木曜日, 11月 20, 2025
ホームつくば【どう考える?免許返納】7 高齢者の暴走事故翌日、県内の返納率2.3倍に

【どう考える?免許返納】7 高齢者の暴走事故翌日、県内の返納率2.3倍に

【橋立多美】全国で高齢ドライバーによる交通事故が後を絶たない。今月2日には、つくば市桜のスーパーに市内に住む73歳の女性が運転する軽自動車が突っ込んで女性店員が軽傷を負った。アクセルとブレーキを踏み間違えた可能性があるという。高齢者の運転操作ミスや暴走事故などの報道をきっかけに、県内では高齢者の自主返納者数が増加している。

県警運転免許センターによると、75歳以上の高齢ドライバーの自主返納者は年齢別統計を取り始めた2015年の3871人(全体4105人)から増加の一途をたどり、昨年には7627人(同7842人)と8000人に迫った。

今年4月19日、東京・東池袋で87歳の男性が運転する乗用車が暴走して母子2人が死亡、10人が重軽傷を負った翌日、県内の返納者は80人に上った。1日当たりの返納者数は平均35人程度で、その2.3倍に当たる人が返納した。事故の影響を受けたと同センターは見ている。

ただし全国的に見ると県内の返納は多いとはいえない。警察庁の18年度運転免許統計によると、県内の75歳以上の免許返納率は3.7%で高知の3.8%に次いで2番目に低い。返納率の高さの上位を占めるのは東京(8.0%)と大阪(7.3%)で、公共交通網の発達の違いが返納率に反比例していることが見て取れる。

つくば市「特典増やし2倍のペース」に

電車やバスなどの公共交通機関が乏しい地域の高齢者にとって、買い物や通院などの移動手段を失うことが免許返納の壁になっている。その対策が公共交通を利用する際の優遇制度だ。

県は、自主返納した高齢者が協賛店から商品の割引などさまざまな特典サービスを受けることができる「高齢運転者運転免許自主返納サポート事業」を2018年3月から開始した。

つくば市は09年から65歳以上の自主返納者にコミュニティバス「つくバス」や乗り合いタクシー「つくタク」などの乗車券の助成を、土浦市は15年から「のりあいタクシー土浦」の年会費助成を行っているが、両市とも返納後1回限りの「特典」で、継続的な支援態勢は手薄なのが実情だ。

一方、1回限りとはいえつくば市は今年4月から返納者への特典を4種類に増やした。従来のつくバスとつくタクの乗車券に加え、新たに路線バス「関東鉄道」の乗車券と交通系ICカード「PASMO」を加え、4つの中から選べるようにした。その結果、昨年1年間の自主返納者は255人だったのに対し、今年は8月末までで194人と昨年の2倍のペースで増えた。市防犯交通安全課は「特典の選択肢を増やしたことで自主返納率が高まった」としている。

➡【どう考える?免許返納】の過去記事はこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

民有地の建物内にセアカゴケグモ 土浦市が注意呼び掛け

土浦市は18日、同市東中貫町、民有地の建物内で、特定外来生物のセアカゴケグモのメス1匹と、卵が詰まった卵のう4個が発見されたと発表した。クモはすでに駆除され、かまれた人や健康被害を訴える人はいない。 セアカゴケグモのメスは毒をもち、かまれると重症化することがある。素手で触るとかまれることがあるため、同市は、見掛けても絶対に素手で触らないよう注意を呼び掛けている。 市環境衛生課によると、17日、建物内にクモが1匹いるのが発見され、セアカゴケグモだと分かり、発見者がクモと卵のうを駆除した。発見者は同日午後5時30分ごろ、市ホームページの問い合わせフォームから市に連絡した。 翌18日午前9時ごろ、連絡を受けた市職員が現地を訪問し、駆除されたセアカゴケグモ1匹と卵のうを確認。県生物多様性センターが同日、セアカゴケグモであることを確認した。 駆除されたメスは体長1センチ弱、卵のうは袋状で、一つの直径が5ミリ程度。クモがどこから侵入したかなどは不明という。 同市内では今年8月、民有地でセアカゴケグモの死骸が発見された。生きた状態で見つかったのは今回が初めて。県内では2013年に神栖市で発見されて以降、各地で目撃されている。 市は、セアカゴケグモを見つけた場合、素手で触らず、家庭用殺虫剤か熱湯、靴などで踏みつぶして駆除し、市環境衛生課(電話029-826-1111内線2459)に連絡してほしいと呼び掛けている。

30年にわたり筑波山を撮影 会沢淳さんが写真展 ダイナミックな自然、見るものを圧倒

18日から 県つくば美術館 30年間にわたり筑波山を撮り続けているつくば市在住の写真家、会沢淳さん(70)の筑波山写真展が18日から、つくば市吾妻、県つくば美術館で開かれている。筑波山の姿のほか、ダイナミックな自然の動きや人々の暮らしを巧みな構図で撮影した70点が展示され、見るものを圧倒する。30年間にわたって撮影した年代、季節、地域など多岐にわたる作品が並べられている。 山頂付近のブナを撮った「白きブナたちの森」は、積雪した筑波山に登り撮影した。「燧ケ池(ひうちがいけ)の榎(えのき)」に写る榎は、今は伐採されたためもう見ることができない貴重な写真だ。「火の神山の神」は、山麓の小田地区で催される伝統行事、どんど焼きを撮った。ほかに、筑波山神社の祭礼、御座替祭(おざがわりさい)で女体山頂付近で撮った「天近きところで」、山麓の田植えの様子を写した「命を植える手」などが展示されている。 会沢さんは筑波山の写真集を出版している唯一の写真家。1955年北海道三笠市で生まれ、新潟県で育った。千代田写真専門学校卒業後はスペインやモロッコを放浪。帰国し1981年、撮影会社の竹見アートフォトスに入社。84年に独立し、95年に「2億4千万年の神々―会沢淳筑波山写真集」を出版。筑波山の写真展は2008年に東京・秋葉原のつくばエクスプレスプラザで初めて開催して以来、2回目。 つくば市に住み、筑波山に徐々に魅了され、素晴らしさに気づいたと話す。「標高877メートルの低山だが、百名山の一つ。関東平野にそびえる目立つ存在で、万葉集には25首の句が詠まれた。しかし、あまりにも当たり前にそこにある」。 ある時会沢さんは「自分が筑波山を見ているのではなく、筑波山が自分を見ている」という感覚になり、「筑波山に通うしかない」と思ったという。 「撮影中に、凍った地面で転落しそうになったり、中腹の白滝神社の前でシャッターが切れなくなったりなど、危ない目や、不思議な現象にたくさん遭った。やはり神々の山なのだと思い、それから筑波山神社でお参りするようになった。筑波山と対峙すると、山が意思を持っていると感じられる」と話す。 市内から来館した60代男性は「筑波山の写真がたくさん並べてあって楽しい。配列にも工夫があって、とても見やすい。全体として構図が素晴らしくさすがにプロの写真家」と話していた。(榎田智司) ◆同展は11月18日(火)から24日(月)まで、つくば市吾妻2-8、県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。問い合わせは会沢淳さん(電話029-838-2786、メールfffaizawa@yahoo.co.jp)。

つくば市「かつらぎ公園」の秋《ご近所スケッチ》20

【コラム・川浪せつ子】今年は夏が長くて、秋はあっという間におしまい? そんな中でも、紅葉狩りは楽しみですね。筑波周辺には、思いのほか紅葉のきれいな場所が多いです。「かつらぎ公園」(つくば市春日)もその一つです。市立春日学園義務教育学校の裏にあり、あまり知られていないかもしれません。 この公園にはテニスコートがあるため、常駐している方もいます。また、池が2つあり、石組の小川でつながっています。そこで見つけたのは、左側の落ち葉お掃除の様子。私は、いろいろな場所で(空港や海外でも)お掃除道具を見るのが大好きです。ついスケッチしてしまいます。日本では、空港掃除係の方が「プロフェショナル」として話題になったこともありました。 お掃除のプロフェッショナル プロと言えば、私の属している全国組織の団体の方の話です。そこで県のトップとして長年活躍していた方が、高齢になり仕事を辞めました。その方はその後も地域に貢献していきたいとシルバー人材センターに登録し、お役所関係の場所のお掃除を始めました。 「トイレのウォシュレットを引き出して、ここまでキレイにしているのは、多分、私くらい」との言葉を聞いて、感動してしまいました。だから、仕事を通して皆さんに信頼され、自分も誇りを持って生きてきのだと。その心持ちで何十年も仕事をしてきたプロだったのですね。 誇りを持って仕事をこなしていくことは、簡単ではないのではないでしょうか。たとえ誰も見ていない、誰にも認められなくても、手を抜かず仕事をこなしていくのは、結構シンドイです。主婦業はそんな感じですね。普通の人は褒められたいし、収入も多くと願うものです。自分を褒め淡々と、仕事も家事もこなしていける人でありたいと思いました。 宅配さんが東屋でお弁当 ちなみに、「かつらぎ公園」は紅葉の時期でなくても癒される場所です。お昼時、小さな東屋で、宅配便のお兄さんがお弁当を食べていました。何でもない、そんな日常がいとおしくなる公園です。(イラストレーター)

ウサギ捕り遊び仕事(3)《デザインを考える》26

【コラム・三橋俊雄】今回は、京都府北部・丹後半島で行われているウサギ捕りという「遊び仕事」について2つの事例を紹介します。「ククリワナ」(宮津市由良・南丹市大野)と「バイ投げ」(宮津市上世屋)です。 針金の「ククリワナ」 杉の新芽を求めて訪れるウサギのケモノミチに、針金で輪をつくり、近くの木へ仕掛ける―それが「ククリワナ」(図1)です。針金は藁(わら)で一度焼いて粘りを出し、柔らかくして用います。金属の匂いが消えるためか、よく捕れるといいます。罠(わな)の針金は使い捨てにし、山仕事の行きしなに仕掛けますが、同じ場所には続けて置きません。 ワナは7〜10カ所ほど設けておきます。ケモノミチはウサギがヒサカキの葉を食べたり、丸い糞を落としたりすることで見分けられます。猟の技術は大人から教わったものだといいます。 朝7時半に山仕事へ出発し、道中で仕掛けを確認します。ウサギが捕れていれば、仕事の間は木にぶら下げておきます。谷では仲間とともに山の作業をし、午後4時半頃には帰宅します。ある日には7羽もウサギが捕れて、近所に分けたこともありました。猟は10月から翌年4月まで続き、平均すると5日に1羽ほどの成果でした。 昔はウサギによる害が圧倒的に多かったようです。杉の苗木を春や秋に苦労して植えても、新芽を食べられてしまい、翌年には植え直しを余儀なくされることもありました。杉の木が一本でも助かればと思い、仇討ちのつもりでウサギを捕りましたが、それは同時に「楽しみ」でもありました。食料の乏しい時代でもあり、捕ったウサギは料理して食べました。 皮は喉から足まできれいに剥ぎ、なめすことはせず干して山の敷物にしました。内臓はうまく取り出せるので捨ててしまい、背や足の肉はすき焼きにして食べました。佃煮(つくだに)風の「コロ炊き」にすれば日持ちもしました。 二股枝の「バイ投げ」 「バイ投げ」は、まず雪山の陽の当たる斜面で、曲がった木の根元近くに眠っているウサギを探し出します。ウサギに気づかれないように近づき、バイ(二股の枝にアカマツの葉をくくりつけたもの)を用意します。そして、天敵のタカやトンビが襲いかかってきたかと思わせるように、続けざまにバイを空中へ投げ上げます(図2)。 バイはヒューヒューと風を切って唸(うな)り声を発し、その音に驚いたウサギは身をひるがえし、木の根元の隠れ穴へ一目散に逃げ込みます。間髪を入れず雪穴めがけて走り寄り、すばやく周囲の雪を踏み固めて逃げ道をふさぎます。テンズキ(木製の除雪具)で穴を慎重に掘り進め、ウサギの後ろ足を探り出して掴(つか)み、引きずり出します。 この「バイ投げ」は午前10時から午後3時頃まで行われ、猟期は節分(2月初め)までとされています。節分を過ぎるとウサギは発情期を迎え、行動が敏感になるため、追いかけるのが難しくなるといいます。(ソーシャルデザイナー)