日曜日, 12月 28, 2025
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アストロプラネッツ 最下位脱出 栃木に勝利

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6回裏、先頭のマーティン(中央)がソロホームランを放つ(撮影/高橋浩一)

プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツは30日、土浦市川口のJ:COMスタジアム土浦で栃木ゴールデンブレーブスと対戦し、4-1で勝利した。これで茨城は7勝16敗、福島レッドホープスにゲーム差なしだが勝率で上回り、7チーム中6位と最下位を脱出した。

【ルートインBCリーグ2024公式戦】
茨城アストロプラネッツ-栃木ゴールデンブレーブス
栃木 010000000 1
茨城 00000103X 4
(5月30日、J:COMスタジアム土浦)

先発の福田

茨城は先発の福田拓也が6回1失点5奪三振で試合をつくり、残る3イニングを富樫晃毅、浅野森羅、根岸涼のリレーで乗り切った。「まっすぐと変化球をバランスよく使いながら相手を抑えられた。高めに浮いたフォームでタイムリーを打たれたが、イニング間にフォームを見返したりして変化球の精度を修正し、長いイニングを乗り切ることができた」と福田。

勝利投手の浅野は「普段はまっすぐで押す投球が多いが、今日は相手によって配球を変えながら、ストライク先行で有利なカウントをつくることができた」とコメント。8回の3人を見逃し三振2つとファウルフライに仕留めている。

8回表に登板、勝利投手となった浅野

打線は1点ビハインドで迎えた6回、先頭のアンディ・マーティンがレフトスタンドにソロホームランを放ち同点。8回は再びマーティンから始まり、北原翔の送りバントをはさんでホルヘ・エルナンデス、原海聖、大友宗まで4連打。ジョ・ミンヨンも遊ゴロで出塁しており、この回3点を追加した。中でも原はこの日4打数4安打の活躍。MVPを獲得し「しっかりとボールを打っていい試合ができた」とコメントした。

マーティンは「自分が打って同点、逆転できてとてもよかった。これからどんどん自分のプレーを見せていきたい」と話す。今月来日したばかりで、出場3試合で2ホーマーの活躍。千葉ロッテマリーンズで活躍したレオネス・マーティンの年の離れた弟だ。「同じ外野手で強肩・俊足、まだ23歳で伸びしろは大きい」と巽真吾監督は見ている。

8回裏1死二・三塁、原の右前適時打で勝ち越す

4月を1勝7敗と低空飛行を続けた茨城だが、5月は6勝9敗と持ち直してきた。特にここ半月に限って見れば、5勝4敗と勝ち星が先行している。

「先発がゲームをつくる、安定した試合が増えてきた。リリーフ陣も短いイニングで多くの三振を奪っており、安心して終盤を任せられる。奪三振数と盗塁数はリーグでもトップなので、こうした長所を生かしながら勝利を挙げていきたい」と巽監督。ちなみに今日も4盗塁を成功させた。

打線の調子も上向いてはいるが、あと一歩の奮起が必要という。「今日は10安打と4四死球で4得点。もう少し点を取ってほしい。打てるぞとなると打線がつながってくるので、そのきっかけをつくるような、雰囲気を変える1本を打てる選手に出てきてほしい」と巽監督の期待。今日のところは、マーティンの一発がそれを実現してくれた。(池田充雄)

勝利投手の浅野(左端)、MVPの原(左から3人目)、ホームラン賞のマーティン(右端)。ゲームスポンサーの関彰商事からそれぞれガソリン券が贈られた

移動困難な高齢者、障害者に 期日前投票のタクシー券配布 つくば市長選・市議選

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つくば市選挙管理委員会事務局のサイン=つくば市役所

10月20日告示、27日投開票のつくば市長選・市議選で、市は移動困難な市全域の高齢者や障害者を対象に、期日前投票をするためのタクシー券を配布し運賃を全額助成する方針だ。配布対象は、同市の助成制度に申請しタクシー運賃助成を受けている高齢者や障害者など約4000人。市は6月6日開会の市議会6月定例会議に同事業の補正予算案約2000万円を提案する。

今年3月議会で市は、ワゴン車に投票箱を積んで自宅前まで行くオンデマンド型移動期日前投票を市北部の一部地区で実施するとし、予算を計上した。これに対し市議会から投票の公平性を懸念する意見が出され、市は市全域を対象にした施策を実施するとしていた。

期日前投票のタクシー券助成は県内で大子町、常陸大宮市などが実施している。ただし寝たきりで期日前投票ができない高齢者などは、郵便投票の利用が必要になる。

タクシー運賃助成は、自宅から各期日前投票所までの往復運賃と、投票時の待ち時間の運賃を全額助成する。1人当たり片道3~5キロ程度、運賃5000円程度を想定している。

すでにタクシー運賃の助成を受けている高齢者や障害者は申請不要で、期日前投票が始まる告示日翌日までに、市から期日前投票のタクシー券が自宅に届く。現在、助成を受けていないが、移動困難なためタクシー券が必要な高齢者や障害者には、6月定例会議で議決後、随時、市選挙管理委員会で申請を受け付ける。利用できるタクシーは市内の会社とする方針。

市議会からの懸念受け

同市は22年4月、今年の市長選・市議選でインターネット投票を実施することを看板施策に掲げ、国からスーパーシティ国家戦略特区の認定を受けた(22年8月3日付)。しかしネット投票に対して、なりすましや強要をどう防ぐかなどの課題が指摘される中、今秋の選挙では実施しない。代わって市は、ネット投票導入につながるステップだと位置付け、投票箱を積んだワゴン車が高齢者や障害者などの自宅前まで出向いて、立会人を付け、車内で紙で投票してもらうオンデマンド型移動期日前投票を実施する方向で、今年1月、高齢化率が高い市北部の筑波、臼井地区で模擬投票の実証実験を実施した(1月26日付)。

実証実験を受けて市は、移動期日前投票を市北部で実施するとして、3月議会で約1300万円の当初予算を計上した(2月1日付)。

これに対し市議会から「タクシー券発行の方が投票の権利や公正さ、利用しやすさから現実的」(昨年9月議会、川村直子市議)、「(筑波、臼井地区の)2カ所の地区だけで行うのは、各地区から候補者が出る市議選では公平性、公正性という選挙の大原則が保たれるのか」(今年3月議会、飯岡宏之市議)などの質問が出ていた。今年3月議会で五十嵐立青市長は飯岡市議に対し「実証実験の結果を踏まえて選管で十分協議していただく。市内全域で、移動が困難な高齢者、障害者が投票しやすい施策を検討したい」などと答弁していた。

その後、4月9日と24日に開かれた市選挙管理委員会(南文男委員長)では、移動期日前投票の実施の是非について、一部地域で実施することは公平性の観点から時期尚早だとする意見が出ている。タクシー運賃助成については5月7日の市選管で「市全域で実施するなら別段問題ない」とする見解が出ていた。

オンデマンド移動期日前投票実施の是非については6月3日の市選管で引き続き協議する。20日時点で五十嵐市長は、NEWSつくばの取材に対し「タクシー券とオンデマンドをセットで考えている。市選管に協議していただいている」としている。(鈴木宏子)

わらべ歌の文化《くずかごの唄》139

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イラストは筆者

【コラム・奥井登美子】土浦の自然を守る会で、今年の環境展に何を出品するか議論した。そのあと、相崎伸子さん指導の「わらべ歌」を8人で、踊って、歌って、お手玉を投げ合って遊んだ。

かっぱ かっぱ らった
かっぱ らっぱ
かっぱらった
とって ちって た
かっぱ なっぱ かった
かっぱ なっぱ いっぱいかった
かって きって くった
(谷川俊太郎)

明治、大正、昭和のはじめ、子供の集団での遊びは「わらべ歌」。わらべ歌のルーツは奥が深い。

地域でバラバラの唄と地域で共通の唄もある。なぜバラバラなのか、なぜ共通なのか? 人間の歴史と生活が複雑に関わっているらしい。唄いながら踊って、最後に笑う。

尾原昭夫著「日本のわらべうた」(文元社)。戸外遊戯歌、室内遊戯歌、歳時・季節歌。

図書館から4~5冊借りてきて一生懸命読んだが、読めば読むほど地域の不思議が増えてくる。

荻窪の景色の中で遊んだリズム

私は幼い時に荻窪で育った。井の頭公園の近くの「みどり幼稚園」。

そうめん にゅうめん ひやそうめん

かきがらちょうの ぶたやの おつねさん

5~6人で円をつくり、ぐるぐる回る。「そうめんにゅうめん」を唄いながら、自分の肘から手首にかけて、指先でくすぐる。

「かきがらちょう」で、隣にいる子の手か腕をかく。「ぶたや」で、次に来た子の腕をぶつ。「おつねさん」で次に来た子の腕をつねる。輪になって歌いながら、友達と互いに体を寄せ合って、つねったり、くすぐったりして、最後は皆で大笑いするゲームである。

野原の多かった昔の、のどかな荻窪の景色の中で遊んだリズムが、まだ私の中に残っている。(随筆家、薬剤師)

自家用車で乗客を有償運送 つくば市が2地区で実証実験 来年1月から

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実証実験が実施される予定の桜ニュータウン

一般ドライバーが自家用車を使って有償で乗客を運ぶ「自家用有償旅客運送」の実証実験を、つくば市が来年1月から市内2地区で計画している。スマートフォンのアプリでドライバーと乗客をマッチングさせ、公共交通の運行がない時間帯に限定して実施する。

6月6日開会の市議会6月定例会議に提案する。実証実験は3年間で、運行は2026年度まで。つくば市が、土浦、牛久、下妻市に呼び掛け、4市共同で取り組む。日本版ライドシェアはタクシー会社が運営主体となるのに対し、今回の実証実験は4市がそれぞれ運営主体となる。ドライバーの健康管理や車両点検などは地元のタクシー会社やバス会社に委託する方針だ。

つくば市が取り組む2地区は、同市下広岡の住宅団地 桜ニュータウンと筑波山地域。桜ニュータウンは昨年1月末、つくば駅に向かう路線バスが廃止された。代替公共交通である乗り合いタクシー「つくタク」が運行していない時間帯の朝夕に、地域住民などを対象に、桜ニュータウンとつくば駅の区間などで実施する。

筑波山地域は、中腹のつつじケ丘や筑波山神社を運行する関東鉄道 筑波山シャトルの最終便が夕方5時ごろであることから、バスの運行が無くなる5時以降、観光客などを対象に、中腹からふもとの筑波山口までの区間で実施する。筑波山口からは公共交通などを利用してもらう。

市総合交通政策課によると、運転手不足の中、公共交通の課題がある地区で実施する。24年度の事業費は4市合わせて約3億3500万円。実証実験ではまず、一般ドライバーが登録するためのドライバーバンクアプリと、ドライバーと乗客をマッチングさせる配車アプリを4市で協議しながら共同開発する。一般ドライバーの募集は10月以降開始し、審査と研修などを実施する予定だ。4市で計76人の登録を目標にしている。

運行エリアや実施時間帯をどう設定するか、乗車運賃や支払い方法をどうするか、ドライバーが待機する時間帯の賃金などをいくらにするか、乗客によるドライバーの評価を点数化するかなど詳細は、4市での協議のほか、行政、交通事業者、地域住民などで構成する市公共交通活性化協議会で協議して決める。国は運賃についてタクシー運賃の8割などを目安としている。(鈴木宏子)

大切にしたい茨城の陶芸文化《令和楽学ラボ》29

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第43回陶炎祭=笠間芸術の森公園

【コラム・川上美智子】陶芸を楽しむ人が増えてきている。コロナの3年間には陶芸に関する催し物も中断され、教室に通う人も減り、茨城の陶芸の火が消えてしまうのではないかと心配していたが、今年は完全に復活した。4月29日~5月5日の大型連休に、笠間芸術の森公園イベント広場で開催された第43回陶炎祭の人出は8万6000人と2年連続で増え、来場者の多くが駐車場探しが大変だったと口にしていた。

出店数も250を超え、若い陶芸作家たちの参加が目立った。県内からのお客さまだけでなく、近県からも訪れる人が大勢いて、笠間の陶炎祭の集客力は目を見張るものだった。

高校生に自作を値引き販売

昨春、初個展を開いた筆者も、陶芸を学び合う仲間3人で初出店した。暑さ、雨天、強風など7日間の開催期間中のテント下での販売はとても過酷だった。陶器の販売だけにしておけばよかったのに、欲張って茨城ロボッツの選手に補食として提供しているインドカレーとチャイの提供もしたので、それは大変だった。

食材の仕入れ・保管と、毎日100食分のカレーの調理、現場への運搬など、祭りを楽しむどころか、ヘトヘトに消耗し、今も尾を引いている。

筆者にとっては初めての作品販売だったが、展示した花器、抹茶椀(わん)、ぐい飲み、ペンダントの半分程を購入いただいた。販売という行為自体苦手であるが、初日に千葉からお母さんと一緒に来られた男子高校生とのやりとりは印象に残った。緑色系の氷裂釉薬(ひょうれつゆうやく)をかけた抹茶椀を気に入られて、何度も何度も足を運ばれ、閉店間際にやはりこれが欲しいと来られた。

聞けば、最近、高校で茶道を始めたばかり、どうしてもこのお茶碗で飲みたいと言う。お母さんから小遣いで買うよう言われていて値段が折り合わないようだった。茶碗との出会いも一期一会、彼の茶道への思いを応援したくなり、大事に使ってねとお小遣い価格に値下げしてお渡しした。

このようなやり取りも陶器市ならではのこと、うれしそうに持ち帰る姿を見て、私の茶碗を気に入ってくれたことへ心から感謝した。陶磁器に興味関心を持つ人、購入したい人がたくさんいることを確認した7日間であった。

水戸芸術祭美術展覧会内覧会=水戸芸術館

魯山人の漆器、日本画、篆刻…

5月28日(火)~6月7日(金)には、第55回水戸芸術祭美術展覧会が芸術館で開かれる。本展覧会には15年前から委嘱出品しており、今年も出来上がったばかりの新作の壺(つぼ)を出品した。展覧会用の手捻(びね)りの大きな作品は、時間もエネルギーも要し年に2~3個しか作れないが、今後も自己の感性を大事にして丁寧な作品作りをしていきたいと思う。

また、茨城県陶芸美術館では7月7日(日)まで「魯山人(ろさんじん) クロッシング」の企画展が開催されている。県内に所蔵される魯山人の陶磁器、漆器、日本画、篆刻(てんこく)、書、約70点が出展され、魯山人特有の赤絵付けされた食器など、筆者が勤務する関彰商事が所蔵する器40数点も初披露されている。

陶土を産する笠間を拠点とする器の芸術、誰でも簡単に触れ、体験でき、学べる環境は本当に貴重である。筆者も近くにその環境があったから、60歳を過ぎてその道を歩み始めた。太古からつないできた人間の手による土の芸術文化、茨城の地で大切に継承していってほしいと願っている。(茨城キリスト教大学名誉教授、関彰商事アドバイザー)

次は竹園高の学級増を つくばの市民団体が要望 県立高校不足問題

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県教育庁学校教育部の庄司一裕部長に要望書を手渡す「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」の片岡英明代表(右)

つくば市などつくばエクスプレス(TX)沿線で児童生徒数が増加し県立高校の入学枠が不足している問題で、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)は28日、柳橋常喜県教育長宛てに、竹園高校を2学級増やし10学級とする、つくばエリアの全日制高校の定員を県平均水準まで引き上げるーなど3項目を要望した。

同会は2021年から県教育長に要望活動をしており、今回が6回目。今回初めてつくば市選出の県議5人全員を含め県議6人と、つくば市議会議長ら市議3人が同席した。

片岡代表はまず、サイエンス高の普通科設置(5月24日付)に対し「開校2年で見直したなど、柔軟な訂正力に注目したい」と普通科設置を評価した。その上で、竹園高について、中高一貫校への移行により土浦一の定員が減り、水海道一、下妻一も25年度からさらに削減されることなどから「中学生の苦労は深刻になる」と話し、「TX沿線は県立高校の不足が地域発展のボトルネックになっている面がある」などと指摘した。

さらに片岡代表は「(県立高校が不足しているため)つくばではクラスの半分以上が中学受験をする小学校もあり、小学3年生ごろから塾に通う。塾の費用は夏期講習、冬季講習などを含めると年100万円くらいかかり、教育格差が広がる」など保護者らの切実な声を紹介した。

要望書を受け取った庄司一裕県学校教育部長は「TX沿線の人口増により(高校問題を)解決しなければならないことは十分認識している。(今年4月から)牛久栄進高の学級増、筑波高の(進学コース設置など)魅力化に取り組み、来年度からはつくばサイエンス高に普通科を設置する。普通科も科学技術科もますます魅力化を図っていきたい」と述べた。竹園高の学級増要望に対しては、県高校教育課の深澤美紀代課長が「ご要望として伺いたい」などと答えるにとどまった。

考える会(奥)と県教育庁(手前)との懇談の様子

懇談では県議から、定員割れを解消する方法として「大学の指定校となり推薦枠を確保してはどうか」などの提案が出た。サイエンス高に新設される普通科について、考える会から「科学技術科と普通科とで行き来(転科)できるのか」「普通科は文系も理系も大学進学を選択できるのか」などの質問が出て、県は「科学技術科は1年次に工業科目を履修するので転科はハードルが高い」「普通科は文系、理系どちらも対応できる」などと答えていた。(鈴木宏子)

大きな裁ちばさみ《続・平熱日記》158

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】大きな裁ちばさみで、シャキ、シャキと新聞の記事を切り取ることがある。とても気持ちよく切れる。古道具屋で買った、柄が黒く塗ってある大きな裁ちばさみ。それからあとは、洗って乾燥させた牛乳パックを半分に切るときに使う。

半分に切った牛乳パックには2通りの使い方がある。ひとつは、まな板の上に置いて肉や魚を切るのに使う。もうひとつの使い方は、絵を描くときのパレット。朝のコーヒーは牛乳を多めにして2杯飲むから、だいたい1週間でひとパックのペース。

確かなことは覚えていないが、多分小さな絵を描き始めてから自然と、牛乳パックを使い始めたのだと思う。今まで相当な数の牛乳パックをパレットに使ってきたが、試しに今年の初めから捨てずにいた。というのも、使い終わったパレットは案外美しくもあり、抽象画のようでもあるから。

笠間の日動美術館には有名な画家のパレットのコレクションが展示してある。当たり前だが、パレットは一つの道具なので、その人の目的に合った道具としてのカタチをしている。そのパレットから作品を想像するのも面白いし、逆に作品からパレットを見るとなるほどと思う。そういう意味でいえば、私の絵は牛乳パックのパレットで充分だ。

5月の終わりから丸亀市で個展

新聞の記事を切り抜くことは本当にたまにしかない。1年間に数枚ほど。例えば、絵を描いている人の言葉が気になることはあまりないのだが、面白いことに数学者や物理学者、詩人たちの言葉にはドキッとすることがある。

偶然目にした彼らの言葉を、私は大きな裁ちばさみで切り取って日記兼雑記帳のノートにスクラップする。でも多くの場合、その切り取った記事を読み返すことはない。内容を覚えていることもほとんどないが、頭の隅に切り取った記憶だけはあって、数年を経て「そういえば…」と、探して見返すことがある。

5月の終わりから、香川県の丸亀市にある「あーとらんどギャラリー」で個展が始まる。ゴールデンウィークの前に、ほぼ作品を描き終えて梱包(こんぽう)した。ふと気になって、使い終わって積み重なっていた牛乳パックのパレットを数えてみたら、20数枚あった。1カ月に約6枚を使っている計算だ。

今年前半は個展やグループ展が続いたから、ちょっと頑張り過ぎたかもしれない。しかし、どのパレットにも数色の同じ色が大体同じ所に出してあって、つまりそれは私の身の回りのものごとの色彩を表しているのでもあって、何とも地味な色合いである。

ある朝新聞を開くと、ある詩人の言葉が目に留まった。大きな裁ちばさみでシャキ、シャキと記事を切り取った。その日は、牛乳を買い忘れてストレートのコーヒーを飲んだ。それから、牛乳パックに同じ色の絵の具を同じ場所に出して絵を描いた。(画家)

6月1日から利用再開 さくら民家園 法令適合を確認

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さくら民家園=つくば市吾妻、中央公園内

建築基準法上の違反建築物状態にあるとして昨年11月1日から建物の利用ができなくなっていたつくば市吾妻、中央公園内の古民家、さくら民家園(23年10月30日付)について、つくば市は24日、移築当時の法令に適合していたことが確認できたなどとして、6月1日から建物の利用を再開すると発表した。

さくら民家園は江戸時代後期ごろ建てられた古民家で、つくば科学万博が開催された1985年、合併前の旧桜村の委託を受けて住宅・都市整備公団(現在のUR都市機構)が旧桜村上大角豆から中央公園内に移築した。現在、市が所有、管理している。

昨年、市が、かやぶき屋根の改修に向けた手続きを進める中で、移築当時に必要だった建築確認申請書と検査済証が見当たらず、当時、建築確認申請の手続きをしないまま移築した可能性があることも考えられるなど、手続きの不備が判明したとして、市は昨年10月30日、違反状態を改善するため建物の利用を当面の間、停止すると発表していた。

市生涯学習推進課によると、その後の昨年11月、移築当時の建築確認申請や完了検査に関する交付年月日と交付番号を記録してある市建築指導課保管の計画通知台帳に、さくら民家園移築時に出された計画通知番号と検査済番号があることが分かり、移築当時の法令に適合していたことが確認できたとしている。一方、当時、市に提出されていたはずの建築確認申請と検査済証自体は現時点で見つかっていない。

市はさらに、さくら民家園が立地する地区は現在、火災の発生を防止するため建築基準法でかやぶき屋根の設置や改修ができない区域に指定されていることから、屋根の改修に向けて指定を解除する手続きを実施し、現在の法令に適合しながら屋根の改修をするための手続きがこのほど完了したことを受けて、利用を再開するとしている。

かやぶき屋根はこれから改修するが、時期は現時点で未定。改修工事中も建物の利用は概ねできるという。市は「市民の憩いの場、交流の場として、さらに利用しやすい施設となるよう見直し、老朽化が進んだ部分については改修を行いながら運営していく」としている。

さくら民家園の建物内は座敷、茶室、土間、かまどなどがあり、だれでも無料で見学できる。これまで、お茶会、お話し会、展示会などのイベントが開催されてきた。開園時間は午前9時30分~午後4時30分。休園日は毎週水曜など。

原発の本質はただ二つ 樋口元裁判長が講演《邑から日本を見る》160

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講演する樋口英明さん

【コラム・先﨑千尋】「原発の本質はただ二つ。人が管理し続けないといけない。人が管理できなくなった時の被害は想像を絶するほど大きい」。2014年に福井地裁が関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた際に裁判長を務めた樋口英明さんの講演会が、5月12日、水戸市民会館で行われ、約400人が耳を傾けた。

この講演会は同氏講演会実行委員会(村上達也・海野徹共同代表)が主催し、樋口さんと宮嶋謙かすみがうら市長との対談も行われた。

樋口さんは冒頭、能登半島地震に触れた。震源に近い石川県珠洲市高屋地区に原発の建設計画があった(1975年)が、地元の反対運動で白紙撤回され、事故を起こさずに済んだ。樋口さんは、もし珠洲原発が稼働していたら大変な事故になったはず、国は反対運動をしてきた人に感謝しなければならない、と話した。

能登半島の中部にある志賀原発は運転停止中だったが、今回の地震で外部電源が喪失するなど、耐震性が低いことが証明されている。

大飯原発訴訟の際、住民側は原発周辺で強い地震が起きた際の不安を訴えたが、関西電力側は「大飯原発の敷地内に限っては強い地震は起きない」と主張した。

樋口さんが大飯原発を止めた理由は「原発の過酷事故は極めて甚大な被害をもたらす。それゆえに、原発には高度の安全性と耐震性が求められる。しかし、わが国の原発の耐震性は極めて低い。よって、原発の運転は許されない」というもの。原発の敷地内に限って強い地震は起きないなどということはあり得ない、というのが樋口さんの考えだ。

樋口さんによれば、一般に国民も裁判官も「原発問題は難しい」という先入観がある。原発訴訟は高度の専門技術訴訟であり、裁判所は原発の安全性を直接判断するのではなく、規制基準の合理性を判断すればいいというのが多くの裁判官の判断基準だ。しかし、裁判官も国家公務員であり、極端な権威主義と頑迷な先例主義、科学妄信によって正当な判断ができなくなっている、と樋口さんは話す。

また、全国各地で原発が稼働しているが、これは、政権や電力会社の考えだけでなく、国民が、原発問題は難しい、専門家である原子力規制委員会の審査を経たのだから安全なんだろうという先入観があるからだ、とも述べていた。

かすみがうら市は「非核脱原発平和都市宣言」を決議

宮嶋さんが市長を務めるかすみがうら市は、東京電力福島第1原発の事故から2年後に「非核脱原発平和都市宣言」を決議している。宮嶋さんは市長就任直後の議会で東海第2原発の再稼働に反対することを明言し、「脱原発をめざす首長会議」のメンバーになった。同市は、東海第2原発が事故を起こした際にはひたちなか市から約7600人を受け入れることになっているが、宮嶋さんは「それは無理。バスも調達できないし、パニックになる。避難計画を策定するような危ない原発は止めるべき」ときっぱり言う。

対談の中で樋口さんは最後に「科学は万能ではない。現在の地震学では、地震がいつどこで起きるか予知できない。東海第2原発に関して、日本原電は1009ガル以上の地震は起きないと言っているが、誰がそのことを保証できるのか。99%無理」と結んだ。(元瓜連町長)

筑波大の理系男子2人 焼き芋を移動販売

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「阿吽焼き芋屋」の金さん(左)と田邉さん(右)。中央はアオニサイファーム代表の青木さん

オフシーズンの新商品に「焼き芋ボール」

焼き芋の移動販売を昨年12月から始めた筑波大大学院1年の金龍泰さん(24)と同大4年の田邉渓太さん(23)が、焼き芋を使った新商品を販売している。金さんは工学システム、田邉さんは物理学を専攻する理系学生だ。

25、26日につくばセンタービル1階の貸オフィスco-en(コーエン)=同市吾妻=で開催されている同市上郷地区の物産展「EAT and kamiGO(イートアンドカミゴー)」で販売中。

「焼き芋を焼く温度は高すぎても低すぎてもダメ。ちょうどいい焦げ感を出すのも難しい」と、金さんが焼き芋作りの奥深さを語る。

新作の「焼き芋ボール」

金さんは昨年12月に田邉さんと、同市上郷でブルーベリーの観光農園やカフェを運営する「アオニサイファーム」(青木真矢代表)の事業の一環として「阿吽(あうん)の焼き芋屋」を始めた。市内を中心に県内外のイベントなどで、改良した軽バンを使った焼き芋の移動販売を手掛ける。

今回の物産展では、焼き芋のオフシーズンに向けた新商品として、すりつぶした焼き芋に片栗粉を練り込み、一口サイズに丸めて油で揚げた「焼き芋ボール」を考案した。焼き芋の風味を生かしつつ「外はカリッと、中はもっちり。サクッと食べられる」ように意識した。

「使用するのは上郷の農家さんが作る芋。美味しいものを作ることで、私たちの食を支える農家さんの魅力を伝えていきたい」と2人は思いを語る。

焼き芋販売は「アオニサイファーム」の事業だが、金さんと田邉さんが収支計画を立て、売り上げの中で経費を賄っている。「青木さんには好きにやっていいと言ってもらっている。困った時に相談に乗ってくれる」

「焼き芋ボール」はオーダーが入ってから揚げ始める

「選挙割」「つくばクエスト」を企画

金さんと田邉さんは、若年層の投票率向上を目的に活動する学生団体「ドットジェイピーつくば支部」(現在は同水戸支部に統合)のメンバーとして、投票すると提携する店舗で割引を受けることができる「選挙割」や、街歩きイベント「つくばクエスト」などの企画に携わってきた。

その後も、地元の農家や飲食店に協力して食品開発をするなど、地域と関わる活動に力を注いできた。その中で出会ったのが、情報誌の作成などを通じて農業の魅力を発信している「アオニサイファーム」の青木代表だった。地元の上郷や周辺地域で作られるサツマイモを使った焼き芋販売は、青木さんから誘われスタートさせた。

「阿吽焼き芋屋」の移動販売車(阿吽焼き芋屋提供)

焼き方のパターンを実験

「普通の焼き芋じゃダメ、こだわりたいと思った」と話す金さんは「夜通し焼いて、美味しい焼き方を研究した」と販売に向けた努力を振り返る。田邉さんは「あえて意識はしていないが、いろいろな焼き方のパターンを実験しているのは理系的かもしれない。自分たちにとって焼き芋作りは初めての世界。知らない分野だからこその面白さがある」と話す。

改良した軽バンで各地のイベントに出店すると、「おいしい、あまい。焼き芋の質がいい」という声を掛けられた。田邉さんは「その声は僕らにとってもうれしいし、農家さんに伝えると喜んでくれる。僕らの焼き方がよかったというよりも、農家さんの力だと思っている。農家さんが買い手から意見を聞くことは難しいかもしれない。わたしたちが伝えられるといい」と、生産者と消費者の媒介者としての役目があると話す。「行った先で売れるかわからない難しさがあるし、コンビニやスーパーで売っている安い焼き芋との値段の差をお客さんにどう納得してもらえるか。見せ方を含めて考えていかなければ」と今後の課題も浮かんできた。

地域の魅力発信したい

金さんは「これまでに(選挙割など)イベントを企画はしてきたが、作るのは生産者の方に頼ってきた。焼き芋は初めて自分が作る側に立つ機会。ものづくりの奥深さにも気付かされた。農家のことを伝えるという意味での焼き芋。そのためにも一番美味しいものを作っていきたい」と今後について思いを語る。

田邉さんは「僕は宮崎出身。つくばに来て地域に関わる中で、自分たちなりに面白いと感じる地域の魅力がある。魅力的な方たちとの出会いもあった。大学にいると、つくばは学生の街、研究の街というイメージが先行していたが、一歩外に出ると田園があり、素朴な風景が広がっている。そのコントラストに魅力を感じる。活動を通じて多くの方と出会い、それぞれの価値観や、地域のことを知る機会になった。地域の魅力の発信と、実際にお客さんが来るためにはどうするかを考えていきたい」と話す。

2人に声を掛けた青木さんは「2人は地域を盛り上げようと意欲的。自分たちで考える姿を見守りながら、焼き芋をきっかけにさらに活動を展開していけたら。つくばの中心地域と農村部を繋いでいきたい。いろいろな人が関わることで、地域がさらに盛り上がっていくと思う」と話す。(柴田大輔)

◆「阿吽の焼き芋屋」の出店予定は公式インスタグラム「阿吽の焼き芋屋」へ。

つくばの地酒を普及へ おさけ推進協が発足

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つくばのおさけ推進協議会のメンバーら

つくば市内の酒生産事業者が一体となり、同市の地酒乾杯条例を推進しようと24日、「つくばのおさけ推進協議会」が発足し、市役所で設立総会が催された。

協議会は、日本酒を生産する稲葉酒造、浦里酒造店の2社、ワインをつくるビーズニーズヴィンヤーズ、つくばヴィンヤード、カドヤカンパニー、ル・ボア・ダジュールの4社、地ビールのツインピークスマウンテンブルーイング、ペブルスの2社の計8社で構成する。多様なお酒があることから「おさけ」をひらがな表記にした。

協議会会長にペブルスの延時崇幸代表、副会長にビーズニーズヴィンヤーズの今村ことよ代表、監事に稲葉酒造の稲葉芳貴代表とつくばヴィンヤードの高橋学代表が選出された。事務局はつくば観光コンベンション協会が受け持つ。市産業振興課課、市商工会、同コンベンション協会が支援機関となる。

同市は2020年1月、地酒での乾杯により地酒の普及促進を図ろうと、乾杯条例を施行した。その直後コロナ禍になり、4年を経て協議会が発足した。

延時会長(42)は「つくばにはいろいろなお酒があるが、まだまだ市民に知られていない。まずは手にとってもらうことから始めたい」と述べた。つくばの地酒の普及促進のため、広報活動やイベント活動を実施することになるという。

市内の8事業者が生産する地酒

総会は、同コンベンション協会会長の五十嵐立青市長と同副会長の神谷大蔵市議があいさつし、規約、役員選任、2024年度の事業計画などを議決した。

同市は2017年ワイン特区に認定され、20年乾杯条例が施行、ここ5年の間に6事業所が開業した。博士号をもつ事業主が3人おり、ほかの地区にない特徴がある。

総会では、今後ツアーを計画するなどアイデアを出しながら活性化につなげていきたいという意見が会員から上がった。つくば駅にビール、ワイン、日本酒など地酒バーを設置する、市役所のロビーに展示ブースを設ける、つくバスを使ったバスツアーを実施するなどの提案も出た。

9月28日には「つくばおさけPRキャンペーン」をつくば駅前のつくばセンタービルやBiVつくばなどで開催する予定。まつりつくばや筑波山梅まつりにも出店が予定されている。(榎田智司)

「田んぼの学校」にようこそ《宍塚の里山》113

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写真は筆者

【コラム・嶺田拓也】「田んぼ」とは、私たちが食べるお米を収穫することを目的に、イネが栽培できるように整えられた場所です。

イネの先祖は、もともとはアジアやオセアニアの比較的暖かい地域に生育していた多年生の湿地生植物でした。日本には、縄文後期から晩期(約4000~2300年前)ごろ、イネとその栽培法が伝わってきたとされていますが、かんがい(川などから水を引くこと)技術が未発達だったため、水を溜めやすい場所が良い田んぼの条件でした。

湧水が多く、また周辺の里山に降った雨が大池に溜まりやすい宍塚の谷津地形は「田んぼ」に適していました。しかし近代以降、効率よく生産性を上げるために「田んぼ」は、機械化に対応し大区画に、すぐ乾くように排水機能の強化が進みました。

宍塚の田んぼは、小区画で大型の機械には対応できず、また地下水位の調節が難しいため、天候などに大きく左右されがちで、現代の米作りには不利となってしまいました。

では、宍塚の田んぼを続ける意義はどこにあるのでしょうか。今でも野外でのイネの栽培は、天候や病虫害、土壌の理化学性の変化など、多くの影響を受けており、現在の技術を持ってしても、これらのすべての影響因子を人為的にコントロールすることは実現していません。そもそもお米は「つくる」ものではなく、「とれる」ものなのです。

人事を尽くして、また、さまざな生きものたちの営みの助けもかりながら、獲れたお米に感謝できるような「田んぼ」を作り続けていくこと。これが、かつての良田だった宍塚の田んぼ作りで目指すべきものではないでしょうか。

宍塚の田んぼで獲れるものは、決してお米だけではありません。畦(くろ)に植えられた大豆、大池から水を引くための水路で獲れるマシジミやドジョウ、さらには大池に水を供給する周辺の里山からたくさんの幸をいただくことができます。まだその役割がよく知られていない「ただの虫」をはじめ、たくさんの生きものたちすべても「田んぼのめぐみ」とすれば、もっと田んぼ作りが楽しくなるでしょう。

田んぼ作りでは、水路の整備、田植え、草取り、稲刈りなど、たくさんの人の手が必要です。そして、かっては農事暦にあわせて、お互いに作業の労をねぎらう親睦の場としてのさまざまな「祭り」も催されていました。宍塚での田んぼ作りでも、田んぼに関わるさまざまな人の環をしっかりと産み出してくれます。

田んぼの学校では、「生きものいっぱい お米もざくざく みんなで楽しく 田んぼ作り」を合い言葉に、谷津田に集う生きものや人(文化)を伝承していければと思っています。(宍塚の自然と歴史の会 田んぼの学校校長)

来年度から半分の3学級を普通科に つくばサイエンス高

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24日開かれ、つくばサイエンス高校の普通科新設が報告された県定例教育委員会=県庁

2年連続の定員割れ踏まえ

2023年度に科学技術の専科高に改編されたつくばサイエンス高校(つくば市谷田部)が、開校から2年連続で定員割れとなったのを踏まえ、県教育庁高校教育課は24日開かれた定例教育委員会(柳橋常喜教育長)で、25年度から同校に普通科を3学級(定員120人)新設すると報告した。現在6学級240人の科学技術科は、来年度から半分の3学級120人に減らす。学校全体の定数は6学級240人のまま。

新設する普通科は、文系、理系どちらも選択できる文理融合型の選択科目や、総合的な探求の時間に自分の興味を探求できる「サイエンス探求」などを用意する。同校には、電子顕微鏡や分析機器など大学レベルの機材や設備が備えられていることから、普通科でも機器や設備を生かしたサイエンス探求ができるという。一方、科学技術科は、従来のまま2年次からロボット、情報、建築、化学生物の4領域の中から選択できる。

サイエンス高はつくば工科高校を改編し、2023年度開校した。つくばエリアの中学生が増加していることを受けて、定員を2学級80人増やして240人にした。一方、初年度の入学者は、一次募集の志願者が72人(倍率0.3倍)、二次募集を含めた入学者数は88人だった。2年目の今年度はさらに減り、一次募集の志願者は68人(同0.28倍)、二次募集を含めた入学者数は77人にとどまった。初年度の23年度は152人、24年度は163人の欠員が出ていた。

2年連続の定員割れについて県教育庁高校教育課は、開校後の進学実績がまだ見えない中で中学生が志望先に同校を選びにくい、中学3年の段階で理系の進路を選ぶのは難しいとして、普通科を設置する方針を決めた。

普通科設置は10月下旬の定例教育委員会での議決を経て正式決定となる。県は昨年7月、牛久栄進高校の1学級増や筑波高校の進学アドバンスコース新設などを発表しており、今回の募集定員の変更は昨年より2カ月早い公表となる。

ミスマッチに厳しい意見

24日の教育委員会では教育委員から厳しい意見が相次いだ。教育委員の一人、市原健一元つくば市長は「前々から何度も指摘させていただいているが、つくば市はよその市町村と比べ中学生がはるかに多いのに、なぜサイエンス高校の志願者が少ないのか、片方で高校をつくってほしいという要望があり、片方でつくば工科高校をサイエンス高校にして受け皿にしようとしたがミスマッチが起こった。根本的にどこが問題なのか、ニーズをしっかり把握していなかったことになるので重く受け止めてほしい」などと指摘した。

県高校教育課の深澤美紀代課長は「(ミスマッチの)原因の一つとして、中学3年時点で理系進学を決めるのはかなり難しいという意見を中学校から聞いている。高校の特色について地域の方への広報が足りなかった部分も感じている。それぞれの高校の特色をどう伝えたらいいのか、広報のツールについてもしっかり検証していきたい」と答えた。

サイエンス高校の定員割れ問題については、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)が28日、県教育長宛てに要望書を提出する予定で、同校に普通科を設置するなど3項目を要望する方針だ。片岡代表は「28日に要望書を出す前に要望の一部が実現しうれしく思う。一歩ずつでも前進したことは良かった。実現してくれた関係者に感謝したい」とし、さらに「竹園高校を2学級定員増やし10学級とすること、つくばエリアの県立高校募集枠を県水準に引き上げることも、実現に向け要望したい」などと話した。(鈴木宏子)

サイバーダインの装着ロボット 東南アジア最大の医療施設で歩行改善治療に使用へ 

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サイバーダインの山海嘉之社長(左から2人目)に発注リストを手渡すマレーシアのチー・キオン人的資源庁大臣(同3人目)=23日、つくば市学園南、サイバーダイン本社

マレーシアの大臣がつくば本社訪問

筑波大発のスタートアップ企業「サイバーダイン」(本社つくば市学園南、社長・山海嘉之筑波大教授)が開発する医療用の装着型ロボット「HAL(ハル)」が、マレーシアに建設中の東南アジア最大の医療複合施設「国立神経ロボット・サイバニクスセンター」で、患者の機能改善治療に使用されることになった。23日、同国のスティーブ・シム・チー・キオン人的資源庁大臣がつくば市のサイバーダイン本社を訪れ、山海社長に発注リストを手渡した。

医療用HALは、交通事故や脳卒中、難病などにより自力で動かすことが難しくなった手足や腰などに、脳からの信号を伝え、筋肉や関節などの動きを補助して、脳や神経の働きを活性化し歩行改善などを促す最先端技術を使った装置。すでにドイツなど世界20カ国で機能改善治療に使用され、日本でもリハビリに活用されている。

マレーシアではすでに12の医療施設で112台のHALが使用されている。新センターはHALを使用する同国13カ所目の施設として今年11月に完成する。下肢、関節、腰用の3タイプ計65台がレンタルで提供され、同時期に700人を治療する予定だ。HALを使用する医療機関としては世界最大になる。

キオン大臣は「(すでにHALで治療を行っている)マラッカにある施設を訪れ、技術がどれだけ人を助けるかを目の当たりにした。患者の約半数が実際に歩けるようになった。サイバニクスセンターは今年11月から稼働する。今後もっと施設を増やし、東海岸に最低でも二つの施設をつくりたい」などと話した。

山海社長は「次の社会は、人とサイバーフィジルカル空間(インターネットやネットワーク上の空間と実世界)が融合する社会になる。新興国が積極的に新しい技術を取り入れ、社会がどんどん変わっていく『リープフロッグ』という現象が起こっており、サイバニクスセンターはひじょうに重要なセンターとなる。治療だけでなく人材育成も一緒にやっていきたい」などと語った。

サイバニクスセンターは、マレーシア政府系の従業員社会保障機構が運営する公的病院で、22年6月に着工した。面積は37ヘクタールで、医療費は無料。センターの名称になる「サイバニクス」は、山海社長が提唱した新しい学術領域だ。(鈴木宏子)

ラーメンの街、牛久?!《遊民通信》89

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【コラム・田口哲郎】

前略

先日、知り合いから、「牛久市にあるラーメン屋に行ったよ」と言われました。その人は東京都に住んでいますから、「わざわざ牛久にまでどうして? 牛久シャトーか牛久大仏に来たの?」と言ったら、「え、知らないの?」と驚かれました。

彼は「ラーメン山岡家牛久店」に行ったそうです。中根町の国道6号線沿いにあり、JR常磐線と国道の間にありますので、電車の車窓からも見えます。山岡家は24時間営業のラーメン店で、昭和63年創業とあります。全国にチェーン店を展開する発祥が牛久店だそうです。

豚骨ベースのスープはしっかりしているけれどあと味さっぱりだそうで、国道沿いだから運送業、建設業の方々に重宝されてきました。その評判が広まり、いまや山岡家目当てに牛久を訪れる人が多いといいますから、すごいですね。

噂のラーメンショップ牛久結束店

その知人から、もうひと店舗教わりました。ラーメンショップ牛久結束店。牛久自然観察の森の近くにあるお店です。ラーメンショップは1960年代に東京大田区で創業したチェーン店です。こちらは、その中でおいしいと評判になり、多くのお客さんが訪れている店舗です。特にチャーシューが格別とのことです。

「名店の近くに住んでいるのに、行ったことがないなんて、もったいないよ。牛久に住んでるのは、ラーメン好きからするとうらやましいのに」と言われました。東京に住んでる人に茨城県に住んでるのをうらやましがられたのは、私は初めてでした。

大洗町に住んでる人が、人気アニメーション「ガールズ&バンツァー」のファンから大洗町に住んでるなんてうらやましいと言われたと聞いたことがあります。女子高校生が戦車を乗り回すフィクションの舞台が大洗町だからです。いわゆるガルパンは大洗町の町おこしにひと役買ったそうで、住民の協力もあり、ファンがリピートして訪れる聖地になっています。

つくば市はパンとラーメンの街をアピールしています。つくばにも名店が多いのでしょう。しかし、牛久も負けていません。牛久もラーメンを名物として打ち出して、ワインとラーメンの街としてプロモーションするのもよいかもしれませんね。ごきげんよう。

草々

(散歩好きの文明批評家)

自然生クラブ、映画「日日芸術」に出演 7月のつくば上映会で踊りと太鼓の舞台を披露

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自然生クラブの創作田楽舞。19日の田植えで5年ぶりに披露された=つくば市神郡

筑波山南麓のつくば市臼井を拠点に、知的障害者たちと共同生活をしながら、有機農業や表現活動に取り組むNPO法人「自然生(じねんじょ)クラブ」(柳瀬幸子代表)が、4月から都内で上映が始まった映画「日日(にちにち)芸術」(伊勢朋矢監督)に出演している。つくばでは7月12日に、同市竹園、つくばカピオで上映会が予定され、当日のオープニングパフォーマンスとして同クラブのメンバーが踊りと太鼓の舞台を披露する。

「日日芸術」は、俳優の富田望生がセロファンテープで作られた奇妙なメガネをかけて不思議な世界を旅する物語。メガネをかけると日常の風景がアートだらけの世界になり、望生は独創的な作品をつくるアーティストたちと出会う。

映画には、同クラブが活動する筑波山麓で、メンバーがダンスをしたり、絵画を制作する姿が登場する。

田植えで田楽舞を披露

同クラブでは田植えの際に田楽祭を開催し、踊りや太鼓による創作田楽舞を披露してきた。田植歌は筑波山麓地域で実際歌われたものだ。

同クラブの施設長で元教員の柳瀬敬さん(66)によると、創作田楽舞の始まりは1989年に筑波ふれあいの里で実施された農業講座で田植えや稲刈りを学んだとことからだ。「人間性を作るのには太鼓が一番」という柳瀬さんの信念から、太鼓の演奏を取り入れた。

創作田楽舞は、今月19日に同市神郡にある約100平方メートルの田んぼで実施された田植えでも、約100人の参加者らに披露された。新型コロナなどの影響で5年ぶりの田植祭での披露となった。同クラブのメンバーが太鼓や笛を力強く演奏する中、約1時間、踊りが披露され、拍手が鳴り響いた。

19日の田植祭参加者の記念撮影

施設長の柳瀬敬さんは愛媛県今治市出身。筑波大学で教育哲学を学び、群馬県の全寮制私立学校、白根開善学校で自由教育を実践した。1990年筑波山南麓に自然生クラブを設立し、2001年にNPO法人化した。地元にあった大谷石造りの米倉庫を改装してミュージアムとし、シアターとアトリエを運営している。同クラブは踊りと太鼓の舞台でこれまでにヨーロッパ各国の演劇祭に出演し、ヨーロッパ公演を契機に、「異才の芸術」(アール・ディフェランシェ)を実践する芸術団体との交流を深め、2009年には国際交流基金より地球市民賞を受賞した。

柳瀬幸子代表は「5年ぶりに田植えで田楽舞を披露できたのはとてもうれしい。映画『日日芸術』は筑波山麓でもロケが行われた。つくばカピオで上映されるので、7月12日に見に来てほしい」と話した。(榎田智司)

◆映画「日日芸術」つくば上映会+自然生クラブ・オープニングパフォーマンスは、7月12日(金)午後6時30分、つくば市竹園1-10-1、つくばカピオホールで開演。チケットは一般2000円、小中高校生・大学生1000円、障害者1000円、介助者1000円。チケット購入は下記QRコードへ。問い合わせは自然生クラブ(電話029-866-2192)へ。

日本文化は継承できているのか《文京町便り》28

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土浦藩校・郁文館の門=同市文京町

【コラム・原田博夫】先週末、経済学の祖アダム・スミスの「国富論」(初版は1776年、1789年の第5版まで本人が改定)を1年かけて全10回で読み直す会がスタートした。主宰者・講師役は、私と同年代の数理経済学者でもある丸山徹・慶應義塾大学名誉教授である。

私も学生時代、翻訳本の冒頭(第1編の前半数章)の分業論と(私の専門分野・財政学を扱っている)第5編「主権者または国家の収入」には目を通したものの、全体は読破しておらず、先行者の解説本で理解したつもりになっていたに過ぎない。この期に及んでの再読に内心忸怩(じくじ)たるものを感じながらのチャレンジである。

今回は、手元に原書(ランダムハウス社から1937年に刊行されたモダン・ライブラリ版を丸善が1940年に刊行)も置いて、適宜参照することにした。この原書は、父(1920年生)が戦前に入手し、没(2010年)後も処分していなかったものを、改めて紐(ひも)解いた次第である。

スミスの翻訳書(各種あるが、たとえば1950年のキャナン版による大内兵衛・松川七郎訳、全2巻、岩波書店、1969年)に目を通して、改めて驚いたのが、先人の翻訳の丁寧かつ誠実な点である。

とはいえ、翻訳ではどうしても行き届かない箇所が出る。たとえば「国富論」第1篇第7章に、「有効需要」が出てくる。これはケインズも「雇用、利子および貨幣の一般理論」(1936年)のマクロ経済分析で重要な概念として提示しているが、そもそも、スミスがこの用語を用いていたことは、初読の時点では気づかなかった。

そこで改めて原著に当たってみると、スミスはeffectual demandと述べているのに対して、ケインズはeffective demandである。両者の意味は異なるのだが(それについてはここでは深入りしない)、訳語としては両者とも「有効需要」である。

外来と伝統の対立・席巻・断絶

そもそも、この確認がきっかけで今回、原著に(全部ではないにしても)当たることにした次第である。それ以降、翻訳と原著の対照を、適宜織り交ぜている。そこで気づいたのは、原著の英文が結構読めるのである。これは何も、私の英語読解力を自慢するために言っているのではない。単純に、18世紀の英語が21世紀の外国人でも相当程度に理解できることに驚いているのである。

日本に当てはめると、どうだろうか。スミスと同時代であれば、「古事記伝」は本居宣長が1767年に着手し98年頃に完成させた、と言われている。でも私は、これを読破することはおろか、江戸時代中期の他の書籍(いわゆる古文)を手に取ることすら、憚(はばか)ってしまう。ましてや、解説ナシで読破できる自信はない。

日本文化におけるこうした外来と伝統の対立・席巻・断絶は、奈良・平安時代に始まり、明治期(19世紀末)・昭和20年代(20世紀中葉)にも生じた。

それぞれの民族・国家にとって、文化の核心部分は相当期間、意識的ないし無意識的に持続される。とりわけ、言葉(話し言葉・書き言葉)・文字(表記法)の連続性と断絶は、伝統文化に固有性・強靭(きょうじん)さをもたらすと同時に、多様性や豊饒(ほうじょう)さをもたらしてきた。

近代における言語表記法の変動では、朝鮮半島やベトナムでの漢字文化からの断絶に比べると、日本の変化はむしろ融通無碍(むげ)に近いが、それでも、200数十年前の自国の書物を解説書なしで読破できないのは、当時の文教政策の結末として捉えるべきではないか。

現状の言語的断絶は、歴史・伝統を踏みにじって突き進んだ近代日本の決算報告書のような気がする。(専修大学名誉教授)

自分の性に向き合う 「ヴィーガン」で「クイア」の2人が贈るレシピ集(下)

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ユミさん(左)とヨニイさん

3月につくばで出版されたヴィーガン料理のレシピ集「韓国フェミめし:光州とヴィーガンを巡って」。作者のユミさんとヨニイさんは同書で、ヴィーガンのことだけでなく、性的マイノリティである自身がこれまでに感じた性自認についても触れている。2人は自身の性を、全ての性的マイノリティを広く包みこむ概念である「クィア」だと表現する。2人は周囲の無理解から悩みを感じてきたという。

「いつも自分のことを相手に隠したり、頑張って自分のことを説明したりしなければいけなかった。理解して欲しくてたくさんの感情とエネルギーを使ってきた。私はただここに存在していいはずなのに」とヨニイさんが思いを吐露する。ユミさんは「自分は間違っていないというのはわかっていた。でも生きづらさを感じてきた。隠さなければいけないという思いが少しずつ自分の心の中に積もっていくのを感じていた」と語る。

カミングアウト

ヨニイさんが初めて自身の性を周囲に伝えたのは中学時代、韓国でのことだった。「女子中学だったので、かっこいい先輩がいるとみんなが『きゃー』ってなるんですよ。それで自分も(女性に好意を持つことは)自然なことだと思っていた」。

自分の気持ちを隠さず伝えていたヨニイさんは、高校でも「隠さずカミングアウトをしていた」と話す。否定的な反応もあったけど、気にはしなかった。

「自分のセクシャリティを隠したまま人と出会っても、後から伝えて嫌がられると辛い。それなら最初から『私はこんな人です』と言った上で仲良くなる方が楽」。そう明るく話すヨニイさんだが、両親には最近まで伝えられなかった。

「両親に伝えたのは去年の春頃。すごく保守的な家なので、嘘をつき隠していた。でもそれが嫌で、隠すのをやめて全部話した。否定的なことも言われてその瞬間だけは辛かった。でも、両親も慣れてきた様子。結婚や子どもの話をされる度にプレッシャーを感じていたが、それがなくなりすごく楽になった」

近所の公園を散歩するヨニイさん(左)とユミさん

髪を切り、本当の自分に出会う

ユミさんは自分の性にどう向き合ってきたのか。家族と暮らしていた幼少期をこう振り返る。

「小さい頃から男の子と遊びたかった。でも、歳を重ねるごとに難しくなった。小学校に入って男の子と遊んでいると『お前、あいつの彼女なの?』とか、『なんでここに女がいるの?』と言われて、『ああ、私って女なんだな』って思うようになった。でも、女性的な振る舞いや遊びに馴染めなかった」

周囲に「女性」としての形を押し付けられたユミさんは、自分の性に違和感を感じ始めた。「私はボーイッシュな髪型にしたかった。でも実家のある郊外では、周りにそんな女性はいなかった。好きな髪型にしていいなんて思えずに大学生になった。ただ、ずっと実家に住んでいたので、私のことに家族もなんとなく気付いていた気がする。私は隠すつもりはなかったけど、わざわざ言うのも気まずい。それで結局、隠している状態になっていた。それがストレスだった」

大きな変化は大学生の時に訪れた。短髪にしたのだ。「思い切ってメンズカットにして『これが本当の自分だ!』って思えた。これで隠れずに生きられるって」

一歩を踏み出したきっかけは、あるテレビドラマだった。「アメリカのハイスクールドラマで、様々なマイノリティが出てくる。アジア系の人、車椅子の人、セクシャルマイノリティーの人。みんないきいきと自分を表現していた。『私もこうしていいんだ』って思えた。それで、似合わないかもしれないけど私も髪を切ってみようって思えた。それがきっかけになり、どんどん勇気を振り絞れるようになった」

短く整えられたユミさんのヘアースタイルに思いがこもる

自分の体を取り戻す

テレビドラマを通じてユミさんは、性的マイノリティとして生きる自分以外の人を知り、背中を押された。一方でヨニイさんは、今も複雑な自身の性について答えが出せずにいると話す。

「まだ悩んでいる。私は昔から女性に好意を持ってきたから、男性になった方がいいんじゃないかとずっと悩んでいた。でも、やっぱりそれは違う気がしていた。私は男になりたくないって思った。大学では周囲と英語でやりとりしているが、自分の代名詞が『He(彼)』なのか『She(彼女)』なのか考えると、『He』だと違和感があるけど、『She』なら大丈夫だと思える。『They(彼ら、性別を問わない)』でも違和感はない。でも正直なところ、私は自分をラベリングするのに疲れている。今は『クイア』という言葉が一番しっくりきている」と、今の気持ちを率直に語る。

自身の性に向き合うヨニイさん

ユミさんは、揺らぐ自身の性認識に向き合う中で、次第に「自分は何者なのか」という問いへの答えを見つけ始めている。

「私は自分が男になりたいわけではないけど、女性としての役割を担うのはキツかった。それじゃ男なのかなってめちゃくちゃ悩んでいた。そんな時にある本と出会い、男女どちらの性別でもない『ノンバイナリー』という存在を知って、自分は男でも女でもないんだって気がついた。すごくスッキリした。『これが私だ。こう名乗っていいんだ』って思えて自分に自信を持てるようになった」

もう一つ、大きなきっかけになった出来事として、大学を卒業し実家を離れて経験したあるエピソードがある。

「私、就職してからタトゥーを入れたんです。腕と手首に、五百円玉サイズの太陽と雲を。その時、本当にうれしかった。『私は自分の体のことを自分で決めたんだ。その権利を証明できたんだ!』って。『これが私の人生だ』って思えた」

ユミさんの手首には初めて入れた雲のタトゥーがある

そう話すとユミさんは、「性」に対する考えをこう言葉にした。

「性別は社会的なもの。本当はスペクトラム(連続した境界のない状態)なはず。私は周りに自分が何者なのかを決められてきた。でも、自分が男でも女でもない『ノンバイナリー』だと思えるようになって、性の呪縛から解放された気がした。心地よかった。『もう他人から女性と呼ばせない』という思いが湧いてきた」

「大丈夫」と伝えたい

ヴィーガンでクィアである2人にとって互いの出会いが持つ意味は大きかった。ヨニイさんがユミさんとの出会いを振り返りながら、こう呼び掛ける。

「私はユミと出会えたことでとても楽になった。クィアでヴィーガンの人には本当に出会えない。マイノリティーの中の、さらにマイノリティーなので。1人で暮らしていると『私だけがおかしいんじゃないか?』と思ってしまうこともあった。でも同じ価値観の人に出会えて『私はおかしくないんだ』と思えるようになった。もし今、悩みを抱えている人がいたら『大丈夫』と伝えたい。安心してほしい」

ユミさんは、今後についてこう話す。

「私はヴィーガンのハードルを下げたいと思っている。そして、クィアカップルがいることが自然になるように、私たちも自然に暮らし続けたい。私たちはこんな存在で、ただここに存在していい。そんな場所が増えるといいと思っている。そのために自分の経験が誰かの役に立てばいい」

「自然に暮らし続けたい」と話すユミさん

光州事件のパネル展開催

冊子で2人は、ヨニイさんの故郷である韓国・光州市の歴史にも触れている。光州では、韓国が軍事政権下にあった1980年5月18日、民主化を求める学生デモに対して政府が武力で応じ、以降10日間で多数の市民が犠牲になる「光州事件」が起きた。光州では今も、忘れてはいけない悲劇として日常的に語り継がれている。

今回、冊子の発行元である、つくば市天久保のブックカフェ「サッフォー」では、冊子発売を記念して「光州5.18民主化運動を記憶する」として関連書籍の特設コーナーを設けるとともに、4月27日から始まった光州事件を紹介するパネル展が開催中だ。

冊子の企画・編集を手がけたサッフォー店主の山田亜紀子さんによると「韓国フェミめし:光州とヴィーガンを巡って」は同店にとっては2冊目の出版企画となる。山田さんは今回の冊子制作について、「人権の向上を願っての企画。2人の想いは、日常をシェアすることで『私たちはナチュラルに生きている』と知ってほしいということ。地方で、楽しみながらヴィーガンをやっているクィアカップルがいるんだよと、多くの人に知ってもらいたい。色々な人に届くといい」と語った。(柴田大輔)

「本と喫茶サッフォー」の店主・山田さん(右)と、ハンガン・ビーガンの2人 =本と喫茶サッフォー

終わり

つくば市の葛城小地区「つなぐ会」《けんがくひろば》6

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ささえ合い弁当作り

【コラム・杉田ひろみ】つくば市の葛城小学校地区は、昔からの慣習や行事を地域住民で守り、葛城小との活動にも積極的に参加するなど横のつながりが強かった元々の地区と、TX沿線の開発に伴い新しく転居してきた世帯が多く暮らす新しい地区からなります。

しかしコロナ禍の影響で地域の行事がここ数年開催できないまま、地域住民が集える機会が失われてしまっていて、地域のつながりが薄れていると感じていました。そこで私たちは「世代を超えて皆が支え合い、助け合い、共に安心していつまでもこの地域に暮らし続けることができること」「人がつながり地域もつながること」を目標に掲げ、葛城小地区「つなぐ会」を設立しました。

活動の主なものは、ささえ合い弁当配食(現在は苅間地区内)、地域防災・防犯イベント(葛城小との連携)、地域交流イベント「つなぐまつり」、みんなの居場所「ふれあいサロン」などです。 

みんなをつなぐサロン

今回は「つなぐサロン」を紹介したいと思います。

最初に触れたように、私たちの地域には、つくばに転居してきた世帯が多く暮らしています。学園南や研究学園は、畑や雑木林が造成され、住宅が建設されてできた地域です。住民の数が増えていますが、自治会がほとんどありません。あっても、ご近所同士の交流があまりありません。

子供が小中学校に通学している家庭は学校のつながりが少しはありますが、その他の家庭の方からは「近所を散歩しているときに、どなたかにお会いしても、あいさつするだけ。その先の会話がないので、住民同士のつながりがほしい」といった話を耳にしていました。

そこで、かつらぎ交流館の新設を機に、地域をつなぐ場所「つなぐサロン」を開設しました。地域のこと、健康のこと、子育てのことなど、お茶を飲みながらおしゃべりしたり、室内のゲームや簡単な工作などをしています。

これをきっかけに、新しい地域でも住民同士の交流を深め、皆がつながり、お互いに助け合い、幸せに暮らせることを願っています。お気軽にご参加ください。(葛城小地区「つなぐ会」代表)

<つなぐサロン>
・開催日:毎月、第2月曜日と第4月曜日
・時 間:午前10~12時
・場 所:かつらぎ交流館
・参加費:無料(飲み物は各自持参)

地元ファンに2日早い特典 作家の高野史緒さん 新刊発売記念し土浦でサイン会 

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サイン会で、行列をつくる地元ファンに応じる高野史緒さん(右)=イオンモール土浦、未来屋書店土浦店


土浦市出身の作家、高野史緒さんが、新作「ビブリフォリア・ラプソディ あるいは本と本の間の旅」(講談社、税込1870円)の発売を記念して21日、土浦市上高津、イオンモール土浦の未来屋書店土浦店でサイン会を催した。発売は23日だが、今回2日前に購入できるという特典が付いた。高野さんは昨年、土浦を舞台にしたSF小説「グラーフツェッペリンあの夏の飛行船」を書き、SF読書ガイドブック「SFが読みたい!2024年盤」国内篇第1位に輝いている(2月25日付)。

今回の作品は「消えてゆく本」「書けなくなった詩人」「本の魔窟に暮らす青年」が登場する架空の世界を描いた作品。新刊の帯には「本であふれた世界に希望はあるか?」とある。

2日早く発売された新刊「ビブリオフォリア・ラプソディ あるいは本と本の間の旅」

サイン会会場には32人が並び、一人一人、著者の高野さんと話をしながら、購入した本にサインをもらっていた。高野さんと写真撮影をするファンの姿も見られた。

同市摩利山新田から来店しサインをもらった遠藤康裕さん(62)は「(1929年に巨大飛行船の)ツェッペリン伯号が飛来した(旧霞ケ浦海軍航空隊 格納庫の)すぐ近くに生家があり、とても身近に感じた。高野先生の文章はわかりやすく、てきぱきしていてとても好きだ。本日はていねいに対応してもらって感激している。これからも頑張って良い本を書いてほしい」と話した。

新刊を紹介する高野史緒さん

高野さんは1966年土浦市生まれ、土浦二高を経て90年に茨城大学人文学部を卒業、94年にお茶の水女子大学人文科学研究科修士課程を修了、95年「ムジカ・マキーナ」(新潮社)で作家デビューした。2012年には「カラマーゾフの妹」で第58回江戸川乱歩を受賞するなど、主にSFやミステリーを書く人気作家だ。

高野さんは「故郷土浦とその近郊の皆様にも注目していただき、本当にありがたい限り。私は必ずしも地元密着型作家とは言えず、いろんな世界、時には現実でない世界のことも書く。読者の皆様も私の小説を通じて、一緒にそういういろんな世界を巡ってほしい。今度の新刊『ビブリオフォリア・ラプソディ あるいは本と本の間の旅』はまさにそういう本で、こちらも『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』同様、読んでいただけるとうれしい」とコメントした。(榎田智司)