金曜日, 11月 21, 2025
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茨城にあるすばらしい里山へのあこがれ 《遊民通信》45

【コラム・田口哲郎】

前略

先日、石岡の辺りを車で通ったら、梅雨空が晴れて、深い緑の里山が明るくなりました。その光景があまりにもきれいなので、助手席から写真を撮りました。茨城県は魅力度最下位などと言われますが、こんなにきれいな里山があるのはすばらしいと思います。里山なんて日本の田舎にはどこにでもあるよ、と言われそうですが、どこにもあるなら、こうした里山をわざわざ京都の大原に見にいかなくてもよいわけで、「灯台下暗しはよくないな」と反省しました。

里山は日本の原風景だと言われます。江戸は大都市でしたが、パリのような近代的な西洋型の大都市がいまの形になったのは、19世紀の後半ですので、明治初期に重なります。要するに、パリ、ロンドン、東京のような、みんながすぐに思い浮かべる大都会ができたのは、たかだか150年前で、日本人が長い間住み、命をつないできたのは、里山のような農村だったと言えます。

私は転勤族の核家族家庭で育ちましたので、いわゆる新興住宅地しか知りません。ですから、里山のようなところにあこがれます。父母の実家は古くから里山にある家ですから、盆暮に親戚宅に行ったときは、その生活が垣間見えました。いわゆる田舎には、いまも古くからの共同体が残っています。超高齢社会ですから、衰退傾向にあるようですが、それでもまだまだ神社の氏子やお寺の檀家のつとめは行われているようです。

里山の共同体とは何だったのか?

田舎に移住するのがはやっていますが、都市生活者が田舎に住むと、田舎の生活の忙しさに驚くそうです。町内の寄合や入会地の草取り、寺社仏閣の行事や維持管理、消防団の訓練、地域の祭りの準備などなど。里山はつくり込まれた自然なので、維持管理が大変なのでしょう。住人の協力が必要です。

そうすると、人同士のつながりが生まれます。いままで日本は経済大国として突っ走ってきましたが、そうした人間同士の絆を古くさいものとして切り捨て、個人を尊重する個人主義がはびこりました。その結果、日本の共同体は崩壊しました。一見面倒くさく見えるつながりは、実はセーフティーネットの役割を果たしていましたので、それが無いところでは個人は孤独になります。そうすると不安になり、病んでしまう可能性も高くなります。

人間同士のつながりに大切なのは、利益になるとか、ためになるとか、お互いに成長できる関係ばかりではなく、お天気の話しかしないけれども、気楽につながっていられる気楽さが基本にあることではないでしょうか。

それは日本のどこにでもある里山のようにありふれた、地味なものかもしれません。珍しくもないからといって軽視すると、いつの間にかなくなってしまうものです。特に新興住宅地に住むような、共同体を持たない、さびしい人々をケアしてゆくには、今こそ、共同体が必要だと思います。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

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