木曜日, 10月 16, 2025
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最先端の知見生かすスポーツ教育と研究の舞台に 筑波大に室内練習施設完成

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新施設内で、筑波大・永田学長(右)による始球式が行われた。打席に同大・川村教授(中央)、主審に関彰商事・関社長(左)が立った。捕手は筑波大硬式野球部4年の西川鷹晴選手

関彰商事と連携

筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)と関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長)が連携して同大敷地内に建設した野球・ソフトボール室内練習施設「Invictus athlete Performance Center(インヴィクタス・アスリート・パフォーマンス・センター)」(通称IPC)が完成した。22日、竣工式が催され、施設内が関係者に披露された。

敷地面積約3200平方メートル、施設は鉄骨造平屋建て、延べ床面積約1700平方メートルで、内部はトレーニングエリア、打撃エリア、ブルペン、ウェイトトレーニングエリアなどがあり、打撃レーン3カ所、ブルペン2カ所、フリーのトレーニングエリアなどに分かれる。

動作解析のデンストレーションで投球を披露した、筑波大公式野球部3年の松田優樹選手

施設には、室内に設置した複数のカメラで撮影した映像をもとに人物の動きを解析する「マーカーレスモーションキャプチャ」や、投球や打球を測定・分析する「トラックマン」「ラプソード」などの最新機器を導入し、選手個々の特性に応じた目標達成に向けた、包括的なサポートを行っていく。平日昼間は大学の授業や硬式野球部、ソフトボール部が利用し、平日夜間と休日は、一般向けにスクール開催、コーチング、運動分析プログラムの提供などを行う。

「選手に寄り添い、共に考える」

施設運営で中心的な役割を担う、野球の動作分析の第一人者で、科学的な知見をもとにした指導法を研究する筑波大の川村卓体育系教授は「(専用機器を用いて)動作を計測できる場所は全国にたくさんあるが、IPCの特色は、計測した知見をどう活かすか、選手本人とともに考えた上で、パッケージとして提供できること。これまでに多くのプロ野球選手の計測を行ってきた経験から、プロ選手との比較もできる」とし、「苦しむ選手をただ分析しても良くならない。選手に寄り添い、共に考えることで内発的な意識を引き出す必要がある。この施設はそのための施設であるとともに、現在の日本におけるスポーツ研究で不足している、1人の選手と長い期間関わる『追跡』の研究拠点にもしていきたい」と、最先端のスポーツ教育と研究を同時に進める舞台として活用していくと思いを語った。

動作解析について説明する筑波大の川村卓教授

初のBTO方式

同施設は、民間事業者が公的施設の建設を担い、完成後は所有権を公的機関に譲渡し、施設の管理・運営は民間事業者が担う「BTO方式」で建てられた。建設費は関彰商事が負担し、完成後は施設を筑波大が所有する。施設の管理運営は、2041年3月までの15年間、関彰商事グループ企業のnvictus Sports(インヴィクタス・スポーツ)」(関正樹社長)が担い、一般向けのスクールや個別指導、イベント開催などを通じて得た事業収入をもとに、整備費用などを回収するとしている。

式典であいさつに立った永田恭介学長は「BTO方式という、大学と企業による新しい方式でつくった施設。研究、芸術、スポーツ、ビジネスなどあらゆる分野が世界と争うのが当たり前になる中で、インヴィクタス・アスリート・パフォーマンス・センターは、選手が上のレベルを目指す際に障壁にぶつかってもへこたれない、不屈のモニュメントになれるよう期待している。地元の方々と手を取り合いながら、新しいつくばの街の形を示していきたい」と話した。関正樹社長は「世界を目指すアスリートの役に立ちたいという思いで、施設をつくった。地元企業として地域に貢献していきたい」と語った。(柴田大輔)

竣工式後に関係者による記念撮影が行われた

直通電話が不通に つくば市消防総務課で18日

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つくば市役所

原因は誤操作

つくば市は22日、消防本部消防総務課の直通電話(外線電話)が18日午前10時48分から午後4時13分まで5時間25分の間、閉庁の音声ガイダンスが流れ、通話できない状態だったと発表した。

18日午後は市内で突風が発生し多数の被害が出たが、119番通報は平常通り通話できる状態で、消防本部の代表電話や市役所からの内線電話もつながる状態だったことから、救急や消火活動への影響はなかった。一方、翌19日午前11時30分ごろ、来庁した人から「消防総務課に電話を架けたが、閉庁の音声ガイダンスが流れ電話がつながらなかった」などの指摘があった。

消防総務課の直通電話は本来、平日の午前8時30分から午後5時15分までつながる状態で、午後5時15分から翌朝8時30分まで閉庁のガイダンスが流れ通話できなくなる。同課によると、保守点検業者が調査したところ、同課に11台ある電話機のうち1台で、手動の「時間外(閉庁)切り替え」ボタンが押された記録があった。職員による誤操作が原因と見られるという。1台の切り替えボタンを押すと11台全部が切り替わる仕組みになっている。

同日午後4時13分、消防職員が切り替わった状態を知らせる電話機の赤いランプに気付き、解除した。

再発防止策として同課は、今後、手動による電話機のボタン切り替え操作を無効にし、誤操作を防ぐとしている。手動のボタンを無効にしても、午後5時15分から翌朝8時30分の間は自動的に「時間外」に切り替わり、閉庁の音声ガイダンスが流れるという。

つくばFC敗れる ホーム最終戦

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前半32分フリーキックからシュートを放つ、つくばFC堀下勇輝

関東サッカーリーグ1部のジョイフル本田つくばFCは21日、つくば市山木のセキショウ・スタジアムで、リーグ戦4位のVONDS(ボンズ)市原FC(本拠地・千葉県市原市)と対戦、ホーム最終戦となったが0-1で敗れ、勝利を収めることは出来なかった。 

第59回関東サッカーリーグ1部第17節(9月21日、セキショウ・チャレンジスタジアム)
ジョイフル本田つくばFC 0ー1 VONDS市原
          前半0ー0
          後半0ー1

前半34分 ヘディングでパスを出すつくばFC吉田悠飛(青のユニフォーム)

つくばFCはここまで2勝3分11敗、勝点9と低迷し、すでに最下位が確定している状況。亘崇詞監督は「多くのサポーターの前で勝つところを見せたい」と試合に臨んだ。

開始直後から果敢に攻めるVONDS市原に対し、つくばFCは堅守で耐える時間帯が続いたが、前半33分、中央からフリーキックのチャンスをつかむ。昨年までVONDS市原に在籍しここまでチーム最多の7得点を挙げている堀下勇輝が自ら志願して蹴ったシュートがゴール枠をとらえるも、相手GKに阻まれた。堀下は「個人的な思いが強く点が取りたかった」と悔しがった。

前半相手と競り合うつくばFC堀下勇輝

その後もつくばFCは相手シュートをGK渋井悠和が好セーブでしのいだ。「両サイドの吉田悠人と恩塚耿之介がしっかり守り、粘り強く耐え抜いた」と亘監督。前半終了間際に吉田悠人がシュートを放つも得点を奪えず、前半はスコアレスで折り返した。

前半32分攻め上がる吉田悠飛

後半も攻め込まれる時間帯が続いたが、大山晟那(せな)と桝田凌我が入ると徐々に流れをつかむ。

後半11分ドリブル突破する恩塚幸之介

しかし後半、相手にPKを与えると、途中交代出場したVONDS市原の大友千裕に右足でシュートを決められ、先制を許す。その後はつくばFCも反撃に出るがゴールネットを揺らすことが出来なかった。

後半アディショナルタイム攻め上がるつくばFC押久保弘人

ホーム最終戦にはスタジアムに609人のサポーターが駆けつけた。

試合後サポーターにあいさつするつくばFCの選手たち

亘監督は試合後、サポーターを前に「最終戦は笑顔で終わりたいと準備してきたが勝てる姿を見せることが出来なかった。いつも温かい声援を送ってくれているのに恩返しが出来なかったのは監督として力不足を感じている。選手を上手く使い切れず勝てなかったのは自分の責任。今日の試合はスタートから守備の時間帯が長くタフな試合だったが、前半は0ー0でしのいだ。後半、波に乗りかけた時にPKで点を取られてしまったが、選手は最後まで全力で戦ってくれた。最終節はいつも応援してくれているサポーターのためにも必死で戦い、勝ちで締めくくれるように全力で戦う」と誓った。

試合後サポーターにあいさつする亘監督

菅谷将人キャプテンは「サポーターに結果で恩返ししたかった。今後はどうしていくべきかクラブとして向き合っていく。未来ある選手がそろっているので最終節は勝って終わりたい」と力を込めた。

試合後サポーターに挨拶する菅谷将人キャプテン

次の最終節は28日、アウェーのスポーツ日大アスレティックパーク稲城サッカーフィールドで日本大学Nと対戦する。(高橋浩一)

ホーム最終戦となった試合後、サポーターとハイタッチをするつくばFCの選手たち

人口増加市つくばのペット行政責任《水戸っぽの眼》5

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朝の洞峰公園。ランナーだけでなく、犬の散歩をされている方もとても多く見かけた

【コラム・沼田誠】2025年1月1日現在の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」において、つくば市の人口増加率は特別区を除く市で全国1位になった。私が5月に本欄(5月7日付)で書いたより早く、その時が訪れそうだ。茨城県内一の人口ということになれば、地方自治体としての責任や行政サービスの質も、県を代表するものでなければならないだろう。そのことを考える例として、今回はペット行政を取り上げてみたい。

つくば市と水戸市の違い

ペット行政は、迷子や負傷動物の保護、譲渡、TNR(捕獲・不妊去勢・元の場所に戻す)支援、啓発活動など、市民生活に直結し、行政の姿勢が可視化されやすい分野だ。また、茨城県は犬の人口あたりの飼育率が全国6位(2023年、厚労省資料より算出)など、比較的ペットを飼っている方が多い地域というイメージもある。

つくば市のペット行政を見てみると、不妊去勢やマイクロチップ装着への補助制度を県内でいち早く導入する(つくば市ホームページ)など前向きな施策もある。しかし、犬猫の収容や譲渡といった中核的な機能は県動物指導センター(笠間市)に依存しており、つくば市独自の愛護センターは存在していない。迷子や譲渡情報も県のサイトに誘導され、市民団体による譲渡会などを市が支援するにとどまっている。

一方、水戸市は2020年4月に中核市に移行し、県から野良犬捕獲や収容、返還・譲渡、愛護啓発などの事務を移管された。その拠点が水戸市動物愛護センター「あにまるっとみと」である。ここでは収容動物の情報公開、譲渡会やしつけ教室の開催、TNR支援や不妊去勢手術への助成、学校や親子向けの啓発事業などが、市の裁量で一元的に展開されている(水戸市ホームページ)。

こうした違いは、市の区分に基づく権限の差から生じている。つくば市は「施行時特例市」という位置づけで、県から一部の仕事を先行して移されてはいるが、保健所を設置する権限はなく、動物愛護の主要事務も県が担っている。これに対し、水戸市のような「中核市」は、保健所を自前で設置し、動物愛護センターを運営することで、犬猫の収容・譲渡、TNR支援、啓発活動までを市が一体的に行える。

つまり、つくば市はペット行政については県に依存し、市独自にできることが限られるのに対し、水戸市は市役所内で施策を完結させ、市民に近い場所で柔軟に対応できるという違いがある。

中核市並みの視点が必要

現場のボランティアや愛護団体からは、TNRの多くが今も個人の持ち出しで行われており、例えば、猫の保護を行っている方からは、「まず増やさない」ための公的支援をもっと充実してほしい、との話も聞く。こうした市民の努力にもっと寄り添うことで、命を大切にする姿勢を明確に市民に示してもよいだろう。例えば「動物愛護推進協議会(仮称)」のような場を設け、獣医師や市民団体と共に現状と課題を共有することから始めてみてはどうだろうか。

もちろん、施行時特例市から中核市への移行は、人材や財政の負担も伴い(水戸市の場合は、コロナ禍の最中での保健所の新規立ち上げだったので、大変な苦労があった)、権限移譲によって課題がすぐに解決するわけではない。それでも人口が増えるということは、市民のニーズが多様化し、行政の責任も重くなるということでもある。

少なくとも、中核市並みの自立的な視点で施策を考え、行政サービスの質を高めていくことが、つくば市には必要だろう。(元水戸市みとの魅力発信課長)

<参考資料> 水戸市とつくば市の権限比較(クリックすると読めます)

打ち上げ発数が最も多い花火大会は?《見上げてごらん!》44

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LuckyFM茨城放送「第38回利根川大花火実況中継 in境町」 実況中継の様子。左から、アナウンサー今章子さん、パーソナリティ上恭之介さん、筆者(茨城放送提供)

【コラム・小泉裕司】「日本最大級の3万発」をうたう第38回利根川大花火大会(茨城県境町)の実況中継直前、スタッフからの無茶ぶり質問。「国内で打ち上げ発数が最も多い大会はどこですか?」。「諏訪湖の4万発」と即答後、隠れてスマホで確認した。実は昨夏、諏訪湖を訪れ、その迫力を体感していた。

花火大会のランキングについては、各種の情報サイトが「人気」「打ち上げ発数」「人出」などに分けて公表している。このうち「人気」は水物なので、今回は「打ち上げ発数」と「人出」に着目、少し解説したい。

打上発数ランキング

まず「打ち上げ発数」について、国内最大の花火大会はどこか、AIに聞いてみた。「最も打ち上げ発数が多い花火大会は、長野県諏訪市で開催される『諏訪湖祭湖上花火大会』です。例年、約4万発もの花火が打ち上げられます。次に多いのは、利根川大花火大会(茨城県境町)約3万発を打ち上げ、4人の花火師が競演するのが特徴です」との答え。

この回答には、諏訪湖は2023年から打ち上げ発数を公表していないことでランキング外となったことや、今月6日(土)に開催された「室蘭満天花火」(室蘭市)が3.5万発だったことが反映されていない。ランキングは室蘭が初登場でトップになった。

したがって「利根川大花火」の全国第2位は変わらず。大会当日に体感した物量感を含めて、「日本最大級」の触れ込みに誇張はないようだ。

打ち上げ発数が、大会の規模を理解するための指標となることは間違いないようだが、煙火消費の許可申請書の数値がベースとなるだろう。過去には、「PL花火」(大阪府富田林市)が、1本の筒から広がる小さな星までカウントしていたことから、「10~12万発」という耳を疑う数字を発表したこともある。

人出ランキング

「人出」についても、AIに聞いた。100万人を超える大会は、天神祭奉納花火(大阪府)の約130万人、関門海峡花火大会(福岡県・山口県)の約105万人、神宮外苑花火大会(東京都)の約100万人、隅田川花火大会(東京都)の約91万人―など。土浦の花火も約60万人でランキング入り。

これらの数値は、当然、有料客席外も含めていることは明白だが、どこまでのエリアの数値なのか、各大会の客観的基準はない。土浦の場合、混雑状況を勘案して、前回マスコミに発表した数字を基準に増減してきた経緯があると聞く。「昨年は50万人で今年は混雑度が増しているので60万にしよう」といった具合に。

乱暴に聞こえるかも知れないが、過去の新聞記事は見出しに数値が入る時代もあった。ところが、8月30日の全国花火競技大会(大仙市大曲)の場合、過去に人出は60万人としたこともあるが、朝日新聞秋田県版は今回、会場に限定しての来場者数を10万人にした。

最近はこうしたケースが増えつつあるようだ。当然だが、人出は都市部の大会ほど多くなっており、必ずしも花火大会の規模や品質と結びついていない。

AIの末尾に「日本三大花火大会(長岡、大曲、土浦)は、歴史や規模、技術的な水準で評価されることが多く、必ずしも来場者数のみで順位付けされるわけではありません」とあった。これは然り。本日は、これにて打ち留めー。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

「シンガポールに飛び橋渡し」大井川知事 インターナショナルスクール開校式典

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テープカットをする関係者。左から3人目がアトゥル・テムルニカール会長、同4人目が大井川知事、同5人目が五十嵐つくば市長

19日 つくば

筑波山麓の旧筑波小学校に8月25日開講したインターナショナルスクール「ワン・ワールド・インターナショナルスクールつくばキャンパス」(つくば市国松)の開校記念式典が19日、大井川和彦知事、五十嵐立青つくば市長らを招いて催された(7月21日付)。

アトゥル・テムルニカール会長

運営グループの本拠地「グローバル・スクールス・ファウンデーション」の創設者、アトゥル・テムルニカール会長がシンガポールから駆け付け「このスクールは国内における新たな国際学校で、茨城における初のキャンパス。日本とシンガポールは技術大国であり、人工知能やデータ分析といった新時代の技術を取り入れ未来に向かって前進している。このスクールは質の高い国際教育を理念として、グローバルな視野と異文化理解を育むなど、日本人家庭にも魅力的な選択肢になる」などとあいさつした。

あいさつする大井川知事

大井川知事は「ここは英語でスピーチするのか」とスタッフに聞いた後、日本語で「数年前、東京・江東区でのインターナショナルスクール教育をテレビで見たことがきっかけとなって、シンガポールまで飛び、今回の橋渡しをした。予想以上に早く開校できて良かった。つくばは研究学園都市という科学に秀でた街なのでマッチしていると思う。今、つくば市と高校増設問題で軋轢(あつれき)が生じているが、これがきっかけで緩和してくれれば良い」と話した。

五十嵐市長は「知事の尽力に感謝し、スクールに対しても、市立秀峰筑波義務教育学校スクールバスの校庭でのターン(の際の利用)や地区のコミュニケーションへの協力などに感謝したい。社会では分断が問題になっているが、共通のメッセージをもって対話を繰り返し解決していく必要がある」と述べた。

式典ではあいさつの後、学校紹介、児童による合唱、箏演奏、テープカットなどが催された。

同スクールは、小中学校の統廃合により2018年に廃校になった旧筑波小学校(約8800平方メートル) に開校した。初年度の25年度は、つくば市在住者を中心に2歳半の幼児から小学5年生まで35~40人が通学している。教職員は15人でスタートし、生徒数の増加に応じて増員する。教員は全員外国籍で、国際的な教育プログラムに豊富な経験を有する。

今後、児童生徒の受け入れを拡大しながら、高校生まで400人規模の学校にしたい意向だ。開校から1カ月近くたち、職員は「順調に推移し、地元とも折り合いがよく、児童たちも楽しく学んでいる」と話している。校舎屋上には気象観測機器が設置されている。2022年に契約を結び、気象研究所が男体山頂上の観測所と連携した観測を行っているという。(榎田智司)

ソーダ水と少年《鳥撮り三昧》5

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絵画展のチラシ

【コラム・海老原信一】野鳥を観察し、野鳥に助けられながら撮影・展示する活動を続ける中、絵画を愉しむことも増え、身近に鑑賞の機会があれば出かけるようになりました。地元で活躍されている画家さんと知り合え、世界が少し広がった喜びを感じています。

8月中旬、茨城県天心記念五浦美術館の企画展チラシを手にする機会がありました。そこに載っている写真を見たとき、私の心は60数年前に瞬間移動しました。校外行事に参加した後、先生や級友と入った食堂兼喫茶室での休息時間です。

本来なら子供だけでは入れないような場所なのに、引率の先生の配慮でしょう。家を出るとき、事前にそのことを教えられていたからと思うのですが、確か、親が200円を用意してくれました。その範囲での飲食となると、200円では飲み物一つが限度。

悩んだ末に注文したのがソーダ水。泡が緑色の液体の中を登ってくる様子にワクワクしながら見入っていた時間。同時に、それしか頼めなかった懐具合の悲しい思い。親にとっては200円が簡単でないことも知り、子供心に切なさのようなものも感じました。

この少年は私だ

チラシの絵の写真に視線を戻したとき、描かれている少年が見ている先はトレーを抱えた女性ではなく、トレーの上で宝石のように輝く、緑色の冷たそうな液体に注がれています。右手ははやる心を現すように、自分の所にやって来るのをじっと待つかのように。

私の絵画理解はかなり怪しいのは自認していますが、この絵は観てみたいと思いました。実際に観賞して、「やはりそうだったか。この少年は私だ。そして描いた人そのものなのだ」と感じました。

描いた人は小田野尚之さん(1960年生まれ)。題名は「クリームソーダ」(2004年の作)。私より12歳ほどお若いですが、私の勝手な解釈で楽しませてもらいました。(写真家)

迷惑行為がSNSで炎上 今野大成選手の契約を解除 つくばサンガイア

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事務所

バレーボールVリーグ男子の「つくばユナイテッドサンガイア」を運営するサンガイア(つくば市竹園、都澤みどり社長)は19日、社会的常識を著しく逸脱した不適切な行為があったとして、今野大成選手(23)との契約を同日付けで解除したと発表した。

今野大成選手(サンガイアのホームページより引用)

今野選手をめぐっては、泥酔して、つくばエクスプレス(TX)北千住駅で、階段の上から唾を吐く動画がSNSで拡散し、炎上していた。

今野選手は島根県出身、青山学院大学から2024年11月につくばサンガイアに入団した。

サンガイアは同日の発表で「SNS等で拡散されている迷惑行為(不適切な行為)について事実関係を確認し、慎重に協議を重ねた結果、同選手との契約を解除しました」とし、「スポンサーを始め、ファンの皆様、関係者の皆様に多大なご迷惑をお掛けし、社会的信頼を損なうものであると重く受け止めています。今後は再発防止に向けた教育体制の強化及び選手の行動規範の徹底を図り、信頼回復に努めます。このたびは多大なるご迷惑とご心配をお掛けしましたことを深くお詫びします」などとするコメントを発表した。

水戸気象台が現地調査 つくばの突風被害現場

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倒壊したプレハブ2階建ての事務所兼倉庫の被害状況を調査する水戸地方気象台機動調査班=19日午前11時30分過ぎ、つくば市花室

つくば市内で18日突風が発生し、建物の倒壊や解体現場の足場の崩落など市内各地で多数の被害が発生したのを受けて(18日付)、水戸地方気象台機動調査班の職員4人が19日、つくば市内の被害箇所を現地調査した。

午前中は、プレハブ2階建て事務所兼倉庫が倒壊した同市花室の農業資材販売会社と近隣を調査し、被害状況や倒壊した建物の構造、建物が傾いた向き、飛散物などを調べ写真を撮るなどしていた。さらに関係者に当時の様子を聞き取るなどした。

被害を受けた農業資材販売会社の小田切章社長(59)は「当時、皆、営業で出ていて、事務所にだれもいなかったのでけが人が出なかった。事務員の妻が普段は2階の事務所にいるが昨日はいなかったので無事だった。妻は倒れた側の壁を背にして普段仕事をしているので、事務所にいたら部屋の中のものが覆いかぶさってきて大変なことになっていたと思う」などと話した。

緑色のベストを着用した水戸気象台機動調査班の聞き取り調査を受け、当時の状況などを話す小田切章社長(右端)

隣接の野球室内練習場では建物のシャッターが変形したり、2階の壁の一部が破損するなどした。突風が吹いた時間に室内練習場にいた経営者の沼崎周太郎代表(29)は機動調査班の聞き取りに答え「午後2時40分ごろ、雨が強くなり、いろいろなものがいろいろな方向に飛んでいくのが見えた。風の方法は一定ではなかった。隣の事務所が倒壊する音は、風の音がすごかったので気付かなかった」などと話していた。

水戸気象台は19日、前日の気象状況について、前線の南下に伴って大気の状態が非常に不安定となり、活発な積乱雲が発生。活発な積乱雲が通過したつくば市と境町付近で突風が発生し被害があったと発表した。つくば市の現地調査を実施した同気象台機動調査班の戸崎一弘さんは「突風による被害をもたらしたものが何であったのか、どういう現象が起こったのかを現地調査をして確認したい」などと話した。調査結果はまとまり次第、公表される。

つくば市では7月1日に柴崎付近でダウンバーストまたはガストフロントとみられる秒速約35メートルの突風が発生し、同市天久保の筑波実験植物園で樹木30本以上が倒れたり折れたりする被害が発生したばかり(7月4日付)。

市北部からTX沿線まで被害90件超に

つくば市は19日夕方時点の被害状況(第3報)を発表した。建物の損壊、農業施設の損壊、倒木、火災など、被害は94件に及んだことが分かった。

つくば市がまとめた19日午後6時時点の被害状況(第3報)は以下の通り(19日午後9時40分追加)
【家屋・建物の被害】
▽2階建て事務所兼倉庫の1階部分の倒壊:1件(花室)
▽店舗の看板の破損:1件(上ノ室)
▽民間スポーツ施設のシャッター破損:1件(花室)
▽家屋の屋根瓦の破損・はがれ、外壁の破損:11件(上ノ室)
▽家屋の屋根瓦の破損・剥がれ、外壁の破損:4件(花室)
▽家屋の屋根瓦の破損・剥がれ:3件(上広岡)
▽家屋の屋根瓦の破損・剥がれ:1件(花園)
▽飛来物、倒木による被害:5件(上ノ室)
▽飛来物による被害:2件(大角豆)
▽カーポートの被害:2棟(上ノ室)
▽消防団詰め所の外壁の破損:1件(上ノ室)
▽プレハブ倉庫転覆:1棟(上ノ室)
▽栗原小学校:連絡通路の引戸が倒れ、窓ガラス破損
【農業関連の被害】
▽園芸施設のハウス・作業所への被害:2棟(上広岡)
▽園芸施設のハウス・作業所への被害:3か所(上ノ室)
▽農作物、農地の被害:6カ所(上ノ室)
【倒木・落枝等】
▽倒木24件(立原、要、春日、筑穂、東光台、上ノ室、大角豆、稲荷前、花園、中根、妻木、花畑近隣公園、タテタシ公園、並木公園、天久保公園、葛城公共緑地、つくばウェルネスパーク内、上広岡、科学万博記念公園内)
▽落枝・枝折れ13件(面野井、花畑、松代、学園の森、下河原崎、並木、東岡、大角豆、洞峰公園通り、つくばメモリアルホール内)
▽落枝による事務所ガラス破損(流星台スケートボードパーク)
▽落枝による通行障害(作谷)
【火災】
▽落雷が原因と思われる火災:1件(栗原)
【その他】
▽共同住宅の足場倒壊:1件(並木2丁目)
▽公務員宿舎跡地の足場倒壊:1件(吾妻2丁目)
▽飛来物、通信線の断線による通行障害等:2カ所(大角豆、上ノ室)
▽電線の断線(上ノ室)
▽NTT通信線の断線(上ノ室)
▽街路樹の支柱の傾き(香取台)
▽土嚢の崩れ(寺具)
▽時計台の故障(二の宮公園)

(鈴木宏子)

つくばで突風 高層の解体現場で足場倒壊 吾妻の旧国家公務員宿舎

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突風で足場と防音防塵パネルが崩落し地面に積み重なった国家公務員宿舎の解体現場=18日午後、つくば市吾妻2丁目(つくば市会社経営男性提供)

つくば市内で18日午後、突風が発生し、つくば駅近くの同市吾妻2丁目、国家公務員宿舎解体現場で足場が倒壊したり、花室地区で2階建て事務所兼倉庫が倒壊した。栗原地区では落雷が原因とみられる火災が発生するなど多数の被害が出た。つくば市によるといずれもけが人などは確認されていない。

このうち吾妻2丁目の国家公務員宿舎解体現場では、12~13階建ての高層住宅の解体工事中、ベランダのある壁面の壁一面に取り付けてあった足場と防音防塵パネルほとんどが崩落し、敷地内の地面に積み重なった。解体現場脇の中央通りの歩道や一部車道にも散乱した。

足場や防音防塵パネルが崩壊する前の旧国家公務員宿舎(15日撮影、つくば市会社経営男性提供)

近くのマンションに住む会社経営の40代男性は「午後2時55分ごろに出掛ける用事があったが、北側から急に風が吹いてきて強風と豪雨で出掛けるのを少し延ばしていた。雨が弱まった午後3時25分ごろ出掛けようとしたら、公務員宿舎の解体現場の足場が倒壊しているのが見えた。風の音がすごくて、倒壊した音は聞こえなかった。ちょうど解体現場の脇を通って北に向かう予定だったのでそのまま出たら巻き込まれるところだった」と話し、「足場が歩道や車道まで散乱していたので、けが人が出なかったというのは本当に奇跡だと思う」と話した。

吾妻2丁目の国家公務員宿舎では今年5月末から来年4月末までの期間で解体工事が実施され、低層住宅の解体が終わり、現在は高層住宅の解体が行われていた。18日午後5時前、白い塀で囲まれた解体現場敷地内には崩落した足場やパネルなどが高く積み重なっていて、樹木を押し倒していた。敷地内では作業員が重機を使って片づけたり、中央通りの歩道では、散乱した樹木を回収し掃除する作業員らの姿が見られた。

当時つくば市では竜巻注意報が出ていた。(鈴木宏子)

中央通りの歩道や車道の一部にも散乱した足場やパネル(つくば市会社経営男性提供)

18日午後8時時点で同市がまとめた市内各地の突風被害は以下の通り(18日午後10時6分差し替え)。
【家屋・建物の被害】
▽2階建て事務所兼倉庫の1階部分の倒壊:1件(花室地区)
▽民間スポーツ施設のシャッター破損:1件(花室)
▽家屋の屋根瓦の破損・はがれ:12件(上ノ室)
▽消防団詰め所の外壁の破損:1件(上ノ室)
▽飛来物による車庫の一部破損:1件(上ノ室)
▽カーポートの被害:2棟(上ノ室)
▽プレハブ倉庫転覆:1棟(上ノ室)
▽園芸施設のハウス・作業所への被害(上広岡)
▽栗原小学校:連絡通路の引き戸が倒れ、窓ガラス破損
【倒木・落枝等】
▽倒木20件(立原、要、春日、筑穂、東光台、上ノ室、大角豆、稲荷前、花園、中根、花室近隣公園、タテタシ公園、並木公園、天久保公園、葛城公共緑地、つくばウェルネスパーク内)
▽落枝・枝折れ13件(面野井、花畑、松代、学園の森、下河原崎、並木、東岡、大角豆、洞峰公園通り、つくばメモリアルホール内)
▽落枝による事務所ガラス破損(流星台スケートボードパーク)
【火災】
▽落雷が原因と思われる火災:1件(栗原)
【その他】
▽共同住宅の足場倒壊:1件(並木2丁目)
▽公務員宿舎跡地の足場倒壊:1件(吾妻2丁目)
▽飛来物による通行障害等:2件(大角豆、上ノ室)
▽電線の断線(上ノ室)
▽NTT通信線の断線(上ノ室)
※家屋・建物の被害、倒木・落枝等については、重複が含まれる可能性がある。

何気ない風景から世界かたどる 高木紀英さん個展「短編写真」

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展示作品の一部(案内はがきより)

土浦ギャラリーで20日から 

土浦写真塾講師を務める同市在住の写真家、高木紀英さん(73)の個展「短編写真」が、20日から土浦駅前の土浦市民ギャラリー(同市大和町)で開催される。

高木紀英さん

市内で撮影した何気ない風景や身近な場所などから世界をかたどったモノクロとカラーの写真計60点が、「童の國」「神々の宿る場所」など12のカテゴリーに分けて各5点ずつ展示される。素材の断片を組み合わせたコラージュ作品もあり、見る人によって独自の解釈が生まれるイメージとして撮った写真という。

例えば「黒いコートの女」という作品には人物が写っているが、それは主役でなく風景の一部となっている。高木さんは「自由に見てもらうという姿勢が必要で説明はあまりしない。いろいろな角度で見てもらうのがよい」と語る。

展示される作品はモノクロが多い。「モノクロ写真の良さは、色がないということで見るイメージが広がる効果があり、よりリアル感がある」と高木さん。作品はすべて自作プリント。カラーで写した写真をプリント時にモノクロに変換することもあるという。カラー写真は15点だけ。「カラーで表現する方が好ましいと判断したものについてはそうしている」。

高木さんは土浦生まれ。1992年から本格的に写真を始めた。94年には茨城県展奨励賞を受賞するなど活躍。2019年に初の個展「神々の会話」、21年には個展「路上感撮」など開催してきた。現在、土浦市展委員、土浦美術協会委員などを務める。

展示作品の一部(同)

写真文化衰退の助けに

今回の個展開催にあたっては、写真文化の衰退にいくらかでも助けにならないかという思いがあった。写真教室やサークルはどんどん高齢化が進み、若い人が入ってこない。若い人はスマホで写真を撮りSNSで楽しんでいる。このままでは写真文化がなくなってしまうという危惧をもったという。「接点はどこにあるか探す必要がある」と言い、写真展などにデジタル部門を作り、パソコンと大型スクリーンをつなげ鑑賞するなども方法の一つと考えているという。

底辺を広げるという意味で、今年6月に土浦市民ギャラリーで開催した「形のない集団の写真展」は、大きさやテーマにこだわりを持たず、誰でも参加できる写真展として企画した。敷居の低い作品展をどんどん企画していきたいと語り、「写真展は気軽な感じで来ていただき、心が閏っていただければありがたい」と来場を呼び掛ける。(榎田智司)

◆高木紀英さん個展「短編写真」は9月20日(土)~28日(日)、土浦市大和町1-1、アルカス土浦(市立図書館)1階、土浦市民ギャラリーで開催。開館時間は午前10時~午後6時。ただし初日は午後1時から、最終日は午後4時まで。月曜など休館。入場無料。問い合わせは電話029-846-2950(同ギャラリー)へ。

◆高木紀秀さんが講師を務める「土浦写真塾」では会員を募集している。活動は、月例会を毎月第3土曜日午後1~5時、二中地区公民館で開催。会費は1回1000円。連絡先は吉田宣好さん(電話090-9014-5567、Eメールn_yoshida2024@yahoo.co.jp)へ。

海外出張 市長はファーストクラス可 つくば市議会委員会が否決

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つくば市議会総務文教委員会の様子=17日、市役所内

旅費条例改正案「市民の理解得られない」

国内や海外出張をする際につくば市長や市職員らに支給される旅費について定めた市職員旅費条例改正案が開会中の同市議会9月会議に提案されている。17日開かれた市議会総務文教委員会(木村清隆委員長)で同条例改正案について審議が行われ、市長が海外出張の際に利用する航空機の運賃について、現在の旅費条例がビジネスクラスまでとなっているにもかかわらず、改正案はファーストクラスまで利用できるようになることに対し委員から「市民の理解が得られない」などの意見が相次ぎ、同改正案は賛成少数で否決された。議会最終日の10月3日、本会議で改めて審議される。

同改正案は、国家公務員旅費法が改正されたのに伴って、同法にもとづき市の旅費条例を全面的に改正する内容。円安の進行などにより宿泊費などの上限も大幅に引き上げられる。

海外出張の際の航空機の運賃について現在の市職員旅費条例は「最上位の直近下位の級の運賃」(27条)と市独自に定め、市長はビジネスクラスまでしか利用できない。一方、来年4月施行予定の条例改正案は、海外出張の場合、市長には「最上級の運賃の額」を支給できるようになり、ファーストクラスを利用できるようになる。

17日の委員会での市人事課の説明によると「国家公務員の旅費法をよりどころに旅費を3段階で設定した。特別職は出張に伴う負担が大きいため長時間の移動時間を活用して体調を維持する必要があるためより高い上限を設定した。茨城県知事や他市・区を参考にした」などとし、「必ずしもファーストクラスに乗らなくてはいけないものではなくて出張に応じて適宜判断する」とした。

これに対し委員から「ビジネスクラスでも十分体調を養うことができる。ビジネスクラスとファーストクラスは値段が違い過ぎる。現在の条例の規定をどうして緩めるのか。五十嵐市長は(ファーストクラスに)乗らないと思うが、だれが市長になっても市民感覚に合わせたものにすべき」(小森谷さやか市議=市民ネット)▽「(3段階の運賃設定のうち)ファーストクラスに乗れるというのは内閣総理大臣と一緒になる。実際に乗らないとしても乗れるように(条文改正)することが理解できない。今、政治に厳しい目が向けられている」(樋口裕大市議=Nextつくば)▽「ビジネスクラスでヨーロッパに行くのに現在100万円くらいかかるがファーストクラスは2倍の200万円かかる。他市町村長は年に1回か2回しか海外に行かないのに、つくば市長は年に何回か行っている。市民の税金で行くのに市民にどう説明できるのか。つくば市には東京都が定めているような海外出張の運用指針もない」(山中真弓市議=共産)▽「ファーストクラスにする必要はない。市民感覚からすればビジネスクラスで十分」(飯岡宏之市議=Nextつくば)など厳しい意見が相次いだ。

採決で賛成したのは塩田尚市議(つくばクラブ)と渡辺峰子市議(公明)2人だけで、同条例改正案は否決となった。議会最終日の10月3日は修正案が出される見通しという。

つくば市長の海外出張をめぐっては、今年2月と6月の市議会定例会議一般質問で山中真弓市議(共産)が取り上げ、五十嵐立青市長は直近3年間で計5回の海外出張を行い2365万円の市税を使ったこと、海外での宿泊費が市職員旅費規則に定められた金額を超過し、市の規定が骨抜きになっていることから、旅費規程の見直しが必要だ、などと指摘した経緯がある。(鈴木宏子)

民有林に防除対策費を補助 ナラ枯れ被害拡大防止へ つくば市

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ナラ枯れで枯れたとみられる筑波山中腹付近の赤茶けた樹木=9月4日撮影

ナラ枯れなどによる森林被害の拡大を防ごうと、つくば市は今年度新たに、市内に森林を所有する民間地権者を対象に、防除対策費用の2分の1を補助する制度を創設した。

筑波山周辺の森林や公園など市有地のナラ枯れ被害に対してこれまで同市は、防除対策に取り組んできた。一方、筑波山周辺など市内の民有地の森林でも被害が出ており民有地で対策を施さないと被害拡大を防ぐことができないことから新たに補助を実施する。

同市鳥獣対策・森林保全室によると、現時点での申請者はゼロで、市が相談を受けている地権者が一人。市はホームページや市報などで広報してきたが、補助制度や防除方法を知らない地権者もいると見られる。

つくば市神郡、筑波山麓付近の枯れた樹木=同

ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(通称カシナガ)という体長5ミリほどの昆虫の被害を受けたコナラやクヌギなどが、昆虫の体に付着した病原菌、ナラ菌の繁殖により水分が枝葉に行き渡らなくなり、紅葉前の7~8月頃に急速に葉の色が赤褐色に変色し枯死する被害。幹が太く樹齢を重ねた樹木が被害を受けやすいとされ、枯死した樹木は早期に対策をとらないと、翌年以降、被害が拡大するとされる。2020年9月に県内で初めて、つくば市内で被害が確認され、以後、拡大し、県林業課によると現在、県内44市町村中36市町村で被害が確認されている。

筑波山系では2022年に朝日トンネル付近で確認されたのが最初。翌23年には筑波山や周辺の森林でナラ枯れが目立つようになる中、つくば市では23年、南麓の同市臼井、市有地の筑波ふれあいの里で、ナラ枯れが確認された32本を伐採し、薬剤によるくん蒸処理を実施した。翌24年には観光拠点の筑波山梅林奥の市有地の林道、四季の道周辺に被害が広がり、市は13本を伐採しいずれもくん蒸処理した。

一方、今年は筑波山の林道沿いの市有地に関しては新たな被害は確認されていないという。昨年、四季の道沿いで、被害を受けやすいとされる幹が太く樹齢を重ねた樹木をあらかじめ伐採などしたことなどが被害の拡大を防いだとみられている。

筑波山の男体山中腹付近に目立つ、葉が枯れて赤茶色になった樹木(左側)

つくば市で補助対象となるのは①幹にあらかじめ殺菌剤を注入し行き渡らせておく殺菌剤を樹幹に注入する方法(補助額は1回当たり上限5万円。カシナガに入り込まれ木くずが出た時点で注入しても効果は期待できない)②成虫が飛来する5月ごろから約半年間、樹木の幹に粘着剤やビニールシートを巻き付けカシナガが入り込むのを防ぐ方法(同5万円、粘着剤にとらえられたカシナガを生きたまま放置すると仲間を呼び寄せることがあるので、粘着剤と殺虫剤を併用する方法もある)③被害を受けた樹木を伐採し薬剤で燻蒸処理または焼却処理する方法(同15万円)。今年度予算は165万円で、市は1件につき平均20万円程度、8~10件の申請を想定している。

市鳥獣対策・森林保全室の石塚正巳室長は「市として、ふれあいの里や四季の道など市の施設で、伐倒しくん蒸処理するなどの対策をしてきたが(被害が)全て無くなったわけではない。個人の土地については広報するのみで、(市が)直接的な対策をしていないので根絶はなかなか難しい」という。

一方土浦市は2024年、ナラ枯れ被害に遭った朝日トンネル付近のコナラ16本を伐採した。費用は、運搬、処分、交通封鎖の人件費を含み計583万だった。同市はナラ枯れに対応できる補助金として小規模森林整備補助金があり事業費の70%を補助できるとしている。

ナラ枯れの被害については、全国で毎年調査が実施されている。県林政課によると23年度に被害が確認された市町村は33市町村、24年度は34市町村、25年度は36市町村と市町村数は徐々に増えている。県全体の被害面積はつくば市内で初めて確認された2020年が200平方メートル、21年も200平方メートルだったが、22年に3000平方メートルと15倍に広がり、23年はさらに前年の2.3倍の6700平方メートルに拡大した。24年度の被害面積は6100平方メートルと前年度の91%だが、同課は、森林の奥の広葉樹まで調査が及んでいないなどから、被害は前年と同程度とみている。(榎田智司)

つくつくつくばの七不思議の旅《映画探偵団》92

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イラストは筆者

【コラム・冠木新市】2009年、「つくばの映画・演劇を作ろう」をテ一マにNPO主催の講演会で30人を前に語った。当時、映像のロケ地に誘致する運動は盛んだったが、地元の文化・歴史・伝説を活用して、自ら作る動きは少なかった。

つくばにも面白い素材がいくつかあった。その一つが、茨城県出身の童謡詩人・野口雨情が1930(昭和5)年に作詞した「筑波小唄」「筑波節」で、元は一つの歌をなぜか二つに分けた新民謡だ(映画探偵団22)。

2010年、その理由を「雨情からのメッセージ」と題して講演、朗読劇、踊り、演奏で表現した。新築の筑波銀行ホ一ルに300人ほど集まった。好評だったこともあり、つくばの7地域の話を「つくつくつくばの七不思議」として再創造しようと考えた。

2012年春、北条を竜巻が襲い町を破壊したころ、水戸で「筑波小唄」「筑波節」の幻のSPレコードが見つかった。いろいろな方の協力を得てCDに復刻、また、つくば市の観光物産課の応援で踊りの講習会を5期まで開催した。

同年秋、詩劇「北条芸者ロマン~筑波節を歌う女~」を上演。北条街づくり振興会との縁を深めた。このとき、植田利浩さんが作曲した曲を「筑波恋古道」と名付けた。

2015~16年、「つくつくつくばの七不思議/サイコドン」をACCSケ一ブルテレビで放映。「筑波恋古道」の作詞もでき、歌い手を募集するが、応募はなかった。踊りのイベントでは、植田さんの歌うデモテ一プを使用した。2023年の「金色姫伝説旅行記」のときに、声楽家・大川晴加さんが新たに吹き込んだ。

「はじまりのうた BEGIN AGAIN」

「北条芸者ロマン」に取り組んでいたころ「はじまりのうた BEGIN  AGAIN」(2013)という映画が製作された。オ一プニングはバーのステ一ジ。無名の女性シンガ一が歌い、1人の中年男性が身を乗り出して聞く。そして「その日の朝」とクレジットが出て回想となる。

男は、音楽プロデューサーで5年間失敗続き、妻と別居中。娘に煙たがられ、自分が創立したレコード会社からもクビを宣言され、地下鉄で自殺を考えバーに来る。男は、無名シンガ一の背景にピアノやベースが加わる幻想を見る。

次に女性の回想がはじまり、楽曲を提供した恋人歌手との関係がこじれ争いとなる中、バーでプロデューサーの男と出会ったことが描かれる。

2人は作品を企画する。会社からデモテ一プを要求されるが、録音費用のない男は、デモよりもアルバムを作ろうと考える。路地裏やビルの屋上などで録音する。演奏者には後払いで、才気あふれる無名の若者を集める。さらに女性歌手の誘いで、男の娘をギターに採用。完成したアルバムは高評価を受ける。

エンドクレジットが流れる中、女性がレコード会社と契約したくないとの訴えに男はあっさり了承し、最後にはネットを使い1ドルで売ることにする。アルバムは大ヒットするが、男は元の会社から再びクビになる。そうした時代を先取りした作品だった。

「筑波山 恋うたつづり」

2025年8月27日、「筑波小唄」「筑波節」「筑波山唄」「筑波恋古道」を収録した「筑波山 恋うたつづり」が恩田鳳昇監修で日本コロムビアから発売された。企画から15年かかった。つくつくつくばの七不思議の旅は「はじまりのうた」をヒントにまだまだ続きそうである。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

つくつくつくばの七不思議セミナー(お話と懇談会)のお知らせ:2025年9月27日(土)午後1時~、カピオ小会議室、参加費無料。

洞峰公園などが「自然共生サイト」に NPOとつくば市が共同申請

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洞峰公園=つくば市二の宮

市内7カ所目

民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域や活動を認定する環境省の「自然共生サイト」に、つくば市の洞峰公園とその近接公園が16日認定された。同日つくば市が発表した。認定区域は洞峰公園(同市二の宮、17.4ヘクタール)と、近接する二の宮公園(同市二の宮、2.7ヘクタール)、まつぼっくり公園(同市千現、0.6ヘクタール)の3公園で、面積は計20.7ヘクタール。

市環境保全課によると、洞峰公園などで動植物調査や希少種の保護などを実施しているNPOつくばいきものSDGs(木下潔代表)から昨年秋ごろ、つくば市に提案があり、今年4月、同NPOとつくば市が共同で申請した。

市内では奥村組技術研究所内のビオトープ(同市大砂)も同日、自然共生サイトに認定された。市内の自然共生サイトは計7カ所となり、認定数としては全国の市町村で4番目に多くなった。認定サイトのほとんどは国際データベースのOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する区域)にも登録される予定。

認定制度は2023年度から始まり、25年4月に認定の仕組みを法制化した地域生物多様性増進法が施行された。法律に基づく認定は今回が初めて。同法に基づいて民間が作成・実施する増進活動実施計画と、市町村が取りまとめ役となって地域の多様な主体と連携して行う連携増進活動実施計画が認定され、二つの計画の活動実施区域が自然共生サイトとなる。

洞峰公園とその近隣公園の位置図(つくば市提供)

ゾーニングし緑地管理

市によると、洞峰公園とその近隣公園サイトの活動計画は、800メートルの距離を置く3つの公園の状況について①隣接する複数の研究所の樹林地、草地と共に100ヘクタールを超える緑地を形成し、絶滅危惧種を含むつくばの里地里山、沼・湿地に特徴的な動植物が生息生育している②通勤、通学など日常生活の傍ら、多様な生き物の活動に触れることができる—などが特徴だとしている。

活動計画の目標については①日常生活の中で生物多様性を実感できる市街地ならではの環境を次世代につなぐことを目指す②自然観察会などの環境教育活動を通じて身近な公園の生物多様性の価値に対する認知を高め、市民参加による調査モニタリング活動や保全活動を推進する―の二つを掲げている。

主な活動内容は、植生の特性に応じて園内をゾーニングし緑地管理するというもので①希少動植物生息生育エリアでは保全対象動植物に適した手刈りの草刈り、落ち葉かき、播種、樹木剪定を行い、対象植物の生態系を侵害する動植物は防除する②通常管理エリアは機械刈りや樹木剪定など一般的な公園緑地の管理手法を行う➂希少種エリアと通常管理エリアの間の緩衝的役割を担う緩衝ゾーンは主として背丈が高めの高刈りにより草地管理を行う—としている。

モニタリング計画として①植物、鳥類、昆虫、菌類を対象に年1~2回、有識者の指導の下、市民参加型調査・モニタリングを行う②希少植物種については開花期に生育状況を同NPOが中心となって調査する—とし、実施体制として①市と同NPOは専門家の意見を交えて保全計画を立案し実行する②つくば市は対象サイトの運営管理を統括し、希少動植物の生息生育エリア以外の緑地管理、沼管理を行う➂同NPOは希少動植物の生息生育エリアを管理し、調査・モニタリング活動、環境教育、市民参加型生物多様性保全活動を計画・実施する—となっている。計画期間は今年9月から2030年8月までの5年間。

一方、洞峰公園をめぐっては、2024年2月に県から市に無償譲渡された経緯などを受けて、今年4月、同公園の管理・運営方法などを市に提言する「洞峰公園管理・運営協議会」(委員長・藤田直子筑波大芸術系環境デザイン領域教授)が4月にスタートしたばかり。一般市民が参加してこれからの維持管理について話し合う分科会は1回目が7月に2日間開かれたのみで、本格的な議論はこれからになる。

洞峰公園を管理する市公園・施設課は、今回認定された活動計画は、県が管理していた時を含め、すでに取り組まれてきた活動を継続するものだなどとしている。(鈴木宏子)

歴代入賞作品約100点を一堂に 土浦で「世界児童画展セレクション」 

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16日開幕した「世界児童画展 超半世紀セレクション こどもの絵から見る世界」展の様子=土浦市大和町、土浦市民ギャラリー

児童画展の一大イベント「世界児童画展」の歴代入賞作品約100点を一堂に展示した企画展「世界児童画展 超半世紀セレクション こどもの絵から見る世界」が16日、土浦駅前の土浦市民ギャラリー(同市大和町)で始まった。

世界児童画展は1970年に開催された大阪万博を機に公益財団法人美育文化協会が始め、世界の約40の国や地域から毎年約8万点もの作品が集まる。土浦市民ギャラリーでは2017年の開館以来毎年「世界児童画展 茨城県展」を開催してきた。今年は2回目の大阪万博が開催されている記念の年であることから、第1回から55年分の歴代受賞作品を同協会から借り受け展示する。

展示作品は3歳から15歳の子供たちが描いた計106点で、日本の最高賞である内閣総理大臣賞受賞作品が14点、海外の最高賞である外務大臣賞が25点、ほかに特別賞受賞作品など。国内の作品が63点、海外は43点となっている。

左から「うにをむく人」「高層ビル街に現れたヒョウ」「おしゃべりな女」

第20回内閣総理大臣賞を受賞した日本の小学6年生(当時)小森翠さんの「うにをむく人」は、赤いブラウスに緑のエプロンを付けた女性がうにをむく姿を正面から大きく描いている。大胆な筆づかいながら、ひとつひとつのウニの形は異なっているなど、細かく観察した描写になっている。

第22回同賞を受賞した日本の小学6年生(当時)水野聡英さんの「高層ビル街に現れたヒョウ」は版画で、赤と黒と白の3色しか使ってない。画用紙の左側にタワーの脚部だけが大きく描かれ、高層ビルの上に乗ったヒョウとの対比と彫刻刀の荒い削りあとにインパクトがある。

第19回外務大臣賞を受賞したオーストリアの13歳(当時)マルクス・ヴァイセンンベルガーさんの「おしゃべりな女」は、人の肌も洋服も背景も緑と黄色だけを使って描かれており、緑の濃淡で表情や服の柄、背景を生き生きと描いている点が印象的だ。

7つのテーマに分かれて展示されている会場の様子

会場では、描かれている情景や使われている色をもとに「家族」「物語・ファンタジー」「生活・文化」など7つのテーマに分けて紹介している。「家族」は3点で、子どもたちの家族を描いた作品を展示している。「物語・ファンタジー」は20点で、子どもたちが考えた物語や空想の世界が思い思いに描かれている。「生活・文化」は23点で、地域や国ごとの子どもたちを取り巻く生活や文化を絵から読み解くことができる。「生き物」は13点で、虫や猫、牛など子どものそばにいる生き物が生き生きと描かれている。「乗り物」は7点で、各国の身近な乗り物が描写されている。

ほかに「構図・空間」がテーマの作品は19点展示され、子どもならではのユニークな構図の作品が描かれている。「色彩」は21点で、シンプルだったりカラフルだったりと色使いに注目したい絵がそろっている。

同市民ギャラリー主任の若田部哲さんは「賞を取った絵を展示しているが、賞は優劣や巧拙(こうせつ)を問うものではなく、あくまでも子どもならではの感性に対する驚きや喜びから選んでいる」とし「子どもたちの素直な表現のすばらしさを見ていただきたい。昨今、未来への閉塞感があるが、子どもたちの絵から伝わる今の喜びや未来への希望や夢という明るい感情を感じてほしい」と来場を呼び掛ける。(伊藤悦子)

◆同展は9月16日(火)から10月19日(日)まで、土浦市大和町1-1、アルカス土浦(市立図書館)1階、土浦市民ギャラリーで開催。入場無料。開館時間は午前10時~午後6時。月曜など休館。問い合わせは電話029-846-2950(同ギャラリー)へ。

副次的な生業 遊び仕事《デザインを考える》24

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写真は筆者

【コラム・三橋俊雄】前回(8月19日掲載)は、「ホモ・ルーデンス(人間とは遊ぶ存在である)」について紹介しました。今回は、これに関連する「遊び仕事」という考え方について、お話ししていきたいと思います。

「遊び仕事」とは、環境倫理学や現代民俗学の視点から、鬼頭秀一氏(「自然保護を問いなおす」、ちくま新書、1996)や松井健氏(「自然観の人類学」、榕樹書林、2000)らが提唱しはじめた概念です。

そこでは「遊び仕事」が、自然との関わりにおける人間の基本的活動として捉えられてきました。それは主要な生業(サブシステンス)ではなく、地域の人々が日常生活の一部として継続してきた副次的な生業(マイナー・サブシステンス)であり(上図)、その今日的意義について探求されてきました。

ここではまず、「これこそ遊び仕事」と私が実感した「タケノコ掘り」についてのエピソードをお伝えします。

タケノコ掘り

毎年5月になると、筑波山麓にある竹林をお借りして「タケノコ掘り」を行います。「そろそろタケノコ掘りの季節だなあ」と、ちょっとしたワクワク感を覚えます。

タケノコ掘りは、竹林所有者の「ご好意」から始まリます。そして、鍬(くわ)一つあれば、誰でも掘り起こすことができます。「さあ、掘るぞ!」という意気込みで竹林に入り、タケノコを「探す」「掘る」「食べる」という一連の過程を楽しみます。タケノコがたくさん採れた時には、「おすそわけ」をすることもでき、それも「楽しみ」の一つです。 

「おすそわけ」は連鎖します。例えば、タケノコを5本いただいたとします。その方は、3本を「うちの分」として残し、あとはお隣さんに1本、お友達に1本など「おすそわけ」の輪が広がります。時にはタケノコのお礼にと「フキの煮物」をいただいたりもします。このように「おすそわけ」の「お返し」が生まれ、物々交換が続きます。 

一方「食べる」楽しみとしては、まず、採れたてのタケノコを「お刺身」として味わいます。続いて「タケノコご飯」「タケノコの味噌汁」「煮物」といった料理を楽しみます。それでも余ったら、タケノコの塩漬けや水と一緒に瓶(びん)に詰めて冷蔵庫で保存します。

こうして毎年繰り広げられるタケノコ掘りは、楽しみであると同時に、竹林の維持・管理として「山が荒れる」ことを防ぐ役割もします。

自立自存の姿

このように考えると、タケノコ掘りとは、日本人の生活文化に根ざした「遊び仕事」と言えるのではないでしょうか。この「遊び仕事」は、市場経済に染まらず、人々が自然と対等に付き合うための一つの「仕方(しかた)」であり、自給自足、自立自存の姿でもあると思います。(ソーシャルデザイナー)

TX県内延伸 3期目知事の作戦《吾妻カガミ》210

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ホテルグランド東雲(つくば市)そばに建つ竹内元知事の顕彰石碑。「…常磐新線(現在のつくばエクスプレス)の整備など…県内交通体系に大変革をもたらした…」と彫られている

【コラム・坂本栄】9月7日の県知事選挙で大井川和彦氏が当選し、大井川県政は3期目に入りました。私はこの欄でTX(つくばエクスプレス)の茨城空港延伸(常磐線土浦駅経由)の必要性を度々取り上げてきましたが、空港延伸につながる土浦延伸が国の鉄道敷設計画にセットされるよう、3期目の知事が政治力を発揮することを期待しています。

主体性に欠ける運行会社

今夏開業20年を迎えたTXを運行しているのは首都圏新都市鉄道(渡辺良社長)です。7月31日に開かれた「TX長期ビジョン2050」発表記者会見(同日付記事参照)で土浦延伸について質問された渡辺社長は、県の延伸構想についてはコメントする立場にないと、その是非判断を避けました。沿線自治体を主な株主とする同社には鉄道敷設といった大型投資を決定する力がないようです。

これは土浦延伸に限ったことではありません。茨城、千葉、埼玉県、東京都の沿線自治体で構成される期成同盟会から要望が出ている東京駅延伸についても、①その経済・社会効果については外部に委託して調査してもらう②仮に東京駅延伸が決まっても自社が整備主体・運行主体になるのかどうか分からない―と、他人事のようなコメントでした。

同社の株主は、茨城県(18.05%)、東京都(17.65%)、千葉県(7.06%)、足立区(7.06%)、つくば市(6.68%)、埼玉県(5.88%)、台東区(5.3%)、柏市(5.3%)、流山市(5.3%)、千代田区(2.65%)が上位10ですから、主要株主に対しいろいろな配慮があるようです。

2028年が決着の正念場

土浦延伸に向けた大井川知事の作戦は明確です。新都市鉄道には筆頭株主として働きかけるにとどめ、鉄道政策を所管する国土交通省の交通政策審議会が「東京駅延伸+東京湾延伸」を決める場で、土浦延伸も決めてもらう同時決着のアプローチです。これであれば土浦延伸の費用も沿線自治体に分担してもらえるので、茨城県の負担は少なくて済みます。

この双方向延伸を実現させるには高度な政治工作が必要です。一つは、東京駅延伸で熱くなっているTX沿線自治体と国に土浦延伸の利点も理解してもらうこと。もう一つは、当初計画では守谷止まりだったTXをつくばまで強引に引っ張ってきた竹内藤男知事(就任期間は1975~1993)が「さらに延ばす場合、その費用は茨城県で持つ」旨の念書を1都2県の知事に渡しているため(つくば延伸を渋々認めさせる策)、これを白紙に戻す必要があります。

こういった工作が不調に終わった場合、茨城単独では負担が重すぎる土浦延伸は机上の構想で終わるでしょう。TX東京駅・湾岸延伸を決める国の交通政策審は2028年に開かれる予定と聞いていますから、大井川知事の3期目後半が土浦延伸決着の正念場になります。

改めて空港延伸も議論

面白いのは、茨城空港を利用する観光客と仕事客が今後大きく増加するとのリポート「茨城空港将来ビジョンー首都圏第3空港を目指して」を県が7月に発表、同空港の機能充実や施設拡大の必要性を打ち出したことです。

このリポートには「県が推進するつくばエクスプレス県内延伸構想に関しては、土浦延伸実現後、空港を取り巻く総合的な状況の変化などを見極めた上で、改めて茨城空港延伸について議論することにしていることから、同構想の進捗を注視しながら、将来における空港アクセスの充実について検討していく」と書かれています。

仮にTX土浦延伸が国交省の諮問機関で決まっても、完成はそれから10年ぐらい先になります。さらに茨城空港まで延伸するとしても、20年ぐらい先になります。大井川知事が何期やるか分かりませんが、故・竹内知事の5期途中辞職(1993年)からTX開業(2005年)まで12年かかったことを思い起こすと、交通インフラ整備とはそういった時間軸で進むものです。(経済ジャーナリスト)

TX延伸関係コラム 青字部を押すと読めます。
▽203=知事の県政報告(3月3日掲載
▽162=空港延伸も議論(23年7月18日掲載
▽155=土浦延伸を決定(23年4月17日掲載
▽147=延伸先に4候補(22年12月19日掲載
▽136=狭視野つくば市(22年7月4日掲載

つくばエリアを広げても県立高は不足《竹林亭日乗》32

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桜川に架かる中貫橋から見た筑波山

【コラム・片岡英明】つくばの高校問題は先の茨城県知事選挙でも争点になった。受験生・保護者にとって、つくば市の県立高不足は明白なのだが、県教育委員会は独自の考え方で対応しているため、議論はかみ合わず、私たちの声が届いていない。

県は2024年10月、「県立高等学校の今後の募集学級数・募集定員の見込みを試算」で2つの試算を発表。試算2で「中学校卒業者の増加がみられるつくばエリアの状況」として、つくばエリアの生徒増を取り上げた。今回はこのエリアの県立高は「足りているか否か」について対話を深めるため、県の試算2について考えてみたい。

過不足を論じる3つのアプローチ

つくばの県立高の過不足を論じる3つの方法としては、以下の3つのアプローチがある。

①収容率法(私たちの方法):県立高の県平均収容率68.2%を目標に、2024年の不足学級数と2030年までの不足学級数を算出。

②入学見込み法(県の2019年改革プランや2024年試算の方法):2024年時点での不足は考えず、今後の生徒増減に注目し、これに各高校の市町村からの入学率を掛け、2024~2030年の入学見込み数を算出。当然、県立高が少ないつくばエリア地元高校への入学率は低くなる。

③エリア拡大法(試算2の方法):2024年時点での不足は考えず、つくばエリアに土浦・牛久・下妻の3市を加え、拡大つくばエリアを設定。その入学見込みを算出して、高校定員の過不足を論じる。

これらで計算すると、①現在14学級不足+2030年までに7学級不足⇒計21学級不足、②現在は検討せず+2030年までに3学級不足⇒計3学級不足、③現在は検討せず+拡大エリア定員内に収まる⇒定員増必要なし-となる。

これらの方法による結論は大きく異なる。特に、③はつくばエリアの現在の14学級不足を考慮しないだけでなく、生徒が減少する土浦・牛久・下妻を拡大つくばエリアに加えて生徒増を圧縮。これに低い入学率を掛け、強引に定員増必要なしの結論に導いている。

「拡大つくば」でも14学級不足

そこで議論がかみ合うよう、試算2の拡大つくばエリアを①の収容率法で分析した。2024年のつくばエリアの収容率は県平均の68.2%に対し54.7%と低いが、土浦・牛久・下妻を加えた拡大つくばエリアでは60.0%に向上する。しかし、68.2%の県平均以下で学級不足であり、不足数は2024年つくばエリアと同じ14学級になる。

これは土浦・牛久・下妻3市の合計平均の収容率が68.5%と県平均に近いためで、つくばエリアと拡大つくばエリアの県平均への必要学級数は変わらない。さらに、定員の多い土浦を除いた第7エリアでも新たに2~3学級の学級不足が発生する。

③の発想は、エリアを基本に募集定員を考えてきた改革プランのバランスを崩したようだ。県は、「エリアを基本に生徒数に応じた定員」を原則にして、つくばエリアの現状に向き合い、受験生・保護者の要望に応えてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

ウッディキャロット&モモコハウス《ご飯は世界を救う》69

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イラストは筆者

【コラム・川浪せつ子】つくばの元市役所近くの住宅街にある「ウッディキャロット&モモコハウス」さん(つくば市谷田部)は、女性に人気のレストランです。創業は1981年と古く、オーナーさんは変わっている人とか。前々から行きたかったのですが、女友達を誘ってやっと実現しました。

お店の雰囲気は、「ピンクハウス」(東京都目黒のファッションブランド)や「下妻物語」(下妻市のロリータファッションが好きな女子高生の映画)の世界感。ドアを開けたとたん、別世界です。11時ごろ行きましたが、どうにか座れました。

お店のスタッフさんは、かわい過ぎました。フリルいっぱいの洋服に、お帽子っぽいのは「ヘッドドレス」と、ロリータファッション。結婚式に花嫁さんが頭につけるようなものですね。ベールはついてないけど、お人形さんのようです。

「これ全部食べるの、無理~!」

レモンバターのハンバーグをオーダー。メニュー見ただけでも、すごいボリューム。パンはクルミパンをセレクト。友人のご飯はハートの形になっていました。絵を描きたかったので、見栄えするようにケーキも注文。友人は「これ全部食べるの、無理~!」とのことで、1個頼んで2人で食べました。 

初めに出てきた飲み物は、ベリーベリーソーダ。それも大きな「金魚鉢」入り! 中には、タピオカ?がたくさん入っていました。ケーキのときは紅茶がよかったのですが、この金魚鉢が見たかったので…。

実は5月に行ったのですが、今月9月のテレビの人気番組で紹介されていました。駅前で、タクシー運転手さんに人気のお店に連れて行ってもらう企画です。つくば駅からより、みどりの駅からの方が近いかなぁ。いずれにしても、つくば周辺のステキなお店は、車がないと行けないところが多いですね。

番組では、「どこから来ましたか?」との取材に、「埼玉県です」「千葉からです」というお客様に、ビックリ。テレビに出て、ますます混み合っているでしょうね。予約できるそうですから、女性ばかりでなく、男性の方でも体験してみてくださいね。ちなみに、このお店を紹介した運転手さんは、男性でした。(イラストレーター)