その経験は、大滝さんの考え方を変えた。「理解されない人を説得するより、価値観を共有できる人と出会えばいい。それならできると思った」

取り扱う写真集を確認する大滝さん

うれしいのは「本が売れたとき」

大滝さんが扱う作品は、すでに広く活躍している作家もいれば、無名の作り手の作品もある。「僕が光を当てたいなんて、相手が有名な方だったらおこがましい話。ただ、作った本を誰も見てくれない作家がいて、でも僕がいいと思ったら伝えたい。この作品がいいんだよって言うだけ。お前は間違ってない、って伝えたい」

大滝さんにとって一番うれしいのは「本が売れたとき」だ。「自分と同じように『いい』と思ってくれる人がいるなんて、ぜいたくすぎる喜びでしょ。ノリが合う人と、作品を通じて少しずつ、つながっていく。こんな喜びはない」

8月、土浦で巡回展

8月1日と2日、土浦市で開かれる「土浦キララまつり2026」に合わせて、同市中央のイベントスペース「がばんクリエイティブルーム」で、ジンの巡回展「フロットサム ジンズ ツアー(flotsam ZINES tour 2026)」を開く。東京・杉並区の写真集専門書店「フロットサム ブックス(flotsam books)」が企画し、2022年から続くこの巡回展は今回で4回目。青森から福岡まで、5カ月かけて全国18カ所を巡る大規模なツアーだ。大滝さんは、このうち茨城会場の運営を担う。過去2回、水戸で開催してきた。

近年「ジンが流行っている」とメディアで取り上げられることはあっても、大滝さんの実感としては、あくまで「クラスに1人、2人」にすぎない。「好きな人はいるけど、バラバラにいる。だから、イベントがあれば、1日や2日、無理してでも来てくれる。初対面でもウェルカムです。変に敷居を感じないで、興味があったら来てほしい」。大滝さんは「世界各地で孤独に生まれた作品と、その作品を待っている誰かが出会う場所をつくりたい」という。(柴田大輔)

◆ジンの巡回展「フロットサム ジンズ ツアー(flotsam ZINES tour)2026」の茨城巡回展は8月1日(土)、2日(日)、土浦市中央1-13-52のがばんクリエイティブルーム1階で、1日が午後1時~6時、2日が午前10時~午後6時まで。入場無料。詳細はクレバスの公式サイトへ。

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別館宴会場「昴」を大改修 ホテル日航つくば

ホテル日航つくば(つくば市吾妻1丁目)は別館大宴会場「昴(すばる)」の大改修を進めていたが、このほど工事が完了、10日、報道機関などへの内覧会を開いた。天井照明装置、影像音響装置、床カーペットなどが一新され、「幅広い用途に対応できる宴会場として生まれ変わった」(古澤聡総支配人)。改修費は約3億円という。 同ホテルは、1985年開催のつくば科学万博に合わせ、1983年「筑波第一ホテル」として開業。別館は1990年に完成した。その後、ホテルオークラ(本社東京都港区)が運営を引き継ぎ、2001年「オークラフロンティアホテルつくば」に名称を変更。さらに経営権もオークラが継承、同社による日本航空系ホテル買収から10年後の2020年、現ホテル名になった。 筑波山稜線、桜川水面をイメージ 改修は大きく分けると3分野。天井照明は蛍光灯からLEDに換え、明るさを従来の3倍にし、スポット照明に動作性を持たせた。プロジェクターは後方壁面に備え付け(これまではフロアーに設置)、壁面スクリーンも電動操作(同手動操作)にし、音響器機には音質劣化抑制システムを導入した。カーペットは、紫峰・筑波山の稜線、市内を流れる桜川の水面などをイメージできるデザインのものに張り替えた。 古澤総支配人は「3分割可能な大宴会場は約700平方メートルの広さがあり、県南にある宴会場としては最大級。式典、宴会、結婚式などの快適性だけでなく、各種の会議に対応できるよう、照明器具や会議装置の機能性もアップした」と話す。 新装で増収目指す 同社の2025年度の売上高は18億2000万円。今年度は20億円を見込む。収入の半分を占める宿泊部門は外国人観光客を呼び込むことで増収を図り、宴会部門は新装会場の稼働率アップで増収を目指す。さらに、両部門の活性化を飲食部門につなげ、レストラン「セリーナ」、中国料理「桃李」、「常陸牛 山水」などの利用者増も狙う。(坂本栄)

投票時間1時間繰り上げ午後6時まで つくば市選管

つくば市は9日、今後実施される選挙について、投票日当日の投票時間を、これまでの午後7時までから1時間繰り上げて午後6時までとすると発表した。1日開いた市選挙管理委員会(野尻等委員長)で決めた。12月4日告示、13日投開票の県議選から実施される。 繰り上げの理由は、期日前投票を利用する投票者が増加していること、当日投票者の9割が午後6時までに投票を済ませていることなど。市選管事務局によると、昨年9月の知事選での同市の期日前投票の投票率は39%、今年2月の衆院選は54%だった。投票所立会人の従事時間が長時間に及んでいることを懸念する意見も出されたという。 投票日当日の投票開始時間に変更はなく、午前7時から。期日前投票の投票時間も変更はなく、市役所投票所の場合、午前8時30分から午後8時まで。 投票時間が繰り上がるのに伴い、12月の県議選の開票作業は、これまで午後8時20分から開始していたものを、午後8時からに20分繰り上げる予定だという。 公選法は午後8時まで 一方、公職選挙法は投票時間を午前7時から午後8時までと定め、特別の事情があり投票に支障をきたさない場合に限り、4時間以内の範囲内で繰り上げなどを認めている。 つくば市では2012年から、投票時間を法定の午後8時までから1時間繰り上げて午後7時までとしてきた。 県選管によると、今年2月の衆院選では、県内44市町村中、38市町村が午後6時で当日の投票を締め切り、つくば市を含め5市町が午後7時までとしていた。公選法の規定通り県内で唯一、午後8時までだった牛久市は今年度から、当日の投票時間を2時間繰り上げ、午後6時までとすると発表している。12月の県議選の各市町村の投票時間について、県選管はこれから調査する予定だとしている。(鈴木宏子) 【訂正 10日午後1時10分】3段落目、市役所投票所の期日前投票の開始時間は午前9時ではなく8時30分からの誤りでした。