日曜日, 8月 23, 2026
ホームつくば地元ホテル、ワイナリーとコラボ【つくば 古民家利活用】上

地元ホテル、ワイナリーとコラボ【つくば 古民家利活用】上

つくば市栗原の古民家、郷悠司さん(30)宅(5月31日付)で、古民家の価値と利活用をアピールし、維持保存につなげようとする試みが始まっている。「下邑(しもむら)家住宅」と呼ばれ、江戸時代後期に建てられたとされる古民家が舞台だ。

ホテルがツーリズム企画

夏前、つくば駅前のホテル日航つくばから郷さん宅に打診が入った。同ホテルが進めるローカルツーリズム「つくたび」(2月2日付)が、市内のワイン醸造場やブドウ生産農園を訪ね歩く企画で、古民家にも注目した。9月に第1弾が開かれ、下邑家住宅は第2弾としてオファーを受けた。「つくばワインでテロワール(ブドウ畑の自然環境)を愉しむ特別体験」をテーマに今月21日、催しが開かれた。

試飲会に提供された料理とワイン

「私の憧れだったワイナリーとのコラボが実現し、本当にうれしい。ホテル日航つくばも全く別世界の存在という印象でしたから、こんな機会をいただくことができ、家族全員喜んでいる」と郷さん。

郷さんによれば、今回のイベントは、同じ栗原地区でブドウ栽培とワイン醸造場を営むつくばヴィンヤード(Tsukuba vineyard、高橋学代表)=2020年10月16日付=と下邑家住宅を地域の観光資源として結び付けた。ブドウ畑では剪定(せんてい)作業体験、古民家ではワインの試飲会を実現させた。

ホテル日航つくばマーケティング部の林智一次長は企画の狙いについて「昨年スタートさせた『つくたび』では、ホテル内での食事やアミューズメントだけでなく、街に出て新しい発見をしてもらおうと考えた。当ホテルから比較的近い栗原の地を訪ねると歴史的文化や新しい農業などたくさんの魅力があったので、ブドウ栽培の体験と、古民家で食事を兼ねたワイン試飲会を提案した」と経緯を説明する。

今回は市内や近県から12人が応募し参加した。つくばヴィンヤードは市内で2番目のワイン醸造場だが、これまで一般人を招いた体験学習は行われていない。高橋代表も「何ごともまずやってみるもの」と今回のコラボを評価。「つくばのワインをアピールできる良い機会になる。今夏のような猛暑続きのシーズンは収穫を迅速に行わなければならないため、人手が不足するという経験をした。来シーズンも開いてもらえるなら収穫時期にお招きしたい。古民家でワインというのも面白い」と話す。

(左から)つくばヴィンヤードの高橋代表、ホテル日航つくばの林次長、下邑家住宅7代目の郷悠司さん

7代目が雄弁に物語る

古民家でワインという非日常的な体験を、参加者はどう感じたのか。千葉県から参加した高田浩さんは「ブドウの剪定も初めてのことだったが、かしこまらず、アウトドアにちょっと出掛けて何かを見つける、そういった楽しさを得られた。古民家を案内してくれた郷さんが若くして7代目ということで、居間に飾ってある代々の肖像画とも顔つきがよく似ていて、歴史があるという実感があった」と目を細める。

同じ千葉県から参加した赤間靖子さんは「初めは見ず知らずの人たちだったが、田舎の古い屋敷に親戚が集まったようで、すぐに打ち解けてくつろげた」と感想を述べた。

「つくたび」ののぼり旗を見掛け、そぞろ歩きをしていた人が庭に入ってきて屋敷を見学するという場面もあった。郷さんは「にぎわいを地域に広げてこその古民家利活用。まだそこまで実現していないが、マルシェやレンタルスペースのほか、今回のようなコラボ企画を続けて栗原の魅力を発信していきたい」と結んだ。ホテル日航つくばのつくたびは、来シーズンも栗原を訪れる予定だ。

下邑家の母屋

2017年から「邑マルシェ」

郷さん宅は、江戸時代後期の農家・商家の母屋226平方メートルを中心に、長屋門や土蔵、米蔵が保存されている。母屋はかやぶき屋根だったものが瓦からスレートに置き換えられたが、たたずまいは風格をたたえる。

しかし家族内で、家屋の存続問題は重くのしかかっていたという。「父の考えで官民学一体の栗原活性化プロジェクトというアイデアも出たが、古民家の価値を役所や企業に理解していただくためには利活用の実績が必要。2017年に母が邑マルシェをスタートさせ、昨年10月から私と妹の瑞季が加わって邑マルシェのSNS発信を進めている」と郷さん。

レンタルスペースとして古民家(母屋)の有償提供も行っている。市北部では古民家を活用して「iriai tempo」(同市北条)や「旧小林邸ひととき」(同市筑波)がコワーキングスペースや宿泊機能を提供している事例を参考にした。するとウエディング撮影やコスプレ撮影の予約が次々と舞い込んだ。テレビ局の取材も入り、全国放送のテレビ番組で放映されたことも注目度の高まるきっかけとなった。

つくば市の農村部には、江戸時代後期からある家屋や土蔵が多く存在する。地域の貴重な財産といえる一方、古民家の所有者にとっては建物の維持継承は難題となっている。建物を保存するためにも、利活用を通して維持費や修繕費をいかにねん出するかが課題となっている。(鴨志田隆之)

続く

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho





spot_img

最新記事

「まつりつくば」始まる 来年は9月下旬開催

つくば市最大の祭り「まつりつくば」(つくば市など主催)が22日、つくば駅周辺で始まり、大勢の市民でにぎわった。暑さ対策のため、来年から9月下旬に開催することが決まっており、今年が最後の夏の祭りとなる。来年は9月25日(土)、26日(日)に開催する予定だ。 市観光推進課は「伝統を守る上でも夏祭りとして実施したいという意見もあったが、昨今、夏の高温傾向が続いており、近年は(熱中症などによる)緊急搬送が何件もあった。命に関わる問題があるとして来年は9月25、26日に開催する」と話す。 最後の夏祭りとなる今年のまつりつくばは初日の22日午後4時から、車両が通行止めとなった同駅近くの土浦学園線で、つくば音頭などのオープニングパレードが催された。午後5時半過ぎ、大ねぶたと中小ねぶたが、開催前に雨が降ったためビニールをかぶって登場した。万博山車のほか、市内各地区のみこしが掛け声と共に通りをパレード。午後6時半にはねぶたの照明がつき、祭りは最高潮に達した。 まつりは23日までの2日間、つくば駅周辺の土浦学園線やつくばセンター広場、中央公園、竹園公園などを会場に、みこしや山車のパレードのほか、コンサート、大道芸フェスティバルなどがにぎやかに催される。トナリエつくば前の「うきうき広場」では今年から「つくば蚤の市」が加わった。 この日のつくば市は最高気温が30.1度の真夏日。湿度も高く熱中症が心配されたため、市は、昨年まで1カ所しかなかった簡易クーラー付の「涼み所」テントを6カ所に増やしたり、まつりのサイトで会場の気温情報を発信するなどした。 同市吾妻に住む50代の白井陽子さんは「ねぶたを楽しみにきた。6年ぶりに来たが、規模が大きくなっていて、パレードも出店も人がいっぱいだった。人口も増え、にぎやかなつくば市になってくれてうれしいことだと思う」と話し、来年から9月開催になることについては「涼しく良いのではないか」と答えていた。9月開催については歓迎する意見があった一方、参加者からは「時期が違うので同じように出来ないかも知れない」という声も上がった。(榎田智司)

ご当地電子マネー「土浦パトレイバーWAON」発行 イオン

0.1%寄付し地域の子育て応援 総合スーパー、イオンなどを運営するイオンリテール(千葉市、吉澤廣幸社長)は22日、土浦市の子育てを応援するご当地電子マネー「土浦市×パトレイバー子育て応援WAON(ワオン)」の発行を開始した。同電子マネーによる総利用金額の0.1%を、イオンが負担して土浦市に寄付し、同市は子育て応援事業に活用する。 同WAONのカードには、表面にアニメ「機動警察パトレイバー」に登場する作業ロボットのパトレイバーと、土浦研究所で開発されたライバルのグリフォンが、土浦の街並みを背景に対峙する姿が描かれている。裏面は、土浦城址の亀城公園や土浦全国花火競技大会、霞ケ浦など同市を象徴する風景がデザインされている。 同市とイオンが今年3月に締結した包括・地域連携協定に基づく取り組みの一環で、イオンがご当地電子マネーの発行を土浦市に提案した。デザインは土浦市長推しのパトレイバーに決まったという。 ご当地WAONは、イオンが発行している電子マネーの中で、自治体の地域貢献に役立てる寄付付きのもの。島根県大田市の「石見銀山WAON」を2009年に発行したのをスタートに、現在、全国で203種類が発行され、今年2月までに約36億円が全国の自治体に寄付されている。 県内では▽寄付金を若者の活動活性化や国際交流に役立てる茨城県の「大好きいばらきWAON」▽スポーツシティを推進する事業に役立てる笠間市の「かさまWAON」▽子供・若者応援プロジェクトに活用する東海村の「とうかいむらWAON」▽にぎわい創出に活用する水戸市の「水戸偕楽園花火WAON」(今年4月発行開始)があり、「土浦パトレイバーWAON」は県内5番目。2025年度分として茨城県に約326万円、笠間市に約18万円、東海村に約4万8000円が寄付されている。 同WAONはイオンのほか、ドラッグストアー、コンビニ、飲食店、自販機など全国160万店以上で利用できる。例えば北海道や沖縄の店舗でも、土浦パトレイバーWAONで買い物をすれば、0.1%が土浦市に寄付される。 カード「かっこいい」 22日、同市上高津、イオンモール土浦で、土浦市のイメージキャラクター「つちまる」と、WAONの公式キャラクター「ハッピーワオン」が参加して発行記念お披露目会が催された。土浦市の安藤真理子市長は「デザインをパトレイバーにしていただき、今日のお披露目会もパトレイバーのファンの方に来ていただいている。ぜひたくさん使っていただきたい。寄付金は、土浦で子育てして良かったと思えることに使わせていただきたい」などと話した。イオンリテール北関東・新潟カンパニーの森下陽介茨城事業部長は「パトレイバーは今年、漫画完結以来32年ぶりに新作が発表され、アニメが劇場公開されるなど盛り上がっているので、機運に乗り、土浦市の地域振興に役立てていただければありがたい」などと話した。 お披露目会に参加し、この日「土浦パトレイバーWAON」をつくった土浦市内に住む30代男性は「買い物に来て、たまたまお披露目会を知り参加した。パトレイバーは第1作目から知っていて、グリフォンが土浦研究所で開発されたことも知っている。かっこいいカードだと思う」などと話していた。 ◆「土浦市×パトレイバー子育て応援WAON」のカードは県内のイオンとイオンスタイルで350円で購入できる。スマートフォンでの発行は無料。利用者は買い物金額200円ごとに1ポイント(1円相当)が付与され、WAONに交換して利用できる。詳しくはこちら。

恐竜の島、どこよりも高い島… 夏休みの小学生 粘土で巨大な島づくりに挑戦

つくばで夏休み造形教室 夏休み中の小学生が、計600キロの粘土を使って、長さ5メートルの巨大な海に浮かぶ島づくりに挑戦する「夏休み造形教室」が21日、つくば市二の宮のギャラリー、スタジオ’Sで開かれた。子供たちは、彫刻家の川島史也 筑波大助教(36)と、同大で芸術を学ぶ大学生らにアドバイスを受けながら、恐竜の島、どこよりも高い島など、オリジナルの島を作り上げた。 同ギャラリーを運営する関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長)と筑波大学との連携による芸術活動「スタジオ’S with T」による取り組みで、昨年は、粘土で巨大な塔をつくった。今年は午前と午後の2部制で、午前は18人、午後は16人、計34人の小学生が市内外から参加した。 川島助教が「昨年は塔、今年は島、どちらもトウと読めますね」と前置きし、「海に浮かぶ島を自由な発想で作ってもらいたい。土台が大事で確認しながら進めてください」と呼び掛けると、参加者は2班に分かれ作り始めた。 粘土はひと固まりが4キロ近くあり、小さな子供たちは重そうに運んでいた。子供たちはリゾート地、神社、恐竜の島、高い塔、高い山などを、パートごとに加工し、大学生のサポートを受け熱心に作業を進め、長さ5メートルの島が二つ、徐々に出来上がった。 市内から参加した小学4年の大曽根彩乃さん(10)は、高い山を作った。高くなるにつれ粘土が崩れてしまうことがあったが、大学生が土台を補強して完成した。大曽根さんは「誰よりも高くしたいのでどんどん積み上げていった。図工の授業は好きなので、将来はお姉さんたちのいる大学に行けたらいい」と話した。 小学6年の子供と来場したつくば市在住の高柳憲二さんは「みんなが楽しそうにやっているのがとても良い。子供の想像力は素晴らしいものがあって、それがよく表現されている」と語った。 子供たちの作業を手伝った同大大学院1年の田村将吾さん(23)は「普段は彫刻を作っている。子供と一緒に作業をするとこちらも楽しくなる。子供たちの自由な発想に驚かされる。今日の活動は自分の制作の参考になるのではないか」と話した。 川島助教は「創作の場面で細かいところに目がいってしまうことがある。土台や基礎が大事だということをわかってもらえると良い。途中で作業を止めて、確認する作業も必要だ。作品自体のリズムをとらえてほしい」などと語った。 完成後、全員で作品と共に記念写真を撮影。出来上がった巨大な島は最終的に壊し、元の粘土箱に収納した。(榎田智司)

筑波山から霞ケ浦へつながる「水と緑の骨格」《宍塚の里山》139

【コラム・森本信生】宍塚の里山(土浦市)を守る意義は、宍塚を一つの孤立した自然地域として捉えるだけでは、不十分だ。筑波山―宍塚、そして霞ケ浦へとつながる「水と緑のネットワーク」に位置づけてこそ、その価値が明確になる。 宍塚の里山は、森林、谷津田、畑、草原、ため池、水路など、さまざまな環境が組み合わされた多様な生物が生息する生態系である。例えばサシバのような猛禽(もうきん)は、営巣する森林だけではなく、餌となるカエルや昆虫が生息する水田や草地が必要だ。宍塚の生物多様性は、こうした異なる環境のつながりによって支えられている。 さらに宍塚は、筑波山系の森林、土浦・つくば地域の農地、霞ケ浦をつなぐ「水と緑の骨格」の重要な一部である。道路や宅地などによって分断され、孤立すれば、生き物の移動や遺伝的交流が妨げられる。宍塚を守ることは、地域全体の生態系ネットワークを維持することになる。 水のつながりも重要だ。宍塚に降った雨は、森林や土壌に浸透し、谷津、ため池、水田、水路などを経て霞ケ浦につながっていく。宍塚だけで霞ケ浦の水環境が決まるわけではないが、流域の森林、湿地、水田、ため池などを健全に保つ必要がある。里山は雨水を一時的に蓄え、ゆっくりと流す「グリーンインフラ」として、水循環や洪水緩和にも貢献している。 また、里山では自然と農業が一体となっている。森林から供給される水、ため池や水路が農業を支える一方、農業によって維持される水田や草地が、多くの生物の生息場所となっている。自然が農業を支え、農業が里山の自然を支えるという相互関係が存在する。 「自然遺産」「文化的景観」 宍塚の価値は自然だけにとどまらない。上高津貝塚や宍塚古墳群などが示すように、人々が自然と関わりながら暮らしてきた長い歴史がある。自然、農業、歴史、文化を一体として捉えれば、宍塚は「自然遺産」であると同時に、人と自然との関わりが刻まれた「文化的景観」でもある。 さらに、宍塚は生物、水、農業、歴史、人々の暮らしを総合的に学べる教育・研究の場であり、自然観察や農業体験、保全活動を通して、農家、住民、NPO、学校、研究者、行政などを結びつける地域コミュニティの場でもある。 したがって、宍塚を「土浦市に残された一つの里山」とだけ捉えるのは、その価値を小さく捉えすぎている。宍塚は、筑波山からつくば・土浦を経て霞ケ浦へとつながる水と緑のネットワークの中で、生物多様性、水循環、農業、歴史文化、教育、地域社会を結びつける重要な結節点となっている。 宍塚を守ることは、宍塚という一地点を守ることではない。筑波山から霞ケ浦へとつながる地域の「水と緑の骨格」を堅持し、人と自然が共生する流域の基盤を次世代に引き継ぐことである。その意味で、宍塚の里山の保全は、土浦・つくばの自然を守るだけでなく、霞ヶ浦流域全体の持続可能性を支える取り組みといえよう。(宍塚の自然と歴史の会 理事長)