水曜日, 12月 2, 2020
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《邑から日本を見る》76 いきなり権力者が出てきた

【コラム千尋前回取り上げた日本学術会議の任命拒否問題。初めは「総合的、俯瞰(ふかん)的に判断した。6人を外したのは人事のことだからその理由は言えない」と木で鼻をくくったような、説明にならない説明を続けてきた菅総理。だが国会の論戦などで少しずつ化けの皮がはがれてきた。

10月26日の国会開会の日、菅総理はNHKの「ニュースウオッチ9」に生出演した。その終わり際に、「説明できることとできないことがある」とキャスターをにらみつけた。翌日、内閣広報官からNHK報道局に「総理、怒っていますよ。あんなに突っ込むなんて、事前の打ち合わせと違う」という電話がかかってきたという(『週刊現代』11月14、21日号)。

前回、「私たちに説明できないことを、総理が自分の判断でやってしまう」ことは恐ろしいことだと書いた。広報官がNHKにクレーム電話をかけたことはもっと恐ろしいことだと思う。異論を許さない空気をつくり、電波を意のままにしようとすることだから。

国会の質疑では、任命拒否の理由を「総合的、俯瞰的な活動を求める」から「多様性が大事」に変わり、さらに日本学術会議は「閉鎖的で既得権益」だとし、支離滅裂、それぞれの答弁はつじつまが合わないことが暴露された。

また政府に、安全保障関連法や特定秘密保護法に対する過去の言動を問題視し、「学術会議内で『反政府』の影響力を行使することを危惧した。学術会議を政府批判の先鋭的な集団にさせてはならない」という考えがあることも報道されている。6人の業績が学術的に劣ると判断したのではなく、政府に楯突くとこういうことになるという見せしめであり、人格の否定でしかない。

作家の保阪正康さんは「明治、大正、昭和にかけて最高権力者が前面に出て学者をパージすることはなかった。これほどわかりやすい形で任命拒否をする中に菅首相の傲岸(ごうがん)さ、市民意識の欠如、すべてが象徴されている」と言っている(『世界』12月号)。「煽動(せんどう)者、攻撃者、威圧者が出てきて、最後に権力者が出るのが普通だが、いきなり権力者が出てしまった。本丸は学術会議潰し」とも語っている(同)。

政府は好き勝手なことをできる!

もう一つ、今回の任命拒否で問題なのは、学術会議から推薦があった者を政府が法律上拒否できるのかということだ。政府はこれまで「形式的な任命を行う」と国会で答弁してきた。今回はそれをひっくり返し、「必ずそうしなければならないというわけではない」と言っている。

解釈は変えていないと言っているのだ。「法律にはこう書いてあるけれど、必ずそうしなければいけないというわけではない」。政府はなんでも好き勝手なことをできる。それは法治国家ではない。過去の政府答弁を覆すのなら、明確で具体的な理由を説明しなければなるまい。

政府が日本学術会議の人事に介入したいのなら、それを可能にする法改正を行えばよい。あのヒトラーですら、「全権委任法」の制定など、形式的には整えていた。法律に書いていない任命拒否の理由を認めてはいけない。元通産官僚の古賀茂明さんは「日本学術会議が犯罪者を会員候補に推薦した場合でも、菅首相は任命を拒否してはならない」と言っている(『週刊朝日』11月20日号)。(元瓜連町長)

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