木曜日, 11月 13, 2025
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土浦市職員のHPが最優秀賞 霞ケ浦と筑波山周辺を紹介

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最優秀賞の盾を前に表彰状を手にする若田部さん

「人間的なところをデジタルで表現」と評価

土浦市職員でNEWSつくばのコラムニストでもある若田部哲さん(49)が個人で制作しているホームページ(HP)「日本一の湖のほとりにある街の話」が、「日本地域コンテンツ大賞」のデジタル部門で最優秀賞を受賞した。10月28日、観世能楽堂(東京都中央区)で表彰式があった。

「日本地域コンテンツ大賞」は一般社団法人日本地域コンテンツ振興協会(東京都千代田区)が主催する賞。デジタル部門は「言葉による説明がなくても一見するだけでメッセージが理解できる世界に伝わるコンテンツであるかどうか」が審査基準となっている。

若田部さんに表彰状を授与した東京大学副学長の相原博昭さんは「デジタルなのでテクニカルなところが評価されたと思ったが、そうではなくて人間の情熱や熱量、地域を愛する熱量だった。最優秀賞の作品を見ると優しさが伝わってくる。極めて人間的なところをデジタルというメディアに映して表現していることを高く評価されていると思った」と述べた。

約400本が紹介

HP「日本一の湖のほとりにある街の話」は、霞ケ浦と筑波山周辺15市町村の各所を若田部さんが実際に足を運んで取材し、食や祭り、レジャースポット、美しい景色など5つのカテゴリーに分けてイラストとコラムで紹介している。対象物の形や大きさを誇張したり省略した独特なイラストが特徴で、2色とグレーだけを使い、濃淡で版画のように描いて表現している。

HPの開設は2019年。現在は約400本が紹介されている。例えば「漁獲量日本一!霞ケ浦のテナガエビを釣ろう!」では、霞ケ浦での生息場所、釣り方、食べ方などを緑色と青色、灰色の3色を使ったユニークなイラストで紹介している。「江戸のUFOミステリー!神栖市・うつろ舟」では、青色と黄色、灰色の3色を基調としたイラストを使い、海岸に流れ着いたとされる正体不明の舟の言い伝えと、つくば市の蚕影山神社に伝わる金色姫伝説との関連を紹介している。ほかにも季節のイベントなど時期に合った季節の特集も作成している。

版画のようなイラストが特徴の若田部さんのホームページ「日本一の湖のほとりにある 街の話」

日常に根差した風景も霞ケ浦の良さ

全国のタウン誌やフリーペーパー、ウェブサイト、動画など地域密着型メディアを対象に、577件の応募の中から選ばれた。若田部さんは「栄えある賞をいただいて、文字通り檜舞台に立たせていただいた。そうそうたる媒体がエントリーしていたので、光栄の至り。感無量」と喜びを語る。

自分の活動については「土浦市職員としての仕事の傍ら、公務の一環というつもりでイラストと文章で霞ケ浦という茨城県の大きな特徴を紹介しアピールする活動を個人でしている」とし「霞ケ浦の周りには絶景ポイントもある。しかし湖の波の音、湖面を吹く風、風にそよぐ大輪の蓮の花、いつ行っても誰かがきれいに掃き清めている小さな祠など、日常に根差した風景も霞ケ浦の良さだと思う」と話した。

活動の客観視と生成AI対策

若田部さんが今回、日本地域コンテンツ大賞に応募したのは、自分の活動を客観視するためだという。個人の活動なので独善的になっていないか、単なる自分の趣味に陥っていないか、地域の振興に資するものになっているかーなどを常々注意している。「アピール力や構成力を、地域振興活動をしている他の団体と同じ土俵で比較してもらって見極めたい」と語る。

もう一点が生成AIの普及だ。若田部さんは「特に写真については、AIと本物の見分けがつかないような時代になっている」とし「イラストも量産できる時代になっているため『なんとなく成立するコンテンツ』が乱立するようになっている」と話す。「AI代替に埋没しない一定の強さがあるイラストを描いているが、なるべく早い段階で客観的評価を得ておかないと、自分が前からやっていると言えなくなるという懸念もあった」と語る。

美浦村の大山湖畔公園(旧鹿島海軍航空隊)イラスト化計画を始めるきっかけになった記事

地域の物語を伝えたい

今後の取材については「地域の物語をイラストで視覚化し伝えていきたい」と話す。「『地域の豊かさを計る指標は、人口や経済だけでなくそこに内在する物語の数』だという話を聞いて感銘を受けた。地域にはたくさんの物語があるが、うずもれたままになりがち。だからこそ霞ケ浦と筑波山の周辺に残る物語を掘り起こしHPで伝えていきたい」という。

さらにHPをきっかけとして現在、美浦村の大山湖畔公園(旧鹿島海軍航空隊)のイラスト化計画を美浦村と同公園を管理するNPOプロジェクト茨城と進めている。「鹿島海軍航空隊は、遺構はあるものの記録がほとんど残っていない状態。しかし当時の人の何気ない営みがあったはず。大きなボイラーを焚いてみんなでお風呂に入った、食事をしたなど、基地にいた隊員たちの日常をイラストで伝えていきたい」と語る。「一人の兵隊が入隊して出征していく物語も絵本にして地域の子どもたちに配るなどもできたら」と意気込みを語る。(伊藤悦子)

緊急消防援助隊が合同訓練 1都9県の隊員ら1400人が集結 

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孤立集落を想定したヘリコプターによる救助訓練の様子=土浦市小高

県内で20年ぶり

大規模災害発生時に全国各地に駆け付ける緊急消防援助隊 関東ブロックの合同訓練が12日、土浦市小高にある採石場、塚田陶管柳沢工場の敷地内で実施された。1都9県(東京、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野、静岡、福島)の緊急消防援助隊による合同訓練の一環で、県内での開催は20年ぶりとなる。

12日と13日の2日間、土浦市のほか、ひたちなか、神栖、鉾田、鹿嶋、水戸市の13会場で、1都9県の緊急消防援助隊員や関連機関など約1400人が参加し、倒壊建物救助訓練、多数負傷者救助訓練、石油コンビナート火災対応訓練などのほか、宿営地設置・運営など後方支援訓練や、指揮本部運営訓練なども実施されている。

土砂を取り除いた道路を走行する訓練=同

土浦の集落が孤立したと想定

訓練は、連日の大雨により河川氾濫や土砂災害が発生している中で、茨城県沖を震源とする震度6強の地震が発生したという想定で行われた。津波や大規模火災などが県内各地で発生し、多数の負傷者や孤立者が出た複合災害の状況を想定した。

土浦市の会場では、東京、埼玉、栃木の3都県の緊急消防援助隊210人と、茨城県内の消防広域応援隊14部隊60人が参加。同市東城寺地区の集落が土砂崩れにより孤立したと想定し、消防隊員らが専用重機で道路の障害物を除去したり、崩れた土砂に埋もれた車両や倒壊した家屋の中からの救助、ヘリコプターによる上空からの救助などの訓練が実施され、部隊同士や関係機関との連携、指揮系統の確認などが行われた。

ほかに自衛隊、国土交通省、茨城DMAT(災害派遣医療チーム)なども加わり、がれきが散乱して通行が困難な場所でも走行できる救助車両や消防ヘリコプター、照明車など約80台が救助訓練に当たった。

土砂に埋もれた車両からの救助訓練=同

鬼怒川水害では支援受け入れ

緊急消防援助隊は、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに創設され、大規模災害時に消防庁長官の要請などにより、他の都道府県から派遣される。2011年の東日本大震災や24年の能登半島地震でも活躍した。県内では、15年の関東・東北豪雨による鬼怒川水害の際に支援を受けている。

緊急消防援助隊ブロック合同訓練は、1996年から全国を6ブロック(北海道・東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州)に分け、各ブロック内の都道府県が持ち回りで実施してきた。茨城での開催は2005年以来となる。

訓練に参加する自衛隊員=同

茨城県消防安全課は今回の訓練について「県内での大規模災害の発生を想定し、近隣都県の緊急消防援助隊の応援を受け入れ、多くの関係機関とともに実施する今回の訓練は、受援体制の強化に大きく寄与する大変意義深いもの。本訓練を通じて、本県の受援体制の見直しを図り、茨城県緊急消防援助隊受援計画へ反映させていきたい」と話している。(柴田大輔)

暑かった今年の夏、原発事故の夢を見た《ハチドリ暮らし》55

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写真は筆者

【コラム・山口京子】今年の夏、重苦しい夢を見ました。SFの世界が現実になるのかと…。どこかの原子力発電所で事故が起き、放射性物質が大量に空中に放出されました。メルトダウンしたのでしょうか。風の向きによりますが、私の暮らすところにも避難勧告が出ました。過酷な事故が起きれば、原発から数キロだろうが数百キロだろうが誤差でしかなく、結局は地球全体が汚染されることになり、どこにも逃げ場はないのです。

東京電力福島第1原子力発電所の事故を経験したわけですから、東電は「とんでもない事故が起きてしまいました。取り返しのつかないことです。ですので、原子力発電事業から撤退します」と言うのかと思ったら、逆の方向に進んでいます。

何事でもきちんと知った上でないと、意見も的外れやピンボケになります。なので、ジャーナリスト、原子力や地震の専門家、弁護士、知識人などの本を読みました。原発の差止訴訟が全国で起きていること、「原子力市民委員会」「脱原発弁護団全国連絡会」「ノーモア原発公害市民連絡会」などの活動も知りました。

元裁判官による「原発入門」

心して読んだのが、「原発を止めた裁判官による保守のための原発入門」(樋口英明著、岩波書店)です。多くの人が原発を容認してしまっているのは、福島原発事故の実態と原発の本質を知らされていないからだ、と著者は指摘します。

報道されない原発トラブルが多数ある、被害の大きさを多くの国民は知らない、原発は水や電気が失われればコントロールできなくなる、事故後は通常管理されている原発とは異なる状況にあり今も危険な状態が続いている―などと、警鐘を鳴らしています。

原発の本質の一つは、人が管理しないと暴走するため、人による安全三原則「止める」「冷やす」「閉じ込める」が不可欠です。もう一つは、暴走した場合の被害は甚大であるため、福島第1原発の吉田所長、原子力委員会の近藤委員長、菅首相たちは「東日本壊滅」を覚悟した―とも。

樋口氏は自著の後半で、原発の五重苦として①人の継続的な管理を要する②地震大国であるにも関わらず耐震性が低い③原発を管理するのに必要不可欠な発想がない④技術力がない⑤倫理観がない―ことを挙げています。そして、原発差止め訴訟を担当しながら裁判官が原発の危険性を知らないことは罪が重い、と。

原発問題は国防問題?

さらに、原発を止めるべき理由として、①原発の過酷事故のもたらす被害は極めて甚大である②それゆえに原発には高度の安全性が要求される③地震大国日本においては高度な耐震性が要求される④しかし日本の原発の耐震性を正当化できる科学的根拠がない⑤したがって原発運転は許されない―と。

原発問題はエネルギー問題でも環境問題でもあるが、その本質は国防問題だとも述べています。(消費生活アドバイザー)

給食にカメムシとアブラムシ混入 つくば市 4小中学校

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「ほうれんそうとくらげのあえもの」に混入していたカメムシ(左)と「ひらひらわんたんスープ」に混入していたアブラムシ(つくば市教育局提供)

つくば市は11日、市内の小中学校4校で同日提供された学校給食18食以上に、カメムシとアブラムシが混入していたと発表した。同日午後6時時点で児童生徒に体調不良などは確認されていないという。

同市教育局健康教育課によると、虫の混入が分かったのは小学校3校と中学校1校の計7学級で18人以上に提供された給食。学校別では、吾妻小の3学級で3人、栗原小の2学級で10人以上、九重小の1学級で4人、桜中の1学級で1人に提供された給食にそれぞれ虫が混入しているのを児童生徒、教職員が発見した。

ほうれん草を使った献立「ほうれんそうとくらげのあえもの」の中に体長1.3センチほどのカメムシ、小松菜を使った「ひらひらわんたんスープ」に体長1ミリほどのアブラムシがそれぞれ混入していた。

いずれも市桜学校給食センター(同市天王台)が同日、調理し、幼稚園2園、小学校5校、中学校2校に計3192食提供された給食の一部で、ほうれん草と小松菜は、いずれも市内で栽培された有機野菜だった。

同課によると、給食センターでの野菜の洗浄方法は、水が流れている3槽のシンクでそれぞれ3回洗浄することになっている。同給食センターではこの日、ほうれん草と小松菜に虫が混入していることに気付き、所長から調理委託業者に、徹底して洗浄するよう指示があった。調理員は、流水の3槽のシンクでそれぞれ3回洗浄したが、すべての虫を取り除くことが出来なかったという。

同日12時45分ごろ、吾妻小から給食センターに連絡があり、その後、他の小中学校から次々に連額があった。各学校で給食を停止するよう周知したが、一部のクラスを除いてすでに食べた後だったという。

市は同日、虫の混入が判明した4校の保護者にお詫びの通知を出した。

今後の対応策として同課は、給食センターで野菜を洗浄する際は目視による確認をさらに徹底するほか、洗浄回数を増やすことも検討したいとしている。

「置き薬」と「置き絵」《続・平熱日記》186

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】9月の終わり、長野県千曲のギャラリー「art cocoon みらい」を訪ねた。紅葉にはまだ早いどころか、まだ夏の名残のある今年の信州。

目的の一つはギャラリーに置いてあった作品を引き取り、新たに作品を置かせてもらうこと。季節柄、クリスマスに向けての作品も所望されたが、特にクリスマスに向けた絵を好んで描いているわけでもないので、冬っぽいのを見繕って持って行った。

「なんだか富山の『置き薬』ならぬ『置き絵画』みたいですねえ。置き薬のように使った分だけ補充方式。昔は『風呂敷画商』なんていうのもありましたねえ」。ギャラリーのかおりさんとの会話がはずむ。いいのを選んでもらおうかと思っていたが、とりあえず全部置いていくことにした。まあ、物が小さいから邪魔にもならないだろうから。

ギャラリーでは、若い女性の作家がヨーロッパを旅してしたためたスケッチを展示していた。というと優雅な旅を想像することもできるが、彼女は例えば冬のスペイン北部、サンチアゴ・デ・コンポステーラを目指して巡礼の旅をしてきたという。日本でいえば、四国のお遍路さんみたいなものかもしれないが、うら若き日本人の女性がそう簡単に歩けるものではないはずだ。

ギャラリーには、足取りを記した地図や水彩絵具、巡礼者のあかしとして実際に身に着けて歩いたホタテ貝(聖ヤコブのシンボルだとか。そういえば仏語でホタテ貝のことを「サン・ジャック」というなあ)も展示されていた。それから、南仏、イギリス、スウェーデン、フィンランドと彼女の旅は続く。

私はその旅の軌跡にちょっとした偶然を感じていた。実はおよそ30年前、ほぼ同じような場所を訪ねていたからだ。次女がお腹にいたころ、ベビーカーを押して妻と長女と訪ねたのはスペインと南仏。それから、スウェーデンの画家の友人を訪ねて旅をしたストックホルム、ヘルシンキ。私の場合は彼女と違って呑気(のんき)な旅だったが…。

ただ、これも偶然といえばそれまでだけど、私は少し前から何となく気になっていたロマネスクの教会を紙粘土で作って描くようになっていた。それから以前から教会の窓やステンドグラスの絵も好んで描いていたので、彼女のスケッチに登場する風景やモチーフをごく自然に受け入れることができた。若いのに、ちゃんと絵に向き合っていてえらいな…。

「こんにちは! 置き絵で~す」

幼いころ、我が家にも置き薬はあった。お腹が痛いとき、風邪を引いたときに飲まされた薬は、テレビのコマーシャルで聞く名前とは微妙に違っていて、効能に半信半疑だった(もちろん効いたと思う)。しかし、置き薬方式に絵を置いてもらうのも悪くないと思えてきた。それ、ネットでいいんじゃない? いや、年に一度、「こんにちは! 置き絵画で~す」と訪れるのがいいじゃないか。

次に千曲を訪れるのは杏の花が散った後か。ギャラリーの目の前にある神社には真っ赤な彼岸花が咲いていた。(画家)

那珂市で「サツマイモの神様 白土松吉展」《邑から日本を見る》188

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会場に展示された千貫取りのサツマイモやブランコ植えのサツマイモの模型など

【コラム・先﨑千尋】那珂市歴史民俗資料館で企画展「サツマイモの神様 白土松吉展」が開かれている(11月30日まで)。茨城県内で「サツマイモの神様」と呼ばれてきた白土松吉(以下松吉)が戦前に活動していた那珂市から名誉市民の称号が贈られたことは、コラム179「サツマイモの神様白土松吉が名誉市民に」でお伝えした。

同資料館が今回、松吉展を企画したのは、戦前、県内でサツマイモ増産や灌漑(かんがい)事業などで活躍した松吉のことが市内だけでなく農業関係者からも忘れられており、名誉市民になったことを契機に、埋もれていた松吉の業績を顕彰し、多くの人に知ってもらおうという趣旨からだ。

展示は、松吉の生い立ちから亡くなるまでの一生を軸に、「松吉とサツマイモ」「甘藷(かんしょ)農法の発明」「白土甘藷研究所の設立」「小場江堰(おばえぜき)の改修」などから構成されており、年表やサツマイモの模型、増収法の具体的資料、統計、受賞した黄綬褒章、生家やサツマイモの収穫作業姿、墓地、祭られている「ほしいも神社」の写真などから成る。

松吉は那珂郡農会技手としての業務をこなす中、サツマイモの千貫(3750キロ)取りに挑戦し、夏はサツマイモ畑に寝るなど寝食を忘れて研究を重ね、約30年かけて、とうとう千貫取りの技術を確立した。当時のサツマイモの反収は300キロ程度だったから、松吉は周りから「ほらふき松っつあん」と呼ばれていた。

現在の農林統計でも2024年の全国平均の反収は2500キロ(600貫)だから、松吉の技術はすばらしいものだった。白土式甘藷栽培法とは、保温によるイモの苗床の考案。良い苗を作る(長さ1尺以上、12節以上)。肥料は植える前に施肥。高畝(うね)。苗のブランコ植えなど。

茨城の干し芋産出額は100億円

会場では、松吉の普段着(農作業姿)の写真に合わせて、その人となりが紹介されている。「頭脳明晰(めいせき)。深いサツマイモ愛。真っ黒な手。お酒が大好き。歯は一本もなし。大臣でも知事でも君づけ(忖度なし)。若者より体力あり。おしゃれに無頓着。いつも裸足(はだし)」など。

企画展を担当した同館の玉井千尋さんは「調べていくと、松吉は地味で偉ぶらない、人間味がある身近な人だと思った。いもづる式にいろいろなことが分かった。松吉は自分の時間すべてをサツマイモに費やした。干し芋みたいにかめばかむほど味が出てきて、うまみが分かってくる。この展示を多くの人に見てもらいたい」と語っている。

私はこの企画展に合わせて、11月9日午前10時から同市瓜連の総合センターラポールで「白土松吉の業績とサツマイモ干し芋のこれから」というタイトルで講演を行った。

今、焼き芋や干し芋は、健康食、自然食ブームの人気者となっている。焼き芋はスーパーやドラッグストアなどでも販売しており、大会や博覧会などが各地で開かれている。また、茨城県の干し芋は産出額で約100億円。全国の99%を占めている。干し芋焼酎や干し芋の缶詰、残渣(ざんさ)利用の菓子類など、さまざまな商品も開発されている。

私は講演の中で、松吉の志を受け継ぎ、さらなる試みが那珂市やひたちなか市などで展開されるように、行政や農協、生産者、流通業者が工夫し、努力してもらいたい、と述べた。(元瓜連町長)

冬のプールを河童が占拠! 石塚隆則さん つくばの公園で作品展

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二の宮公園の屋外プールに展示されている河童の彫刻と石塚隆則さん=つくば市二の宮

「見えない気配」を表現

誰もいない冬のプールを、約20体の河童が占拠したー。

つくば市二の宮の二の宮公園で7日から、横浜市在住の現代美術家・石塚隆則さん(54)による屋外作品展「河童(かっぱ)開放区 石塚隆則 野外彫刻展覧会」(ART PARK2025実行委員会主催)が開催されている。公園内の市民プールを舞台に、肌や髪の色もさまざまな、現代的な衣装に身を包む河童をモチーフにした彫刻作品、約20体が展示されている。公園に隣接するマンション1階の「ギャラリーネオ/センシュウ」では、石塚さんによる彫刻、焼き物、墨絵など約50点が展示されている。

「普段から近くにあるけれど、見えていないものは多い。冬のプールもそう。そこは河童の開放区かもしれない。人々から忘れられた場所に、河童がすんでいてもいいですよね」と石塚さんは言う。

プールサイドに展示される約20体の河童

今回の企画は、実行委員会の代表で、ギャラリーネオ/センシュウを営む友田穣太郎さんが石塚さんに声を掛け実現した。二の宮公園を舞台にした実行委による屋外企画は、2023年に続き2回目となる。友田さんは「公園という公共の場所でアートイベントを開催することで、多くの人が美術に触れ、関わるきっかけを増やしたいと思い企画した。美術作品からは、作家が訴えるメッセージや創造性など、目に見えないものを感じることができる。石塚さんの作品を通じて、感じてほしい」と呼び掛ける。

動物は一番の隣人

石塚さんはこれまで一貫して、擬人化したさまざまな動物による絵画や彫刻作品によって、気配など社会にある目に見えない物事を表現し、国内外で作品を発表してきた。どこか憎めない、親しみやすい雰囲気のある作品が特徴的だ。2022年に千葉県で展示したシリーズ作「光射す公園」では、模型の公園の中で思い思いに過ごす彫刻の小動物を用いて、コロナ禍で使用禁止になるなど社会から「異物」化された公園を表現した。東日本大震災の際には、被災地で撮影された一枚の写真に心を打たれ、被災者らが肩を寄せ合い火を囲む姿を、布を用いた擬人化した動物で作品にした。

ギャラリーネオ/センシュウの展示風景

幼い頃から、動物を描くことが好きだった。「動物は、自分と繋がる一番の隣人」だと話す。暮らすのは横浜市。幼少の頃は自然が身近な場所だった。当時からタヌキやイタチ、リスなどの動物が身近にいた。宅地開発が進み工業団地が近所にできた現在も、暮らしの中で多くの動物を見掛ける。「昔より、今の方がむしろ増えている」。里山がなくなり、山から出てきているのではと、想像する。環境の変化に適応し生き抜く動物たちに、「頼もしさを感じる。あるがまま、ただ、そこにいるということを教えてくれる」と話す。

「まれびと」がきっかけつくる

今回の作品制作は、準備を含めて1年を要した。その間に、牛久沼のほとりに暮らし河童をテーマに数多くの絵画作品を残した画家の小川芋銭の足跡もたどってきた。石塚さんは、芋銭が河童を通じて描き続けたのが、「人と自然、現実と幻想の境界にひそむ『気配』」だったのではないか」と話す。

公園のプールが使われるのは、夏の数カ月。その期間が過ぎると使われなくなる。多くの人が集まる公園の中に「空白ができる」。誰からも顧みられることのない都市の空白に現れるのが今回の河童たちだ。

石塚さんが所有する小川芋銭に関する資料も展示されている

自身の手による河童たちを石塚さんは、民俗学者の折口信夫が提唱した概念で、異界からやってきて幸運をもたらす神や精霊などを表す「まれびと」に重ね合わせる。「私たちは、そういった見慣れない存在を『異物』として弾いてしまうことがある。今ニュースになる、外国の方に対する状況もそれに重なる。しかし『まれびと』は、定住している人たちのもとに他所からやってきて、町を活性化させたり、新しいものを生みだしたりするきっかけを作る、大切な存在」だと話す。

今回の展示では、プールの他に、二の宮公園のシンボルとなる時計台の上に、周囲を見渡す河童も1体、展示している。「普段使っているプールや公園がどう変わったのか、地域の子どもたちに観察してもらい、感じた何かを持ち帰ってもらえたら。どんなことでもいいと思う。大人になって振り返った時に『子どもの時、ここにいっぱい河童がいたんだよ』など、自分の子どもに語ってもらえたら。将来の伝説のようになったとしたら、面白いですよね」と笑みを浮かべる。(柴田大輔)

◆アートパークつくば2025「河童開放区 石塚隆則 野外彫刻展覧会」は11月7日(金)から11月30日(日)、つくば市二の宮1-15、二の宮公園屋外プールと、同市千現1-23-4-101ギャラリーネオ/センシュウの2カ所で開催。屋外展示及び同ギャラリーの開館は金・土・日曜、祝日のみ(月~木は休館)。開館時間は正午から午後5時まで。入場無料。問い合わせはギャラリーネオ/センシュウのメール(sen.jotarotomoda@gmail.com)へ。

来年も土浦一高と竹園高の定員増無し《竹林亭日乗》34

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男女川橋から見た筑波山

【コラム・片岡英明】10月30日、2026年の県立高校の募集定員が発表された。しかし、土浦とつくばエリアの生徒と保護者が期待していた土浦一高と竹園高の定員増はなかった。今回は、受験生を応援する立場から、この「定員増無し」を考えてみたい。

地元生徒に土浦一高「受験控え」

24年入試から土浦一高が4学級募集となり、土浦市内からの入学者が激減している。人数を示すと、23年=38名→24年=18名に減り、これが底だと思っていたら、25年は1人減の17人になった。

一番注目したのが、土浦一高の地元にある土浦二中からの入学数だ。8学級募集から6学級となった22年は9名、23年は6名だったが、4学級募集になった24年は5名となり、今年25年はわずか1名だった。私は、土浦二中からは毎年10~20名は入学するイメージを持っていたが、今年の1名は驚きだった。この数字からどんなメッセージを読み取ればよいのか。

4学級移行の最初の年(24年)、土浦二中からは10名受験→5名合格という厳しい結果になった。これは制度の変動期に伴う「揺れ」であり、いずれ落ち着くという見方もある。しかし、土浦市内の入学激減を見ると、中高一貫移行前の8学級から4学級への定員削減は極端すぎたように思う。土浦一高受験控え=市内の受験生の悩みを受けとめ、6学級に戻すことが必要ではないか。

なぜ竹園高の学級増がないのか?

TX沿線の子ども増を受けて小中学校が建てられており、受験生を含む多くの市民は次のステップの県立高の定員増や新設を期待している。これに対し、県は2018年の高校審議会の答申を受け、19年の高校改革プランで「卒業生の変動に対して、エリア区分ごとに~募集学級の調整により対応する」と基本姿勢を示している。

同時に、つくばエリアの中卒生が2018~26年に440名増加すると推計、これに合わせ県立高定員を26年までに2学級増すると発表した。しかし、この基本姿勢がなぜかぶれた。今回発表された「竹園学級増なし」で、つくばエリアの入学定員は18年水準に比べ増えないことになった。

7月、つくば市選出の4県会議員にも参加してもらい、つくば市議会議長は県に竹園高の学級を増やすよう意見書を提出した。私たちの会も竹園高2学級増を要望した。この場にはつくば市副市長も参加、県議・市・議会・会が一体となって竹園高の定員増を求め、県と率直な意見交換を行った。

こういった活動が県の担当者の心に届き、受験生に希望を与える発表があると期待していたが、県自らが策定した改革プランも実行されず、竹園高の学級増は発表されなかった。

県と現場の誠実な対話が必要!

現在進行中の高校審議会で、土浦一高と竹園高の学級増を含む今後の方向性が議論されることを期待している。

さて、「土浦一高の地元中学生の受験控え」「竹園高の学級増なし」の2つの事実を貫く真実は何だろう。今、県や教育関係者はこれらの事実を受けとめ、つくば・土浦の現場と誠実に対話し、生徒の心に学びの火をともす教育政策の立案とその実行が求められている。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

人生100年時代、終活は「住まい」から サンヨーホームズが提案

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マンション外観、JR常磐線「ひたち野うしく駅」直結

PR人生100年時代を迎えて健康寿命が延びる一方、「老後の暮らし」や「介護」「終活」といった課題は、本人だけでなく親を持つ世代にとっても共通の悩みになっている。このような漠然とした不安に対し、東証上場企業のサンヨーホームズ(本社・大阪市西区西本町)が提案する「新しい住まいの選択肢」が注目を集めている。同社は、関東・中部・九州を中心に建設・不動産事業を展開し、安心できる暮らしを提供している。

バリアフリー設計の居室(一例)

自分らしく新たなシニアライフ

同社でシニア住宅の専門家として活躍する岩本将哲さんは、宅地建物取引士、終活カウンセラー、福祉住環境コーディネーターなどの資格を持つ「人生の相談役」。岩本さんは「終活は決してネガティブなものではなく、残りの人生を自分らしく生きるための前向きな準備だと思っています」と話す。

終活と聞くと、身の回りの整理や相続を想像しがちだが、「住まいこそが終活の鍵を握る」と強調する。老朽化した自宅は段差が多く、転倒のリスクが高まるほか、1人暮らしでは安否確認や緊急時の迅速な対応が難しく、家族にとっても大きな心配事となる。これらの問題を放置すると、いざ介護が必要になった際に精神的・身体的な負担が本人や家族に集中してしまう。

こうした背景から高齢者向けの住まいが増えているが、サンヨーホームズが展開する「サンミットひたち野東ステーションフロント」(茨城県牛久市ひたち野東 1-32-8)は、JR常磐線「ひたち野うしく駅」に直結し、一般的な施設とは一線を画すシニア向けの分譲型マンションだ。

入居者専用レストラン

「資産」として相続や売却も可能

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅のような賃貸契約を基本とする高齢者向け施設とは異なり、サンミットは「資産」として所有できる点が特徴。万が一の際も相続や売却が可能で、家族への負担軽減につながる。

さらに、単なる不動産物件ではなく、入居者の生活を豊かにし、介護予防にもつながる多様な共用施設を完備。24時間365日常駐するスタッフによる見守りや緊急時対応、全館バリアフリー設計が安心感を提供。レストラン、大浴場、カラオケルーム、シアタールームなどの充実した共用設備は、入居者同士の交流を生み、新たなコミュニティを育む場となっている。

「安全な環境が整ったここでの暮らしは、これからの人生をどう楽しむかというワクワク感に満ちています」(岩本さん)。新しい趣味や仲間との出会いが生活の質を高め、心身ともに生き生きとした毎日を実現する。これは本人にとってだけでなく、親が元気に暮らす姿を見る家族にとっても大きな喜びとなる。

温泉大浴場(人工)

元気なうちに自分で未来を選ぶ

「終活は元気なうちに自らの意思で未来を選ぶことが重要。サンミットのような住まいを検討することは、終活を前向きに進める第一歩。ご家族と話し合うきっかけにしてください」と岩本さん。住まいから始める終活。サンヨーホームズの提案は、シニア世代に新たな安心と希望をもたらしている。

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子育てとカブトムシの関係《ことばのおはなし》87

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写真は筆者

【コラム・山口絹記】ぶぅーん、バチバチバチ。夜中になると聞こえてくる、こんな音に悩まされなくなると、あぁ夏が終わったんだなと実感する。そう、こどもが捕まえてきたカブトムシの羽音である。

我が家には4歳の男児がいるため、ご多分に漏れず夏になるとカブトムシと同居をしなければならない。これは親の義務教育のようなもので、もちろん例外もあるだろうが、そういったご家庭はまた違った何かを背負って日々を送られていることと思われるので、ここで語ることはしないこととする。

話をカブトムシに戻そう。世の中にはこんなにも娯楽があふれていて、子育ての悩みと言えばスマホの扱いをどうするとか、YouTubeは見せるべきか否かなどと言ったことがそこかしこで語られているのだが、カブトムシをどうするか、という議論は見かけたことがない。まぁ、親が大変、以外の問題がないからなのだろう。

飼わせてあげればいいじゃない。そんな声が聞こえてきそうなのだが、世の親御さんたちに代わって申し上げると、飼うのは子ではなく親なのである。賭けてもいいが(何を賭けるのは知らない)昆虫になど微塵(みじん)の興味のない親御さんでも、カブトムシの育て方は知っているはずなのである。これはもう義務教育だから仕方がない。

しかし、21世紀も四半世紀を過ぎてなお、こどもにとってのカブトムシの魅力とは何なのだろうか。論文を探してみたが見つけられなかったので誰か研究してくれないだろうか。

小さいころの夢は昆虫博士

まるでカブトムシを育てることを否定するかのような文面になってしまったので念のため断っておくと、私の小さいころの夢は昆虫博士になることだった。今は全く関係ない仕事をしているが、昆虫は今も割と好きである。

しかし、実は今も玄関にカブトムシの幼虫がいるのだ。2匹である。どこかで譲ってもらったらしい。私もカブトムシの幼虫を育てたことは無いので、これから勉強しなくてはならない(言語研究者)

金利引き上げ影響 増収増益に 筑波銀行 26年中間決算

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中間決算を発表する生田頭取

筑波銀行(本社・土浦市、生田雅彦頭取)は7日、2026年3月期 第2四半期(中間)決算を発表した。半年間の純利益(連結)は37億8800万円で、前年同期比94.6%の大幅増となり、増収増益となった。生田頭取は「金利上昇の影響や(貸し倒れに備える)与信関係費用の減少などが増収増益につながった」などと話した。

本業による収益から経費を差し引いた単体のコア業務純益は前年同期比32.9%増の46億7400万円と過去最高になった。

連結の経常収益は前年同期比17.8%増の239億4700万円。金利上昇局面において、貸出金利息の増加に加え、有価証券利息配当金など資金運用収益が増加した。

経常費用は、与信関係費用が大幅に減少したが、預金金利の引き上げに伴う預金利息の増加や賃上げに伴う人件費の増加などから、前年同期比9.7%増加した。

預金残高は、法人預金は増加したものの個人預金と公金預金が減少し、前年同期比347億円減の2兆5995億円となった。預かり資産は、投資信託が同比200億円増加、生命保険が92億円増えたなど347億円増加し4040億円になった。

貸出金は、マイカーローンなど個人向け貸出や地方自治体向け貸出が増加。さらに地元中小企業の資金繰り支援に積極的に取り組み、中小企業貸出が8153億円になったなどから、貸出金全体では半年間で586億円増加し、2兆1746億円となった。そのうち住宅ローンは、人口増加が続く県南を中心に前年同期比185億円増の5974億円となった。

地域経済の状況について生田頭取は、トランプ関税の影響について「影響はあると思うが、資源高、物価高、人件高の影響が大きい。今後、金利が上がってくると金利負担などいろいろな面で影響があると捉えている」と述べた。高市政権が誕生し金利への影響については「金利の話になるとまだよく分からないが、我々もシミュレーションをして予算を立てる。当初は10月、11月の時期に上がると捉えていたが、若干ずれ込むのかな、12月か1月になると捉えてる」などと話した。(鈴木宏子)

筑波技術大で壮行会 東京2025デフリンピック 15日開幕

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東京2025デフリンピックに出場する(後列左から)ハンドボールの小林優太選手と林遼哉選手、バレーボールの大坪周平選手、(前列左から)サッカーの岩渕亜依選手、テコンドーの星野萌選手

学生、卒業生17選手が出場

聴覚障害者の国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が15日開幕するのを前に、聴覚障害者らが学ぶ筑波技術大学 天久保キャンパス(つくば市天久保)で5日、壮行会が開かれた。同大からは学生6人と卒業生11人が選手として出場するほか、開閉会式のパフォーマンスに学生2人、ボランティアのサポートスタッフとして学生108人が参加する。

大会に出場する同大選手は▽ハンドボール=林遼哉(4年)▽テコンドー=星野萌(4年)▽バレーボール=大坪周平(4年)▽陸上=中村大地(2年)▽バドミントン=沼倉昌明(大学院)、沼倉千紘(同)の6選手。ほかに開閉会式のパフォーマーとして伊東咲良さん(3年)、瀧澤優さん(2年)の2人が参加する。バドミントンの沼倉昌明選手は男子ダブルスでメダルが期待されているという。

サポートスタッフとして参加するのは、聴覚障害者が学ぶ産業技術学部の学生108人で、同学部学生の約半数に及ぶ。108人は大会期間の15~26日の12日間、4グループに分かれて、大会運営拠点となる国立オリンピック記念青少年総合センターに泊まり込み、選手らのサポート、受付、案内、誘導などを実施する。同大は大会期間中、同学部の授業を休講にして学生らを応援する。

壇上に立つ(左から)サポートスタッフ代表の文倉周音さん、テコンドーの星野選手、ハンドボールの林選手、バレーボールの大坪選手と、開閉会式のパフォーマーとして参加する瀧澤優さんと伊東咲良さん

壮行会には大会に出場する選手のほか、サポートスタッフとして参加する学生らが参加。石原保志学長は「選手として、パフォーマーとして、ボランティアとして参加する皆を応援している。世界中の人と交流して視野を広げてほしい」などとあいさつした。

壮行会にはいずれも4年でバレーボールの大坪選手(22)、ハンドボールの林選手(21)、テコンドーの星野選手(21)と、卒業生でサッカーの岩渕亜依選手(32)、ハンドボールの小林優太選手(2選手が参加した。

テコンドーの4年、星野選手は「今まで同じ障害の人と練習したり対戦する機会がなく、孤独を感じることもあったが、大学の友達や先生方が支えてくれた。見てくれる人の目に留まるような最高のパフォーマンスをして、テコンドーを知らない人にも魅力を伝えられたら」と話した。

男子ハンドボールのキャプテンを務める卒業生の小林選手は「日本のデフハンドボールは筑波技術大のサークルから始まった。毎週木曜とか土曜の夜に練習して、2人しか集まらずキャッチボールをして終わった日もあった。卒業して東京でデフハンドボールチームをつくり、社会人チームと試合をして実力を付けた。個人的には24年と25年に右膝と左膝をそれぞれ負傷し、スポーツに対する熱意を消失し一人で泣いてしまうこともあったが、出来ないことは誰かがカバーしてくれるなどチームスポーツの素晴らしさを改めて感じ、自分のできることを頑張ればチームに還元することができると思えるようになった。(大会は)まずは一勝し、デフリンピックの祭典を楽しみたい」などと話した。

学生がデザインした、応援の横断幕なども披露された。大会会場の応援席で掲げる

デフリンピックは、ろう者による国際スポーツ大会で、1924年にフランスのパリで第1回大会が始まって以来、4年に一度、夏季と冬季大会が開催されている。2025年は100周年記念となる25回目の大会で、初めて東京で開催される。期間は11月15日から26日まで12日間。世界70~80カ国・地域から、約6000人の選手と関係者が参加し、21競技が東京体育館、駒沢オリンピック公園総合運動場など19会場で実施される。大会エンブレムのデザインは同大の卒業生、多田伊吹さんが考案した。(鈴木宏子)

「鉄道がもつ物語性を美しく見せたい」 せきごうさん写真展

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「バラ色の路面電車」

6日から土浦

土浦市在住の映像ディレクター兼写真家、せきごうさんの写真展「てつの遠音~ちょっとだけ鉄路のある風景」が6日から9日まで、土浦駅西口前のアルカス土浦1階、土浦市民ギャラリーで開かれる。展示作品は35点。常磐線および県内の各路線のほか、近県のレトロなローカル線なども幅広く撮り歩いている。

荒川線から広がる話題

せきさん=土浦市中央の喫茶蔵にて撮影

作品「バラ色の路面電車」で、せきさんが取り上げたのは都電荒川線。荒川区は40年ほど前からバラを使った緑化運動に取り組んでおり、撮影地の荒川2丁目停車場付近では、線路沿いに整備された花壇にさまざまな種類のバラが咲き誇る。「バラの花にカメラを向けるとその奥に、ゴトンゴトンと音を立てながら都電がゆっくりとフレームに入ってくる。近くで撮ってもいかめしい感じにならないのが都電のいいところ」とせきさん。

近くには1922(大正11)年に開業した日本初の近代下水処理施設の三河島水再生センターと、それに隣接する荒川自然公園があり、見学や散策にも適している。「現在の荒川区は実は荒川に接していない。ここに流れる隅田川の元の名前が荒川で、千住の北側に掘られた運河が荒川と名付けられてから、隅田川と呼ばれるようになった」との豆知識も、電車自体よりも地域の歴史や文化の方に興味が深いせきさんらしい。

過去へとはせる思い

「車両そのものを見せる鉄道写真ではなく、鉄道が持つ物語性を写真で美しく見せたい」との考えで、地元である土浦周辺で撮った作品にもそうした姿勢が見てとれる。例えば「懐かしさへのカーブ」では、常磐線下り電車がまもなく土浦駅へ到達する直前を、満開のサクラと共にとらえた。「小松の高台から緩いカーブを描いて下りてきて、切り通しを抜けて突然風景が広がるとき、はっとすると同時に町へ帰ってきた実感がわく。蒸気機関車の時代はこの坂を単機で登るのが難しく、最後尾に機関車がもう1機付いて押して登り、坂の上で切り離してバックで戻ってきたそうだ。その話を聞いて、ああ、見たかったなあと痛切に思う」

「蓮田(はすだ)と電車基地」では、生産量日本一と言われる土浦の蓮田の夕焼けに染まった雄大な景色と、その奥に連なる電車の窓明かりを捉えながら、いつしか話は被写体を離れ、この車両基地の場所が戦国時代の木田余城の跡地であることや、その本家筋に当たる小田城の末路にまで続いていく。

県内から近県まで網羅

県内は常磐線を筆頭に水戸線、水郡線、鹿島線、竜ケ崎線、常総線、鹿島臨海鉄道、ひたちなか海浜鉄道などひと通りを押さえ、近県では千葉、東京、神奈川まで足を伸ばしている。特に真岡鉄道や銚子電鉄など小さなローカル線に心引かれるそうだ。「流山鉄道も非常に魅力的。窓口では硬券の切符を買って鋏(はさみ)を入れてもらうことができる。すぐ近くをつくばエクスプレスのような最新型の電車が走る一方で、こういう昔のままの鉄道が経営できていることに驚嘆する」

作品の中には前著「平成土浦百景」や「北浦・霞ケ浦百景」で発表したものも含まれている。湖をテーマに撮影していても「もう少し先へ行くと鉄橋があったな」などと、鉄道が風景の一部やランドマークとして写り込む構図を無意識のうちに考えているという。

◆せきごう写真展「てつの遠音~ちょっとだけ鉄路のある風景」は11月6日(木)~9日(日)、土浦市大和町1-1、土浦市民ギャラリー内オープンギャラリー4で開催。開館時間は午前10時~午後6時(最終日は午後4時まで)。入場無料。

若い脳はインプット 年を重ねたらアウトプット《続・気軽にSOS》166

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【コラム・浅井和幸】悲しいことに、20代を超えると身体的な能力は徐々に衰えていくものです。もちろん、何もしないよりも鍛えたほうが脳も衰えにくいし、成長することもあるでしょう。単純な能力では、50代は20代に心身ともに勝てないものです。しかし、単純な使い方でなく総合的な発揮の仕方では勝てる分野もあるかもしれません。

例えば自動車保険では50代の保険料は安くなります。統計的に交通事故を起こす確率が減るからですね。若い世代は総合的に事故回避能力が高いと言えるでしょう。

10代までは様々な経験を積んで(インプットして)、今後の人生に備える必要があります。脳もそのように出来ており、知的好奇心が発揮されやすい造りになっているそうです。単純な記憶力が中高齢層よりも高いものです。音楽を聞きながら英単語を覚える芸当は、若年層の特権かもしれません。

インプットにたけている若年層は心身の成長に有利ですが、成長とはつまり不安定さとも言えます。毎日が新鮮であることは、この先が見えないという不安につながります。それに対し、先達が安心感を与えることが必要になるのでしょう。

中高齢層も、インプットをおろそかにすると老害を招くことになりかねません。新しい情報も柔軟に受け入れていくことが大切です。しかし、この取り入れが苦手となっていく中、今まで学んできたことを再構築してアウトプット、表現することにたけた脳を生かしましょう。

たくさん学習の機会をつくる

「記憶」とか「物忘れ」とかの言葉を使うとき、どのようなイメージを持っているでしょうか。言葉などが出て来ない=記憶力が悪いと表現されますが、それは記憶していないのか、記憶しているけれど思い出せないのか、あまり考えたことがないかもしれません。

中高齢層は、思い出すことを練習することで脳の特性を生かせます。表現する方法も、今までのインプットを組み替えて様々なアウトプットができる練習をするとよいと思います。インプットを増やしたい場合は、たくさん学習の機会をつくってください。

表現を豊かに適切に行うことが、自分や周りの目標達成や幸福にプラスになることは間違いありません。せっかく学習した多くの経験を、いつも単純な繰り返しのアウトプットだけではもったいないです。さらには、自分や周りが苦しくなっていくようなアウトプットは残念なことだと私は思います。今よりもよいコミュニティ・家族・自分になるような、そして豊かに楽しくなるようなアウトプットを試行錯誤していきましょう。(精神保健福祉士)

小美玉市の「ひょうたん美術館」《ふるほんや見聞記》10

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2代目館長の大和田裕人さんご夫妻

【コラム・岡田富朗】茨城県小美玉市にある「ひょうたん美術館」(同市小岩戸、大和田裕人館長)は、30年ほど前、初代館長の大和田三五郎氏によって開館しました。4500坪(約1.5ヘクタール)という広大な敷地には、60年の歳月をかけて全国から蒐集された瓢箪(ひょうたん)にまつわる美術品が展示されています。

展示品は江戸時代などの古い時代のものだけでも約1万点にのぼり、皿、掛け軸、火鉢、花籠、徳利(とっくり)など、生活文化の中に息づく瓢箪の姿を見ることができます。その図柄をあしらった火鉢は100点以上にもおよび、今なおコレクションは増え続けているそうです。

天井からはたくさんの瓢箪の水筒がつるされており、その壮観な光景に思わず見入ってしまいます。

ひょうたん美術館内の展示

世界に広がる瓢箪文化

瓢箪は世界最古の栽培植物のひとつで、原産はアフリカ。世界各地へと広まり、容器や食器、装飾品、楽器など、さまざまな形で人々の暮らしに取り入れられてきました。

展示の中には、アフリカの打楽器「バラフォン」を見ることができます。ハワイのフラダンスで用いられる「イプ」も瓢箪を利用して作られた伝統楽器で、楽器製作用に加工前の瓢箪を求めて来館されるお客様もいるそうです。

館内では、加工用の瓢箪から、ランプシェード、スピーカー、現代作家によるオブジェなど、さまざまに姿を変えた瓢箪の作品も展示・販売されています。

無病息災を願う縁起物

古来、瓢箪は「災いを払う縁起物」として広く親しまれてきました。その理由のひとつが、「六つの瓢箪」で「無病(むびょう)息災」という語呂合わせにあります。戦国時代や江戸時代には、兜(かぶと)や鍔(つば)、根付(ねづけ)などの意匠にも瓢箪の図柄や形が多く用いられ、展示されている兜は印象的でした。

また、歴史上の人物にも瓢箪を愛した人は少なくありません。菅原道真公は大宰府の梅の木の下で瓢酒(ひょうしゅ)を楽しんだと伝わりますし、豊臣秀吉の「千成瓢箪」はあまりにも有名です。水戸の藤田東湖も「瓢や瓢…」の詩を残し、その魅力を詠みました。文人の中にも瓢箪を愛した人がいました。富岡鉄斎が愛用した瓢箪も展示されています。

「ふくべ」とも読まれる瓢箪に、昔も今も、人々は「福」を見出してきたのかもしれません。ひょうたん美術館は、そんな「縁起と美のかたち」に出会える場所です。(ブックセンター・キャンパス店主)

介護ロボットが部屋に来る日《看取り医者は見た!》46

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写真は筆者

【コラム・平野国美】前回(10月1日掲載)は、コンパニオンアニマル(伴侶動物)が高齢の独居者にとってかけがえのない存在になっているという話をしました。では、彼らの次に私たちの部屋に現れるのは何なのでしょうか? この問いは、高齢化社会を日本がどう乗り切るかという、未来そのものへの問いかけでもあります。

街に出れば、飲食店のスタッフもお客も外国の方が増えました。介護の現場も同様です。一方で、スーパーやコンビニではセルフレジ化が進んでいますが、私の患者さんやご家族の中には、これを受け入れられない方が少なくありません。ある程度の年齢になると、スマートフォンやこうした装置に苦手意識が生まれるのは、仕方ないかもしれません。

この「効率化」と「心情」のギャップは、医療介護の分野でより顕著になります。スタッフ不足で事業所の倒産さえささやかれる昨今、その現場にいる私は「自分が介護される側になったとき、部屋を訪れてくれる人はいるのだろうか?」と考えてしまうのです。

以前から、一部の識者は「介護はロボットに任せる時代が来る」と言っていますが、現場の仕事のどの部分をロボットに移行できるというのでしょうか?

ロボットに心を奪われた友人

先日、ある施設で介護ロボットのデモンストレーションを見学する機会がありました。最初は物珍しそうに集まっていた高齢の入居者たちが、10分後には興味を失い、1人また1人と、その場を離れていくのです。そのとき、ロボットと戯れる自分の姿を想像し、正直、見たくないな―と思いました。人間としての尊厳が削られてしまう感覚を覚えたのです。

しかし、最近、この受け止め方を少し揺るがす出来事が二つありました。一つはある業界紙の記事で、これまでとは少し違う角度からロボット介護を論じる内容でした。もう一つは、長年の友人がロボットに心を奪われた「事件」です。彼は、パートワークマガジン『週刊 鉄腕アトムを作ろう!』を長い時間をかけて完成させました。ある日、70歳になる知的な友人が、少年のような目でこう語るのです。

「スイッチを入れたら、アトムが目覚めて、何て言ったと思う?」

「……?」

「『やっと、会えたね』って言われた。もう胸がキュンとしちゃってね。毎晩、アトムと遊んでいるんだよ」

この二つのことを重ね合わせると、欧米とは違う、日本独自のロボット観のようなものが見えてきます。次回は、この業界紙の記事とアトムの言葉をヒントに、私たちの未来を考えてみたいと思います。(訪問診療医師)

予定通りあす11月1日開催 土浦全国花火競技大会

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土浦の花火(土浦市提供)

長靴や滑りくにい靴で観覧を

土浦全国花火競技大会実行委員会(会長・安藤真理子土浦市長)は30日、大会開催の是非を決める役員会を開き、予定通りあす11月1日、第94回大会を開催すると発表した。

あす1日の土浦の天気予報は、未明まで雨が降るが明け方からは晴れ。事務局の市商工観光課は、雷が鳴った場合は一時的に打ち上げを中断するなど、天気の急変や安全確保が困難な場合は予定を変更することもあるとする。

観覧者に向けては、①きょう10月31日夕方から雨が降ると予想され、地面がぬかるんだりする箇所があるので、長靴や防水性の高い靴、滑りにくい靴底のものを着用してほしい、②観覧中のかさの使用は視界確保及び安全確保のためご遠慮いただいているので、雨が予想される場合はレインコートやポンチョを持参してほしいーなどと呼び掛けている。

競技開始は午後5時30分、同市佐野子、学園大橋付近の桜川河川敷で打ち上げる。1925(大正14)年に神龍寺の住職、秋元梅峯が初めて花火大会を開いて100周年の記念大会となる。全国19都府県から57の煙火業者が集まり、内閣総理大臣賞を競う。10号玉の部45作品、創造花火の部22作品、スターマインの部22作品の3部門で競技が行われるほか、広告仕掛け花火や、大会提供のエンディング花火としてワイドスターマイン「土浦花火づくし」などが打ち上げられる。

昨年、荒天時の順延日に警備員が確保できず中止としたことを踏まえ、同実行委は今年、順延日も確実に警備員を確保できるようにするなど準備を進めてきた(5月26日付)。

➡今年の見どころはこちら

プロボスト職を配置 筑波大 学長と役割分担し教育研究を統括

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11月1日付で筑波大学のプロポストに就く加藤光保副学長

加藤光保副学長が11月1日就任

筑波大学は30日、学長と役割を分担し教育研究のマネジメントを統括するプロボスト職を、11月1日付で配置すると発表した。永田恭介学長の指名により、現在、教育担当の加藤光保副学長が11月1日で就任する。

学長が大学経営全般を統括し対外的な活動を行う大学の顔であるのに対し、プロボストは大学内部の教育と研究にかかわる基本方針を企画立案したり、教育目的を達成するために行う管理運営マネジメントを担う。具体的には、教育、研究、学生、産官学連携を担当する4人の副学長がもつ組織を束ねて、副学長と共に、部局の垣根を超えたさまざまな方針の立案を行ったり調整を行い、方針が実現しやすいような体制整備に向けた基本的な工程をつくる。

プロボストはもともと米国の大学に置かれており、学長に次ぐナンバー2として、教育研究すべてに権限と責任をもち、各部局との調整役を担っているという。

日本では、10兆円の大学ファンドを通じた世界最高水準の研究大学を目指す「国際卓越研究大学」に認定された大学は、プロボストを置くこととされている。昨年、卓越大学の第1号に認定された東北大学にプロボストが置かれているほか、第2期の今年度申請している京都大学にはすでに置かれている。筑波大も第2期の卓越大学に申請している8大学の一つ。

加藤副学長は「大学の特徴をさらに生かしながら、よりよい大学にしていくために、スーパーマンのような学長がいらっしゃいますので、学長と相談しながら大学運営を行っていきたい」と抱負を述べ、当面の大学の課題として①筑波大が研究学園都市全体の若手研究者育成の重要な拠点としてさらに発展すること②教養教育を改革して、学生が、全学的なさまざまな学問分野から自らいろいろ組み合わせて学んでいくような、与えられた教育内容をこなすだけでない自らつくっていく学習が出来る大学にしていくことの二つを挙げ、「副学長と一緒にやっていきたい」と話した。

加藤副学長は、東北大学医学部助手、財団法人癌研究会癌研究所研究員を経て、2002年に筑波大学基礎医学系教授になり、21年から教育担当の副学長・理事を務める。(鈴木宏子)

【訂正:11月2日午前8時40分】プロポストは「プロボスト」の誤字でした。「プロボスト」と訂正しました。関係者にお詫びします。

つくばのトリマー 篠崎涼太さん 世界大会で個人3位に

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世界大会に出場した篠崎涼太さんとプードルの愛犬グラミス

日本チームは2位

つくば市学園の森のトリミングサロン「カリフォルニアドッグ」のトリマー 篠崎涼太さん(28)が、9月25日にマレーシアで開催されたFCI(国際畜犬連盟)主催のトリミング世界大会「グルーミングワールドチャンピオンシップ」に日本代表5人のうちの1人として出場し、個人3位を獲得した。国別で日本チームは団体2位に輝いた。

篠崎さんは、日頃の犬の被毛管理状態の良さ、犬の取り扱い方、左右対称のバランスのよさ、頭の毛が美しく伸ばせているかなど、トリミングの完成度などを高く評価されて3位に入賞した。「3位はうれしいけれど、もっと上位を狙っていた。目指すのは1位だった」とし「隣でトリミングを行っていた中国と韓国のトリマーが素早かったため、焦ってしまった」と悔しさをにじませる。

世界大会には日本を始め、中国、台湾、韓国、フィリピン、マレーシア、オーストラリアの7カ国から約35人が出場した。篠崎さんは3月に催されたジャパンケネルクラブ(JKC)主催の全日本トリミング競技大会で優秀技術賞を受賞し日本代表メンバーになった。団体1位は台湾、3位はマレーシアだった。

大会の審査はカットの技法などで5つカテゴリーに分けられる。①ミニチュアシュナウザーなど硬い被毛を抜く技術②アメリカンコッカースパニエルなどに施すスキバサミの技術③プードルに限定した技術④プードル以外のビションフリーゼなどの犬種への技術⑤一般的なペットカット技術の五つ。制限時間は2時間で、トリミング技術の他にも犬の日頃の管理や犬の扱い方、道具の扱い方なども審査対象になる。篠崎さんはプードルに限定したカテゴリーで自身の飼い犬(オス、4歳)と出場した。

世界大会で愛犬にカットを施す篠崎さん(本人提供)

犬の健康にも欠かせない

コンテストでのトリミングは、犬種それぞれに設定された基準のスタイルを目指す。一方で日常のペットのトリミングは、さまざまな状況の犬を取り扱う。飼い主の希望を取り入れながら、例えばその犬の胴が長いなどの欠点をカバーしつつ良いところを目立たせてバランスよく仕上げることが大切だという。

さらにシャンプーで汚れなどを落とし、不要になった毛や伸び過ぎた毛をカットすることで、食べ物や排泄物の付着を防ぎ清潔を保つ役割もある。抜け毛を取り除いて皮膚の蒸れを防ぐ目的もある。

全身をくまなく触り、犬の状態をチェックするのもトリミングには重要だ。飼い主だけでは難しい被毛や皮膚などのケアをトリマーが行うことで、犬の健康状態をより適切に管理していくことができるという。

アルバイトし高校生の時 愛犬を購入

篠崎さんは子どもの頃から犬がずっと好きだった。トリマーになろうと思ったきっかけは、高校生の時にアルバイトで得た自分のお金で買ったヨークシャーテリア犬だった。ヨークシャーテリアはトリミングが必要な犬種で、時々トリミングサロンに連れて行った。篠崎さんは「トリミングはただ見た目をきれいにするだけではない。健康に生きていくためにもトリミングは犬にとって必要不可欠だと実感した」と語る。

動物の専門学校への進学が決まり「技術と知識で安心して任せられるトリマーになりたいと思った」と話す。現在、トリマー歴は8年になった。自宅では、トリマーになるきっかけになったヨークシャーテリアと、プードル2匹を飼っている。

「トリマーとしてうれしいのは、飼い主さんに犬が篠崎さんに会うのを楽しみにしている、カットのもちが違うと言われること」だと笑顔で話す。今後は「さらに信頼してもらえるトリマーになり、日本一、そして世界一を目指す」とし「そのためにも技術を磨く訓練はもちろん、セミナーなどにも積極的に参加し、視野を広げるためにも海外にも勉強しに行きたい」と抱負を語った。(伊藤悦子)

九州大の安達千波矢氏に江崎玲於奈賞 有機LEDを高性能化

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左はつくば賞の高田和典フェロー、中央が江崎玲於奈賞の安達千波矢主幹教授、右は上段がつくば奨励賞のウー・ラダー主任研究員、下段が海老原格准教授

ナノサイエンスやナノテクノロジー、量子化学の分野で、顕著な業績を挙げた研究者を顕彰する2025年度の江崎玲於奈賞に、九州大学工学研究院の安達千波矢主幹教授(62)が選ばれた。茨城県科学技術振興財団(つくば市竹園、江崎玲於奈理事長)が28日発表した。安達氏は、スマートフォンや薄型テレビの表示画面に用いられている有機LEDの研究者で、新しい発光分子をつくり出し、有機LEDの高性能化に取り組んだ。第三世代の有機LEDの実用化に向けた道を開く研究だと評価された。

同賞は2004年度に創設され、いずれもノーベル賞を受賞した江崎理事長のほか、白川英樹氏、野依良治氏、小林誠氏らが審査委員を務める。受賞者には副賞として協賛の関彰商事から1000万円が贈られる。今年ノーベル化学賞を受賞した京都大学の北川進氏は2013年に第10回江崎玲於奈賞を受賞している。江崎賞の受賞者がノーベル賞を受賞したのは初めてで、江崎理事長は「今後も(江崎賞受賞者の中から)ノーベル賞受賞者が出ることを期待している」と語った。

安達主幹教授が研究する有機LED(有機EL)は、有機材料に電気を流した時に発光する現象を利用した表示デバイスで、1987年に米国で、薄い有機材料の膜を二層重ねる構造が考案されて実用化が実現した。一方、発光効率が最大25%であるなどの課題があり、効率を高めるための研究が続けられている。

安達主幹教授は1988年、薄い二層の膜の間に、三層目の膜を入れた構造を初めて実現し、材料選択の自由度を広げた。さらに発光層の分子を量子化学に基づいて分子設計して創製し、90%を超える発光効率を達成した。続いて蛍光材料など三つの材料で発光層を構成すると、ハイパー蛍光と呼ばれる高効率の発光が得られることを示した。

白川氏は「ナノサイエンス、ナノテクノロジー、量子効果を駆使した研究で、省エネ効果が高い」とし、野依氏は「安達さんは旅する科学者。九州大学で学位を取得してから六つの研究施設に移り、移籍するたび新しい着想を手にしたのではないか。若い研究者のロールモデルとなるさっそうとした科学者」だと語った。小林氏は「従来の発光メカニズムとは違う、発光効率を飛躍的に上げることを緻密(ちみつ)な分子設計で実現した。将来の有機LEDの道を切り開くと大いに期待している」と評価した。協賛の関正樹 関彰商事社長は「授賞式でご家族と一緒にお会いできるのを楽しみにしている」などと話した。

一方、顕著な研究成果を収めた県内の研究者に贈る「つくば賞」(副賞は500万円)は、全固体電池の研究開発に取り組む物質・材料研究機構の高田和典フェロー(63)が選ばれた。若手研究者が対象の「つくば奨励賞」(副賞100万円)は、断熱材技術の展開と社会実装に取り組む物質・材料研究機構のウー・ラダー主任研究員(44)と、水中における通信と測位を実現する音響無線技術の研究に取り組む筑波大の海老原格准教授(39)に授与されることが決まった。

つくば賞の高田フェローは、現在使われているリチウムイオン電池が、可燃性の有機溶剤を用いているため大型化によって安全性が低下することから、不燃性の固体電解質を用いる全固体リチウム電池の開発に取り組み、全固体電池のエネルギー密度と出力特性を現行のリチウムイオン電池に匹敵するまでに向上させた。間もなく実用化されようとしている車載用電池の開発や再生可能エネルギーの貯蔵に大きく貢献すると期待されている。

つくば奨励賞のウー主任研究員は、微粒子を利用して粒子間の空間を制御し、ひじょうに低い熱伝導率を有する断熱材の開発に成功した。断熱材は安全で安価なアモルファスシリカ材質の流動性固体で、材料を微細化して粉体を作製し、断熱性を制御し熱伝導率を低減した。使用可能温度が-253℃~1300℃と広範で、従来の断熱材と比べて優れた性能と経済性を兼ね備えた材料であることから、自動車、家電、建築物など多岐にわたる分野での応用が見込まれている。

海老原准教授は、海中でロボットやセンサー、カメラなどをインターネットに接続して通信し、海洋環境をモニタリングしたり、海洋資源を管理したり、災害を予測などする海中IoT実現の基盤技術である水中音響通信を研究する。電波がほとんど伝わらない水中で、電力対策やドップラー対策を確立し、音波を利用した効率的で安定した通信技術の開発に取り組んでいる。(鈴木宏子)