【相澤冬樹】ここ掘れとばかり、愛犬がかき出した地面から水が湧き出した。やがて水が澄んでくると、地中から自噴しているのが分かる。愛犬の名をとって「リリーの泉(仮)」と名付けたのは、「筑波山の水脈を守る会」(つくば市臼井)で事務局を務める茅根紀子さん。同会の活動を1月から始め、4月に作業に入った土地から、6月に来たばかりの四国犬が掘り当てた、最初のお手柄だった。
同会は、筑波山の「水脈」をたずねて、滞ってしまった水の流れを復活させようという取り組みを始めた団体=4月6日付け=で、筑波山南麓の六所集落にある宮山を主に活動している。専門家の指導を受けながら、ワークショップ形式で山に入り下草を刈ったり、沢の河道をふさぐ枝葉を取り除くなどの活動を行っている。
東京生まれの茅根さんは中世ヨーロッパ美術の研究家。2014年、長女の出産を機にドイツ人の夫と地縁も血縁もないつくばにやってきた。筑波山の文化や環境を気に入っての移住だったが、一歩山に入ると森は荒廃し、土壌は硬く、山津波などの災害リスクが高まっているのが分かった。危機感をもつ六所集落の有志らと同会を立ち上げた。

水脈整備の作業を始めてから、四国犬の子犬を飼うようになった。6月に来たときは生後3カ月、娘がリリーと名付けた。「お手もお座りもしない、いたずら好き」(茅根さん)のメス犬だった。
ところが8月末、散歩で4月のワークショップで手を入れた場所に向かうと、リリーは突然駆け出し、杉木立の根元を嗅ぎ出した。直後、勢いをつけて掘り出し、小さな穴を鋭角的に掘りはじめたという。
穴を広げてみると、これが湧水だと分かった。付近は沢筋で、河道が途切れたところでも斜面を掘ると伏流水が姿を現す場所だが、ここは水底から砂粒を巻き上げるように自噴しているのが見て取れた。手を入れると冷たく、伏流水の水温とは異なる。六所集落には「ヒヤミズ」と呼ばれる湧き水があるが、今日ほとんど涸れかかっており、作業に入って初めて見つけた湧水ポイントだった。
お手柄のリリーは同会のマスコット的存在になった。茅根さんによれば「四国犬は日本犬のなかでも最もオオカミに近い犬種。嗅覚と聴覚に優れているとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった」そうだ。専門家の意見を聞いて泉の保全を考えていく。
今月は28日が活動日
同会の9月の活動は、28日午前9時、六所皇大神宮霊跡地境内集合で行う。昼食後、随時解散。自然土木が専門の今西友起さんを講師に招く。参加は汚れていい服装(黒系統は避ける)で、水筒はじめノコ鎌や移植ゴテ持参で。昼食代として一人300円(未就学児100円)のカンパを求めている。詳細は同会ブログ。