木曜日, 10月 23, 2025
ホームコラム《宍塚の里山》65 初夏の里山「ぶらっと歩き」②

《宍塚の里山》65 初夏の里山「ぶらっと歩き」②

【コラム・及川ひろみ】初夏には木々が次々花を咲かせます。花とはいっても目立たないものも多い中、甘いいい香りに思わず引き寄せられる木もあります。

その代表がムラサキシキブ。秋には美しい紫の実を付けることで有名ですが、花は長い雄しべの先にある黄色い葯(やく)と薄紫色の花弁が美しい。3メートルほどの高さに育ち、枝を四方に伸ばし花を咲かせています。林の林縁(りんえん)のあちこちで見られます。かじってみるとほのかに甘い。小鳥はこの実が好物。食べたあと、消化されない種を方々に落とします。

アカメガシワ(トウダイグサ科)の花もこの季節の花。春に出る若葉が紅色で、とても美しい樹です。この木はかなり大きな木に育つことから、花を見ることができるのは斜面に生えた木など、条件がよいときだけ。

この花には、ヒョウモンチョウやキタテハなど、チョウがよくやって来ます。チョウ好きな人は、この花が観察ポイントです。高木のため、撮影には望遠レンズ付きのカメラが必要で、首が痛くなるほど上を向いて撮影しているのを見かけます。アカメガシワも虫媒花(ちゅうばいか)であり、種子散布は野鳥。したがって、アカメガシワも里山の明るいところにたくさんあります。

明るいところといえば、アカメガシワは先駆植物、パイオニア植物です。裸地(らち、火事や造成など)が生まれると真っ先に生えてくる植物で、乾燥に堪え、貧栄養の場所でも育ちます。

里山には涼しい風が流れます

この時期、血赤珊瑚(ちあかさんご)を思わせる、真っ赤な実をつけているのはニワトコ。早春ブロッコリーのような蕾(つぼみ)。4月末には小さな白い花。そして今ごろ、真っ赤な実をつける樹がほとんどない中、鳥にごちそうを提供し、鳥に種を蒔(ま)かせるのがニワトコの戦略。その結果は大当たり。里山の方々で見ることができます。

そろそろヤマユリの花の見ごろの節を迎えます。この花の存在はまず香り。遠くから香ってきます。そして近づくと、大きな白い花。香りは昆虫を誘う道具。この花が咲く明るい林の中を飛ぶクロアゲハやカラスアゲハが受粉。種は風で飛び散ります。

今年は30度を超える暑さが早くも到来しましましたが、里山の中には涼しい風が流れます。しかし、体調が芳しくないときにはご遠慮ください。(宍塚の自然と歴史の会代表)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

170企業・団体が技術や商品PR 筑波銀行ビジネス交流商談会

地域産業の販路拡大を応援 地域企業の情報発信と販路拡大を応援する筑波銀行(本店土浦市、生田雅彦頭取)の「2025ビジネス交流商談会」が22日、つくば市竹園、つくばカピオで開催された。県内のほか栃木、群馬県など北関東の約170の企業や団体が参加し、「食」「ものづくり」「ベンチャー」などの各ブースで自社の技術や商品をPRした。約2500人が来場し、各ブースでは担当者の話に熱心に聞き入ったり、名刺を交換する姿が見られた。約400件の商談が行われた。 同時に食のPRイベントとして「つくばマルシェ」が会場前広場と隣接の大清水公園で開催され、つくば市の「銀座惣菜店」など15店が出店した。 ワクワクするビジネスの出会いを 商談会は地域産業の販路を拡大しようと、同行が北関東の栃木銀行(宇都宮市)、東和銀行(前橋市)などと共催して毎年開催している。 生田雅彦頭取はオープニングセレモニーで「国内外の経済情勢は、原材料コストの上昇や人手不足など厳しい環境に置かれており、地域金融機関としてはこれまで以上に地元中小企業に継続した支援が必要不可欠と考えている」とし、今年の交流商談会について「同業種だけでなく異業種も含め、ワクワクするようなビジネスの出会いに貢献し、サステナブルな未来に向けたビジネスモデル構築の機会となり、地域社会の発展の一助になれば」などとあいさつした。 「食」のブースでは、筑波山麓でオリジナルブランドの常陸小田米を生産しているつくば市の筑波農場や土浦市の焼き芋専門店芋やす土浦本店など48社が出展し、商品をPRした。「ものづくり」ブースに出展した東茨城郡大洗町のワークショップステップインターナショナルは、体幹機能が低下した人や犬の体幹機能を安定させる特殊繊維のEQT繊維素材で作ったリストバンドなどを展示した。 商談会には高校生も参加した。県立常陸大宮高校(工藤博幸校長)は授業の一環として、同市の友好都市である秋田県大館市の高校生とともにブレンドコーヒーのドリップパックを開発し、参加者に無料配布した。 行政機関のブースには茨城県のほか石岡市や牛久市などの自治体、県開発公社などが出展した。つくば市は同市認定物産品の日本酒や菓子などを集めた「つくばコレクション」と、筑波山麓サイクリングなど市内周遊観光モデルコースを紹介した。同市産業振興課の本田茜さんは「つくば市は面積が広く、知られていない観光スポットも多い。市に移住している人も増えているので、県外の人はもちろん市内の人にも今日の機会に市の良さを周知したい」と話していた。(伊藤悦子)

割烹着の制服 大日本忠君愛国婦人会《くずかごの唄》152

【コラム・奥井登美子】荻窪で生まれ育った私は、父の仕事の関係で荒川の近くに引っ越した。小学3年生のとき、サリーという名のシェパード犬を飼っていた。サリーは私にとって愛犬以上の存在だった。「ハウス」と叫ぶと犬小屋にさっと入っていく。毎朝、サリーとの散歩が学校へ行く前の楽しい日課だった。 サリーを連れて荒川の土手を散歩しているとき、愛国婦人会という旗を持ち、自分たちで制服と決めた割烹(かっぽう)着を着た3人のおばさんたちに会ってしまった。「日本はいま戦争中です。私たちも愛国の精神で、このような活動をしています」。一人一人バラバラになると、普通の平凡なおばさんだが、3人が束になると迫力がすごい。 「忠君愛国」「忠君愛国」「……」。お念仏のように唱えて、旗を振っている。 「今、日本は戦争中です。犬なんか飼っている人はおりません」 「この犬はとてもお利口さんで、人間の雑飯、残り物を何でも食べてくれます。わざわざ犬の餌を用意しなくても、大丈夫なのです」 「住所と名前を言いなさい」 「犬の名はサリー」 「犬の名、聞いてどうするのですか。しかも、サリーだなんて、敵性用語ではないですか。あなたの親の名と住所を言いなさい」 「はい……」 サリー、どこへ行ったの? 私が学校に行っている間に、隣組長さんのところに愛国婦人会の人が来て、犬をどこかに連れて行ってしまった。その日のうちに殺されてしまったそうである。 「サリー、どこへ行ってしまったの?」 それから1カ月間、私はサリーの名を呼びながら、泣いてばかりいた。(随筆家、薬剤師)

たかが5千円 されど5千円《短いおはなし》44

【ノベル・伊東葎花】 夕方の混み合うスーパーのレジ。 あら、この人、お釣り間違えてる。2300円買って5千円出したら、お釣りは2700円でしょう。それなのに私の手には、7700円が載っている。やっぱり言わないとまずいよね。5千円って大きいもの。「あの」と言いかけた途端、後ろに並んだ客に肩を押された。 「終わったらさっさとよけて」 弾かれて、私はすごすごと下がった。ネコババしたわけじゃないのよ。ちゃんと返そうとしたのよ。なのに、あのおばさんが押すから。言い訳しながら、万引きでもしたような気分で、ささっと店を出た。 戸惑いながら5千円札を見る。たかが5千円。そうよ。普段の行いが良いから、神様がくれたご褒美よ。そう思ったら気が楽になった。 夜になって帰ってきた夫が、やけに沈んでいる。 「何かあったの?」 「実はさ、同期のKくんが、懲戒免職になったんだ」 「まあ、どうして?」 「K君は経理の仕事をしているんだけど、会社の金を使い込んだらしい」 「まあ、いくら?」 「5千円」 「5千円? たったの5千円?」 「たとえ5千円でも横領だよ。ちょっと借りて後で返すつもりだったらしい。これまでも、何度かやってたらしいんだ」 「クビになったら大変じゃないの。どうするの、これから」 「職探しだな。奥さんは駅前のスーパーで働いているらしいよ」 「駅前のスーパー?!」 私はハッとした。 釣銭を間違えた店員のネームプレート、確かKではなかったか。「飯まだ?」という夫の声など聞こえないほど動揺していた。罪悪感で押しつぶされそうだ。明日スーパーに行って、5千円を返そう。 翌日、封筒に5千円を入れてスーパーに行った。Kさんは、都合よく人気の少ない通路で品出しをしていた。 「あの、Kさん」 話しかけるとKさんは笑顔で振り返った。 「いらっしゃいませ。何か御用でしょうか」 「あの、昨日、レジのお金、合わなかったでしょう?」 「え?」 「ごめんなさい。私、お釣りを多く受け取ってしまって。これ、返します」 「何のことでしょう?」 「いいから受け取って。ご主人だけでも大変なのに、あなたまで辞めさせられたら大変じゃないの。ね、受け取って」 私はKさんのポケットに封筒をねじ込んで、素早く店を出た。これでいい。これで私が地獄に落ちることはない。 Kさんは、首をかしげていた。 「なんだろう、あの人。レジのお金はきっちり合っていたのに。あら、5千円も入ってる。店長に言った方がいいかな。でも私、今日で辞めて夫と田舎に帰るから、別にいいか。もらっておこう。ラッキー」 Kさんが、意外としたたかだったことなどつゆ知らず、私はその夜家計簿を付けながら、5千円が足りないことに気が付いた。もしかして私、昨日の買い物で1万円出していた?あ、そういえば、1万円札だったかも。絶対そうだ。私の勘違いだった。落ち込む私に息子が追い打ちをかける。 「お母さん、部活の合宿代5千円ね」                                     (作家)

日本語学ぶ10月入学生大幅増 日本つくば国際語学院で歓迎会

つくば文化学園(東郷治久理事長)が運営する日本語学校「日本つくば国際語学院」(つくば市松代、東郷校長)の2025年10月入学の新入生歓迎会が21日、同市小野崎の料亭、つくば山水亭で開かれた。9つの国と地域から来日した65人が、鮮やかな民族衣装などに身を包み、新たな一歩を踏み出した。昨年10月と比べ1.5倍の入学者数となった。在校生も含めこの日は日本語を学ぶ211人の学生が会場にあふれた。 入学生の出身国・地域はネパール、ミャンマー、スリランカ、バングラデシュ、べトナム、中国、モンゴル、台湾、フランスの計65人で、ネパールが27人と最も多く、次いでミャンマー20人。 歓迎会では学生証の授与式などがスピーディに行われた。その後、出席した10月入学生64人全員が一人ひとり、習いたての日本語で自己紹介した。出身国、年齢、日本でやりたいこと、趣味などを話し、「日本語を学び大学や大学院に進学したい」「IT技術を学び母国で役立てたい」などと語った。趣味は「サッカー」「読書」「旅行」など、好きな食べ物は「ラーメン」「おにぎり」などと話す新入生もいた。 在校生代表してスリランカ出身のカンブラワラ・ヴィターナゲ・ハンサマーリ・サダルワニさんが歓迎のあいさつをし「最初、不安を感じることもあるが、少しずつでも、諦めず、頑張り、努力すれば必ず道は開ける。あせらず自分のペースで夢を実現していこう」と新入生にエールを送った。 東郷理事長兼校長は「日本語は難しいが、努力を積み重ねることで必ずものにすることが出来る。そして日本の文化や社会を学んでほしい。つまずくこともあるかも知れないが、明るく前向きにチャレンジしていけば良い結果が生まれる」と話した。 記念撮影会や歓迎パーティなども催され、ダンスや歌などが披露された。ミャンマー出身の学生によるダンスがフィナーレを飾り、会場を盛り上げた。 同校は県内最大の日本語学校。東郷理事長は「今回も入学者がかなり増え、この傾向は続くと思う。現在、校舎もいっぱいいっぱいの状態で対策を考えているところ」などと話した。(榎田智司)