【橋立多美】全国で高齢ドライバーによる交通事故が後を絶たない。今月2日には、つくば市桜のスーパーに市内に住む73歳の女性が運転する軽自動車が突っ込んで女性店員が軽傷を負った。アクセルとブレーキを踏み間違えた可能性があるという。高齢者の運転操作ミスや暴走事故などの報道をきっかけに、県内では高齢者の自主返納者数が増加している。
県警運転免許センターによると、75歳以上の高齢ドライバーの自主返納者は年齢別統計を取り始めた2015年の3871人(全体4105人)から増加の一途をたどり、昨年には7627人(同7842人)と8000人に迫った。
今年4月19日、東京・東池袋で87歳の男性が運転する乗用車が暴走して母子2人が死亡、10人が重軽傷を負った翌日、県内の返納者は80人に上った。1日当たりの返納者数は平均35人程度で、その2.3倍に当たる人が返納した。事故の影響を受けたと同センターは見ている。
ただし全国的に見ると県内の返納は多いとはいえない。警察庁の18年度運転免許統計によると、県内の75歳以上の免許返納率は3.7%で高知の3.8%に次いで2番目に低い。返納率の高さの上位を占めるのは東京(8.0%)と大阪(7.3%)で、公共交通網の発達の違いが返納率に反比例していることが見て取れる。
つくば市「特典増やし2倍のペース」に
電車やバスなどの公共交通機関が乏しい地域の高齢者にとって、買い物や通院などの移動手段を失うことが免許返納の壁になっている。その対策が公共交通を利用する際の優遇制度だ。
県は、自主返納した高齢者が協賛店から商品の割引などさまざまな特典サービスを受けることができる「高齢運転者運転免許自主返納サポート事業」を2018年3月から開始した。
つくば市は09年から65歳以上の自主返納者にコミュニティバス「つくバス」や乗り合いタクシー「つくタク」などの乗車券の助成を、土浦市は15年から「のりあいタクシー土浦」の年会費助成を行っているが、両市とも返納後1回限りの「特典」で、継続的な支援態勢は手薄なのが実情だ。
一方、1回限りとはいえつくば市は今年4月から返納者への特典を4種類に増やした。従来のつくバスとつくタクの乗車券に加え、新たに路線バス「関東鉄道」の乗車券と交通系ICカード「PASMO」を加え、4つの中から選べるようにした。その結果、昨年1年間の自主返納者は255人だったのに対し、今年は8月末までで194人と昨年の2倍のペースで増えた。市防犯交通安全課は「特典の選択肢を増やしたことで自主返納率が高まった」としている。
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