1年前は米の小売価格が高騰し、店頭に並ぶ標準米の5キロ入りが4000円台半ばになった。ところが今年は反落し、最近では3000円以下で推移している。消費者にとって「昨年は困惑、今年は歓迎」の構図だが、日本人の主食が1年の間に1袋1500円も動くのは尋常でない。そこで、4カ月前にJA水郷つくば(本部土浦市小岩田西)の代表理事組合長に就任した油原正明さんに、生産者の立場から米の価格問題を語ってもらった。今年の急落の原因をつくった農林行政に対する苦言はかなり厳しい。
咋年米が残り新米が倉庫に入らず
―今年産米の価格が下落しているが、その現状と背景は?
「最近、商社系の米集荷業者が撤退あるいは廃業しているとの記事を目にした。事実、高値で買い集めた2025年産米の在庫が重荷になり、事業撤退や廃業に追い込まれた業者も少なくない。仕事を続けている集荷業者も、26年産新米の集荷に二の足を踏み、今年は農家が生産した新米が行き場を失っている状態だ。
JAは予約契約を結んでいる稲作農家の米は例年通り集荷しているものの、価格交渉は厳しく、苦戦している。消費者にとって価格が安いことはうれしいと思うが、今後の稲作農家の経営を考えると頭が痛い。
価格が高騰した昨年は、政府から『JAもリスクを取って買い取りなさい』との指導があった。昨年は集荷業者との高値買い取り競争もあり、1俵(60キロ)3万5000円まで高騰したが、今年は1俵2万円以下でも、需要先に売るのが難しい状態だ。咋年産米が倉庫に山積みになり、今年産の新米が倉庫に入らないといった事態も発生している。
価格上下の責任は、米の需給を見誤り、政府備蓄米を大量に放出した政府にある。当時の小泉農相は『米をジャブジャブにする』と発言し、備蓄米の追加放出を断行した。こうした政策のしわ寄せが、今、生産農家にきている。生産者が安心して生産ができ、消費者は安定して購入できる―政府はそういった価格体系に持っていかねばならない」

生産者と消費者が納得できる農政を
―米価の安定、価格の平準化に向け、どうしたらよいか?
「JAは農家組合員で構成される団体だから、当然、生産者米価を意識している。ここ数年の資材高騰で、今後も農業経営が継続できるか、米農家は心配している。肥料や農薬など原料を海外に依存しているものが多く、中東情勢や米大統領の行動がもたらす悪影響に一喜一憂している。
田んぼ1~3ヘクタールを耕作する農家の1俵当たり生産費は2万535円と、公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構は先に発表している。JAは1俵2万円台の価格で農家から買い上げ、消費者に届けたいと考えている。しかし、咋年産の売れない在庫米が多く残っており、今年の価格はJAが目標とするレベルになっていない。
昨年、当時の小泉農相が『米の適性価格は消費者の購入価格だ』と発言したが、これには頭をガーンと叩かれたような思いだった。消費者だけでなく、生産者も納得がいく―そういった落としどころを探るのが政府の役割ではないか。国の安全保障が大切なように、国は主食である米の安定生産・供給、つまり食料安保も図らなければならない」
【ゆはら・まさあき】1981年、東京農業大学卒、茨城県経済連(現JA全農)に入る。2016年、水戸中央青果(株)常務。2020年、JA水郷つくば常務理事。同代表理事専務を経て、2026年6月から代表理事組合長(前組合長の池田正さんはJAグループ茨城5連会長に就任)。高校野球、プロ野球、米大リーグのファン。1958年、龍ケ崎市の農家に生まれ、現在も同市在住。
【インタビューを終えて】昨年のトンデモ米価は、商社系の集荷会社が米は不足すると読んで買い集め、その動きが流通経路に広がり形成されたと聞く。つまり、流通経路で起きた経済事件だった。原油由来のエネルギーや製品素材、米のような価格は流布情報に影響される。政府備蓄米操作は価格平準化の一策だが、うまく運用しないと需給バランスを崩す。消費者物価に連動するぐらいにコントロールする賢さが必要だろう。(坂本栄)













































