生活保護行政をめぐり茨城県福祉部が今年度実施した一般監査で、つくば市に対し、新たに4点の不適切な事務を指摘し、市に改善を求めていたことが情報開示請求で分かった。
つくば市の生活保護行政をめぐっては、誤認定や過支給など不適正な事務処理が2024年度に相次いで明らかになり、市は今年6月、実態調査の結果と再発防止策を記した報告書をまとめたばかり。報告書の調査は十分だったのかが問われる。
県の監査結果は今年8月に市に通知され、市福祉部は9月に改善報告書を県に提出した。市は4点の指摘事項をいずれも認め、県に改善に向けた取り組みを報告している。
問われる再発防止策の実効性
不適切だと指摘を受けた4点のうちの一つは、2024年度に発覚した障害者加算の誤認定の後処理をめぐるもの。県の監査で「自立更生費の検討過程について記録が不十分な事例」があり不適切だなどと指摘された。
市は、誤認定により生じた過支給分の返還を生活保護受給者に求めるにあたり、一部の受給者について、過支給分から「自立更生費」を差し引いた上で返還を求めた。自立更生費とは、受給者が就労や健康回復など日常生活や社会生活上の自立を目指すために必要な費用で、家電の買い替え、資格取得の学費、就労に必要な衣服の購入費、住宅の修繕費などが認められる。
6月の報告書で市福祉部は、誤認定をめぐる再発防止策として「今後の誤認定を防止するため、法令を再確認し、チェックリスト、フローチャートの作成を行い」「法令と根拠資料を突合し、要件の確認を徹底していく」など、自ら再発防止策を掲げていたにもかかわらず、県から指摘を受けた。
県の指摘に対し市は「ケース診断会議で自立更生費の詳細な検討は行っていたものの、記録についての認識不足により検討過程の記録が不十分だった」と県に回答しており、6月の報告書で自らまとめた再発防止策の実効性が問われた形だ。
自立更生費に清涼飲料水121万円
一方、市が誤認定の後処理をするにあたり、具体的に何を自立更生費と認め、返還金から控除したかが、情報公開された資料で一部明らかになった。返還に関する資料に自立更生費として「清涼飲料水代121万750円」「電動自転車12万円」「貸し倉庫利用料10万6244円」などが記されており、生活保護に詳しい関係者によると、通常は認められることが難しい内容だという。
自立更生費として控除したのは最大で過去5年分という。詳細は明らかにされてないが、121万円の清涼飲料水の場合、仮に1本150円と計算すると8071本分、1日当たり4.4本に相当し、5年間にわたって毎日、150円の清涼飲料水を4.4本を飲み続けた額に相当する。この点について市社会福祉課は、医師に病状調査し決定したなどとし、対象者の生活状況や病状によって必要かどうか個別に検討した結果であり、適正だったとする。
不適切な診断料500件超
監査での県の指摘事項はほかに①生活保護受給申請者の親、きょうだい、配偶者などに経済的に援助する力がないかを調査する扶養能力調査が適正に実施されていない事例があった、②受給者の収入の課税調査について、遅くとも8月分の保護費に反映するとされているにもかかわらず、課税調査の完了が9月となっている事例があった、③障害年金の受給を申請する際に必要となる診断書料の支給手順について、本来、市が検診命令を出し、医療機関からの請求を受けて、市が医療機関に支払うべきところ、申請者が医療機関に診断書料を払い、市が申請者に支給していたなど、国の通知に基づかない不適切な診断書料の支給が2019年度から5年間で500件を超過していたことが新たに認められたーなど。
③500件を超える不適切な診断書料の支給について市社会福祉課は「県には以前から運用誤りの報告をしていた」などとして、県に監査結果通知の訂正を求めていたが、県は「見解は変わらない」としている。市によると、不適切な診断書料の支給は550件225万1350円分で、国に返還する必要はないとしている。(鈴木宏子)



































