【鈴木宏子】絶滅の危機にひんするオオヒシクイの保護活動を長年続けてきた土浦市永国、大聖寺の小林隆成住職(79)が、稲敷市の稲波干拓地で越冬するオオヒシクイの生態を再現したモニュメの制作に取り組んでいる。3月までに同寺の本堂や境内に5つのモニュメントがそろう。
羽を広げたり水面に首を突っ込んで水を飲む様子などを再現した生態彫刻、親子3羽の実物大の石像、オオヒシクイの姿が彫刻された手水舎(ちょうずや)、実物大のバードカービング(鳥の彫刻)、オオヒシクイが彫刻された仏具、馨台(けいだい)の5つ。
生態彫刻は、富山県南砺(なんと)市井波地区の伝統工芸「井波彫刻」の第一人者、南部白雲氏が彫り、大聖寺本堂正面の屋根が張り出した向拝(ごはい)に設置する。すでに一部が出来上がり、3月までに残りが完成する。
石像は中国の作家が制作中で、参道脇の参拝者が手などを洗う手水舎近くに2月に設置する。手水舎には4羽のオオヒシクイの姿が彫刻される。
バードカービングは、鳥の工房つばさ(静岡県伊東市)を主宰する作家の鈴木勉さんがオオヒシクイの姿を忠実に再現した。16日に完成、本堂内に設置された。馨台には、首を伸ばし周囲を監視し危険を知らせる群れのリーダー、奴雁(どがん)が彫刻され、すでに完成している。
小林住職は山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)理事、日本鳥類保護連盟専門委員などを務める。1985年ごろから稲波干拓地に通い、2001年にはオオヒシクイの調査・保護団体「稲敷雁の郷友の会」(当時は江戸崎雁の郷友の会」の設立に関わった。
2007年2月、山階鳥類研究所総裁の秋篠宮さまが稲波干拓地でオオヒシクイを観察し大聖寺に立ち寄った折、「将来、稲波干拓地のオオヒシクイの生態を南部白雲師の手で再現したい」と夢を語って以来、準備を進めてきたという。
小林住職は「人の住めないところに鳥はすめても、鳥のすめないところに人は住めない。モニュメントが、野鳥を通して地球環境を考えるきっかけになれば」と話している。
