木曜日, 7月 7, 2022
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「つくばセンター」に見る満映の影 《映画探偵団》43

【コラム・冠木新市】「広々とした大野原の中に、魔術の如(ごと)く聳(そび)え立つ、豪華な建築—寛城子(かんじょうし)を見た直後なので、狐(きつね)につままれたやうだ。宮殿の如く、銀行の如し」(徳川夢声)。

岩下志麻主演『極道の妻たち』

つくばセンターを象徴する映画は『仮面ライダー』シリーズだとずっと思い込んできた。しかし最近では、同じ東映の『極道の妻たち』シリーズではないかと揺れ動いている。この映画はセンタービル誕生3年後の1986年に公開され大ヒット 。ビデオも売れ、テレビ放映の視聴率も高く、関係者を仰天させた。

日下部五朗プロデューサー、高田宏治脚本、五社英雄監督―このトリオと、題名から受ける印象で誰もがヤクザ映画と信じていた。ところが、任侠・実録ヤクザ映画ブームはすでに終わっている。

岩下志麻主演でその後10年以上続くこのシリーズは、対立組織との抗争で性根の定まらない男性を支える、女性を描いた作品との理解が深まる。つまり純粋な女性映画だったのである。

東映映画史を振り返ってみよう。

▽1950年代:『笛吹童子』『紅孔雀』などのお子様時代劇『新諸国物語』シリーズ。

▽1960年代前半:内田吐夢監督が敗戦後の青春像を描いた『宮本武蔵』シリーズと大作『飢餓海峡』。

▽1960年代後半:高倉健の『網走番外地』『昭和残侠伝』シリーズ。

▽1970年代:暴力団組織で日本社会の仕組みを批判した実録『仁義なき戦い』シリーズ。

▽1980年代:『鬼龍院花子の生涯』など宮尾登美子文学の映像化シリーズ。そして『極妻』につながる。男性路線中心だった東映が方向転換し始めたころだ。

映画ブロデューサー 根岸寛一

学生時代、私は東映企画調査部でアルバイトをしていた。後に『映画「極道の妻たち」ノ美学』(1995年、近代映画社)を出版。丸の内本社と撮影所に出入りしていた私は、よく「東映は満映関係者の受け皿」との話を聞いた。

1937年、満洲国と満鉄の出資で設立された満洲映画協会は、「五族協和、王道楽土」のスローガンの下の国策映画会社だった。少し遅れて甘粕正彦が理事長に就任する。甘粕の片腕となったのは、『大菩薩峠』『人生劇場』『土』など名画を製作した、元日活撮影所長のブロデューサー根岸寛一だった。

根岸は、李香蘭をスターに育てあげ、中国人の監督、脚本家、スタッフを起用し、多くの作品を残す。終戦後、満映は消滅するが、撮影所は中国人映画関係者のために守られた。冒頭の引用は、夢声が満映撮影所を見た時の感想を映画雑誌に書いたものである。

戦後、根岸は東映と深く関わり、満州から帰国した映画人の生活ために、病を押して奔走する。私はつくば市に移転して来て、根岸寛一が筑波郡小田村(現つくば市)の出身と知ってうれしくなった。

議論の鍵を握るのは女性たち

4月27日掲載された「NEWSつくば」の記事で、センタービル広場のエスカレーター設置をめぐり、市議たちが「2基とも必然性がない亅「1基のみでよい亅「2基とも必要」ともめていることを知った。これまでの検討がいかに不足していたかがよく分かった。

また、男性市議よりも女性市議の発言が目立っているようにも感じた。市議は市民の代表である。このエスカレーターをめぐり、つくば市の女性たちの意見も割れているのだろうか。

私は何故こんなにもセンタービルに引かれているのか、ようやく謎が解けた。大平原にこつ然と現れた満映撮影所をセンタービルに重ねていたからだ。未来の遺跡に、1億6000万円もかけてエスカレーターを付けて、文化財に傷跡を残すかどうか。カギを握っているのは女性たちである。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

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