日曜日, 5月 19, 2024
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秋田で「新作花火コレクション2024」《見上げてごらん!》26

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第92回土浦全国花火競技大会10号玉の部優勝「昇曲付五重芯銀点滅」(土浦市提供)

【コラム・小泉裕司】4月27日(土)、秋田県大仙市で「大曲の花火-春の章」が開催される。大会プログラムのメーンは、次代を担う45歳以下の若手花火師による花火競技大会「新作花火コレクション2024」。「10号芯入割物の部」と、4号10発、5号5発による「新作花火の部」の2部門で競われ、各部門の優秀作品4作品と総合優勝者1人を決定する。

また、会場で鑑賞した花火鑑賞士のオンライン審査により選ばれた花火師に、「日本花火鑑賞士会特別賞」として、ドラえもん黄金ブロンズトロフィーを授与する。

山﨑煙火製造所の匠の技

茨城県からは、山﨑煙火製造所(つくば市)の石井稔さん(40)が初出場。18歳で入社、経験年数で言えば20年を超える中堅花火師。社交的な場面は得意ではないとのことだが、技術力のある若手登用を掲げる山﨑智弘社長の後押しで、今回の出品が実現したように思う。

4月4日(木)、秋田県大仙市のコミュニティFM局 FMはなびの「花火の星」に出演し、師匠・杉山花火師の弟子として、社名を汚さない花火をご覧に入れることができればと、大会出場への意気込みを語った。

10号玉の部は、最高難度と言われる「昇曲付五重芯銀点滅」を出品。これまでも数々の競技大会で優勝の実績を残す山﨑煙火の十八番だ。特に、親星(下記解説)全体が銀色にキラキラと点滅しながら一斉に消滅する消え口の見事さは、ほかの花火師もあこがれる匠の技。点滅の消え口は、素人目にも鮮やかで夜空に残る余韻が心地よい。

石井さんは、工場内では多重芯の星込めが専門と言うから、色のキレを含め、他作品の追随を許さぬ「ぶっちぎり」状態は間違いない。

新作花火の部の作品名は「雪舞いの笠地蔵」。おとぎ話の世界の描き方に興味津々。昨夏の大曲で観客が驚愕(きょうがく)し、10号自由玉の部で優勝した「海月(くらげ)、漂う」の創造性が生かされるのだろうか。キラキラの銀点滅による「雪舞い」なのだろうか、勝手に想像を巡らせている。

こうしたネーミングはとても重要で、来場者は、打ち上げ前のイマジネーションを膨らませると同時に、打ち上げた花火との整合性を楽しむ。大会審査においても、主要な評価項目に違いない。

花火鑑賞士特別賞の行方は?

大会審査員は、出品作品に順位を付ける公正厳格さが求められる一方、花火鑑賞士会賞は、作品の出来映えを踏まえながらも、好みの煙火業者に票を投じる鑑賞士も少なくないように思う。それはそれでいいと思っている。

私たち花火鑑賞士は、競技大会をはじめ各地の花火大会を鑑賞しながら、花火の魅力に陶酔し、好みの花火や煙火業者への思いを募らせる。こうした過程を経て投じる1票だ。点数化できない「思い」「心」を花火師に届けたいのだ。

今大会の出場者18人中、11人が初出場と昨年までと様変わりしており、普段は訪れることのない地で活躍する花火師の作品を、仲間と堪能できることもうれしい。

半年前からホテルを予約

いずれにしても、この1票のために半年前からホテルを予約し、GW初日の1カ月前の10時ちょうど、「えきねっと」の予約画面に立ち向かったのだから、あとは気象神社の木箱入りお守りにすべてを託すのみ。本日はこの辺で「打ち留めー」。「ドドーン キラキラキラ!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

親星:丸く開く割物花火は、幾重もの「芯星」と一番外側の「親星」で構成されている。

飲み屋街の看板群の秘密《看取り医者は見た!》17

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写真は筆者

【コラム・平野国美】私は家系的に下戸で、飲み屋に出かけることは滅多にありません。しかし、ある時から飲み屋街の看板を眺めて歩くのが好きになりました。特に、陽が落ちてネオンに電源が入り浮かび上がった様は格別なのです。

その日もスマホを片手に飲み屋街の写真を撮っていました。そうしたら、後ろから怪しい男がついてくるのです。踏み込んではいけない場所に足を入れてしまったのか? 写してはいけないものを撮ったのか? 足早に立ち去ろうとすると、「おい、待て」と声をかけられたのです。

怪しいお前も看板屋か?

見た目70代の男は服装こそラフですが、危険な感じはありませんでした。「お前は同業者か?」と顔をのぞき込んできました。この方は何を生業(なりわい)としている方なのだろうか?

「さっきから見ていると、飲み屋の看板をずっと撮影しているから、看板屋か? 映画のセット屋か?」と、尋ねてきました。自己紹介は省略して、「おいちゃんは何をする方?」と尋ねると、「昔はな、こういう飲み屋の看板とか作ってたんだ。あんたも同業者かと思ってな」と答えました。

「お話を聞かせてください」と、喫茶と書かれた看板の店に一緒に入りました。場所は奥浅草の千束通り辺り。時間は夜の8時。古い「昭和」の喫茶店に2人で入り、生ぬるいコーヒーを飲みながら話を聞いたのです。

看板・のれん・マッチ箱

「仕事はデザイナーということでしょうか?」「デザイナー? そんなんじゃないな。俺、そういう奴ら嫌いなの。蝋石(ろうせき)って知ってるか? 子供のころから、あれで道に絵や文字を書いて遊んでいたのよ。字がうまいっていうんじゃなくて、なんていうかなあ」

何が言いたいのかを推測して、「味のある字が書けるみたいな?ですか」「そう、それだ。少し、近所じゃ評判になった。書道でも習うかって言われたけど、ああいう堅苦しいのは、俺ダメ。学校も大嫌い」と懐かしそうに語るのです。

「ある日、いつも通り、蝋石で遊んでいたら、ちょっと強面(こわおもて)のおっさんが、ずっと上から眺めているんだよ。おい坊主、卒業したら、うちに来いって言われ、いつの間にか、そこに就職したんだ」

コーヒーを一口すすって、「事務所と言っても、親方の家にソファーと机を置いてよ。合羽橋の道具街の近くだから、居酒屋やスナック開こうとする客がワンサカ来てよ。俺が話を聞いて、文字とちょっとした絵を入れて、看板、のれん、マッチ箱を作って開店させるんだ。それで50年ぐらい生きてきた」

他の看板とのバランスが大事

「この辺りの店には、まだそれが残ってる。灯りがつかなくなったネオンも随分あるけど。でも、ある時から広告会社とかデザイナーが出てきて、俺たちはお払い箱になった。その店だけが目立っちゃダメなんだ。ほかの看板とのバランスが大切なんだよ」(訪問診療医師)

通年議会始まる つくば市議会

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19日、通年議会が開会したつくば市議会

つくば市議会で今年度から通年議会が始まり、19日定例会が開会した。会期を約1年とし、市長が招集しなくても、議会の判断で必要に応じて会議を開くことができる制度。ただし今定例会の会期は市議の任期と同じ11月29日まで。同議会事務局によると、通年議会の導入は常総、坂東、守谷市に次いで県内4市目になる。

これまでは市長が議会を招集し、3月、6月、9月、12月に年4回、定例会を開いてきたほか臨時会を開いてきた。通年議会の場合、同市では4月に開会し、これまでの定例会と同様の日程で年4回定例会議を開く。議案の提案や審議、一般質問や会派代表質問など実質的な日程はこれまでとほぼ変わらない見通しだ。本会議が開かれない期間は休会となる。

同市議会は、大規模災害の発生など緊急時に議会の判断で速やかに会議を開くことができるとしている。併せて常任委員会などで継続して調査や審査を行っているなど、市政への監視機能が強化され、議会がより一層市民の負託に応えていくための体制を整えるものだとしている。

五頭泰誠議長は「議会改革を継続的に議論してきた中で、東日本大震災や北条の竜巻災害などの経験から(大規模災害時などに議会の機能を継続するための)市議会業務継続計画(議会BCP)に対応しない議会はいかがなものかというのが発端になった。その中で、一番リアルに対応するには通年議会だという議論が深まった」とし「機動力ある議会にし、災害時に議会を継続して行政のチェック機能を果たすために導入したというのが経緯。1年間の会期の間は常に議会は開会している状態なので、専決処分や日程的に動かせない場合などに議員がより議論できる状態になる」と話す。

通年の会期は、既存の定例会制度の中で運用が始まり、2012年9月の地方自治法改正により創設された。全国の地方議会では、市長ではなく議長権限で本会議を招集できる、十分な審議時間が確保される、緊急案件に迅速に対応できるーなどのメリットが指摘される一方、議会が求める本会議を市長が拒否した例はない、執行部のスケジュールを縛る、実益は少ないーなどのデメリットが言われるなど、さまざまな議論がある。(鈴木宏子)

みんなで学び合うカフェ 高校生がつくばにオープン 不登校乗り越え

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カフェをオープンする島本美帆さん=店内

つくば市内の通信制高校で学ぶ高校2年の島本美帆さん(17)が5月2日、同市上広岡にカフェ「フェルミ・カフェ」をオープンする。お菓子を食べたりお茶を飲みながら科学を中心にみんなで学び合うカフェだ。

同じ建物に入るボードゲームショップ・フライヤーのプロジェクトの一環として6月末までの試験的なスタートとなり、利用状況次第でその後も延長する予定だ。島本さんは「勉強は楽しいと知ってほしい。楽しく好奇心を持って、みんなで知識をつけていれば」と年齢を問わない幅広い来店を呼び掛ける。

フェルミ・カフェは、ボードゲームショップ・フライヤーが入る建物の一階を利用する

一緒に勉強

中学時代、不登校を経験した島本さんは「学校に馴染めない子どもにも来てほしい」とカフェへの想いを語る。

「学校に行けていない子は自宅で理科の実験はできない。科学や理科、他の分野も含めて勉強する意欲はあるけど学校に行けず、学び方もよくわからなくなっている人もいるはず。足踏みをしてしまい前に進めない人のために、カフェでは簡単な実験道具や本をそろえる。高校レベルまでなら私も教えられるので、他の教科も含めて一緒に勉強しましょう。学校の代わりにここで一緒に知識をつけられたら」と語る。

娘の活動をサポートし、カフェにも一緒に立つ予定の母親の真帆子さんは「通信制なので時間に融通を効かせることができる。学校に行きづらくて、これからどうしようかと悩んでいる子どもや親がこの活動を知ってくれたら参考になるのではと思っている」と話す。

折り紙で作った正12面体

広々とした64平方メートルの室内に並ぶ真新しい本棚は、島本さんが自分で組み立てた。オープンまであと1カ月。自分で収支計画を立てサービス内容なども考える。多くの人が参加しやすいよう、時間制で料金を決め、その間は島本さんが用意する教材を自由に使うことができ、紅茶とお菓子を自由に飲食することができる。経費を捻出するために月35人以上の利用者を確保したいという。準備に忙しくしながら「どんなお客さんが来てくれるのか楽しみ」だと笑顔を浮かべる。

島本さんの母・真帆子さんは、歴史上の科学者を絵本で紹介する作家でもある。カフェには真帆子さんによる20冊の絵本も並ぶ

「これは私の自信作です」と本棚から島本さんが手にするのは、一枚の折り紙で作った正12面体。中学時代に作ったものだ。オリガミクスの提唱者として知られる元筑波大教授の故・芳賀和夫さんの本をもとにした。芳賀さんが主催した「サイエンスキッズ」に小学1年のとき参加したことも科学にハマるきっかけになった。

現代の「適塾」目指す

カフェの営業は木曜から日曜までの週4日。休業日の月・火・水の3日間で学校から出される1週間分の課題を済ます。自分のペースで学べる通信制だからこそ可能になる活動だ。島本さんにとってカフェは「大きな実験場」だ。「自分で何かを考えるのは楽しい」。得意な科学を通じて「自分で考えることの大切さ、面白さを伝えたい」と意気込む。

目指すのは、幕末の医師で蘭学者の緒方洪庵が開いた「適塾」だ。「来る人がやりたいものを持ち寄って、自由に学べる場」を作りたい。

適塾は、1838年に洪庵が大阪で始めた私塾で、全国から集まった1000人以上の若者が、医学を中心に世界情勢や語学と幅広い分野を学び合った。福沢諭吉や橋本左内、大鳥圭介など、幕末から明治の世で活躍した多くの人物を排出したことで知られている。

フェルミ・カフェでは簡単な科学の実験や工作なども準備している

昨年6月に島本さんは、カフェの前身となる出張科学教室「叶えの科学教室」をつくば市でスタートさせた。初回の講座は市内の不登校支援イベントで開いた出張教室だ。野菜の色素を分離すると「おもしろい」と参加者から声が上がった。丸いケーキを7等分する方法を参加者同士で考え合うイベントも盛り上がった。地域の小学生向けに医療や科学の出張授業を開く元薬剤師の母親とも「コラボ」し、つくば市内の公民館、小・中学校で開いた講座は1年間で10数回を数える。自分が考えた企画を多くの人が面白がってくれたり、熱心に質問してくれたときに楽しさを感じ、豊かな気持ちになったと話す。

「学ぶことは楽しいことだし、人生を楽しく生きるためには知恵が必要。知っているのと知らないのでは人生の選択肢の幅が違ってくる。一人でも多くの人に、その面白さを知ってほしいし、学習の仕方を身につけて自分でゴールに行く力を身につけて欲しい」

夢は全国展開

夢はフェルミカフェの全国展開。「お店には、そこに通う人の間でコミュニティができる。各地にできれば互いに交流し合って出会いを広げることができる。私も色々な人との出会いがあって、今の自分があると思っている」。

「未就学の子どもから100歳まで、色々な人に来てほしい。私が得意なのは科学と心理学。でも、やりたいものを持ち寄って自由に学び合える場にしたい。勉強が楽しくないと思っている人を減らせたら」

カフェの名前の由来は、1938年にノーベル物理学賞を受賞したイタリアの物理学者エンリコ・フェルミだ。統計力学、量子力学、原子核物理学と多様な分野で顕著な業績を残した彼から、「沢山実行に移せる人が増えるといい」という思いを込めた。

いきいきと、やりたいことを語る島本さんが新たな一歩を踏み出す。(柴田大輔)

◆フェルミカフェはつくば市上広岡407-1、ボードゲームショプ・フライヤー1階。営業は、木・金が午前10時から午後3時、土・日・祝が午前10時から午後5時まで。月・火・水は休業。料金は1時間、大人500円、学生300円、1日利用は大人3000円、学生1800円。月間パスもあり。利用者は時間内に紅茶とお菓子を自由に飲食できる。料金に工作・実験などの利用料も含まれる。5月3日(金)は正午から軽食付きのオープニングパーティーが開催される。詳細は同店ホームページへ。

レインボーの中で、虐殺に抵抗する 《電動車いすから見た景色》53

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筆者が手作りした、LGBTQのシンボルであるレインボーフラッグとパレスチナの旗

【コラム・川端舞】毎年4月後半に開催される国内最大級のLGBTQ(性的少数者)関連イベント「東京レインボープライド」。今年も19日から3日間、予定されている。

例年、イベントにはイスラエル大使館がブースを出展していた。イスラエル政府はLGBTQフレンドリーであると世界にアピールすることで、パレスチナへの占領という負のイメージを覆い隠そうとしていると批判されてきた。「東京レインボープライド」もイスラエルのイメージ戦略に利用されているのではないかと、当事者団体などが指摘している。

今年のイベントも、パレスチナで虐殺を続けているイスラエルに製品・サービスを提供しているとして、世界中で不買運動が呼びかけられている企業が協賛しているため、イベントに参加するべきかどうか、当事者団体のなかでも激しく議論されている。

一方、毎年イベントに参加することを生きる目標にしている人もいるだろう。今の社会は、出生時に割り当てられた性別と、自認する性が一致し、異性愛である人を前提につくられ、そこから外れた人はいないことにされている。自分の性別に違和感を持ったり、同性に恋愛感情をもつことが周囲に知られた瞬間、偏見にさらされる危険性もある。

そのような社会でかろうじて生き延びるために、本当の自分を隠しながら毎日を過ごしているLGBTQ当事者がたくさんいるはずだ。過酷な状況を生きる当事者が「年に一度、本当の自分を認めてくれる仲間に会える」「東京なら、地元の知人に出くわす心配もなく、堂々といられる」などの思いで、「東京レインボープライド」に参加することを誰が責められるだろうか。

イスラエルがパレスチナでの虐殺を覆い隠すために、LGBTQを利用するのは決して許せないが、イベントでLGBTQの人権を祝うのが悪いわけではない。

LGBTQはパレスチナにもいる

……と偉そうなことを言っておきながら、私も今回のイベントに参加する予定だ。普段からLGBTQの社会問題に関心を持っているが、それを気軽に話せる場はあまりない。そんな私を気にかけてくれた高校時代の友人が、「一緒に行こう」と誘ってくれた。

しかし、イスラエルの虐殺に加担したくない。友人に相談し、イベント最終日のパレードにパレスチナの旗を持ちながら参加することにした。そもそも、LGBTQはイスラエルの専売特許ではないし、LGBTQ当事者は日本にもイスラエルにも、当然、パレスチナにもいる。LGBTQの人権と、パレスチナへの連帯を天秤にかけるべきではない。

きれいごとかもしれないが、LGBTQとパレスチナ、双方に連帯するために私は友人と一緒に歩く。(障害当事者)

元広告デザイナーとJリーガー 農業への思いつなげ地域の輪広げる つくば

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ワニナルプロジェクト代表の青木さん=つくば市上郷、ブルーベリー観光農園「アオニサイファーム」

20日 研究学園駅前公園で「ワニナルフェス」

広告デザイナーから転身しつくば市で新規就農した青木真矢さん(44)と、元Jリーガーの近藤直也さん(40)が、「農業×〇〇」で地域を盛り上げようと、地元農家の直売店を中心にキッチンカーなどが出店する体験型マルシェ「ワニナルフェス」を開催し地域の輪を広げている。20日、つくば市学園南、研究学園駅前公園で8回目の同フェスを開催し。およそ40店が出店する。

若者の活躍の場を提供したい

主催するのは農業を中心に地域活性化を目指す合同会社「ワニナルプロジェクト」(代表青木さん、近藤さん)。地域のコミュニティーをつくろうと2021年に立ち上げた。

青木さんが広告デザイナーだった経験を生かし、農家に取材して発信していたところ、SNSで農業に関心のある地元大学生などとつながり、取材班を結成。昨年1月、市のアイラブつくばまちづくり補助事業で活動補助を受け、クラウドファンディングでも支援金を集めて、つくばの農業の魅力を発信する季刊誌「ワニナルペーパー」を創刊した。市内を中心に1万部を約200カ所で無料配布している。セカンドキャリア、セカンドライフで異業種から新規就農した人のインタビューを掲載し、農業に参入したいと考える人の情報誌としての役割も果たしている。

昨年発行された「ワニナルペーパー」第3号と第4号

取材する中で、こだわりを持って栽培する農家の思いを知り、消費者が直接、生産者の顔を見て農作物や加工品を購入できるイベントを企画。農業を核としてスポーツや音楽など地域の若い人たちがクリエイティブに活躍する場にもなればと、昨年5月「ワニナルフェス」を始めた。月1回のペースで開催し、前回はおよそ500人が来場した。

異業種の2人がタッグ

代表の青木さんは京都府出身。現在つくば市上郷でブルーベリーの観光農園「アオニサイファーム」と併設のカフェを運営する。同じく代表の近藤さんは、元Jリーガーで「DOサッカークラブ」(土浦市荒川沖)などを運営する。アスリートのセカンドキャリアとして農業分野の活動を模索している。

異業種から農業に関わろうとする2人がタッグを組んだプロジェクトは「農業×クリエイティブ」、「農業×アスリート」の掛け合わせで新しい価値を産み出し、地域の輪を着実に広げ始めている。

2月の「ワニナルフェス」の様子(ワニナルプロジェクト提供)

青木さんは「こだわりあふれる地元農家の季節の新鮮野菜を中心に、キッチンカーや飲食店、雑貨、ワークショップ、スポーツ体験など、週末を満喫できるわくわくを集めた。つくばの多彩な魅力を感じることができる、まさに『輪になる(ワニナル)フェス』。ご来場をお待ちしてます」と話す。

20日は、筑波大の理系学生2人が作る「阿吽(あうん)の焼き芋」や、ワイン用ふどうを栽培する「つくばヴィンヤード」、米と日本酒を作る「四喜佳通販」など、農家の店10店が参加する。「乗馬クラブクレイン茨城」によるポニーのお世話体験や、ボクシングジム「アイディアル スペース(ideal space)」によるキックボクシングとミット打ち体験、絵本の読み聞かせなど、体験やワークショップのブースが充実し家族連れで楽しめる。(田中めぐみ)

◆「ワニナルフェスvol.7」は、4月20日(土)午前10時~午後4時、TX研究学園駅近くのつくば市学園南2-1、研究学園駅前公園で開催。入場無料。雨天決行、荒天中止。駐車場は周辺の有料駐車場利用を。問い合わせは電話029-811-6275(ワニナルプロジェクト、受付時間/平日午前10時~午後6時)へ。

伝説の「木辺鏡」用い天体望遠鏡組み立て 土浦三高科学部生徒

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月に望遠鏡を向ける元木さんと科学部メンバー=土浦三高

天文学習活動が盛んな県立土浦三高(土浦市大岩田、渡邊聡校長)科学部の生徒が、「木辺鏡」と呼ばれる伝説的な反射鏡を用い、口径206ミリの本格的な天体望遠鏡を組み立てた。16日に校内向けに披露され、5月には一般公開での天体観望会を予定している。木辺鏡は、「レンズ和尚」と呼ばれ戦後日本の天文学発展の基礎を支えた木辺成麿(きべ・しげまろ、1912-1990)が作成したレンズ。

3年生の元木富太さん(17)が組み立てた。科学部顧問の岡村典夫教諭(62)に誘われ、2年次の探究学習で約1年をかけ望遠鏡作りに取り組んだ。反射望遠鏡は、天体からの光を受け取る主鏡と、反射した光を屈折させて観測者に送る斜鏡という一対の光学レンズからなる。2鏡の距離が適切となるよう、鏡筒と支持枠によって再構成し、木枠で台座につなぎとめる作業を行った。

前任の教諭が所蔵

元木さんと、再構築した.反射望遠鏡。円筒部の基底に「木辺鏡」の主鏡がある

反射望遠鏡の性能は、主鏡(対物鏡)で決まる。木辺鏡はガラスを凹面に磨き、アルミメッキして鏡面仕上げを施したものだ。浄土真宗の僧侶だった木辺は、京都大学花山天文台の中村要技官に学び光学技術者となった。戦後、レンズ磨きの名人として知られるようになり、同天文台のために口径600ミリの反射望遠鏡を作るなどした。

1960年代、主に西日本各地の天文台などに採用されたが、関東地方での採用例は少なく、半世紀を経て、天文ファンの間では伝説的な科学遺産になっていた。この主鏡・斜鏡のセットを個人で所蔵していたのが岡村教諭の前任の地学教諭である宮沢利春さん(75)で、退任後に活用を岡村教諭に託した。

経年変化から反射鏡のメッキが劣化するなどしていたが、岡村教諭が再構築を生徒に呼び掛けたところ、元木さんが応じた。同校科学部は望遠鏡を自作する天体観測などで知られ、その活動は直木賞作家、辻村深月著「この夏の星を見る」(2023年、角川書店)のモデルにもなった。

岡村教諭によれば口径203ミリなら市販望遠鏡の鏡筒が使えたが206ミリの主鏡はこれに収まらない。天体観測ではこの3ミリ差は大きく、アルミ製の円筒3つを三角形の支柱でつなぎ合わせるトラス構造の設計を提案、元木さんが2鏡間の距離や構造の計算を行い、科学部メンバーの協力を得ながら工作に取り組んだ。主鏡を裏面で3方向から支える支持枠の固定に苦心し、留め具のねじ1本から手作りした。

土星の環もはっきり

反射望遠鏡を用い撮影した月の写真(16日午後6時過ぎ、土浦三高・小野栄樹さん撮影)

概ね完成した反射望遠鏡は長さ1.3メートル、重さ11.5キロ、これを市販の三脚に取り付けて天体を追尾し観測する。校内での完成披露は16日に行われ、日没時の観測では天頂部にあった上弦の月を雲間にとらえた。関係した科学部メンバーや教師らが接眼部をのぞき込み「クレーターまできれいに見える」など歓声をあげた。

元木さんは「今回は月を見ただけだが、この口径があれば惑星までとらえられる。土星の環もはっきり見えるはず」と上々の出来に胸を張った。今後、資金的なめどがたてば主鏡の再メッキを行いたい考えで、一般の観望会は5月17日に予定される。(相澤冬樹)

デイズタウンの「季彩 かがり」《ご飯は世界を救う》61

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イラストは筆者

【コラム・川浪せつ子】コロナの終わりが視野に入ってきたといわれますが、つくば市内の飲食店に様変わりがありました。私の大好きだった居酒屋が閉店。悲しい。和食を食べるのにどこに行ったらいいのだろう…。そんなとき見つけたのが、TXつくば駅近く「デイズタウン」地下1階の「季彩 かがり」さん(竹園1丁目)。

デイズタウンは、この中にあったスーパーがなくなってから、足が遠のいていましたが、地下へ階段を降りてみて見つけました。かなり以前からあったのね。和風宴会だけかと思っていたら、ランチがすごい。おいしくて低価格。これでいいのか、こちらが心配になるほど。

今回はお刺身セットを注文しましたが、日替わり定食もあります。千円出しておつりがたくさんきます。

中でもお気に入りは「コロッケ定食」。絵にはしにくい、何でもないジャガイモコロッケなのだけど、おいしい。鶏のから揚げの上には大根おろし。体に優しい「とり雑炊」。私の好きな「親子丼」。グルメレポートはしないのですが、言いたくなってしまう。隠れ家的なランチ場所ですね。

夢が広がる空間 本屋さんも

また、デイズタウンには、スーパーがあった所に書店が入りました。ララガーデンが1年ほど前に閉店し、そこに入っていた本屋さん。

ネットで何でも買える時代になりましたが、やはり書籍は手に取ってセレクトしたい。そして、本屋さんでは思いがけない、ステキな出合い本もあるのです。人生の方向性を示してくれる本があることも…。

この本屋さんでは雑貨なども販売。友人などへの、ちょっとしたプレゼントにも活躍しています。今、日本中の本屋さんが閉店の危機と聞きますが、これからは夢の広がる空間、物・体験を提案していってくれる場所になったらなぁ、と思います。(イラストレーター)

障害者福祉事業者と留学生に助成金と奨学金贈呈 筑波銀行

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贈呈式に臨んだ筑波銀行の山田孝行上席執行役員営業本部長(左から4人目)と、助成金・奨学金の対象者たち

社会貢献活動として筑波銀行(本部・つくば市竹園、生田雅彦頭取)が実施している障害者福祉事業に対する助成金と、留学生を対象とした奨学金の贈呈式が17日、つくば市竹園の同行本部で催された。今年は県内の4福祉事業所と3人の留学生にそれぞれ贈呈された。

筑波銀行が進めるSDGs(持続可能な開発目標)推進プロジェクト「あゆみ」の取り組みの一環。公益信託「筑波銀行愛の社会福祉基金」による助成金は、県内の民間事業者を対象に1992年から始まった。同「筑波銀行記念奨学金」による奨学金はアジアの国や地域から来日し県内の大学で学ぶ留学生を対象に1990年に設立された。対象となったのはこれまで、助成金が延べ82事業所88施設、奨学金は106人となっている。毎年募集し、運営委員会の審査によって対象が決められる。

愛の社会福祉基金による助成対象となった、土浦市中村南で放課後等デイサービスと生活介護事業を営むNPO法人サポートハウスにれの木代表の石川弥生さんは「これまで地域に密着しながら活動をしてきた。5月1日からは、筑波銀行の融資を受けて購入した阿見町実穀に移転するが、改めて地域の方々と交流しながら『にれの木』のように根を下ろし、さまざまなことにチャレンジしていきたい」とし、「今回の助成金は、新しくなる施設で使う冷蔵庫と洗濯機の購入費に使いたい」と話した。

奨学金の贈呈を受けた中国出身で日本国際学園大学(旧筑波学院大学)経営情報学部ビジネスデザイン学科3年の王欣欣さんは「日本と中国の文化を比較し、特に服にどのような違いがあるのかを研究したい」と語った。インドネシア出身で筑波大生命環境学群地球学類2年のアズハリ・ファディヤ・サキナさんは「大学では災害対応を中心に季節ごとの避難計画を具体的に研究し、人々に一番近い避難場所を伝えるアプリを作りたい」と目標を語った。

あいさつに立った筑波銀行の山田孝行上席執行役員営業本部長は「SDGs推進プロジェクト『あゆみ』のもと、(筑波銀行は)社会的課題の解決を通じて地域と共に持続的成長モデルの構築に取り組んでいる。引き続き地域の未来のために、地域になくてはならない銀行を目指してさまざまな活動をしていきたい」と語った。(柴田大輔)

化け猫映画vs.ゾンビ映画《映画探偵団》75

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イラストは筆者

【コラム・冠木新市】化け猫映画の『怪談佐賀騒動』(1953)を見返したが、今見ても怖かった。SFXのすぐれたハリウッドホラー映画や演出のテクニックがさえるジャパンホラー映画より、因果応報を描いた化け猫映画のほうが怖い。多分、子どもの頃に見た化け猫映画のトラウマで怖さを感じてしまうのだろう。

化け猫映画とは、悪い奴のいじめによって非業の死をとげた主人の飼い猫が化け猫となり仇(かたき)をとる話だ。つり上がった目、真っ赤に裂けた唇、ぴょこんと立った両耳の姿で悪党たちに襲いかかる。観客は仇を討とうする化け猫を応援し感情移入するべきなのだが、化け猫のあまりの不気味さに襲われる悪党側の気持ちになって恐怖を感じてしまうのだ。

化け猫映画の歴史は古い。明治時代の『鍋島の猫』(1912)に始まる。私が初めて見たのが新東宝の『亡霊怪猫屋敷』(1958)。怖くて夜中トイレに一人で行けなかった。子どもの私に化け猫映画を見せた大人は誰だろうか。

化け猫女優・入江たか子

その後、化け猫映画の歴史を調べ、戦前の化け猫スタアは鈴木澄子、戦後は入江たか子だと知る。入江たか子には覚えがあった。

黒澤明監督の『椿三十郎』(1962)に家老の奥方が出てくる。貫禄があり、主役の三船敏郎に引けを取らず存在感を示し、上品な雰囲気を醸し出していた。入江は華族出身の戦前の大スタアで、女優で初めてプロダクションを作った映画史に残る美人女優である。だが、戦後は一転して化け猫女優として人気を得る。

①『怪談佐賀騒動』(1953) のヒットを皮切りに 、②『怪猫有馬御殿』(1953)は12月29日公開のお正月映画である。当時、新年から化け猫映画を見る観客がいたわけだから、いかにすさまじい人気だったかが分かる。翌年には2本製作され、③『怪猫岡崎騒動』(1954)はシリーズ最高のヒットを記録した。④『怪猫逢魔ケ辻󠄀』(1954)もお正月映画だった。⑤『怪猫夜泣き沼』(1957)が最後で、入江たか子は5年で5本の作品を残した。

ハリウッドのゾンビ映画

それからも、日本映画界で化け猫映画は何本も作られるが、東映の『怪猫トルコ風呂』(1975)を最後にその歴史は途絶える。ホラーとお色気とコメディーを合わせ持つこの作品を期待して見たが、少しも怖くなくて失望した。だが今では、カルト映画として人気が上がってきている。

化け猫映画が途絶えた頃から、ハリウッドのゾンビ映画が続々作られた。ゾンビ映画の歴史も古い。『恐怖城』(1932)が始まりだから、かれこれ90年も続いている。私は、ゾンビ映画が好きではない。ゾンビは理由もなく健康な人々に襲いかかり、仲間を増やしていく。一体、何が目的なのだろうか。

この30数年、子どもたちの不登校問題が話題になっている。その背景は、いじめに原因があるような気がしてならない。もしや、この30数年次々と公開されたゾンビ映画の人気と関連しているのではと妄想してしまう。

ゾンビと比較すれば、化け猫のほうが健康的である。子どもたちに化け猫映画を見せ、いじめると化け猫に襲われると、因果応報を無意識に刷り込んだらどうだろうか。こんなこと言うと、寄ってたかって匿名の人たちに批判されるかな?  サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

40人の作家が自由な心を表現 「現展」40回記念展開幕 つくば

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40回目を迎えた茨城現展。支部長の佐野幸子さん(中央)、佐々木量代さん(右から2人目)、福田徹さん(右端)

第40回「茨城現展」が県つくば美術館(つくば市吾妻)で16日始まった。現代美術家協会茨城支部(佐野幸子支部長)会員や一般応募による約40人の作家の作品130点余りが展示されている。モットーは個人を尊重し、権力におもねらない自由な創作活動をすること。絵画や立体、工芸、写真など多様な作品が並ぶ。

「40回目の記念展にふさわしい高いレベルの作品がそろいました」と語るのは、同支部長の佐野幸子さん。今年成人を迎えた孫への思いを込めた絵画作品「晴れの日」、コロナ禍での心の葛藤を黒、赤、緑などの波と球体で表現した「葛藤」、日々移り変わる心の有様を描いた「想」の3点を展示する。佐野さんが作品制作で心掛けるのは、自分の心を表現すること。「世界で戦争が続き、あらゆる情報が波のように日々押し寄せる。世の動きとともに人の心も揺らぎ続ける。思うがまま、自分の心を自由に表現する」と話す。

会場には立体、工芸作品も多数展示されている

今回が2回目の出展となるつくば市在住の福田徹さん(70)は、モニター上で無数の黒点が増殖、分裂、消滅を繰り返す仮想細胞の動きを映像作品にした。もとになるのが「ライフゲーム」という1970年にイギリスの数学者ジョン・ホートン・コンウェイが考案した生命の誕生、進化、淘汰などのプロセスを再現したシミュレーションゲームだ。

画家の佐々木量代さん(73)の作品は、ロシアのウクライナ侵攻への憤りをもとに描いた「踏み入る」と、和紙に風に舞い上がる花びらを鮮やかに表現した「乱舞」。蜜蝋を使うことで立体感のある作品になっている。佐々木さんが水彩画を描き始めたのは30年前。50歳でさらに技術を磨こうと美大に入学し若者たちと切磋琢磨した。現在は絵画教室とともにつくば市内で個人ギャラリーを主宰する。「現展はチャレンジの場所。年に一度集まり色々な作品に出合い刺激を受けている。新しい世界を広げていきたい」と思いを語る。

茨城支部長の佐野さんは「今回は20代から70代まで様々な作家が集まった。40回目を迎えたが、より若い方たちにも参加してもらいたい。『現展』は何者にも縛られない自由な会。お互いを尊重しながら刺激し合い、これからも高め合っていきたい」と語った。(柴田大輔)

◆第40回記念茨城現展は、茨城県つくば美術館で4月21日(日)まで開催。開館時間は午前9時30分から午後5時、最終日は午後3時まで。入場無料。20日(土)午後2時半からは、展示会場内で講評会が開かれる。参加無料。詳細はつくば美術館のホームページへ。

園児と児童がけが つくば市立幼稚園と小学校で昨年12月

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つくば市役所

つくば市の市立上郷幼稚園と沼崎小学校で昨年12月、それぞれ園児と児童がけがを負い医療機関を受診する事故が発生していたことが分かった。市は、19日開会の市議会定例会に事故の報告議案を提案する。

上郷幼稚園では、教室で工作をしていた園児が、誤って相手の園児の指先を切ってしまい、5歳の園児が左手薬指の指先と爪の先に切り傷を負った。沼崎小では小学6年の児童が校庭に落ちていたくぎを踏み、足の裏にけがを負った。

年齢に合わせた教材選びへ

同市教育局学務課によると、上郷幼稚園の年長児の教室で昨年12月21日午後2時45分ごろ、厚みのある段ボールをはさみで切る工作を実施し、一人の園児が左手で段ボールを抑え右手ではさみを持ち段ボールを切っていた。作業を手伝おうと、別の園児が反対側から段ボールにはさみを入れたところ、誤って、段ボールを抑えていた相手の園児の左手薬指の指先を切ってしまった。

当時、教室には担任など教諭らが3人いたが、事故時は別の子どもたちを見ていて、けがをした園児らを見ていなかった。

同園は止血など応急処置をし、教諭2人がけがをした園児を医療機関に連れて行ったが、処置が難しいと言われ、園児は同医療機関から救急車で総合病院に運ばれ治療を受けた。全治2週間と診断されたが、爪の傷の回復が長引き、3月の春休みまでに完治したという。

市は、材料の段ボールに厚みがあり、5歳児にははさみで切りにくかったとして、今後、年齢に合わせた教材選びをするよう改善していくとしている。

同幼稚園を管理する市は園児や保護者に対し、治療費など6万9475円を支払うことで3月中旬に和解したとしている。

体育倉庫周辺を立ち入り禁止に

沼崎小学校では昨年12月22日午前9時15分ごろ、校庭で、6年生がレクリエーションで鬼あそびをしていた時、児童の一人が校庭の鉄棒付近で、落ちていたくぎを踏み、右足の裏にけがを負った。

市教育局教育施設課によると、くぎは長さ2.5センチくらいで、靴を貫通し児童の足の裏には血がにじんでいたという。児童は保健室で消毒などの応急処置を受け、連絡を受けた保護者と医療機関で治療を受けた。

くぎは、鉄棒近くにある古い体育倉庫の建物から抜け落ちたとみられるという。市は事故発生を受けて、体育倉庫周辺に児童が近づかないよう、エリアを定めて児童を立ち入り禁止にしている。体育倉庫には体育の備品などが入っており、必要な場合は教員が出し入れをしている。

同小を管理する市は、児童と保護者に対し治療費など2万4202円を支払い4月10日に和解したとしている。

町の「光」を観る《デザインを考える》7

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焼き畑の女たち(左)、コド漁

【コラム・三橋俊雄】1988年、私が所属する研究室に、新潟県のS町から「観光開発基本計画」の依頼がありました。S町は大小48の集落が河川流域と海岸線に沿って分布し、約1万人の人びとが居住している高齢化・過疎化の進む町でした。

私たちは、本計画案策定にあたり、「観光」の本来の捉え方を、古代中国・周時代の『易経』にならい、「町の光を観(み)る」ことに置きました。はじめに、半年をかけて「町の光」の総点検を行うことにしました。その「光」のいくつかを、写真とあわせて紹介しましょう。

焼き畑の女たち

S町の焼き畑は8月お盆にかけて行われ、主人公は女たちです。この町特有の「ボシ」と呼ばれる頭巾(ずきん)をかぶり、ナタやクワを手にして、焼き畑の左右の縁に陣取ります。深夜零時に火入れ、その後、枯れ草に火を移しながら、山の上部から下部へ向かって順に広げていきます。

火は次第に燃え広がり、隣接しているスギ林や夜空までをも鮮やかに浮き出させます。飛び火や延焼から火を守る女たちの堂々とした姿は、めらめらと燃え盛る炎に照らされて、エロティシズムさえ感じさせるほどです。明朝、灰の熱いうちに赤カブの種をまきます。

コド漁

サケの上る道を推定して川底の砂をかき取り、「スジ」と呼ばれる魚道を作ります。その魚道の脇に、流れと直角に雑木の柵を打ち込み、その上に笹をかぶせます。川を上ってきたサケが、笹の下のよどみで一休みしているところを、長い竿(さお)の先にある「カギ」で素早くかき取ります。この伝統的な漁は9月から12月まで行われます。

シナ布(左)、奉納相撲

八幡様の奉納相撲

筥堅(はこがた)八幡宮のある集落では、氏子たちが中心となり秋季例大祭が催されます。小中学生が担ぐ子ども神輿(みこし)には大人たちが大きな声でゲキをとばしたり、神輿の方向を直したり、あれこれ世話を焼き、女子高生とお母さんたちは、そろいの浴衣姿で「勝木小唄」や「佐渡おけさ」などを踊りながら、集落を練り歩きます。また、境内では庄内・越後の対抗奉納相撲がおこなわれます。

シナ布

シナ布は、北日本に多く自生するシナの木を原料とする、麻に似た感触の織物です。その工程のほとんどが昔ながらの手仕事で、豪雪地帯における冬場の家内仕事として細々と受け継がれてきました。Kさんは、その「シナ織」の技術を用いてバッグなどの製品化を試み、郷土工芸の一つとして、町の欠かせない物産となっています。

内発的な地域づくり

このような事例から、人びとの「町の光を消してはならぬ」との強い思いを見てとることができます。「観光」とは、日常の暮らしの中に「光」を発見し、それらを地域の「誇り」や「喜び」として再確認し、守り、磨き、町内外に「知らしめ」「分かち合う」ことであり、それが「町の光を観る」という、内発的な地域づくりの姿勢であると強く感じました。(ソーシャルデザイナー)

新商品開発プロセスや地域古来の文化を紹介 つくばのワイナリー メルマガ創刊

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メールマガジン

ブドウ栽培の仲間を増やしたい

つくば市栗原でブドウ栽培とワインづくりを営む「つくばヴィンヤード」の高橋学代表(69)は、ブドウ畑の1年を紹介し、栗原醸造所として生産するワインについてつづったメールマガジンの配信を始めた。

以前からインターネット上にホームページを開設しているが、より能動的に情報発信し、商品開発のプロセスやブドウ栽培の面白さ、苦労などを伝えるのが狙いだ。

メールマガジンは今年2月に創刊され、PDF形式のファイルが添付されメール配信される。現在第4号が配信されたところで、月1回の発信ペースも安定してきた。

つくばヴィンヤードの高橋代表(左)

「正直なところを言うと、ワインの原料となるブドウ生産の人手が足りないのです。昨年、猛暑などの影響が出て畑仕事が追い付かず、ブドウの一部を収穫できずに廃棄することになりました」

高橋代表は、ホームページの情報発信はアピールの入り口に過ぎないと考え、興味を持ってくれる人々に可能な限りオンタイムなニュースを送り出そうとメールマガジン編集に取り組んだ。

「畑仕事ですから面白いと言いながらも様々な苦労と努力がついて回る。それを伝えながら、一緒にブドウ栽培に従事してくれる仲間を増やしたい。そのためには1年を通したブドウづくりの話と、つくば市の栗原から送り出されるワインの開発プロセスなどの詳細をつづっています」

収穫への下地作りが進むブドウ農場

4月中旬のブドウ畑にはまだ実りの風景はない。しかし広大な農場の隅々まで雑草が摘み取られ土の改良が進み、今年の収穫に向けた準備が行き届いている。スタッフだけでなく、高橋代表の心意気に触れた人々の協力によってブドウ畑は維持管理されている。

メールマガジンによれば、日常の畑仕事やブドウづくりの講習会などに訪れた人の中から、栗原で土地を借り受けたり、それぞれの地元にノウハウを持ち帰ったりしながらブドウの種植えを始めた仲間が増えてきたという。

新商品「栗原の白布」を開発

5月に発売される予定の新商品

今年発売される新商品に、完全瓶内2次発酵スパークリングワインがある。地名を用いて「栗原の白布」と名付けた。メールマガジンはその生産設備導入のニュースや商品展開準備についてまとめている。注目されるのは「栗原の白布」という名称の由来についてつづられたリポート連載だ。

約1300年前にさかのぼり、その名は歴史に登場する。白布(はくふ)とは麻で編まれたもので、栗原の地で生産され東大寺正倉院に税として献上されていた良質の布であるという。

「この逸話はワイン会に参加している人から教えていただきました。栗原はそれほど素晴らしいところだったのかとうれしくなりましたよ。形は変わるけれど、私たちか栗原でつくるワインにこの名前をいただき、さらに未来へと橋渡ししたい。つくばの栗原からワインづくりという情報を発信をする上で、このことは非常に大事なことだと考えています」

メールマガジンで紹介されている製造機械の写真

これまでは、つくばの地でワインができるという意外性が耳目を集めてきた。気候風土は、決して信州や甲州に引けを取らないという自信にもつながった。

この豊かな風土は遠い過去においても白布生産の形でモノづくりの礎を残していた。地域の人々からも「畑を耕すとたくさんの土器が出てくる」と教えられていたが、つくばヴィンヤードでも破損の少ない弥生土器が出土し、ヒトが営む文明・文化の痕跡を見出すことができる。白布の逸話に出合ったことで、栗原のワインはそれを継承する農業文化の一つとして歩を進めたことになる。

メールマガジンの連載は魅力にあふれた郷土史の域にまでリポートを拡げている。この勢いを月に一度配信するのは大変ではないかと高橋代表に尋ねると、楽しげな答えが返ってきた。

つくばのブドウ栽培を地域の文化に

「『栗原の白布』については次回のリポートで完結します。まだまだ伝えたいことがたくさんあるんです。もともと研究者でしたからリポート作成は苦にならないし、業務の報告書をまとめることに比べたら楽しいことこの上ありませんよ」

「栗原の白布」は新たに導入された瓶詰機械を通し、専用のエチケット(ラベルのこと)デザインが出来上がるのを待つ状態。順調に準備できれば5月中旬に発売される予定。次号メールマガジンのトピックとなりそうだ。(鴨志田隆之)

◆つくばヴィンヤードのホームページはこちら

◆つくばヴィンヤードの過去記事はこちら
➡地元ホテル、ワイナリーとコラボ(23年10月23日付
➡つくばワイン特区第1号のワイナリー稼働(20年10月16日付
➡つくばワイン育てる土壌つくりたい(19年1月24日付
➡つくば市がワイン特区に認定(17年12月27日付

つくば洞峰公園問題を総括する《吾妻カガミ》181

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茨城県庁(左)とつくば市役所

【コラム・坂本栄】寄稿「つくば洞峰公園市営化で市長が隠していたこと」(4月2日掲載)で、酒井泉氏は市の広報紙「かわら版」30号では市民が共有すべき事実が伏せられていると指摘、市長は民主主義の基本が分かっていないと批判しています。私は、①交渉力の乏しさ、②財政運営の甘さ、③市民調査のおかしさ―について指摘しておきます。

明らかな事実A:器量不足

コラム175「… 県案丸呑みの不思議」(1月15日掲載)で、「県から公園を無償で譲り受けるに至るプロセスで、知事と市長の間でまともな話し合いが無く、…維持管理費を丸々押し付けられた」と書きました。

国と県が主導して建設した学園都市の洞峰公園は、県の財産であると同時に市民が自慢する公園です。こういった施設の運営方法をめぐって、知事と市長の意思疎通が2年にわたり不十分であったというのは異常です。

175で引用した市議の発言によると「市長が知事にアポを取って話し合ったことは一度もない。何度も直接協議するよう求めたが、その気配すらなかった」「一部市民から県の計画に反対する声が出たあと、市長は県に懸念を伝えたとSNS(ネット発信ツール)に書き込んでいた」そうですから、市長の交渉力(首長に必須の器量)には疑問符が付きます。

明らかな事実B:甘々財政

洞峰公園問題は、園内の野球場に設けるアウトドア施設の運営益を公園管理費の足しにしたい県と、都市公園をいじらないよう求める市がぶつかる形で始まりした。結局、公園部分どころか体育館施設も市に移管されましたから、管理費負担の面では県の勝利でした。

「かわら版」では、公園市営化で「…樹木が立ち並ぶ緑豊かな環境」が維持できると、プラス面を強調しています。新規財政負担(マイナス面)に触れたのは「維持管理費約1億5000万円/年度 目標使用年数(80年)を実現するための施設修繕費約3500万円/年度」の1行だけです。財政面での敗北を知られたくなかったようです。

171「…『劣化』容認計画」(23年11月20日掲載)でも取り上げたように、1億5000万円+3500万円の年間経費は、園内施設を修理~修理で済ませ、老朽化しても更新しない「ケチ・ボロ」計画です。こういった雑な施設維持に加え、将来必要な体育館建て替えなどを考えると、甘々で無責任な財政運営です。

明らかな事実C:誘導操作

「かわら版」では、洞峰公園を無償で譲り受けることの是非を聞いたアンケート結果を紹介しています。それによると、「賛成」+「どちらかといえば賛成」が74%だったそうです。

172「…市の変な調査」(23年12月4日掲載)で、「これは市民の判断を『昰』に誘導する手法であり、市民の声をきちんと聞く調査とは言えません」と書きました。そして、この種の調査の基本である回答者無作為抽出を避けており、「調査の体を成していない」と指摘しました。

市の調査は、希望者だけに回答用紙を箱に入れさせる+市のHPに書き込ませる方式ですから、賛成者を動員することで結果を操作できます。市民の声を公平に聞くには、新聞やテレビが実施する世論調査方式(回答者を無作為に選ぶやり方)でなければ意味がありません。「賛成74%」はこういった誘導操作で作られた数字です。

クリアになった迷走の構図

緑地部の現状を維持し市の負担を抑える方策はなかったのでしょうか? ありました。例えば、153「…住民投票が必要?」(23年3月20日掲載)で示した霞ケ浦総合公園方式(土浦市と県が共同管理)です。体育館などは県に任せ、緑地部などを市が管理する方式(管理下の野球場はいじらない)で、これなら市の財政負担は半分以下で済みます。

試しにアウトドア施設を認め、迷惑施設と分かったら撤去させる手もありました(逆に大騒ぎするような施設ではないことが分かったかもしれません)。これなら市の負担はゼロです。いずれの策も、力量不足(A)では無理だったでしょう。結果、財政負担(B)が生じ、AとBをごまかすために市論操作(C)に動いた―これが洞峰公園問題の構図です。(経済ジャーナリスト)

「さくらまつり」と「みんなでゴミ拾い」《けんがくひろば》5

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けんがくさくらまつり(3月末撮影)

【コラム・島田由美子】2月のこの欄で告知した「けんがく さくらまつり2024」が、3月30日、TX研究学園駅前公園の古民家周辺で開催されました。今回はその報告と、けんがく(研究学園駅周辺)地区で気軽に参加できる活動「研究学園 みんなでゴミ拾い」を紹介します。

いろいろなイベントで世代交流

さくらまつり当日は天気に恵まれ、大勢の住民の方においでいただきました。様々な世代が集まり、シニアグループにグラウンドゴルフを教わる中学生や、おじいさんと昔あそびを楽しむ親子連れの姿が見られました。古民家内には、子どもたちの書や大人たちの水彩画やクラフト作品が展示されました。

縁側前のステージでも、サロンのウクレレグループや研究学園中学校吹奏学部の演奏からガマの油売り口上まで、バラエティーに富んだパフォーマンスが披露され、目指していた「地域の文化祭&新歓祭」を実現できました。

さくらまつりを主催した「けんがく まちづくり実行委員会」の目的はイベントを催すこと自体ではなく、イベントをツールとして、地区の活動団体が連携し、まちをよりよくすることです。

今回、初めての試みとして、「けんがく まちづくりコーナー」を設け、地区の20年間の移り変わりが分かる写真や地区の活動団体をマッピングした地図などを展示しました。来場者の方々にも「けんがくの夢」を桜型の付せんに書いていただき、大きな桜の木を完成させました。

また当日、イベントマップと一緒に、活動団体の活動を一覧にした「けんがく まちづくりカレンダー」を配布し、興味をもった団体にコンタクトしやすいようにしました。

ゴミを拾いながら情報もゲット

新年度になり、新しいことを始めたい人や地区に移ってきて知り合いをつくりたい方にぴったりのイベントが 「研究学園 みんなでゴミ拾い」。研究学園グリーンネックレス タウンの会が2019年から主催しています。このイベントの目的は、おしゃべり。ワイワイガヤガヤお話しながら、まちを歩いて、友達を見つけたり、お店を発見したり、新情報をゲットしたりします。そのおまけとして、まちもきれいにします。

月に1回、活動を初めてから今年で6年目になります。コロナ禍の時期、当初は中止していましたが、「ゴミ拾い」は3密にならないため、少し落ち着いてから再開し、遠出ができず、娯楽施設にも遊びに行けないご家族に楽しんでいただきました。

先月、毎回参加してくれていたご家族のお母さんに「転勤族なので、もうすぐ引っ越します。このゴミ拾いはまちに慣れていなくても参加しやすく、子どもたちも毎回、楽しみにしていました」と言っていただき、この活動の意義が再確認できました。今後も無理なく続けていきます。(けんがくまちづくり実行委員会 研究学園グリーンネックレスタウンの会 代表)

「みんなでゴミ拾い」を終えて

<みんなでゴミ拾い>

▽4月28日(日)午前10~11時、研究学園駅北口集合、ゴミ袋でモンスターこいのぼり作り、花菖蒲プレゼント。

▽5月26日(日)、7月7日(日):場所、時間、催しの問い合わせはこちら

防災ヘリ出動し避難訓練 土浦の高層マンション

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初めて防災ヘリコプターによる救助訓練が行われた

「要配慮者」の避難に課題

土浦駅西口前の県内最高層マンション、ソリッドタワーで13日、マンションの管理組合が主催して火災発生を想定した避難訓練が行われ、住民約60人が参加した。この日は初めての取り組みとして、県防災航空隊の防災ヘリコプターによる救助訓練のほか、土浦消防署による煙体験ハウスを使用した避難体験が実施され大規模な訓練となった。

同市大和町のソリッドタワーは土浦駅に直結する地上31階、高さ109メートルのマンションで、戸数180戸。マンションとしては県内で最も高層で、建築物としては県庁(水戸市笠原)に次ぐ2番目の高さになる。地下1階から地上6階は土浦市役所、県南生涯学習センターのほかスーパー・カスミなどの商業施設が入っている。

避難訓練を主催したウララ管理組合住宅部の北田弘巳会長(中央)。住民に避難器具を説明する

午前9時45分、22階の一室からの火災発生を想定し、初期消火の模擬実施とともにマンション内にサイレンが鳴り響く。「避難してください」という管理組合員の呼び掛けで避難が始まった。9階駐車場に避難者が集まり点呼をとると、間も無く防災ヘリコプターが飛来しマンション上空で静止、防災航空隊員がマンション屋上へとゆっくり降下し救助訓練を開始した。

参加した80代の男性は「これだけの規模のものは初めて。(煙が充満した)煙ハウスは先が全く見えず怖かった。東日本大震災ではガスが止まり風呂にも入れなくなった。改めて水や食料など備品を用意したい」と語った。模擬消火器による消火体験に参加した照屋秀明さん(6)は「(消火器体験は)2度目だけど、少し怖かった。ヘリコプターは迫力がありかっこよかった」とこの日の印象を話した。

子ども達も水による模擬消火器を体験した

この日の訓練に立ち会った土浦消防署副署長の飯田浩さんは「地震が起きた際には揺れが収まってから避難してほしい。火災発生時はまずブレーカーを落とすこと。東日本大震災では通電による火災が発生していた。避難の際には延焼を防ぐ意味でも(火元につながる)扉を閉めることが重要。近隣の年配の方に手を貸しながら、転ぶなど二次被害にも気をつけてほしい」と注意点を呼び掛けた。

普段から声掛け合えれば

この日の避難訓練を主催したウララ管理組合住宅部の北田弘巳部会長(67)は「毎年やってきた避難訓練だがこれほどの規模は初めて。より多くの人に関心を持って参加してもらいたいとの思いで実施した。能登や台湾での地震があり防災意識は高まっているが、どうすればいいかわからない人もいる」と言う。

高齢や障害等による「要配慮者」への対応が今後の課題だという

また同マンションには、高齢や病気、障害があるなどして災害時に一人で避難することが難しく周囲の支援が必要になるとして、管理組合や市に届け出をしている「要配慮者」が18世帯ある。しかし、届け出がされておらず、プライバシー保護の観点などから把握できていない世帯はさらに多いと北田さんは話す。

「市の防災課や老人福祉課とやりとりをしているが、(要配慮者を把握するために)どうするのが正解なのか答えは出ていない。防災意識を高めることで、自分の身は自分で守るという『自助』の意識と共に、同じフロアの人同士で普段から声を掛け合うなど、災害時に助け合えるよう意識を持ってほしい」と今後の課題を語った。(柴田大輔)

開幕3連敗 アストロプラネッツ つくばで巨人3軍に0-4

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茨城の先発、長尾は5回を投げ2安打2失点(撮影/高橋浩一)

プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツは12日、つくば市流星台のさくら運動公園野球場で、今季3戦目として読売ジャイアンツ3軍と対戦し0-4で敗れた。茨城は開幕3連敗。今季より選手兼任で指揮を執る巽慎悟監督は「アグレッシブなチャレンジを続け、勝利の喜びをファンと分かち合える野球をしたい」と巻き返しを誓う。

【ルートインBCリーグ2024準公式戦】4月12日、さくら運動公園野球場
茨城アストロプラネッツ-読売ジャイアンツ3軍
巨人 010010110 4
茨城 000000000 0

3回の大友のヒット。開幕戦で本塁打を放った大友はこの日も複数安打で気を吐いた

茨城の瀧上晶太主将は「投手が試合をつくってくれたのに、打撃陣が点を取れなかった。両者が補い合える展開にならなくては」と試合後に振り返った。開幕戦は打線が火を噴いたが投手が踏ん張れず、2戦目は投打とも良いところなし。そしてこの3戦目は完封負け。チャンスでの一打が出ないまま、小さなほころびから崩れていった。

茨城の先発投手は長尾光。今季埼玉から移籍してきたプロ4年目で、この日は最速149キロの直球を軸に組み立て、1・3・4回を3者凡退に抑えた。出色は4回の4番打者の攻略で、左打者を外角の出し入れで追い込み、最後は外へ逃げるボールで遊ゴロに引っかけさせた。

7回、途中出場の原海聖が左中間へ二塁打を放つ

残念だったのは2回の投球。2者連続の四球と送りバントで1死二・三塁、次打者には右翼への犠牲フライで、ノーヒットのまま1点を奪われた。5回には2連打で1点を失い、この回で予定通りマウンドを降りた。

次の失点は7回、投手は4人目の佐藤友紀。四球と投ゴロで1死二塁の場面、捕逸により走者が三進、これを防ごうとしたが悪送球で生還を許した。佐藤はツーシームやカットボールなど速球系の変化球が多彩だが、その小さく鋭く曲がる球が裏目に出て四球や捕逸を招いた。8回はアンダースローの伊藤龍介が登板、2死一塁から右翼へのヒットを土田佳武が処理を誤り1点を許した。

9回に登板、2三振と三ゴロで抑えた6人目の浅野森羅

この試合の茨城のヒットは5本。いずれも得点機となるが、あと一打が出ない。9回には2番・大友宗の左翼への二塁打と、3番・瀧上の中前打で無死二・三塁の絶好機を迎えるが、後続が抑えられ無得点に終わった。

「中継ぎ陣は先頭打者への四球が目立ち、ブルペンでの準備の仕方に課題が残った。打撃陣は甘い球をしっかりと仕留め、得点につなげたい」と巽監督の振り返り。今年度の取り組みとして「一つ目を決めきる」ことを大事にしているという。「打撃なら初球からストライクを見逃さずアグレッシブに振っていく。ほかにも守備や走塁の1歩目など、野球にはたくさんの『一つ目』がある。そこを意識することで集中力を研ぎ澄ませたい」との考えだ。

試合前、選手を見守る巽監督

昨季までの投手兼任コーチから、今季は投手兼任監督として采配を振るう。「プレーイングマネジャーという貴重な機会をもらえ、球団には感謝している。選手に呼び掛けている以上に、自分自身もチャレンジの意識で臨みたい」との姿勢だ。試合前の準備の仕方や心構え、あるいはマウンド上の駆け引きや配球など、選手たちには自らの背中を通じて伝えたいことも山ほどあるという。(池田充雄)

コロナ後 県南がまたベッドタウン化する? 《遊民通信》86

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【コラム・田口哲郎】

前略

コロナ禍では国土開発について、首都一極集中からの脱却と地方再生が謳(うた)われました。テレワークの推進や移住の促進で首都圏から地方への人口移動がなされた感じがします。阿見町は人口が5万人を突破しましたね。

でも、コロナ禍が一応の収束をみて、改めて見るとどうでしょうか。テレワークもとりあえずなんとなく減っている感じで、出勤が増えているような気がします。3月のダイヤ改正で、常磐線の品川駅〜土浦駅間は、10両編成の列車から15両編成列車への輸送力増強がなされたそうです。東京に通う人が増えているということなのでしょう。

そうなると、また常磐線の取手駅から土浦駅あたりは東京中心のベッドタウン化してしまうのではないか…。そんな予感が頭をよぎります。

たしかに、コロナ禍という災禍によってテレワークという、ずいぶん前から実用可能だった技術によって、物理的な人間の移動が不要な画期的な便利さが世に知らしめられたのは大いに良いことです。東京の街を歩いていても、以前のような全体的で慢性的な混雑はなく、インバウンドの旅行客で観光スポットは混んではいるものの、日本人の数は減っているようにも見えます。

それでも、首都東京の特権的な地位というのが、またじわじわと復活しているのは確かだと思います。この流れは止められないものなのか、とモヤモヤしていたのですが、東京を中心とする地方と中央の間の移動はいまに始まったことではなく、江戸時代にもあったことを知り、そうか仕方ないか、と思いました。

人の移動は経済効果を生む

ご存知の通り、江戸時代には参勤交代があり、外様大名は1年おきに国元と江戸を行き来しました。今のように数時間で東京に着ける時代ではないので、大名行列は道中、いくつもの宿場町に泊まり、そこで多額のお金を落とす。宿場町がある藩はその恩恵にあずかることができます。

人間が移動することは経済を動かすという視点に今さらながら気づかされました。逆に人間が移動しないと、経済圏がブロック化して、金の回りが鈍くなるような気がします。

コロナ禍は新たな可能性を示す結果になりました。でもそれを追求するばかりでは良くない。古来の人間の移動が経済のためにも大切だ。そもそも人間は「動」物なのだから。そんな必要性がまたじわじわと再認識されて、アフター・コロナのテレワークの減少につながっているのかもしれません。

そう考えると、人間の移動も無駄ではないし、茨城県南の街がベッドタウンとしての本領を発揮するのも悪いことではないと思えてきます。ごきげんよう。

草々

(散歩好きの文明批評家)

江戸から続く花壇で鑑賞を 筑波実験植物園で「さくらそう展」

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筑波大学つくば機能イノベーション研究センター准教授の吉岡洋輔さんと展示されているサクラソウ

筑波大保有の100種展示

国立科学博物館・筑波実験植物園(つくば市天久保)で13日からコレクション特別公開「さくらそう品種展」が始まる。植物園屋外には江戸時代からの鑑賞方法である「桜草(さくらそう)花壇」が設置され、遺伝資源の保存を目的に筑波大が保有する鉢植えされたサクラソウが100種以上展示される。

白い花をつける「薄蛇の目(うすじゃのめ)」、中心の白から外に向かって赤く色づく「天晴(あっぱれ)」、梅の花のような丸みをもつ「鶯宿梅(おうしゅくばい)」、大ぶりの真っ白な花が印象的な「満月」、現存する最古の品種とされる「南京小桜」など、それぞれ色や形に特徴を持つのが見どころだ。

現存する最古の品種とされる「南京小桜」(中央)

室町中期ごろから貴族の間で栽培が始まったサクラソウ。品種改良が盛んになったのは江戸中期ごろとされる。江戸を流れる荒川流域に自生地が広がっていたこと、鉢植えで育てられることから「庶民の花」として江戸の人々の間で人気を博していった。

「野生の花を持ち帰り、種を採取してまいてみるとちょっと変わった花が咲くことがある。今まで他の人が持っていない珍しい花を選びとることが繰り返されて今に至る。途中から意図的に交雑させることをしていったと考えられる」と筑波大学つくば機能イノベーション研究センター准教授の吉岡洋輔さんが説明する。「並べて展示することで人の目をひきつけることができ、鑑賞者を喜ばせることができる」のも人気の要因だという。

江戸時代から続く「桜草花壇」に100種以上のサクラソウが展示される

絶滅の危機

人々に親しまれてきたサクラソウだが、近年は、環境の変化や乱開発により個体数が減り、環境省の準絶滅危惧に指定されている。愛好家らによる自生地の保全活動は全国的に活発になり「保全活動のアイドル的存在」なのだと吉岡さんは言う。

筑波大では園芸品種の遺伝資源の保存を目的に、つくば市民に栽培を委託する「サクラソウ里親制度」を2004年からスタートさせている。大学で保有する品種が、天災などの原因で絶えてしまったときに、里親から株を返還してもらう仕組みだ。同時に、江戸から続く文化を市民に知ってもらいたいという意味も込めている。会場には10年、20年続ける里親の声がパネル化され、屋外にはそれぞれが育てた鉢植えも見ることができる。

「サクラソウは元々日本に野生種がありそこから広がっていったもの。起源が日本にある園芸種は珍しい。四季のある日本の気候に合っているため、基本的な管理ができれば栽培はそこまで難しくはない。形や色など豊富な品種を見ることができるので、是非、自分好みのサクラソウに出会っていただけたら」と吉岡さんが来場を呼びかける。

教育棟ではサクラソウ栽培の歴史を知るパネル展が開かれる。(柴田大輔)

◆コレクション特別公開「さくらそう品種展」は4月13日(土)から21日(日)まで。15日(月)は休園。開場は午前9時から午後4時30分。入園料は一般320円、高校生以下と65歳以上、障害者などは無料。販売もあるが、無くなり次第終了する。