【コラム・冠木新市】つくば駅のバス停留所ベンチから見上げるセンタービルの景色が好きだ。正確にはホテル日航つくばだが、ここにはマリリン・モンロ一が生きている。設計者の磯崎新は、モンロ一の身体をかたどったモンロ一定規を作り、このビルにモンロ一の身体の曲線(モンロ一カ一ブ)を組み込んだ。だからセンタービルは、マリリン・モンロ一の象徴ともいえる。
モンロ一が好きな人は、センタービルが好きだと思う。だが、ここで問題がある。映画の金髪で少しおバカさんのキャラクタ一が好きか?女優モンロ一の生き方が好きか?で分かれると思う。私はどちらも好きなのだが、映画のキャラクタ一が嫌いな人は、センタービルは苦手なのではなかろうか。
今年6月1日、モンロ一は生誕100周年を迎えた。1月に「北条芸者ロマンの唄が聞こえる」を公演したあと、モンロ一のイベントを予定していたが、急きょサンフランシスコ講和条約75周年記念の詩劇コンサート「憎しみは愛によって止む」が飛び込んで来て、企画を延期することにした。
私がモンロ一を評価するのは、演技は別にして、原水爆を嫌悪した女優だからだ。また、同じ役どころしか与えない映画会社に抵抗して、モンロ一プロダクションを作り、独自に映画製作に乗り出したことだ。「モンロ一は戦う芸術家」なのである。
1954年、新婚旅行で来日した際、広島で原爆ドームから原爆記念館、原爆傷害調査委員会を訪れ、何度もため息をついたという。米国が落とした原爆の現実を知り、反対の思いを抱いたと思われる。
M・モンローの「バス停留所」
モンロ一プロダクションの第1作は「バス停留所」(1956)だ。クラブ歌手シェリーが酒場で唄う場面があるが、ヘタクソなのだ。いや、ヘタに唄っているのだ。ヘタクソに唄うことがどれほど難しいことか。モンロ一の演技力に驚かされる。
また、作品中に自分の人生を暗示してもいる。シェリーは同僚に1枚の地図を見せる。そこには赤い一本の線が引かれ、生まれた場所から、ハリウッドまで一直線で結ばれている。シェリーはハリウッドの女優を目指していた。しかし、ラストではその路線を拒否し、牧童の妻になる道を選ぶ。
もう一つ語っておこう。「バス停留所」は、山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズに強く影響を与えている。第1作で、おいちゃん(森川信)が寅さん(渥美清)にげんこつを加える場面が出てくる。これの元ネタと思える場面が「バス停留所」にある。さらに、寅さんと恋仲になるクラブ歌手リリー(浅丘ルリ子)の元ネタは「バス停留所」のシェリーではないのか。
磯崎新と山田洋次は東大同級生
となると、日本的なものは排除して造られたセンタービルには、寅さんの影がほのめく。磯崎新と山田洋次は東大で同級生だった。センタービルのモンロ一と寅さんはオーバーラップしている。
渥美清は浅草六区の小屋出身の芸人。浅草六区の礎を作った根岸浜吉は旧筑波町の小田出身。筑波と浅草は歴史的に縁がある。つくばエクスプレスで浅草と結ばれている。35年近くセンタービル付近を観察していると、つくばは浅草化して庶民的な雰囲気になってきているように感じてならない。
つくば駅バス停留所で待ち合わせしていて、そんな妄想が次々と湧いてきた。これから、「世界のつくばセンタービル物語/マリリン・モンロ一は生きている」(仮)の打ち合わせがある。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)
<映画とお話:つくばセンタービルについて>
・日時:6月27日(土)午後1時〜3時、参加費無料
・場所:つくばカピオ小会議室2
・主催:一般社団法人スマイルアップ推進委員会
・次回作のスタッフ・キャスト募集中

































