【相澤冬樹】筑波研究学園都市最古の移転研究機関の1つで、来年創立50周年を迎える高エネルギー加速器研究機構(KEK、つくば市大穂)が、使われなくなった機器類を一般に有償譲渡する骨董(こっとう)市を企画した。しかし15日開催の現物確認イベントに訪れた買い手は皆無。ミリタリーファンや鉄道ファン並みのマニア出現を期待したものの、「加速器愛好家」の存在はなお、理論上の仮説にとどまっている。
理論の枠組みはディープだ。担当するのは研究支援戦略推進部未来基金事業推進チーム(竹内大二チームリーダー)といい、50周年を機にこれまでの歩みを振り返るとともに、次の50年に向けて各種の記念事業を実施するため編成された。先に寄付金事業をスタートさせており、「KEK未来基金~いっしょに未来を創ろう」プログラムに取り組んでいる。
骨董市も、未来に向け多様な財源を考えていくなかの一環という。竹内チームリーダーによれば、機器類は従来廃棄処分、または鉄くずとして業者に売り払っていたもので、一般向けに有償譲渡するのは初めて。「当初は9月初旬の一般公開のイベントとして、オークション会場を設けて大々的にやろうとしたが、コロナ禍で一般公開自体がオンライン開催になってしまった」ことから、規模を縮小してのトライアル開催となった。
25日まで入札受け付け
まずは9月6日のオンライン一般公開に際し特設サイトを設け、12GeV(120億電子ボルト)陽子シンクロトロンのコントロールルームなどで使用していた機器類のなかから、電磁ホーンや制御盤銘板(プレート)、イオン源発生用金属片など14点を選び、出品した。同シンクロトロンは1976年から2005年末まで、約30年に渡り運転を続けていたKEKで一番長い歴史を持つ加速器だ。
出品物は動作保証するものではないが、加速器施設特有の放射化した装置などは出品対象から除外している。目玉に予定していたオシロスコープもPCB(ポリ塩化ビフェニル)の使用が否定できないことから出品を取りやめ、電子基板が11枚差し込まれた解析用ユニットに差し替えられるなどしている。
このあと25日までを応募期間に入札を募り、出品ごとに最高額をつけたものが落札する。オンライン公開には延べ1万2000人の閲覧がカウントされたが、これまでのところ応札者はなく、問い合わせも2件にとどまっている。15日の現物確認イベントにも事前の申し込みがなく、記者の取材後、早々に撤収された。
竹内チームリーダーは「PR下手なところもあって、オンラインでアピールしきれなかったきらいがある。さらに工夫をして、加速器マニアの出現を期待したい」と話している。
◆KEK寄附金特設サイトはこちら(有償譲渡の応募要項などにリンク)