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「怪人二十面相」と2・26の時代 《映画探偵団》48

【コラム・冠木新市】昭和7(1932)年から昭和11年にかけ農村の貧困と陸軍の内部闘争を描いた高倉健主演の『動乱』(1980)、陸軍若手将校の4日間のクーデターを追った三浦友和出演の『226』(1989)、海軍と陸軍の攻防と昭和天皇の動きに迫ったNHK『全貌 二・二六事件 完全版』(2020)―これらを見直した。

江戸川乱歩の『少年探偵』シリーズ第1作『怪人二十面相』は、昭和11年(1936)、『少年倶楽部』1月号から連載が始まり人気を呼んだ。だが、2月には2・26事件が起き、東京に戒厳令が出された。当時の少年たちはどのような思いで読んでいたのだろうか。その気分を感じるため、2・26関係の作品を見てみたのだ。

乱歩との出会いは東映『少年探偵団/首なし男』(1958)である。シルクハットをかぶり、二十面相にふんした伊藤雄之助は、大人の演技を見せ真実味を感じさせた。その後、小学校の図書館で光文社版『少年探偵』を次々と読み、独特な世界に魅了されていく。私は長い間、このシリーズは戦後の作品だと信じて疑わなかった。

しかし、『怪人二十面相』『少年探偵団』『妖怪博士』『大金塊』の4作は「大東亜戦争亅へ突き進む戦前に執筆されたものだった。多分、戦前の少年たちにとって、『怪人二十面相』は強烈なリアリティを感じたように思える。

明智小五郎は第1作後半に、黒の背広、黒の外套、黒のソフ ト帽という、全身黒のいでたちでオシャレに登場する。満洲国(戦後版は某国)の依頼で新京に行き、重大な事件を解決し帰国したとの設定である。満洲国の背後には関東軍がいたのだから、明智は関東軍とつながりがあったと見るのが自然である。一体何を解決したのだろうか。

主人公の小林芳雄少年は、明智の助手で一緒に暮らしているが、両親をなくしている様子である。明智との関係はどこで結ばれたのだろうか。明るく理想的な少年として描かれるため、心中や自殺、東北農村での身売りがあった時代とは真逆である。

二十面相が狙うダイヤを所有する羽柴壮太郎は、麻布に屋敷を構える大実業家だが、なぜか長男の壮一が10年前に家出をしている。次男の壮二は二十面相に誘拐されるが、小林少年の活躍で助かる。壮二は少年探偵団の結成を提案する。探偵団を計画したのは裕福な少年なのである。羽柴家には何で財をなしたのかを含め謎が多い。

怪人二十面相は一層謎めいている。宝石や美術品を好み、現金に興味がなく、人を傷つけたり殺したり残酷なふるまいはせず、血がきらいなのだ。盗みを除けば、時代に逆流する極めて平和的な怪人で、悪役ではない。

謎だらけのセンタービル改造問題

いま『怪人二十面相』のような謎めいた世界が、つくば市に広がりを見せている。センタービル改造問題で、誰が要望を出したかも分からないまま広場に屋根やエスカレータが計画されたり、市民団体が2度にわたって要望書を出しても5カ月間も返事はなかったり、解体工事を進めながら意見を募集したり、プリツカー賞の意匠を可能な限り保存するといいながら、外壁と窓ガラスを壊すことはいまだ隠されたままだ。

昔は今で今は昔である。2・26のようなクーデターが起きたらどうするのだろうか。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

<つくばセンタービル謎解きツアー>参加者募集
▽内容:センタービルに隠された建築の謎を解きながらビルを回る
▽日時:第1回=11月3日(水)、第2回=同13日(土)、第3回=同23日(火)、13時から約1時間、参加費無料
▽定員:10名、小中高生大歓迎
▽予約先:090-5579-5726( 冠木)

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