金曜日, 1月 2, 2026
ホームつくば感覚過敏に対応 心地よく学び休める部屋 筑波大が公開

感覚過敏に対応 心地よく学び休める部屋 筑波大が公開

障害のある学生への修学支援組織、筑波大学(つくば市天王台)のダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター(DACセンター)が、試行運用中の「アクセシブルスタディルーム(ASルーム)」を公開した。同センターを利用する障害学生向けの学習・休憩スペースで、特に感覚過敏のある学生の使用に配慮した。多様な学生一人ひとりが自分の感覚に適した学び方、休み方を見つけられるという。

落ち着きと集中に配慮した2室

大きな音やまぶしい光、人混みなどが苦手な人にも安心して過ごせる環境を提供する「センサリールーム」の取り組みが国内外で始まっている。ASルームも、聴覚や視覚など感覚過敏のある人が落ち着いて快適に過ごせるよう企画・設計された。「アクセシブル」は近寄りやすさ、利用しやすさをいう。海外の大学で導入され、日本でもサッカースタジアムへの導入例などあるが、国内の大学では初めての設置、運用となった。

一人用の学習・休憩スペースと複数人で使用できる共同スペースの2室に分け、設けられた。個人で使用するスペースは自分の心地よさに合わせて空間をカスタマイズできる。照明の明暗や赤、青、緑など部屋の色調は調整可能だ。天井に設置されている無線通信のスピーカーから音楽や作業用BGMなど、自分がストレスに感じない音を流すことも出来る。

泡による視覚と音波の効果によって感覚を落ち着けられるバブルチューブ、狭くて暗い空間を作り出すための簡易式テントなど、落ち着いたり集中するための様々なグッズが配置された。障害学生は1人当たり1日3時間を上限に利用できる。

感覚過敏な人との相互理解

発達障害のある学生は近年、全国的に増加しており、筑波大でも障害学生全体のうち67%にあたる110人が発達・精神障害だという(12月1日現在)。発達障害のうちの一つが自閉スペクトラム症で、その69%~95%には感覚過敏という特性があるという。

感覚過敏は個人差が大きく、体調や不安の程度によっても変動することがある。しかし、大学の環境は感覚過敏の学生らに十分に対応しているとは言い難く、これまでは耳栓などの器具の利用許可を得るなど障害学生側が工夫する対策に留まっていた。さらにコロナ禍の昨今、オンライン授業により「目が疲れる」「集中力が続かない」と訴える障害学生は、発達障害に限らず全国的に増えている。

筑波大では2019年12月に、ASルームの企画・運営のため、教員・学生の共同プロジェクトチームがスタート、当事者目線での意見を共有するために障害学生も参画した。書店や図書館では周囲の目が気になってしまうという障害学生の指摘を受け、発達障害に関する書籍やリラックスするためのグッズを置いたり、注意が逸れないよう本棚に目隠し用のカーテンをつけるなど、意見の反映を図った。

バブルチューブをはさんでルームの説明をする小山慎一教授(左)と佐々木准教授

8月の試行運用開始から障害学生16人が利用登録し、利用者からは「ルームでは靴を脱いでカーペットに座ったり、自分にあった聞き方で受講できるのが良かった」という声が上がった。

今回の公開を機に試行運用期間による利用学生の限定も拡大していく予定という。活用事例の蓄積による他大学や社会への情報発信、持ち運び可能な簡易型、貸出型のセンサリールームの検討も視野に入れ運用していく方針だ。

芸術系の小山慎一教授は、コロナ禍のマスク着用で感覚過敏の人々が感じている困難を例に「感覚過敏な人とそうでない人の相互理解が進むと良い」と語った。人間系の佐々木銀河准教授は「感覚過敏は外からは誰も分からないし、本人自身も気付いていないかもしれない」と述べ、ASルームが障害学生自らの感覚特性を知るための機能を担っていると位置づけた。(渡辺陽)

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あけましておめでとうございます【吾妻カガミ】214

【コラム・坂本栄】高市さんのピント外れには唖然(あぜん)としています。デフレは終わりインフレが心配なのに安倍さんの経済政策をまねしているからです。トランプさんは唖然どころか呆然(ぼうぜん)です。関税政策と移民政策で国を壊しながら外交では敵と味方の区別もできないようです。以上、今年80になる高齢者の繰り言でした。 私は年相応の病を抱えながら仕事をしています。昨夏には隔月刊フリーペーパー「ふるさと通信」の会長職を引き受け、定款に広告代理店業を加えました。NPOネット媒体の活動費を補うだけでなく、地域のFM放送、ネットTV、ケーブルTVなどの広告取りを手伝うためです。 日米の首相と大統領に唖然 上の2パラは年賀状の文面ですが、少し補足します。デフレ脱却を目指したアベノミクスは金融緩和+財政出動+規制緩和で需要をつくり出すことでした。ところが世界のあちこちで戦争が起き、このところモノやサービスの価格アップが目立ちます。安倍さんの時代とは様変わりなのに、高市さんは師匠の財政大出動をなぞっています。経済の現実よりもアベノミクスに目が行くようです。 方向性が違うメニューもあります。国の内外で広がる排外的な動きに便乗したのか、高市さんは外国人の受け入れでは規制を強化しています。先進国の社会・経済は外国人の世話にならないと成り立たないのに、入国や滞在を規制するのは愚策です。 トランプさんの思考がよく見えてきました。2期入り早々、軍事・資源上の必要からデンマーク領のグリーンランドがほしい、経済圏として見るとカナダは米国の一部だ―などと言っていましたが、最近では嫌いなベネズエラの大統領を力で排除すると公言しています。こういった身勝手には友好国も付いていけません。 トランプさんの暴言を見聞きし、プーチンさん、習さんはさぞ喜んでいるでしょう。ロシアの一部だと言ってウクライナに攻め込んだプーチンさん、台湾をいずれ中国に組み込むと言っている習さん。トランプさんの思考は彼らと同じです。これでは相手の振る舞いに文句を付けられません。 告知記事・広告記事も掲載 年賀状の後段についても補足します。NPO法人 NEWSつくばは、新聞など信頼できる媒体と同じように、きちんとした取材による行政やイベントなどの記事のほか、地域の識者によるコラムを掲載しています。それに必要な経費は、企業などからの大口寄付やバナー広告収入、個人や法人の正会員と賛助会員から納めていただく会費で賄っています。 「ふるさと通信」との連携は、本サイト運営に必要な経費確保の多様化を図ったものです。取材編集と経費確保の両面で、私たちは柔軟なマネジメントを追求していきます。今年もよろしくお願い申し上げます。(経済ジャーナリスト、NEWSつくば理事長) <事務局から> 告知記事と広告記事の掲載についてはinfo@newstsukuba.jp宛て事務局に問い合わせてください。

不適切な事務 新たに4点 つくば市生活保護行政 県監査で指摘

生活保護行政をめぐり茨城県福祉部が今年度実施した一般監査で、つくば市に対し、新たに4点の不適切な事務を指摘し、市に改善を求めていたことが情報開示請求で分かった。 つくば市の生活保護行政をめぐっては、誤認定や過支給など不適正な事務処理が2024年度に相次いで明らかになり、市は今年6月、実態調査の結果と再発防止策を記した報告書をまとめたばかり。報告書の調査は十分だったのかが問われる。 県の監査結果は今年8月に市に通知され、市福祉部は9月に改善報告書を県に提出した。市は4点の指摘事項をいずれも認め、県に改善に向けた取り組みを報告している。 問われる再発防止策の実効性 不適切だと指摘を受けた4点のうちの一つは、2024年度に発覚した障害者加算の誤認定の後処理をめぐるもの。県の監査で「自立更生費の検討過程について記録が不十分な事例」があり不適切だなどと指摘された。 市は、誤認定により生じた過支給分の返還を生活保護受給者に求めるにあたり、一部の受給者について、過支給分から「自立更生費」を差し引いた上で返還を求めた。自立更生費とは、受給者が就労や健康回復など日常生活や社会生活上の自立を目指すために必要な費用で、家電の買い替え、資格取得の学費、就労に必要な衣服の購入費、住宅の修繕費などが認められる。 6月の報告書で市福祉部は、誤認定をめぐる再発防止策として「今後の誤認定を防止するため、法令を再確認し、チェックリスト、フローチャートの作成を行い」「法令と根拠資料を突合し、要件の確認を徹底していく」など、自ら再発防止策を掲げていたにもかかわらず、県から指摘を受けた。 県の指摘に対し市は「ケース診断会議で自立更生費の詳細な検討は行っていたものの、記録についての認識不足により検討過程の記録が不十分だった」と県に回答しており、6月の報告書で自らまとめた再発防止策の実効性が問われた形だ。 自立更生費に清涼飲料水121万円 一方、市が誤認定の後処理をするにあたり、具体的に何を自立更生費と認め、返還金から控除したかが、情報公開された資料で一部明らかになった。返還に関する資料に自立更生費として「清涼飲料水代121万750円」「電動自転車12万円」「貸し倉庫利用料10万6244円」などが記されており、生活保護に詳しい関係者によると、通常は認められることが難しい内容だという。 自立更生費として控除したのは最大で過去5年分という。詳細は明らかにされてないが、121万円の清涼飲料水の場合、仮に1本150円と計算すると8071本分、1日当たり4.4本に相当し、5年間にわたって毎日、150円の清涼飲料水を4.4本を飲み続けた額に相当する。この点について市社会福祉課は、医師に病状調査し決定したなどとし、対象者の生活状況や病状によって必要かどうか個別に検討した結果であり、適正だったとする。 不適切な診断料500件超 監査での県の指摘事項はほかに①生活保護受給申請者の親、きょうだい、配偶者などに経済的に援助する力がないかを調査する扶養能力調査が適正に実施されていない事例があった、②受給者の収入の課税調査について、遅くとも8月分の保護費に反映するとされているにもかかわらず、課税調査の完了が9月となっている事例があった、③障害年金の受給を申請する際に必要となる診断書料の支給手順について、本来、市が検診命令を出し、医療機関からの請求を受けて、市が医療機関に支払うべきところ、申請者が医療機関に診断書料を払い、市が申請者に支給していたなど、国の通知に基づかない不適切な診断書料の支給が2019年度から5年間で500件を超過していたことが新たに認められたーなど。 ③500件を超える不適切な診断書料の支給について市社会福祉課は「県には以前から運用誤りの報告をしていた」などとして、県に監査結果通知の訂正を求めていたが、県は「見解は変わらない」としている。市によると、不適切な診断書料の支給は550件225万1350円分で、国に返還する必要はないとしている。(鈴木宏子)

認知症の理解《メディカル知恵袋》13

【コラム・廣木昌彦】認知症は誰もが発症する可能性のある大変身近な脳の病気です。「考える」「認識する」「記憶する」などの脳の機能が、病気やけがなどで悪化して、日常のさまざまなことに助けが必要な状態をいいます。認知症の最大のリスクは加齢で、超高齢化が進んでいる日本では、2025年には認知症の患者は最大で730万人で、65歳以上の高齢者の5人に1人に達すると厚生労働省の調査で推計されています。症状が進むと家族や社会の問題へとつながるため、一人ひとりが認知症を自分自身の問題として正しく理解しておくことが大切です。 加齢と認知症:物忘れの違い うつ病などの精神科の疾患や多くの高齢者に見られる加齢による物忘れは認知症ではありません。加齢による物忘れと認知症による物忘れは以下のように違います(表1)。 認知症の原因 認知症の原因となる疾患は、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、レビー小体病(レビー小体型認知症)、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害の3つが大半を占めます(図1)。アルツハイマー病とレビー小体病は脳の神経細胞が緩徐(かんじょ)に変性し脱落していく病態です。アルツハイマー病は認知症の最も頻度の高い原因で、脳にアミロイドβという特殊なたんぱく質がたまり、それが神経細胞を破壊して、認知症の症状を出現させる病気です。 レビー小体病は脳の神経細胞にレビー小体という異常なタンパク質がたまることで、認知機能が低下する病気です。レビー小体型認知症は運動機能が低下するパーキンソン病と病態が共通することが分かっています。脳梗塞や脳出血に関連した認知症は血管性認知症と言われ、血管の閉塞(脳梗塞)や破綻(脳出血)により脳組織が破壊されることにより生じます。脳のさまざまな場所に起こり得る病態ですので、脳の機能障害もさまざまで、「まだら認知症」といわれています。 認知症の診断 認知症の診断は、日常生活や職場の様子などの問診が重要なため、診察時にはご家族に同席していただきます。認知機能低下の評価として、質問に答えていく形式の検査を行います。さらに血液検査と頭部CTまたはMRI検査を行うことで、根本的治療が可能であるビタミンB欠乏症、甲状腺機能低下症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などが診断され、血管性認知症は通常、頭部MRIで診断されます。 これらの疾患が該当しない場合は、頭部CTまたはMRIで脳の萎縮(やせ)や脳梗塞、脳出血などについてさらに詳しく評価し、その結果アルツハイマー型認知症またはレビー小体型認知症が疑われる場合は、最終診断のために脳血流スペクト検査に進みます(図2)。この検査は脳の機能を画像化および定量化するものです。レビー小体型認知症の診断のためには、必要に応じて「MIBG心筋シンチ検査」「DATスペクト検査」という検査を追加します。 認知症の治療 現在のところ認知症を治癒させるものはありません。アルツハイマー型およびレビー小体型認知症に対しては進行を止めることは困難ですが、薬物治療で進行を遅らせることは可能です。現在日本では、アルツハイマー型およびレビー小体型認知症に対して、進行の抑制を目的としたいくつかの内服薬と貼付薬および注射薬が保険適応となっています。また近年、アルツハイマー型認知症に対し、「レケンビ」「ケンサラ」という2つの点滴製剤が保険収載されました。 どちらの薬剤も進行を遅らせる効能ですが、アルツハイマー病の原因とされる脳内にたまったアミロイドβを除去する作用があり、大変注目されています。この治療を実施するためには、施設と医師の要件が定められており、茨城県でもいくつかの限られた病院のみ治療実施が可能です。 さらに薬価が高く、患者さんの自己負担費用が、年間10数万円から100万円程度となることが問題ですが、「レケンビ」は今後薬価が引き下がる予定であり、自己負担が軽減されることが見込まれています。血管性認知症も根本的な治療はありませんが、進行予防は可能です。高血圧や糖尿病などの血管危険因子のコントロールや抗血栓薬の内服などで脳梗塞や脳出血の再発を予防することが重要です。 認知症疾患医療センター 認知症は経過とともに、せん妄、抑うつ、興奮、焦燥などの精神症状(心理行動症状)が伴い、介護者または家族に大きな負担となります。しかし、このような症状は適切な内服薬で安定させることが十分可能ですので、担当医師に適切にその状態を伝えることが重要です。 そして認知症の患者さんは、自動車の運転、徘徊(はいかい)や行方不明、虐待、詐欺などの被害、自宅のゴミ屋敷化など、さまざまな問題があり、これらの対策として介護保険サービスが活用されています。介護保険サービスは、主治医、社会福祉士、ケアマネジャー、保健師を含め包括的に支援に取り組む地域包括支援センターで相談することができます。また、認知症の医療相談や診察に応じる認知症疾患医療センターが各地域に設置されています。 当院はこのような介護と医療のシステムを十分利用し、患者さんを取り巻く問題を解決してまいります。(筑波メディカルセンター病院 脳神経内科 専門部長)