土曜日, 12月 27, 2025
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北海道は北京郊外の山とそっくり《医療通訳のつぶやき》12

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日本最北端の地の碑(写真は筆者)

【コラム・松永悠】10月末に初めて北海道に行ってきました。うちには犬も猫もいるため、家を空けることがなかなか難しく、北海道に行くなんて夢のまた夢でした。

今回はご縁があって、札幌や函館といった有名な観光地ではなく、稚内まで飛んだ後、さらに浜頓別というオホーツク海に面した小さな町に行くので、この旅はどんなものになるか予想もつきませんでした。

結論を言うと、最高の思い出が出来ました。観光シーズンが終わったこと、そして観光地ではない場所として、ディープな北海道の一面を見ることができました。

滞在中、毎日車で移動して、オホーツク海側も日本海側も見て回ることができて、いろいろ感無量です。同じ海でも、東京付近の海と全然雰囲気が違うんですね。オホーツク海も日本海も荒く、そして力強く、とにかく圧倒されっぱなしでした。海沿いに道路があって、高速ではないのに、交通量が少ないから信号なしでスイスイ行けます。

もちろん、海だけじゃないです。広大な平原と山林が途切れることなく延々と広がっています。実はここで意外な収穫がありました。初めて行ったのにも関わらず、この景色を見て私はとても懐かしく感じたのです。

「何もない」を楽しむ時間

この懐かしさはいったいどこから?としばらく観察したら、理由が分かりました。この風景、実は北京郊外の山とそっくり。目の前に広がっているのは子供の時から慣れ親しんだ景色そのものです。緯度的には、北海道が北京より北の方ですが、植物の種類も広大な感じも紅葉の色も驚くほど似ています。

今回の行き先は北海道の最北端に位置するため、行く先々で「最北端の〜」と出合います。土地が広いのに人口が少なく、出合ったエゾジカの数が人間より多いほどです。こんな場所ですから、夜になると文字通り「真っ暗」になります。ナイトサファイアに出かけたら、ここでも感動が待っていました。

これほどきれいな川が目の前に広がっていると気づいたとき、涙が出そうになりました。記憶の中で空一面に広がる星を見たのは、30年ほど前に北京郊外の山に行ったときでした。まだ大学生だった私が、山頂のゲルに泊まって、友人たちとふかふかの草の上で寝転がって、天の川に見とれていた記憶がよみがえりました。

とにかく、今回の旅は「何もない」を楽しむ時間でした。人も人工的な建造物もほとんどない代わりに、豊かな自然、たくさんの野生動物、パワーいっぱいの海を目いっぱい感じて、心を空っぽにすることができました。都会に住む人間にとっては、これほど贅沢(ぜいたく)なことはありません。(医療通訳)

苦手だからやらないだけではね《続・気軽にSOS》155

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【コラム・浅井和幸】自分は体を動かすことが苦手だからやらない。パソコンは苦手なので部下にやってもらう。苦手なことはやらなくてよいので長所を伸ばそう。

苦手だと、苦しんで嫌々物事を進めることはつらいだけで何も身につかないので、その意味ではこれらの言葉は的を射ていると言えるでしょう。チームで物事を進めるときは、自分が苦手なことは得意としている人に任せて、他の人が苦手で自分が得意なことを行う方が効率的で成果が出やすいです。

さて、苦手とは何を指すものでしょうか? たぶん、自分と似た年齢や身近な人と比べたときに、劣っている能力での行為を指すのでしょう。それに加えて、感情的に、感覚的にやりたくないことに対して、苦手だからという言葉が出やすくなるものだと思います(好きなことや面白いことは苦手なことでも行うでしょ? 苦手だから好きなテレビを見ないとか、苦手だから面白いゲームをしないということはないはず)。

行動を起こさないことに対して、向いてないからとか苦手だからというのは、よい言い訳として通用しやすいということですね。面倒だからとか疲れるからやらないという言い訳をしたら格好悪いですから。

誰でも最初は初心者

しかし、長い人生の中では、人は練習を積み上げることで実力を上げることができます。誰でも最初は初心者なのです。例えば編み物などがとても器用にできる人が、実は手先が不器用であるという話はよく聞きます。好きだから続けているうちに、ある分野の手芸に対し誰よりも上手くなっていたという話です。

あのプロ野球のスタープレーヤーも、小学生のときからプロ野球で通用するような能力を持っていたわけではありません。周りの小学生よりは、もしかしたら数段上手だったのかもしれませんが、プロ野球選手と比べたら野球が苦手と言えるかもしれません。スタープレーヤーも幼少時は、プロ野球選手の大人に比べたら体もできていないし、知識もテクニックもない状況ですから。

プロ野球など、切磋琢磨(せっさたくま)してギリギリの挑戦をしているような世界はそうそうあるわけではありません。それに比べれば、私たち常人の生活では、ちょっと勉強すれば周りよりも知識が身に付くし、ちょっと体を動かせば周りよりも体力や技術が身に付き周りよりも得意と言える状況になります。100メートルを10秒切る能力は必要ありません。

腕立て伏せを毎日少しだけ行えば、半年もすれば周りの人よりも腕立て伏せが得意になれるかもしれません。動画サイトでちょっと勉強して、ちょっとだけ実践を繰り返せば、周りよりも掃除とか、料理とか、アプリ作成とかが得意と言えるようになるかもしれません。

あなたは、足が速くなりたいですか? 楽器が弾けるようになりたいですか? 外国語が話せるようになりたいですか? 人に好かれるようになりたいですか? 金持ちになりたいですか? あなたは何が苦手ですか? どの様な人になりたいですか? どの様な生活を送りたいですか?(精神保健福祉士)

来年100周年、運営再検討へ 安藤市長 土浦花火大会中止を改めてお詫び 

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大会実行委員会会長の安藤真理子土浦市長

チケット代は全額返金

順延日の警備員を確保できず開催を中止した第93回土浦全国花火競技大会について(11月1日付)、大会実行委員会会長の安藤真理子土浦市長は5日開かれた市長定例会見で「皆様に心よりお詫びを申し上げたい」と改めて述べ「十分に反省し、今回のことを教訓として、来年に向けて検討を重ねたい」と話した。来年は大会100周年を迎えることから「歴史を未来につないでいくことが私の責務だと思っている」と強調した。

桟敷席6600升(2万6400席)、いす席1万500席を合わせた有料観覧席3万6900席のチケット代計約2億円は全額返金する。返金時期は近く決まる見通しで、大会実行委員会のホームページに掲載する。

順延日の3日と9日に警備員を確保できなかった経緯について大会実行委事務局の市産業経済部は、開催予定だった2日の警備については470人の警備員を配置する計画で、警備会社2社に約1800万円で警備を委託したが、順延日の3日と9日については、5月に今年の実行委員会を立ち上げた当初から警備体制の確保についてお願いしていたとした。

その後、10月上旬から中旬に順延日の警備員が確保できないことが分かり、警備会社に依頼し、県内だけでなく栃木、群馬、千葉県など県外からも応援を得て、さらに都内の大手警備会社にも打診するなどぎりぎりまで人員の確保をお願いしたという。1日時点では順延日に300人程度が確保できる見通しとなり、事務局としては市職員を総動員してでもカバーしたいと考えたが、雑踏を警備する交通誘導業務を行うためには資格が必要であるなど、安全を確保する体制が整わなかったとした。

開催中止に関し、市への問い合わせが1日から4日までに計約3600件あった。開催の有無のほか、「どうして中止にするのか」などの問い合わせが寄せられたという。

同大会の開催費用は約3億円。市の補助金8500万円と有料観覧席チケット代2億円、スポンサー協賛金1500万円でまかなう計画だったが、開催中止によりチケット代2億円と協賛金1500万円が入らなくなった。一方支出は、打ち上げ後の清掃やごみ処理費などを除いて、花火の製作、桟敷席の設営、草刈り、警備費などに事業費の多くをすでに使っている。不足分については今後、議会と相談する。

来年の開催に向けては、大会当日と順延日2日間の計3日間、警備員を確保しようとすると、警備費が3倍の5400万円かかる見通しだ。花火大会は現在も火薬の高騰や資材の高騰などに見舞われ運営費が上がっており、大会実行委員会では有料席を増やすなど自主財源確保に努めている最中だった。

市産業経済部は「来年の運営体制はこれから検討する」とし「どういう形になれば開催できるか、まず今回の検証をして来年に向けて動き出したい」とした。

一方、コロナ禍で開催できなかった2020年と21年はサプライズ花火の打ち上げなどを実施したが、今年は予定していないという。

雨の日と喫茶店と猫 《ことばのおはなし》75

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写真は筆者

【コラム・山口絹記】先日、雨が降っていたので久々になにをするでもなく喫茶店に入った。喫茶店というのは本質的に時間をつぶすところだと思っているのだが、天気の良い日などに行ってみると、仕事か勉強をしていたり、打ち合わせをしていたりする人が多く、なんとも落ち着かない。自分もなにやらしなければならぬ、という気分になる。だから、喫茶店には雨の日に行くのが一番だ。

雨の日の店内は、一定数、雨が降ってきたから雨宿りに入店した、というお客さんがいる。仕方なく入ったわけで、当然やることがない。仕方なく、外を眺めていたりするのだ。それが良い。一緒になって外を眺めていてもなんら罪悪感がない。

最近は一日中晴れている、ということが少ない気がする。秋晴れなんてことばもあったが、ハッキリ感じられる秋そのものが来ない年が続くと、ことばそのものを忘れてしまいそうだ。そんなとりとめもないことを考えながら、珈琲を飲もうとすると、カップが空だった。あれ、飲み終わってたっけ? だいぶ上の空だったらしい。これはかなり良い感じである。良い感じにできあがっている。

帰ったら本でも読もう

ちょうど雨もやんだので外に出る。雨上がりの曇った空の下を歩いていると、木陰に猫がいた。木から滴る雨水を、目をつむって、ペロペロと飲んでいる。近づいても気づかないようなので様子を眺めていると、水の滴る位置が次第にずれていき、もはや猫の口には一切水は届かないのだけど、猫は相変わらず目をつむってペロペロと舌を出している。おまえさんもだいぶ良い感じだな。

じっと眺めていると、うっすら目を開けてこちらを一瞥(いちべつ)し、そのまま眠ってしまったようだ。おまえさんの中の野生はどうした。とは思ったものの、まぁ人の、いや猫の?ことを言えたギリではないので立ち去ることにした。帰ったら本でも読んでゆっくりしよう。

こんな日があってもよいのである。(言語研究者)

つくば市は孤立? 五十嵐市政3期目 《吾妻カガミ》195

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】2024年秋のつくば市長選挙は五十嵐氏が勝利した。過去8年の市政運営を巧みに宣伝する広報(PR)戦を展開、PR面では控えめだった星田氏が敗退した。ただ票差は約7000(五十嵐氏6万1604票:星田氏5万4580票)に狭まり、五十嵐氏に対する市民の評価は満足と不満足にほぼ二分された。

宣伝戦の巧拙が結果に影響

コラム194(10月21日掲載)でも指摘したように、五十嵐氏のチラシは自己PRが上手だった。これに対し挑戦者・星田氏の方は公約が総花的で訴求力が弱く、チラシの発行数など物量面でも五十嵐氏が圧倒していた。

また、星田氏が市役所内のゴタゴタを正面から取り上げないのは「政治センスが問われる」と書いたように、挑戦者の争点作り下手も五十嵐氏に幸いした。それにもかかわらず、票差が約7000になったのは、五十嵐市政に対する市民の疑問がくすぶっているからだろう。

知事とのギクシャクは続く?

選挙チラシの2ショット写真でも分かるように、大井川知事は星田氏を支援するスタンスを明確に打ち出した。洞峰公園問題などで知事と市長の間にコミュニケーション不足が生じ、知事が五十嵐氏に強い不信感を抱いたからとみられるが、知事と市長の間のギクシャクは選挙後も残るだろう。

選挙で選ばれる首長間のこういった関係は、それぞれの行政現場に微妙な影響を与える。つくば市にとっては厄介なことだ。

例えば、市長選でもテーマになった県立高不足問題。市は県立高の市内新設がすぐには無理ならば、当座の策として既存県立高のクラスを必要数増やすよう県に求めている。これに対し県は、一部県立高の学級増と近隣県立高への遠距離通学推奨で対応、市の要望を軽視している。つくば市に冷たい県のスタンスはまだまだ続く?

選挙を意識した退職金いじり

市長選が終わり、五十嵐氏の2期目の退職金をいくらにするか、現在、ネット投票が行われている。詳細はコラム191(9月16日掲載)を読んでほしい。要は、2期目の仕事振りについて市民に採点してもらい、その平均が100点ならば規定額2040万円を受け取り、評点ゼロの場合は退職金を辞退した1期目と同じ22円になるというスキームだ。

五十嵐氏のユニークな退職金のもらい方について、周辺の市長さんは困惑している。1期目の退職金辞退が発表されたとき、多くの市長さんは唖然(あぜん)としていた。市民受けを狙って退職金がいじくり回されると、施策を競い合う選挙が歪んでしまうからだ。退職金額を市民投票で決めるというアイデアは、選挙を意識したポピュリズムの極みといえる。

知事や周辺市長と五十嵐市長の関係を見てくると、つくば市は他の行政組織から孤立しつつある。こういった流れが市政にどういった影響を与えるか、要注目だ。(経済ジャーナリスト)

手づくりの祭りで交流 5年ぶり「桜が丘フェスタ」【シルバー団地の挑戦@つくば 桜が丘】1

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5年ぶりに開かれた「桜が丘ふれあいフェスタ」に参加し輪投げを楽しむ団地住民ら=つくば市桜が丘

つくば市茎崎地区の住宅団地、桜が丘で3日、住民手づくりの祭り「2024桜が丘ふれあいフェスタ」(同自治会主催)が5年ぶりに開かれた。午前中は団地内の中央公園に豚汁や焼き芋、焼きそばなどの屋台が並んだ。住民約200人が参加して輪投げやヨーヨー釣りなどのほか、おしゃべりや会食を楽しんだ。午後からは隣接の公民館でハンドベルの演奏を聞いたりカラオケを楽しむなどして交流を深めた。コロナ禍で2020年から中止していた。

焼き芋にしたサツマイモは、団地内の畑で野菜作りをして一人暮らしの高齢者らに届けている「ふれあい友の会」の星野富士子さん(78)ら約20人が栽培した。1~2週間前に200本を収穫し、焼き芋にした。豚汁は自治会役員らが前日から仕込んで準備した。ハンドベルの演奏は日ごろ卓球を楽しんでいるメンバーが1週間ほど前から猛練習を重ねて披露した。豚汁の調理と販売を担当した女性(77)は「すごく和やかで楽しい。ありがたい」と話していた。

ハンドベルの演奏を披露する住民=同

2015年まで同団地では、公園にやぐらを組んで盆踊りなどをする夏祭りを2日間にわたって開催してきた。住民が高齢化し準備が大変なことから、16年から文化祭を兼ねた秋祭りに切り替えた。

同団地は首都圏に通勤した団塊世代が多く住む約450戸の一戸建て住宅団地で、1977年から入居が始まった。入居開始から47年経ち住民は一斉に高齢化し、現在65歳以上の高齢化率は52%、空き家が約50戸あるという。

同自治会の落合正水会長(78)は「茎崎地区全体が共通して抱えている問題だが、だんだん高齢化し、催しものの開催が年々難しくなっているほか、自治会役員のなり手がいないのも課題」だとし、5年ぶりのフェスタ開催について「高齢化している中で、ふれあいや親睦の場を通して皆さんと楽しんだりすることは意義深いのではないか」と話す。(鈴木宏子)

103万円の壁、税率5%をゼロに《ひょうたんの眼》73

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写真は筆者

【コラム・高橋恵一】裏金問題や統一教会問題で安倍一強政治への批判を受けて衆院解散による総選挙の結果、自公与党が過半数を割り込んだ。与党少数だが、野党はバラバラなので、施策の優先度や重要課題についてよく議論し、協議内容を公開して世論の評価なども受けながら、バランスの取れた政策が推進できるのではと期待していた。

しかし、国民民主党は、労働組合を基盤とする、弱者側に立つ政党と理解しているが、キャスティングボートを握ったとして強気になり、選挙勝利の成果を、低賃金労働者(いわゆるパートさん)の手取りを増やす政策を主導し、103万円の壁を無くすというものだ。

彼女(パート)らは、月収10万円弱だが、年末の11月ごろには、それまでの収入が103万円に達してしまい、12月の就労を止めないと、所得税がかかる。さらに、賃金の年収が130万円を超すと社会保険に加入し、保険料を負担することになる。

また、この壁を超えると、夫の扶養家族控除が無くなり、会社からの扶養手当も無くなる場合もあり、就労日数を増やしても、かえって手取りが減ってしまうから、妻(パートさん)は、働く日数を制限してしまうという事情のようだ。しかし、壁を越えて増額する収入額は、新たに負担する所得税や社会保険料より多く、手元の残金の方が多いのだ。

国民が就労して国や自治体の必要な公共サービスの経費を能力に応じて負担するのは当然だし、社会保険への加入は老後の生活を保障する重要な制度だ。むしろ、扶養控除や扶養手当の継続が課題かもしれないが、減税と違って、雇用企業が決めることなので、政府は強制できないだろう。

低所得層の所得拡大が必須

冷静に評価すれば、103万円の壁の見直しは、目先の手取りが若干増えるように見えるが、壁を178万円にしても、パート労働者の賃金は大幅に増額することはないだろう。むしろ、パート労働者の低賃金を固定させてしまう恐れがある。壁の見直しで基礎控除の底上げをすれば、累進課税だから、負担軽減したい低所得者より、高額所得者の方が断然減税額が多くなるのだ。

検討課題は多いけれど、手取りを増やすために壁の見直しをやるとするなら、基礎控除の引き上げではなく、課税対象額の低い区分(194万9000円以下)の所得税率を5%から0%に変更すれば、高所得者の減税は生じない。

現在、我が国の課題の一つは、経済力の低下。以前はGDP(国民総所得)世界第2位だったのが、昨年には、ドイツに抜かれて第4位、1人当たりGDPは世界34位にまで落ち込んでしまった。GDPは名称の通り、国民ひとり一人の所得の合計額だ。従って、GDPの拡大には、国民、特に低所得層の所得拡大が必須だ。

非正規労働者の大半は女性で、市役所などの公的職場で働いている。政府が賃上げすれば改善する。政府がやらなければ実現しない。(地歴好きの土浦人)

つくば駅とバスターミナルに1日導入 点字ブロックのQRコードで視覚障害者を道案内

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点字ブロックのQRコードを自分のスマートフォンで読み取り道案内する視覚障害者向けナビゲーションシステム「shikAI(シカイ)」=TXつくば駅ホーム

つくばエクスプレス(TX)つくば駅構内と、隣接するつくばセンターバスターミナルに1日、視覚障害者をスマートフォンの音声で道案内するシステムが導入された。点字ブロックに貼り付けられたQRコードを自分のスマホカメラで読み取り、行き先を選ぶと、目的地までの移動ルートを案内してくれる。

TXを運行する首都圏新都市鉄道とバスターミナルを管理するつくば市、システムを開発した「リンクス」(東京都港区)が昨年5月から6月、視覚障害者が学ぶ筑波技術大学の協力を得て実証実験を実施した(23年5月31日付)。安全性や利便性が確認されたことから今回、本格導入された。

導入にあたって、バスターミナルからつくば駅のホームまで約250メートルにわたって敷設されている点字ブロックの分かれ道や曲がり角など170カ所に計791枚のQRコードが貼り付けられた。利用方法は、自分のスマートフォンのカメラをQRコードにかざし、アプリをダウンロードする。スマホ画面に表示される目的地のリストから、つくば駅のホームやバス停、タクシー乗り場などを選択すると、分かれ道や曲がり角のたびに女性の音声で「直進10メートル」「右3メートル」「その先、前方に下り階段。階段を65段降ります」などと道案内し、目的地まで誘導してくれる。

ナビゲーションシステムを実際に使って特徴などを説明するリンクスの藤山悠史さん=同

視覚障害者は頭の中の地図をもとに、白杖や点字ブロックを使いながら1人で移動できるが、知らない場所では外出を支援する誘導者が必要になる。導入された移動支援システムは、初めての場所でも1人で移動できるよう、アプリに入っている点字ブロックの地図データを基に、進む方向と距離を案内する。

市内には視覚障害者が学ぶ筑波技術大が立地するなどから導入に至った。つくば駅では2023年4月時点で月30人の視覚障害者が駅係員のサポートを受けて乗車しているという。

導入されたのは「shikAI(シカイ)」というシステム。費用は、つくば駅構内が設置費用74万円、年間利用料が18万円で首都圏新都市鉄道が負担、バスターミナルは設置費用43万円、年間利用料は11万円でつくば市が負担する。ただしアプリをダウンロードできるのは現時点でiPhone(アイフォン)のみ、アンドロイドのスマホは利用できない。

首都圏新都市鉄道運輸部つくば駅務管理所の船越順也助役は「このシステムを活用することで視覚障害者がつくば駅とバスターミナル間を不安なく移動できる環境になる」とし「導入後もお手伝いが必要なお客様には駅係員が今までと変わらずサポートします」と語り、つくば市総合交通政策課の上田洋輔課長補佐は「視覚障害者がアプリを使って、一人でも気軽につくばセンターやつくば駅に外出してくれれば」と話している。システムを開発したリンクス ソフトウェアエンジニアの藤山悠史さんは「視覚障害者がもっと気軽に一人歩きできる世の中になってほしいと開発を進めてきた。駅からバスターミナルへの乗り換えなど移動や乗り換えの選択肢の幅を広げられれば」と述べる。

同システムは2021年1月に東京メトロで導入され、つくば駅は全国15施設目。導入事業者が鉄道事業者と自治体の2者にまたがるのは全国初。視覚障害者だけでなくつくば駅やバスターミナルで道に迷った時などに誰でも利用できるという。(鈴木宏子)

「ひきこもり」その3《看取り医者は見た!》30

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写真は筆者

【コラム・平野国美】前回コラム(10月16日掲載)で、「ひきこもり」の原因として家屋構造を取り上げ、思春期における子供部屋の意味合いについて書きました。このほかに、家屋と町並みの関係もあると思います。

私が訪問診療をしているこの20年の間に消えていったものが、いくつかあります。例えば、縁側や垣根といった家屋構造は消えました。今、訪問先の患者さん宅で、道路から垣根越しに、縁側や応接室が見えるお宅があります。この家では、いつの間にかご近所さんが訪れて縁側で話し出すのです。

お話を伺うと、約束までして来るものではないとか、チャイムを鳴らしてまで訪れるものではないとか、玄関から入るほどの用があるわけでもないから、縁側で十分なのだと話されます。見ていると、散歩中の知人を見つけて呼び入れ、お茶が提供され、自然と会話が始まります。

こんな昭和の風景は消えました。どこもマンションやアパートが並び、門柱の表札も消えました。よく言えばプライバシーの保護ですが、隣人の名前も家族構成も、全くわからない状況となりました。

昔の住宅では、8畳間で暮らす家族との接触を断つことは不可能でした。近所とのコミュニティにしても、垣根といった外部との曖昧な境界によってつながっていました。子育てにしても、地域で育てる流れがあったと思うのです。

時代の変化も大きく影響

数年前、ある女性がお葬式で故郷に帰るというので、ご親戚に不幸があったのか?と尋ねると、自分が育った商店街のおばちゃんの葬式と言うのです。「私の実家は商売で忙しく、おばあちゃんの店に行って、アヤ取りを教わったり、昼ごはんもご馳走になっていました。お葬式も行くのが当たり前じゃないですか」と。

最近の研修医を診療先のお宅に行かせると、困惑の表情を浮かべることがあります。どこに座ったらいいのか、なにを話したらいいのか、迷ってしまうというのです。どうしてかと聞くと、子どものころ、ご近所や他人宅に行った経験があまりないようなのです。こういった状況が「ひきこもり」とまではいかなくても、コミュニケーション能力不足につながっているようです。

駄菓子屋のおばちゃんをおだててオマケをしてもらうとかが、コミュニケーション能力の上達に役立ったと思うのです。チェーンの飲食店が少なかった時代、大衆食堂や喫茶店も、食べる以外に誰かと会話をする場所でした。「ひきこもり」には、こんな時代の変化も大きく影響しているのではないかと思うのです。(訪問診療医師)

ダイオウイカ再登場 県自然博物館 開館30周年企画展

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国内唯一というダイオウイカの含浸標本=坂東市の県自然博物館

ミュージアムパーク茨城県自然博物館(坂東市大崎、横山一己館長)の開館30周年を記念する企画展「ミュージアムパーク30年のありったけ」が2日から始まる。1日には関係者を招き、オープニングセレモニーと内覧会が開かれた。

1994年の開館以来30年にわたって収集、蓄積してきた展示資料の「ありったけ」を公開する。見せるだけでなく、触ったり体験もできる企画内容で、2月に展示を入れ替えながら来年6月1日まで続くロングラン展開となる。

第91回となる今回の企画展は特設会場に10のコーナーを設け、同館の過去、現在、未来それぞれの「おもしろさ」にスポットを当てる。植物、動物、地学の分野から選りすぐりの収蔵資料を展示する。

オープニングセレモニーであいさつする横山一己館長(左端)



過去に人気を集めた展示を再登場させるベストセレクションコーナーでは、ダイオウイカの再標本化による展示を見ることができる。

2019年に石川県七尾市の定置網にかかったダイオウイカで、採集時の体長は約3.2メートル。同館で液浸標本とし、20年の企画展「深海ミステリー」に展示すると人気となったが、会期終了後に展示ケースから液漏れを起こしてしまった。

今回は資料課の池澤広美さんらが中心となり、含浸標本としての再標本化に取り組んだ。生体の水分や脂質を高級アルコール(蝋状の固体)に置き換える措置で、採集時のふっくらとした標本に仕上がった。ダイオウイカの含浸標本は国内唯一という。

同館は今年累計の入場者数が1300万人を突破。横山館長は「16ヘクタールにも及ぶ広大な敷地ながら交通の便がいいとは言い難い立地だが、今年度入場者は50万人を突破しそうで、コロナ禍以前の水準にまで回復した。団体のお客様が多く、県内ばかりでなく広い地域の皆様に満足いただいている。今後TX沿線で移動博物館を開くなど計画していきたい」としている。(相澤冬樹)

開催を中止 土浦全国花火競技大会

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土浦の花火

土浦全国花火競技大会実行委員会(会長・安藤真理子土浦市長)は1日、あす2日開催予定の第93回土浦全国花火競技大会を中止すると発表した。台風21号の影響により大雨が予報されているほか、雲底の高度が低いことが予報され、安全な打ち上げと競技花火としての観覧環境が確保できないとして中止の判断をしたとしている。

予報では雲底は高度300メートル以下となる。10号玉花火は300メートル上空に上がり、直径300メートルの大きさに開くため、花火の上半分が雲に隠れてしまうとみられるという。

一方大会要項では、荒天の場合は延期とし、3日または9日に順延する予定だった。しかし警備会社の労働者不足が想定より深刻な状況で、観客の安全を確保する警備が困難となり雑踏事故の発生などが懸念されることから、関係機関と協議の上、観客の安全を第一に考え、今大会は中止を決定したとしている。

同大会事務局の市商工観光課花火のまち推進室によると、今大会の警備は警備会社2社と契約し、500人弱の警備員を配置する予定だった。延期する場合、少ない人数しか警備員が確保できないという。延期の場合、これまでは警備会社と再調整して警備員が確保できていた。来年以降、延期の場合も想定してあらかじめ警備員確保の費用を負担するかどうか、課題になる。

大会中止は、コロナ禍で中止になった2020年と21年以来。同推進室は「ひじょうに残念。楽しみにしていただいた方に大変申し訳なく思っています」としている。

大会実行委員会会長の安藤土浦市長は「大会関係者間で協議・検討を重ね、安全な大会開催を最優先に考え、苦渋の決断となったが、中止することとした。開催を心待ちにしていた皆様、煙火業者の皆様を始め、大会開催に向けてご協力をいただいた関係者の皆様に心よりお詫び申し上げます」とするコメントを発表した。(鈴木宏子)

福来みかん狩りなど体験を【筑波山麓秋祭り】下

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黄色く色づいてきた筑波福来みかん園の福来みかん=つくば市臼井

つくば市の筑波山麓や宝篋山周辺で開催中の「筑波山麓秋祭り」では、秋祭り後半の2~4日、3連休に合わせて特産の福来みかん狩りやジャム作り体験などが催される。福来みかんは近年、茨城大学農学部や県産業技術イノベーションセンターなどの研究で機能性成分が含まれていることが分かり、注目されている。2回目は福来みかんに関するイベントなどを紹介する。

今年は豊作 筑波福来みかん園

かつて筑波山神社の参詣道だった「つくば道」沿いの同市臼井にある「筑波福来みかん園」では2日から4日、所有者で田井地区に住む鮏川和行さん(68)が、福来みかん狩りのほか、自作の七味、温州みかん、ネギ、サツマイモなどの農産物を販売する。

自宅工房で七味を作る鮏川さん

福来みかんは18年前に苗木を植え、現在122本ある。鮏川さんは「老後のひまつぶしを社会人時代に準備し、福来みかんの木を植えた。筑波山麓秋祭りには第1回から参加している。今年は豊作でたくさん福来みかんが出来ている。筑波山の秋の味を楽しみに来てほしい」と話す。

みかん狩りは、採れても採れなくても1キロ500円。3日午前11時からは、地域で活動するオカリナ奏者、さかたかなこさんのコンサートもある。スタンプラリーでは七味をプレゼントする。

鮏川さんはみかんの栽培のほか、つくば道沿いに花畑を作り維持管理している。四季折々の花は登山客やサイクリストなどの目を癒してくれる。昨年まではウクライナ支援の募金活動をみかん園や花畑で開催するなど地域活動にも積極的に取り組んでいる。

◆筑波福来みかん園は、同市臼井678
 

収穫しジャム作り 旧大越邸

筑波山神社近くの古民家「旧大越邸」では、11月1日と3 、4日、福来みかんのジャム作り体験と古民家回遊ツアーを開催する。

かつて旅籠屋だった旧大越邸

旧大越邸は約140年前の明治時代まで旅籠屋だった古民家で、2013年~19年にかけて法政大学赤松研究室の手によって修理された。その後筑波大学システム情報系の山本幸子准教授が指導する建築・地域計画研究室が維持管理をしている。

秋祭りでは筑波大生たちが福来みかん関連のイベントを催す。利用する福来みかんは、筑波山神社脇で土産店を営む渡辺美代子さんの畑から譲ってもらっている。イベントでは、福来みかん狩りをして、その後、収穫したみかんでジャム作りを体験する。

古民家回遊ツアーは、筑波山神社近くのつくば道から、福来みかん畑、旧郵便局、旧小林邸ひとときや椿庵まで、福来みかん畑と古民家をめぐる約30分ほどのコースだ。ツアーは予約制で、3日間で50人が目標という。1日現在予約を締め切った。

打ち合わせをする筑波大生ら。右端が岡野勇太さん

同大4年の岡野勇太さんは「筑波山にある歴史ある建物を見てもらい、福来みかんにも興味をもってもらいたい。筑波山地域がもっと活性化するように協力していきたい」と話す。

◆旧大越邸は同市筑波688-1

筑波山麓秋祭りは2008年の国民文化祭開催を機に始まり16年目となる。20年と21年はコロナ禍で中止となり、今年は14回目の開催。スタンプラリーも催され、参加店に行くと各店の趣向したプレゼントがもらえる。(榎田智司)

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終わり

見どころ「土浦の花火2024」《見上げてごらん!》33

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土浦全国花火競技大会実行委員会の許可を得て筆者が加工

【コラム・小泉裕司】晩秋11月2日、土浦市内を流れる桜川河畔に全国56の煙火業者が集結、内閣総理大臣賞を目指し、匠(たくみ)の技を披露します。10号玉の部45作品、創造花火の部22作品、スターマインの部22作品の3部門で競技が行われ、各部門の優勝者には経済産業大臣賞などの権威ある賞も授与されます。

今年、煙火業界は、火薬や玉皮などの部品の高騰により、厳しい経営環境であったにもかかわらず、全国各地で見事な花火大会の開催を支えてくれました。そんな1年の集大成として、「土浦の花火」に出品される89作品は、花火師の魂が込められた見事な花火作品が披露されます。

創造花火の部

昨年、創造花火の部の上位3作品は、近年にない見事な創造性を発揮され、私たちを感動させてくれました。

北日本花火興業(秋田県)の「夜空にしんちゃん!オラは人気者」は非対称の型物花火が見事でした。芳賀火工(宮城県)の「軌跡を見せます!!~トライ&ゴール~」は、時差式花火を応用したボールの軌跡に驚かされました。北陸火工(石川県)の「ジュワッと揚げたて! えびFLY」のしゃれっ気あるタイトル付けと奇想天外なアイデアは、今でもその感動が薄れることはありません。

今年のプログラムタイトルも、ワクワク感が高まります。田端煙火(静岡県)の「もぐらファイト」は、目の見えないモグラが夜空で何をする? 北陸火工の「見てくれ!鍛え抜かれた俺の腹筋」は、今年も女性花火師のアイデアか? 北日本花火興業の「赤いキツネと緑のタヌキ」も気になります。

10号玉の部

10号玉の部は、やはり「五重芯」の6作品に注目しています。昨年優勝の山﨑煙火製造所(茨城県)や好成績を残す野村花火工業(同)の茨城県勢と小松煙火工業、響屋大曲煙火の秋田県勢の戦いに、昨年、内閣総理大臣賞を受賞した菊屋小幡花火店(群馬県)が加わり、激戦が繰り広げられるに違いありません。

スターマインの部

スターマインの部は、速射連発の「迫力系」と、しっとりゆったりの「芸術系」に2極化しています。全作品が音楽付きで、コンピュータプログラムされた花火とのシンクロが見ものです。精魂込めた400発余の傑作に順位を付けることは審査員におまかせし、私たちは、夜空を彩る美しい芸術の世界に没入しましょう。

土浦花火づくし

競技開始から1時間後の午後6時30分、大会提供ワイドスターマイン「土浦花火づくし」の打ち上げ開始。幅500メートル、9カ所から2.5号~8号玉を約7分間、約2000発を打ち上げます。

このプログラムが終わると腰を浮かす観客が見受けられますが、後半の打ち上げは、昨年の大会の成績上位の煙火業者ですので、余りにもったいなさ過ぎます。どうか最後までご覧いただくことをおすすめします。

鑑賞士による花火セミナー

大会当日、土浦駅前のアルカス土浦1階にある市民ギャラリーを会場に、日本花火鑑賞士会主催による花火セミナーを開催します。時間は、午後2時からと3時からの2回です。2人の花火鑑賞士がそれぞれ、土浦の花火を一層楽しめるよう、大会の特徴や今年の見所などを映像や画像を使いながら、わかりやすく解説をします。

大会の無事開催を祈り「ドーン ドーン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

<ネットで生中継>当日会場に行けない方にはネットでのライブ配信がお勧めです。

土浦全国花火競技大会実行委員会YouTubeチャンネ(解説:穗戸田勇一さん、花火鑑賞士・小泉裕司)

Lucky FM茨城放送(上と同じ)

J:COMいばらき(解説:花火鑑賞士・村上貴哉さん)

※11月2日の土浦全国花火競技大会は台風などの影響で中止となりました。

再生した古民家をお披露目【筑波山麓秋祭り】上

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秋祭りでの公開に向け部屋を飾り付ける「つくば椿庵」=つくば市筑波

つくば市の筑波山麓や宝篋山周辺など筑波、田井、北条、平沢、小田の5地区で秋祭り「筑波山麓秋祭り」が26日始まり、後半3連休の11月2~4日は体験ツアーやコンサート、特産品農産物販売などさまざまなイベントが催される。5地区の26団体が、それぞれの特徴を生かし、秋の山麓をにぎやかにする。秋祭りの見どころの一部を上下2回に分けて紹介する。1回目は、新たに山麓や中腹の古民家が姿を変え、新しい持ち主によって生まれ変わった場所を案内する。

大学生が風呂を建築し公開 旧小林邸ひととき

筑波山の中腹「旧小林邸ひととき」(つくば市筑波)では、法政大学デザイン工学部建築学科、赤松佳珠子教授率いる赤松研究室の学生が、風呂「ゆりやら」の完成を記念して11月2日と3日に見学会を実施する。邸内のコワーキングスペースを利用し、風呂建築に関わる模型を展示し、活動の様子を動画で紹介する。

建築作業をする法政大学デザイン工学部建築学科、赤松研究室の学生ら=つくば市筑波、10月6日撮影

風呂は4年前に設計され、施工から3年目で完成となった。作業に関わったのは延べ45人。建築学科の学生が1日に3、4人、都合が付く日に代わる代わる工事に当たったためかなりの日数がかかった。脱衣所と浴室の面積は計9.9平方メートルで3人程度が利用できる。11.3平方メートルの中庭も造成され、庭には竹灯ろうがともる。

建築に携わった同大大学院の法兼知杏(のりかね・ちあ)さん(23)は「力仕事が多くて大変だった。携わった4年間の成果を、歴史のある建物と合わせて是非見にきてほしい」と話す。

旧小林邸ひととき。 標高約250メートルの見晴らしの良い場所にある

旧小林邸は、筑波山ケーブルカーや筑波鉄道(現在は廃線)建設に関わった地域の資産家、小林氏の生家で、約130年前の明治時代に建てられた。しばらく空き家となっていたが、地方創生や観光コンテンツの開発などに関わるGoUp社長の野堀真哉さん(39)さんが2020年に購入し改装した。現在、宿泊施設やコワーキングスペースなどとして運営している。

◆「旧小林邸ひととき」はつくば市筑波937、電話029-866-0003。 

地域活動支援の場に「つくば椿庵」

旧小林邸から山道を下ると立派な塀が見える。同市筑波の古民家空間「つくば椿庵」は今回が秋祭り初参加だ。古民家の空間を味わって欲しいと、秋祭りに合わせ邸内をきれいに飾った。お休み処として26~27日と11月2~4日に邸内を公開し、コーヒーなどが味わえる。

椿庵の塀

「つくば椿庵」は155年前の1869(明治2)年に建てられた古民家で、元教員だった神奈川県の増渕広美さん(66)が3年前に取得した。現在、作品発表や教室、コミュニティの場として貸し出し、地域での活動を支援している。

かつては武家屋敷だった。持ち主だった最後の当主は55代目で、千年も続く家系だったという。増渕さんは古民家に住みたいと、いろいろ場所を探した末に購入した。完全移住ではなく神奈川県との2拠点生活となる。「古民家は大き過ぎて直すところが多く、まだまだ発展途上」だ。DIYが得意な夫が少しずつ修繕しているところだという。

つくば椿庵代表の増渕広美さん

購入した当初は、家族でゆっくり過ごしたいという考えだったが、由緒ある建物であることから、登山客が訪れたり、催しを開くようになった。今年9月には「重陽の節句」の展示会を開くなどした。

増渕さんの祖母が筑波山神社近くに住んでいたことから、幼少だった1960年代から70年代に筑波山で夏を過ごし、にぎわっていた頃を記憶している。「学園都市が出来てから若い方たちの多くが学園に移り、随分様子が変わった。地元の小学校も(廃校になり)今は校舎が残っているだけで子どもたちの声はない。しかし筑波山にはたくさんの魅力があるので、その魅力を多くの方に知ってもらい、かつてのような活気が戻ることを願いたい」と語る。「地元の人が住まなくなっても外から新しい人が入ってくる現象があり、筑波山も少しずつ新しいものが出来て変わってくるかも知れない」と語った。(榎田智司)

◆「つくば椿庵」はつくば市筑波878、電話090-8455-2935。受付時間は平日午前10時~午後5時。

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大腸がんの手術治療《メディカル知恵袋》7

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筑波メディカルセンター病院

【コラム・松村英樹】皆さん、大腸がん検診を受診されていますか? 検診は2日分の便を採取し、便に混じった血液を検出する検査です。がんやポリープなどの大腸疾患があると、大腸内に出血することがあり、その血液を検出します。1日分でも便潜血(せんけつ)検査陽性となったら、精密検査(大腸内視鏡検査)を受ける必要があります。今回は、罹患(りかん)者の多い大腸がんの手術治療についてお話しさせていただきます。

大腸と大腸がんの患者数

大腸とは1.5〜2メートルほどの臓器で、結腸と直腸に分けられます。結腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられます。直腸は、直腸S状部、上部直腸、下部直腸に分けられます。

大腸がんと診断された患者さんの数は、男女合わせた総数で第1位となっています。食生活の欧米化や運動量の減少などが関係していると考えられています。

大腸がんの広がり方

a 浸潤】大腸がんは腸の一番内側の粘膜で発生した後、だんだん大きくなり、最後に腸の壁を突き破って周囲の臓器に広がります。浸潤(しんじゅん)の度合いを深達度と言います。

【b リンパ行性転移】リンパ管は血管のように体中に張り巡らされています。途中にリンパ節という節目があり、リンパ管に侵入したがん細胞はここで増殖します。これをリンパ行性転移といいます。

【c 血行性転移】がん細胞が細い静脈に侵入し、大腸から離れた臓器に流れ着いて、そこで増殖することを血行性転移といいます。大腸からの血流はまず肝臓に集まることから、大腸がんで最も血行性転移の頻度が高いのが肝臓です。次に頻度が高いのは肺転移です。

【d 腹膜播種】腹腔内にがん細胞が散らばった状態を播種(はしゅ)と言います。進行すると、がん性腹膜炎となります。

広がり具合のステージ

がんの広がり具合(進行度)をステージ(病期)で表します。ステージは深達度、リンパ節転移、遠隔転移によって決まります。手術を行った後、組織を顕微鏡で調べた結果で病理分類ステージが決定します。これによって術後に補助化学療法を施行するか決まります。

手術治療では取り残しがないように、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節を切除します。結腸がんは、がんから10センチ離れた部位で腸管を切ります。腸管を切除した後、腸管を吻合(ふんごう)します。(図1)

直腸がんは、肛門側はがんから2〜3センチ離れた部位で腸管を切除します。腸管を切除したあと、結腸と直腸を吻合します。通常器械(自動吻合器)を使って吻合します。(図2)

がんが肛門近くにある場合、肛門を含めてがんを切除する必要があり、その場合は人工肛門になります。看護師による人工肛門の管理・教育や患者会など、ケアシステムに対する様々な取り組みが行われています。

腹腔鏡による手術

炭酸ガスで腹部を膨らませ、お腹の中を見る内視鏡(腹腔鏡=ふくくうきょう)で観察しながら数カ所の小さな創から鉗子(かんし)を入れて手術を行う方法です。創が小さく体の負担が少ないため、急速に普及してきました。しかしながら、従来の開腹手術とは異なる技術であるため、医師はトレーニングが必要となります。当院では内視鏡外科技術認定医が在籍しており、安全に腹腔鏡手術を行っています。(図3)

術後の補助化学療法

手術でがんをすべて切除したと判断しても、一定の頻度で再発が起こります。再発を抑える目的で手術後に追加で行う抗がん剤治療を補助化学療法といいます。リンパ節転移があった場合、またはリンパ節転移がなくても再発の可能性が高いがんに行います。

毎年、大腸がん検診を

大腸がん検診は毎年の受診が推奨されています。残念ながら全国の受診率は男女ともに50%を下回っています。大腸がんは比較的治りやすいがんです。怖がらずに大腸がん検診を受け、精密検査となった場合は必ず大腸内視鏡検査を受けていただくことをお薦めします。(筑波メディカルセンター病院 消化器外科 診療科長)

蚕影山神社と金色姫伝説 養蚕が支えた千年の営み思う絵画展

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作家の加藤真史さん=神奈川県相模原市のCRISPY EGG Gallery (加藤さん提供)

11月1日からつくばで

養蚕にまつわる歴史を調べ、関わる地域で見た風景を独特の作風でキャンバスに描き込む東京都町田市在住の画家、加藤真史さん(41)の個展「穹窿(きゅうりゅう)航路ー蚕神、彼の地より来訪し桑海を渡り帰還す」が、つくば市千現、ギャラリーネオ/センシュウで11月1日から始まる。横浜市と相模原市に続く3カ所目の開催となる巡回展で、アクリル絵の具や色鉛筆で描いた作品15点ほどが展示される。茨城に残る養蚕にまつわる「金色姫伝説」と、全国の養蚕農家の信仰を集めたつくば市神郡にある「蚕影山(こかげさん)神社」の歴史などを通じて、養蚕が支えた千年以上にわたる人々の営みに思いを寄せる展示になる。

加藤さんは今回の作品作りのきっかけを、かつて関東一円で栄えた養蚕地をつなぐ街道を「シルクロード(絹の道)」と呼んだのを知ったことだと話す。江戸末期から第二次大戦末期にかけて、各地で作られた生糸は東京・八王子市に集められ、貿易港のある横浜市へと運ばれた。養蚕業は明治期、外貨獲得のため国を挙げて進められ、産業に関わる一帯は経済的に繁栄し、近代化する日本を支えてきた。しかしその後、ナイロン製品の普及などにより衰退し、1929年に約220万戸を数えた養蚕農家は、2023年には全国で146戸にまで減少している。

展示作品の一つ「郊外の果てへの旅と帰還#15(横浜本牧八王子鼻)」(加藤さん提供)

「郊外」の広がりと、消える養蚕のある風景

加藤さんは以前から、自身が暮らす街の成り立ちに関心を持ってきた。瀬戸物の産地として知られる出身地の愛知県瀬戸市は、歴史ある街並みが残る一方で、加藤さんが育った地域には、コンビニやファミリーレストランが国道沿いに並ぶ「どこにでもあるような、いわゆる郊外風景」だった。加藤さんは、故郷で見る風景が、全国で同じように広がることに疑問を感じ、各地の歴史を紐解きながら「郊外」について考えることが作品作りの大きなテーマとなった。養蚕にまつわる今回の作品は、加藤さんが2022年から作り続ける「郊外」を巡るシリーズ作「郊外の果てへの旅と帰還」の一環でもある。

「『郊外風景』は敗戦後、都市部の住宅不足から、国が団地を建てて周辺地域に人々を誘導してできたもの」だと加藤さんは説明する。「外貨獲得のために国策として拡大したのが養蚕業。桑畑が一面に広がる風景が各地にあったが、養蚕業の衰退とともに『郊外』が台頭した。各地を歩いて実感したのは、日本中で桑畑が『郊外住宅』に置き換わっていった歴史だった」と語る。

インドとつくばをつなぐ伝説

こうした養蚕と郊外の関係を調べる中で出会ったのが、各地に点在し、養蚕農家が信仰する「蚕影神社」と、その総本社でつくば市にある「蚕影山神社」だ。さらに、現在のインドにあたる天竺(てんじく)とつくばを養蚕にまつわる物語が結ぶ「金色姫伝説」の存在だった。伝説は、金色姫という天竺の王女が現在の日立市沿岸に流れ着き命を落とすと亡骸が蚕となり、筑波山の麓にたどり着いて養蚕が始まったというものだ。加藤さんは、養蚕の「創世記」となる伝説と、近代日本の起こりとなる「シルクロード」の物語を結びつけ、今回の絵画作品とした。

「国を支える主要産業として、多くの人が関わった養蚕業だが、開発が進みその痕跡を見つけるのも難しくなった。養蚕に携わる中で共有されていた文化や、劣悪な環境で働いていた女性の存在を知った。労働するにあたって必要とされた心の拠り所、信仰というものがあったはず」だと加藤さんは言い、「養蚕業に携わってきた多くの人々の内面を、私の個人的な作品を通じて見る人につなげる橋渡しにしたい」と作品への思いを語る。

今回の展示を企画した同ギャリーの山中周子さんは「筑波山麓の方は、蚕を『お蚕さん』と、『お』をつけるくらい養蚕を生きる糧にし、強い思いを持っていた。全国からつくばに関係者が参拝に来ていたという話も残っている。知らない人には知って欲しいし、知ってる人にも是非、新しい気持ちで作品を知って欲しい」と来場を呼び掛ける。(柴田大輔)

◆加藤真史個展「穹窿航路ー蚕神、彼の地より来訪し桑海を渡り帰還すー第Ⅲ期 筑波巡礼篇」は、11月1日(金)~17日(日)の金・土・日曜、千現1-23-4 101、ギャラリーネオ/センシュウで開催。月~木曜は休館。開館時間は金曜が午後3~7時、土日は午後1~5時まで。入場無料。展示に関する問い合わせは、メール(info@neotsukuba.com)で。

初の自主公演 筑波大ストリートダンスサークル

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茨城6大学ダンスサークル連盟主催のダンスイベントの様子(Realjam提供)

11月9日 つくば国際会議場

筑波大学の学生ストリートダンスサークル「リアルジャム(Realjam)」が11月9日、つくば国際会議場(つくば市竹園)で同団体初となる自主公演「跡影」(あとかげ)を開催する。

今年で設立30周年となる同団体は、同大1〜3年生を中心に卒業生も含め約160人が所属している。今回の自主公演では、ヒップホップやロック、パリ五輪2024大会で新競技として正式採用されたブレイキンなど7つのジャンルで9チームに分かれ、約130人が参加する。

当日観客は、9つのチームによるダンスパフォーマンスを間近で見ることができる。これまで団体をまとめてきた3年生にとっては引退前最後の大舞台となる。

2023年度筑波大学学園祭ステージでのパフォーマンスの様子(同)

初となる自主公演を企画し実演することは、引退を控える3年生の集大成を披露する場を作り、同団体のさらなるステップアップにつなげる狙いがある。自主公演名「跡影」は13人の幹部メンバーで考えた。由来には「積み重ねてきた練習や努力の軌跡(跡)を未来の世代に繋げる(影)」という意味が込められている。

自主公演開催の背景には、引き継ぎの不備や確認不足などにより毎年11月に行われる同大学園祭の出演時間を十分に確保することができかったことがある。500〜1000人の観客の前で披露される予定だった学園祭に代わるステージを模索した結果、今回新たに最大で900人の観客の前でダンスを披露できる舞台が実現する。

2023年度筑波大学学園祭ステージでのパフォーマンスの集合写真(同)

本番に向けて、メンバーは週2日各2時間の全体練習に加え、毎日自主的に練習を積み重ねている。同団体副代表で社会・国際学群社会学類3年の大本裕陶さん(20)は、当日の見どころの一つについて「照明や音響などの演出にこだわっている。ストリートダンスの良さを前面に打ち出し、見た人に感動を与えられるステージにしたい」と話した。

同団体代表で理工学群物理学類3年の長谷川碧杜さん(20)は「ダンスに大学生活を捧げてきた。学生ならではの若さや強さを表現して、観客に活力やエールを伝えたい。当日はぜひ会場に足を運んでほしい。」と来場を呼び掛ける。(上田侑子)

◆同団体は、自主公演開催にあたり、新たに資金調達のためのクラウドファンディングにも取り組んでいる。寄付への返礼品には、オリジナルグッズのほか、筑波山山頂でオリジナルメッセージを叫ぶ特典やメンバーからのビデオメッセージなど多岐にわたる。

◆自主公演Realjamスペシャルステージ「跡影」は、11月9日(土)午後4〜6時、同市竹園2-20-3、つくば国際会議場Leo Esakiメインホールで開催。開場は午後3時30分、入場料は500円。イベントに関する情報は、公式インスタグラムやクラウドファンディング公式ページへ。

花火見物客を歓迎 土浦の音楽家がウエルカムフェス

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ウエルカムフェスティバルを主催する宇津木紘一さん=土浦駅前のアルカス土浦ステップガーデン(屋外階段)

11月2日と3日

土浦市出身・在住のサックス奏者 宇津木紘一さん(43)が、土浦全国花火競技大会が催される11月2日と翌3日、花火を見に来る観光客を歓迎するウエルカムフェスティバルを開催する。土浦駅西口前のアルカス土浦広場とうらら大屋根広場で音楽ライブやダンスなどを披露するほか、イベントブースやキッチンカーを出店し土浦の物産をPRする。

土浦をアピールしたい

宇津木さんは「約60万人もの人が訪れる土浦全国花火競技大会は素晴らしい観光資源。観光客はもちろん、地元の人たちに喜んでもらえるイベントを開きたい」と語る。

昨年、宇津木さんは土浦商店街連合会の依頼で野外コンサート「サウンド蔵つちうらムーンライトコンサート」のプロデュースをした。その際「このようなイベントを花火大会の日にもやったらどうかと思い立った」。元々、日本三大花火大会である大曲の花火大会、長岡の花火大会では音楽ライブなど様々なイベントを催している。しかし土浦ではこれまで開催されておらずもったいないと考えていた。

そこで昨年、同商店街連合会や同市商工課などに相談し、土浦花火大会実行委員会の後援を得て川口町バス停前広場(土浦市川口町)で第1回目のウエルカムフェスティバルを開催した。「準備期間が短く音楽の生演奏だけだったが、観客が多く手応えがあった。次回はもっと大きな規模でやりたい」と実感した。

土浦全国花火競技大会ウエルカムフェスティバルのポスター(同実行委提供)

今年は土浦駅前で花火大会当日と翌日の2日間かけて開催する。主催は同ウエルカムフェス実行委員会で、土浦商店街連合が共催する。市内でコミュニティバス「キララちゃんバス」を運行するNPOまちづくり活性化土浦や、楽器店「島村楽器イオンモール土浦店」など様々な団体や企業が協力する。地元の若い世代にも活躍してほしいという思いでポスターのイラストは土浦一高美術部の生徒に、題字は土浦二高書道部の生徒に依頼した。「土浦の花火」のロゴは、花火大会のオフィシャルポスターと同じ文字の使用許可を得ている。

高校生も出演

2日は、宇津木さんのサックス演奏のほか、つくば市のマリンバデュオMS.MALLETSによるマリンバ演奏、和太鼓、琴の生演奏などを催す。土浦一高吹奏楽部も演奏を披露する。土浦二高書道部は、宇津木さんとMS.MALLETSの生演奏に合わせてパフォーマンスを行う。

3日は音楽ライブのほか、イベントブースでは、子供たちが「にれ工房」(つくば市平塚)のサポートで竹を使った打楽器作りを体験できる。出来上がった楽器を使って土浦吹奏楽団の演奏に参加もできる。物産展では、知的障害者施設「土浦市つくしの家」が手作りのレンコンコースターやレンコンキーホルダーを販売し土浦のレンコンをアピールする。

にれ工房のワークショップで作る打楽器(にれ工房提供)

宇津木さんは「ウエルカムフェスティバルで土浦の魅力を多くの人にアピールしたい」と意気込みを語る。(伊藤悦子)

◆土浦全国花火競技大会ウェルカムフェスティバル2024は、花火大会当日の11月2日(土)は午前11時~午後4時、アルカス土浦広場で、翌3日(日)は前11時~午後7時、うらら大屋根広場で開催。参加費無料。問い合わせは同実行委員会のメール(tsuchiurahanabi.welcomefes@gmail.com)へ。

農協よ、どこへ行く─農協全国大会を傍聴《邑から日本を見る》170

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農協全国大会であいさつする山野徹全中会長(写真は筆者)

【コラム・先﨑千尋】今月18日、東京都内で第30回全国農協大会が開かれたので、末席で傍聴した。農協大会は3年に一度開かれ、今回は全国の農協代表者ら1500人が出席し、2025年から3年間の農協グループの方針を示した決議を採択した。

今大会のテーマは「組合員・地域とともに食と農を支える協同の力─協同活動と総合事業の好循環」。戦略として、食料安全保障への貢献に向けた地域農業の実践、次世代の確保や持続可能な農業の実現、組合員の豊かなくらしの実現、組合員の参画推進、農協・農業への理解醸成などを掲げている。

農協は、経済的には弱くて小さな農家が手をつなぎ、協同の力で所得と暮らしの向上を目指す組織で、消費者の暮らしを守る生協も同じ仲間だ。農協は、農業生産に必要な資材を購入し、生産された農畜産物を共同で販売する。それだけでなく、今では信用(金融)、共済(保険)、農産加工、医療、葬祭など、農家の暮らしに必要なあらゆる事業を行っている。

私はこの農協に約60年前に職員として入り、最後は常勤役員を務めた。これまでの大会議案を所持しているので、その変遷過程を知っている。農協の事業は農業、農政の動きと不即不離なので、その時々の世相と、農協がどう進もうとしているのかが分かる。

今年は、夏に突然、スーパーの棚からコメが消える騒動(?)が起き、消費者をあたふたさせた。原因は、生産費が上がっているのに米価は30年前の半値近くまで下がり、農家の手取りは1時間当たり10円にしかならない、コメを作っては暮らしていけないということにある。

では農協はこの事態にどうするか。急にそんなことになっても(そんなことを言われても)即座に対応できないということなのか、今回の議案はそうしたことには一切触れていない。「食料・農業への貢献」のところで「農業所得の増大と国内農畜産物の安定供給」が方向として示されただけだ。「農協は食と農を支える」という抽象的な文言だけでは、生産者も消費者もどうしていいのか分からない。

大会に参加した茨城県代表者(同)

議論のない大会

前回の大会では「農業者の所得増大」を支え、「消費者の信頼」にこたえる、と決議した。しかし、今回の突然のコメ価格の上昇は農協のおかげではないし、消費者の信頼も損ねてしまった。今回の議案では、農家の手取りがなぜ時給10円にまで落ち込んでしまったのかなどには触れていない。全体として前回の決議を総括していないのだ。

農協はこれまで「決議すれども実行せず」の組織だと批判されてきた。それだけでなく反省すらしない。私のような内部からの批判は異端者の言うことだと極端に毛嫌いされる。

カラフルな大会資料。整然とした進行。ダラダラと長い来賓のあいさつ。意見表明もあらかじめ決められた人だけが行い、異論も闊達(かったつ)な議論もない。

これでいいのだろうか。歌を忘れたカナリア、運動を忘れた農協は、どこへ行く。そう思いながら会場を後にした。茨城県の農協大会は今月30日に水戸市で開かれる。これも、のぞいてみよう。(元瓜連町長)

目標は新Vリーグ初代王者 サンガイア都澤理事長に聞く

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インタビューに応じる都澤理事長=つくば市竹園、サンガイア事務局

昨季まで日本バレーボール機構が主催していたVリーグは、この2024ー25シーズンから、世界最高峰のバレーボールリーグを目指すSVリーグ(SVL)と、その下部組織でジャパンバレーボールリーグが主催する新Vリーグ(JVL)に改編された。旧Vリーグ2部に属していたつくばユナイテッドSunGAIA(サンガイア)は今季からJVLに所属、新リーグ初代王者を目標に戦いを繰り広げる。

東地区で28試合戦う

今季初開催となるJVLには、旧Vリーグ2・3部のほとんどのチームが参戦。さらにカンファレンス制を導入し、東西2地区に分かれた。今季は東地区が8チーム、西地区が10チーム。レギュラーシーズンは4回戦の総当たり制だ。

「つくばは東地区なので28試合を戦う。長いリーグを戦い抜けるよう戦力の充実を図り、選手の起用や作戦などを練っているところだ」と都澤みどり理事長。

大会方式は完全ホーム&アウェー制に変更。昨季までホームゲームは3大会ほどだったが、今季は7大会14試合に拡大され、選手の活躍を間近で見られる機会が増える。アウェーゲームも北海道と長野以外は全て関東近辺なので、応援に足を運びやすくなる。

ホームタウンはつくばと土浦

「ホームゲームが増えるだけでなく、遠征の際の移動距離も短くなった。去年までは帰りが夜中の12時を回ることも多く、連戦の疲れが残ったまま次の試合に向かっていた。それに比べると少しは体も楽になり、良いパフォーマンスをお見せできると思う」

大会は土・日曜日の2連戦で行われ、2日間とも同一カードを戦う。

「1日目の結果を受けて出方を変えたり、相手の予想の裏をかく場面なども出てくると思う。またチーム状況の変化により、シーズンの前後半でも戦い方が変わってくる可能性もある。そういった点も見どころの一つ」

つくばのホームタウンはつくば市と土浦市で、ホームアリーナにはつくばカピオ(つくば市竹園)と霞ケ浦文化体育会館(土浦市大岩田)を申請。ほかに桜総合体育館(つくば市流星台)と池の川さくらアリーナ(日立市東成沢町)も使う。カピオと池の川は、SVリーグ女子のAstemo(アステモ)リヴァーレ茨城との合同開催だ。

「リヴァーレとはリーグが異なるので別料金の入れ替え制になるが、それでも一緒にできるメリットは大きい。男女それぞれのバレーの面白さを来場者に知っていただける。池の川という5000人規模の会場でできることも魅力」と都澤理事長。

なお、今季から牛久市とつくばみらい市がフレンドリータウンに加わったため、来季はそれらの街でのホームゲーム開催も検討していくそうだ。

選手は13人から16人にアップ

今季の目標はJVL優勝。初代王者のタイトルを目指し、そのために何をどうすべきなのか、日々チーム一丸となって考えているという。選手数は昨季の13人から16人に大幅アップ、顔ぶれも大きく入れ替わり、新規加入選手が9人を占める。

「新メンバーもチームにマッチしてきている。どういうプレーを見せてくれるのか、ぜひ期待してほしい。人数が増えたことでポジション競いも熾烈(しれつ)になり、切磋琢磨(せっさたくま)できている。迫力あるプレーをお見せして、選手が一生懸命取り組んでいる姿を生で感じていただきたい」

11月16・17日 ホーム開幕戦

今季JVLは10月19日に開幕。10月26・27日東京ヴェルディ、11月9・10日長野GaRonsとアウェー2大会を戦い、11月16・17日の富士通カワサキレッドスピリッツ戦でホーム開幕を迎える。会場は霞ケ浦文化体育会館。

なお11月16日は土浦市民デー、17日は牛久市民デーとして、それぞれ市民50組100人を無料招待する。応募方法は各市報10月上旬号に掲載。また両日とも、土浦市報10月上旬号を持参した人は、小学生無料などの特別料金で入場できる。問い合わせはつくばユナイテッドサンガイア事務局(電話029-879-7345)へ。(池田充雄)

2024-25 Vリーグ男子 東地区 レギュラーシーズン
つくばユナイテッドSunGAIA ホームゲーム日程
2024年11月16日(土) つくば-富士通 霞ケ浦文化体育会館 ※土浦市民デー
    11月17日(日) つくば-富士通 霞ケ浦文化体育会館 ※牛久市民デー
    11月30日(土) つくば-東京V 桜総合体育館
    12月1日(日) つくば-東京V 桜総合体育館
    12月7日(土) つくば-R栃木 桜総合体育館
    12月8日(日) つくば-R栃木 桜総合体育館
2025年1月18日(土) つくば-北海道YS 霞ケ浦文化体育会館
   1月19日(日) つくば-北海道YS 霞ケ浦文化体育会館
   2月8日(土) つくば-千葉 池の川さくらアリーナ ※同日開催Astemo-刈谷
   2月9日(日) つくば-千葉 池の川さくらアリーナ ※同日開催Astemo-刈谷
   2月22日(土) つくば-長野GR つくばカピオ ※同日開催Astemo-姫路
   2月23日(日) つくば-長野GR つくばカピオ ※同日開催Astemo-姫路
   3月8日(土) つくば-埼玉 池の川さくらアリーナ ※同日開催Astemo-東レ
   3月9日(日) つくば-埼玉 池の川さくらアリーナ ※同日開催Astemo-東レ