【橋立多美】超高齢社会における自治会運営のあり方や存在意義とは何なのか。入居者が一斉に高齢化しているつくば市内最大の住宅団地「森の里」を舞台に2018年4月から1年間、自治会の動きを追ってきた。シリーズ企画「シルバー団地の挑戦」最終回にあたって、森の里自治会長の倉本茂樹さん(77)に2回にわたり、自治会運営の課題を聞いた。
―役員のなり手不足が深刻と言われます。
1980年の自治会設立以来、会長と副会長5人は立候補制です。定員に達しない副会長や部長、会計などの役員は、各街区から選ばれる新しい街区委員の中から決めることになっていました。
私が初めて自治会に関わったのは定年退職後です。女房に代わり、初めて街区委員として新街区委員会に出席しました。しかし夜になっても終わらない。役を押し付け合っていたからです。私はこの席で副会長を引き受け、選挙管理規則を改正して新街区委員から役員を推薦してもらうようになりました。もちろん当事者に承諾をとります。
その後3年の副会長時代を経て、会長職7年目の今年は、60代の女性4人が副会長と部長を引き受けてくれました。白髪頭の会長に同情してくれたのでしょうか。役員がシニア世代の男性に偏ると、女性のニーズや声が反映しにくくなるので喜ばしいことです。
―高齢を理由に自治会を退会する人が多いと聞きます。
99の街区が輪番制で街区委員を決め、広報紙の配布や回覧、会費徴収をしていますが、骨が折れるとか、病気がちであることを理由に自治会を辞めていく人がいます。徘徊など緊急時には自治会員の有無を問わず支援していますが、こうした人ほど地域とつながっていてほしいと思います。
今年度から街区委員の負担を減らすために、これまで3カ月分ごとの徴収だった会費を、半年または1年分まとめて納入できるようにしました。足腰が弱くなり子どもに数日に一度食料を運んでもらう世帯が増えています。一括で納めたら近所と顔を会わせることもなくなります。個人的には、1人暮らしの世帯には3カ月に一度は行って安否確認をしつつ世間話をしてほしいと思っています。
―外出が難しくなった高齢者が自治会を退会する一方で、若い人たちは自治会に関心がないと聞きます。
自治会に対し、子育て中の若い世代を呼び込む取り組みをしたらどうかという意見がありますが、約3000人の住民中20~30代はわずか412人(14%)。若い世代は夫婦で仕事を持っている人がほとんどで、自治会には参加していない。呼び込むためのアイデアを出してくれても誰が担うのか、という問題があります。
現実として、自治会役員だけでは開催できない夏祭りなどの行事を、高齢者が多い自治会サークルが支えています。文化部に属するスポーツや趣味のクラブ員たちです。気持ちを一つにしたグループの力を借りないと新たな事業の永続性は望めない。行事がマンネリ化していると言う声もあるが「マンネリで何が悪い」という思いがあります。(続く)
➡「シルバー団地の挑戦」の過去記事はこちら