金曜日, 5月 3, 2024
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筑波大 -検索結果

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マスクを脱いで巣立ちも 筑波大で4260人の卒業式

筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)の卒業式・学位授与式が24日、大学会館で行われ、スーツや袴に身を包んだ生徒らが新たな門出の日を迎えた。22年度の卒業・修了者は4260人。マスクの着用については自由で、一部の生徒らはマスクを外して式に臨んだ。 式典は学群が2回と大学院が1回の3回に分けて実施され、永田学長から各学群の代表者に学位記や卒業証書が手渡された。卒業生と修了生のみが参加し、家族や在校生らは会場の様子をライブ配信で視聴する形となった。式典後の祝賀会は開催せず、謝恩会については大学側が自粛を求めた。 永田学長は式辞で、筑波大が東京高等師範学校の創設から数えて150年を迎えたことや、昨年から文部科学省より指定国立大学法人に指定されていることを述べ、「みなさんがそれぞれに新しい挑戦をすることこそが、本学の価値を世界に発信することであり、みなさんに続く後輩たちの活動の幅を広げていく」と激励した。 人文・文化学群日本語日本文化学類の鎌田真凜さん(22)は「コロナ禍での生活は、これまでの当たり前を覆すことばかりだった。オンラインが中心となり、友人や先生方と顔を合わせることすら難しくなった時期もあるが、同じ思いや悩みを抱えた仲間がいることが何よりも救いになり、変わり続ける状況の中でも学びを止めることなく進み続けてこられた」と述べ、教職員や地域の人々に支えてくれたことへの感謝の意を伝えた。 式典の前後には、卒業生が在校生や家族らと大学会館脇に咲く桜を背景にして写真を撮影し、喜びを分かち合った。人文・文化学群で西洋史を専攻し、卒業後は就職するという河野太一さんは「時の流れが速く感じ、うまく言葉にできない。対面授業からオンライン授業、オンライン授業から対面授業への切り替えに慣れるのが大変だったので感慨深い。卒業後は仕事と趣味を充実させたい」と話した。人間学群心理学類に所属する女性は「大学院に進学するので実感があまりない。臨床心理士の資格を取り、将来は心理の関係で働くことができれば」と将来の希望を話した。(田中めぐみ)

聖地「イチグラ」お披露目 筑波大サッカー場改修完了 

人工芝の全面改修が完了した筑波大学(つくば市天王台)第一サッカー場が16日披露された。披露式典のあいさつに立った永田恭介学長は、「聖地『イチグラ(第一サッカー場のこと)』が新しい形で戻ってきた。(日本代表の)三苫選手や谷口選手をしのぐ選手が出てきてくれることを願っている」と祝辞を述べた。改修事業は今年、前身の師範学校創基から 151 年、大学開学 50 年を迎える同大記念プロジェクトの一環。 同大蹴球部は、1896(明治29)年に設立された高等師範学校フートボール部にはじまる127年の歴史を持つ日本最古のサッカーチーム。ワールドカップカタール大会に出場した三苫薫選手や谷口彰悟選手など、日本を代表する選手を多数輩出してきた。 一方で、開学と同じ1973年につくられた同サッカー場は、2004年に張り替えられた人工芝の劣化が進み、グラウンドの衝撃吸収や安定性が日本サッカー協会による基準値を下回るなど、練習環境としての安全性の低さが指摘されていた。人工芝がはがれた箇所でつまづくなどし、怪我をする部員も出ていた。その中で持ち上がったのが、今回の人工芝の全面的な改修事業だった。同大によると、改修にかかった約7000万円のうち、クラウドファンディングと寄付で4000万円、残りを地元企業などからの支援と大学の資金で賄った。 中山雅史さんら、協力呼び掛け 今回の改修事業への協力の呼び掛けには、現在J3アスルクラロ沼津で監督を務める元日本代表の中山雅史さんら、多数のOB、OGが協力した。学生が中心となりクラウドファンディングも立ち上がった。クラウドファンディングでは、想定していた1000万円を大きく上回る約1800万円が集まった。 蹴球部の小井土正亮監督(44)は「我々の力だけではなく。関係者、OG、OB、地域の皆さん、サッカー部と筑波大を応援してくれる方々のおかげで改修できた。感謝の気持ちを忘れず、ここを使っていきたい」と述べるとともに、「選手には安全な環境でサッカーをさせたかった。高い目標に向かって、仲間と切磋琢磨していってほしい」と語った。 同大女子サッカー部主将の野嶋彩未さん(21)は「新しい芝はボールも蹴りやく走りやすそうだと感じている。インカレ優勝という目標に向かって頑張っていきたい」と力を込めた。 蹴球部主将の山内翔さん(21)は「これまでのグラウンドは硬かったり、はがれた芝がけがに繋がった。芝の感触は柔らかく質もいい。自分たちのやりたいサッカーが思い切りできる。協力していただいた方への感謝を日々の行動で返していきたい」と述べ、「筑波に一つでも多くのタイトルを残したい」と目標を掲げた。(柴田大輔)

入管問題描いた「牛久」を上映 筑波大学生サークル

筑波大学公認団体の学生サークル「クローバー(CLOVER)〜難民と共に歩むユース団体」がこのほど、日本の入国管理問題に焦点を当てたドキュメンタリー映画「牛久」(トーマス・アッシュ監督、2021年)の上映会を開催した。 クローバーは「難民に寄り添う(Care & Love for Refugees=CLOVER)」を掲げ、日本で暮らす外国人が日々希望を持ってもらえるよう活動する団体で、09年に難民問題に興味を持った同大生により設立され、14人が所属している。 現在は週に一度、勉強会を開催し、所属するメンバーがドイツと日本の難民受け入れ制度の比較や難民が描くアートの紹介、外国人が日本で永住権を取得することなど関心のあるテーマを持ち寄っている。さらに世界や日本で暮らす難民・移民についての情報をメンバー間で共有し、その様子をSNSで発信している。また、諸外国と比べ、非常に低い日本の難民認定率や日本の入国管理制度が持つ問題の認知拡大に取り組んでいる。 同団体代表で社会国際学群国際総合学類2年の菅原瑠莉さん(20)は高校生の時に、自由や尊厳を奪われている人々、特に紛争地域や貧困地域で保護を必要としている人々を手助けする活動に興味を持った。大学に進学し、クローバーと出会ったことで「入管」の存在を初めて知り、困難な人々に寄り添うという理念にひかれ支援の輪に加わった。代表に就任してからは、日本の入国管理制度の概要やその問題点を議論する中で得た勉強会の知識を生かし、竹園高校ボランティア部と交流会を開催するなど、学生に向けた活動に力を入れている。 映画「牛久」は、不法滞在者として国外退去を命じられ、牛久市にある東日本入国管理センターに収容されている難民申請者らに、トーマス・アッシュ監督が面会し、証言を記録したドキュメンタリーだ。 菅原さんは上映イベントを開催した経緯について「私たちと同じ学生に対し、日本の不条理な一面を知り、疑問や問題意識をまずは持ってもらえればと思い開催した」とし、「入管問題は、国家による不当な差別の問題、日本の政策の歴史に基づく根深い問題である。日本に生き、意思決定を行う権利を持つ私たち国民は、日本の現状を知り、強い問題意識に基づいて行動する必要があると思う。この問題の解決に何が求められているのか、学び、考えながら活動していきたい」と話した。 上映イベントは2月中旬に開催され、筑波大生9人と竹園高校生2人が参加した。竹園高校1年の女子生徒(16)は映画鑑賞後、「うまく言葉にできない」と話し、「ニュースで報道されることの少ない日本の入管問題の現状について、イベントで学んだ知識を家族や友人と共有したい」とした。 同校1年生の女子生徒(16)は「怒りなのか、悲しみなのか気持ちの整理がつかない」とし、「牛久入管に収容されている方たちへの理解を深め、いつか面会に行けたら」と話した。 同団体は学生の立場から、母国の事情により保護を求めて日本に来る難民がいること、その難民らは日本の入国管理制度により心身ともに苦しめられていることを SNSやイベントを通して学生らに訴え、難民や日本の入国管理制度に対して問題意識を持ってもらえるよう活動したいとしている。 “CLOVER〜難民と共に歩むユース団体〜”は公式ホームページやTwitter、インスタグラムで活動の様子やイベント情報を随時発信している。(上田侑子)

「ゲノムドック」を民間と共用へ 筑波大

血液から全ゲノム(遺伝情報)を解析し個人が病気になるリスクなどの情報を提供している筑波大学附属病院つくば予防医学研究センター(つくば市天久保、鈴木英雄センター部長)は16日、解析したゲノムを民間機関と共用し、より多くの被験者にゲノムの解析結果を届ける計画を発表した。 これにより、より多くの人に病気になるリスクを伝えるとともに、集めた遺伝情報を蓄積し、国内医療の発展に寄与したい構えだ。産学連携を進める同大の取り組みの一環。同センターでは2021年から、個人のゲノム情報を用いて現在の健康状態や、将来かかる病気のリスクを知るための「ゲノムドック」を始めている。 同センターが、筑波大発ベンチャーのアイラック(iLAC)=つくば市春日、佐藤孝明代表=、医療法人みなとみらい(横浜市、田中俊一理事長)と、3者で取り組む。みなとみらいが運営する銀座クリニックの会員が対象となる。 内容は、同クリニックで希望者から血液を採取し、アイラックが血液からゲノム情報を解析する。その際、遺伝性の病気やがんなどの発症リスク、病気に対する効果的な薬を同社で分析し、同センターが解析結果に意味付けをしてレポートを作成。専門家の判断の下、クリニックで被験者に結果を報告する。 被験者がどの遺伝情報を知らされるかは、専門家との事前のやり取りの上で決められる。解析されたゲノム情報は、被験者の同意を得た場合に限り、同大附属病院が管理するデータベースに登録される。 同附属病院の西山博之副病院長は、16日の会見で「2021年から2年間(ゲノムドックという)最先端の医療を開発してきた。まずこれを全国の人にも届けたい」とし、民間医療機関との提携は、そのための体制づくりだと説明する。 銀座クリニックの会員を対象とした今回の計画では「5年間で1000件」を目標に全ゲノム解析を進めたいとし、将来的にはこのノウハウを他の関連機関に提供することも考えているとした。またこの研究を通じて「日本人特有のゲノムとは何か、筑波大でそれが分かるかもしれない」と今後に期待を込めた。 対象者は20歳以上の希望者で、がんや心臓疾患のリスクなど約200の遺伝子解析結果と、それに基づく生活習慣の見直しや具体的な検診の提案を受けることができる。費用は非公表。 筑波大附属病院によるゲノムドックは従来通り、同センターにて受け付けている。費用は57万2000円。(柴田大輔)

筑波大学開学50周年イヤー 室伏広治さん開幕告げる

筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)の開学50周年イヤーが4日、金メダリストの講演で幕を開けた。記念事業シンポジウム「芸術×体育で未来を拓く」が同日、つくば国際会議場(同市竹園)で開催され、これを皮きりに10月1日の記念式典まで各種イベントが展開される。 シンポジウムで講演したのは、2004年アテネオリンピックのハンマー投げで金メダルの室伏広治さん(48)。日本記録保持者で日本選手権20連覇を遂げ、16年に引退、2年前からスポーツ庁長官に就任した。4日は「スポーツで未来を創る」のテーマで基調講演を行った。 室伏長官指揮下の同庁が昨年まとめた第3期スポーツ基本計画(2022-26年度)では、少子高齢化や地域間格差の広がりの中で、学校教育を中心にしたスポーツ振興からの脱却を意図した。性別や年齢、障害、経済事情などの違いによって、取り組みに差が生じない社会を実現し、機運を醸成するとしている。「健康増進の意味からも自治体や企業へ横展開していく地域の取り組みが重要になり、つくばでぜひ率先してほしい」とアピールした。 父親(重信さん)にはハンマー投げに進むこと、練習に励むことを一度も強制されたことがないと言い、それが充実した競技生活につながった。アスリートには幅広いスポーツ体験を積むこと、指導者には勝利至上主義からの転換を求めるなどした。 筑波大学は、国内初の官立高等教育機関として1872(明治5)年、創立された師範学校を礎としており、今年、創基151年となり開学50周年と合わせて記念事業を展開する。1872年は学制公布の年であることに触れた室伏さんは「当時、夏目漱石は日本の哲学は周囲にあるもの全て動かすべからず、心の修養を積んだ挙げ句の消極の極みに達する哲理と書いている。動的な西洋のスポーツ観とは違った見方があった」と紹介、未来を創るヒントがこの辺にありそうだと説いた。 講演を熱心に聴いていた体育学群4年、岸本洋汰さん(23)は英国プレミアリーグで今季大活躍の三苫薫さんの後輩にあたるサッカー部員。「競技生活を送る上での体づくりについて体験的に話してくれて、特に心の問題に触れてくれたことに感慨を覚えた。2年生のとき心理的問題を抱えた経験があるだけに聞き入ってしまった」と感激を語る。 筑波大には開学した73年に体育専門学群が、翌74年に芸術専門学群が設置され、教室のある学群棟は向かい合って配置されているが、「これまで積極的な交流はあまりなかった」と今回のシンポジウムを企画した水野裕史芸術系助教。「学際、国際化が言われる中で、いろんな組み合わせが試されるべきで、50周年記念のスタートにふさわしい内容になったと思う」という。 記念事業は4月から、つくばセンター周辺で「筑波芸術アート&デザイン・ストリート」の開催などが計画されている。(相澤冬樹)

公認競技場の存在意義 筑波大陸上競技場(下)

筑波大学陸上競技場(つくば市天王台)が日本陸連の公認を必要とする理由は何か。同大陸上競技部前副主将の伊藤海斗さん、同じく学年代表の池田涼香さんは、同競技場で開催される競技会が、同大陸上競技部の活動に大きく関わるだけでなく、地域の競技者にとっても、主要大会への出場資格となる公認記録を得るための貴重な機会となっていると話す。 競技会は地域貢献にも 陸上競技で、県大会や全国大会などの主要な大会に出場するには、多くの場合、参加標準記録の突破が条件になる。必要な公認記録を取ることができるのは、公認の競技場で開催されるなど一定の条件で開催された競技会に限られる。 同大陸上競技場では年十数回の競技会を開催している。このうち筑波大学競技会は、コロナ前は県内外から毎回5000人ほど、年間にしてのべ約3万人の参加者があった。 主に外部の中高生や一般競技者が記録を取得するための競技会で、同大陸上競技部が運営している。陸上競技の各種目をフルで行う場合、公認審判員や計測員、記録員などの大会係員がのべ200人ほど必要だ。これらの人的資源を学生の協力で賄えるのが大学競技会の利点であり、学生が自力で通える大学の競技場だからこそ可能になる。 強豪校に不可欠な環境 もう一つ、筑波大学記録突破会がある。学生が自分たちで記録を出すための、学内向けの競技会だ。陸上競技部の目標とするインカレ総合優勝を達成するには、その第一歩となる公認記録の取得が欠かせない。このため学内の競技場が公認を失うことは、陸上競技部にとって大きな痛手となる。 他大学など外部の競技会へ遠征するとなると、参加費や交通費などの個人負担がかさむほか、移動時間が長くなり、選手のコンディションにも影響する。学内であれば良い条件の日を選んで開催でき、より良い記録が出しやすい。 こうした状況はいずこも同じで、陸上競技が強い大学の多くが自ら公認競技場を持ち、競技会を開いている。公認競技場を持たない大学でも、市や県の公認競技場と連携することで同様の体制を築いている。 例えば第3種公認の龍ケ崎市陸上競技場は、ネーミングライツにより流通経済大龍ケ崎フィールドと呼称し、同大陸上競技部が競技会を開催している。今年度は陸上競技会を8回(うち2回は学内向け)、長距離・投てき競技会を2回予定し、参加者は陸上競技会で平均200人、多いときは500人を超えることもあるという。 市との連携望む声も 筑波大学陸上競技場では、ほかに小・中・高校生向けの陸上教室や、パラ陸上教室、指導者研究会なども開催されている。 つくば市内の陸上競技大会の多くも以前はここで開かれていた。だが今は筑波大離れが進んでいる。 同市小学校陸上記録会は、もともと公認競技場を使う必要のない大会でもあり、働き方改革に伴う教員の負担軽減のため、2019年度からは各学園で開かれている。市中学校陸上競技大会は、今年度は第3種公認の石岡市運動公園陸上競技場で開催された。つくば陸上競技選手権大会は、コロナ禍を理由に昨年度と今年度は中止されている。つくばマラソンは、昨年も筑波大学陸上競技場を発着地点として開催されたが、これはコース自体が日本陸連の公認を得ており、競技場自体の公認の有無は関係ない。 現在、つくば市では新たな陸上競技場の建設計画が進められている。同市の人口規模からしてもあって然るべき施設だが、「あえて交通の不便な上郷高校跡に、高いコストをかけて造るのは無駄が多い」「市と大学の連携により、筑波大学陸上競技場の受け入れ能力を最大限活用し、さらなる地域利用を図るのが最適解ではないか」という市民の意見もある。(池田充雄) 終わり ◆公認の陸上競技場を持つ関東圏の主な大学は以下の通り第3種:筑波大、順天堂大、日本体育大、国際武道大、中央大、法政大、国士館大、東海大第4種:日本女子体育大、東京学芸大、日本大、一橋大、東京大、帝京大、東京女子体育大、立教大、早稲田大、大東文化大、慶應大※第3種と第4種の主な違いは、トラックが全天候舗装に限られるか、土質でも可か。

公認更新へ危機脱する 筑波大陸上競技場(上)

募金に加え工事絞り込み 予算不足で4月から、日本陸上競技連盟(日本陸連)第3種公認の更新を受けられるか否か危ぶまれていた筑波大学陸上競技場(つくば市天王台)が、公認更新に必要な工事を実施できる見通しとなった。昨年11月5日から急ぎ募金活動を開始、12月12日までに約1370万円が集まり、これに大学の予算を加え、さらに改修項目を絞り込むことで危機を脱した。 レーン幅の修正必須 陸上競技場の公認制度は、日本陸連が競技規則に従い、公認競技会を開催するために適切な施設であることを認定するもの。第1種から第4種L(ライト)までの5種別があり、いずれも有効期間は5年間で、更新の際は再検定が必要となる。 筑波大の場合、第3種公認の有効期限が今年3月31日に迫っており、しかも今回の更新では、レーン(走路)幅の修正を含む大がかりな改修工事が必要となっていた。 従来、陸上競技のレーン幅は国内規格の1.25メートルと国際規格の1.22メートルが競技場ごとに混在していた。2019年度から国際基準への統一が図られ、旧レーン幅の競技場は次回の公認更新までに修正することになった。該当する競技場は全国で256ある。 2カ年に分けて工費分散 同大教育推進部教育推進課体育センター主幹の菊池文武さんによると、体育センターでは、今回の改修が厳しいものになると予想し、補修個所を必要最小限にとどめる一方、工事を2期に分けることで予算の分散化を図った。 2021年度の工事内容はトラック部分が中心で、レーン幅の修正とそれに伴うラインやマークの打ち直し、高圧洗浄などを行った。路面の傷みが激しいスタートライン付近などは、舗装を切りはがし、クッション材やエンボス材を再度吹き付ける「切削オーバーレイ」という工法により修復した。 22年度はフィールド部分で各種目のレーン幅修正と、踏み切り地点などの切削オーバーレイをする予定。加えてトラック部分の追加工事もある。8レーン中最内の第1レーンは、特に酷使され摩耗が著しく、切削オーバーレイが必要となった。ほかにも跳躍場の砂の補充や、インフィールドからはみ出した芝の刈り込みなど、こまごまとした補修も多い。これらは日本陸連の事前審査で指摘された部分だ。 物価高が大きなハードル 21年度の工事費約2860万円は大学の予算で賄うことができた。今年度分については、昨今の物価高、円安による資材費や物流費などの高騰、光熱費の高騰などに対応した学内全体の予算編成を行っていることを踏まえて、調整を行っているという。 不足分は寄付に頼るしかないと、昨年11月5日からメールやSNSなどを通じて寄付を募り始めた。当初は11月末だった期限を12月12日まで延長、陸上競技部の部員らも一部を負担することで、何とか学外からも寄付を募ることができた。なお寄付は現在も受け付けており、追加予算が取れれば、今回は断念した部分の修復に充てていくという。 支援金で予算不足を補う 予算不足には同大固有の事情もある。今年10月、開学から50年になり、多くの施設が一斉に改修時期を迎えている。他の施設・設備の老朽改善なども順次進めている。 総合大学として多様な施設・設備を有し、しかも国立大学では数少ない体育専門学群があるため体育施設は特に多く、一部施設に大きく予算を割くことは難しい。インカレなどの大舞台でしのぎを削る有力私大と比べると、収入や財源で差があり、同窓会の規模や年齢層の厚みも違うため、寄付金の額も大きく異なる。 そのような事情の中、いち早く活用してきたのがクラウドファンディングだ。陸上競技部の長距離パートでは、箱根駅伝復活プロジェクトの一環として2016年から取り組み、得られた支援金で強化費や遠征費などを捻出し、2020年の本戦出場を果たした。今年度は蹴球部が第1サッカー場の改修で約1820万円を集め、老朽化した人工芝の張り替えを実現できた。 大学としても今後、産学連携による企業からの資金導入や、文科省が創設した10兆円規模の大学ファンドの活用などにより、収入の改善を図るという。(池田充雄) 続く ◆筑波大学陸上競技場の改修寄付申し込みフォームはこちら

共通テスト志願者は6457人 不正防止強化、コロナ対策継続の筑波大会場

本格的な受験シーズンの幕開けとなる、大学入学共通テストが14日、全国で始まった。試験は15日までの2日間で、初日に地理歴史・公民、国語、外国語、2日目は数学と理科が実施される。会場となる筑波大学(つくば市天王台)では、昨年とほぼ同数の6457人が受験を予定していた。全国の志願者数は、前年度比で3.4%減の51万2581人と年々減少が続く中で、県内では昨年とほぼ横ばいの1万2923人となっている。 「普段の実力を」 午前8時、気温5度を下回る曇り空のもと、コートやジャンパーに身を包む受験生たちが、試験会場となる筑波大学に集まり始めた。 会場前でバスを降りた藤代高校3年の池田航大さんは「これまでにやるべきことはやってきた。本番ではその成果を出せるように、しっかり臨みたい」と気持ちを引き締め、土浦市から来た鈴木康太さんは「昨夜はしっかり寝て、朝ごはんも食べてきた。今日は楽しみたい」と意気込みを語った。龍ケ崎から娘を会場に送り届けた加藤将司さんは「親の方が緊張しています。コロナなど心配はありましたが、普段の実力を出せるよう背中を押してあげられれば」と思いを語った。 新型コロナの感染により、13日には一日の発表としては最も多い16人が亡くなるなど、県内でも拡大傾向が続いて、会場にも警戒感が漂った。受験生にはマスクの着用、手・指の消毒のほか、休憩時間や入退場時に他の受験生との接触や会話を極力避けること、昼食は自席で黙食をすることが求められた。また、会場では隣との座席間隔が空けられ換気が徹底された。 主催の大学入試センターは、試験当日に発熱や咳など体調不良がある場合、無理をせずに28、29日に、茨城大学水戸キャンパス(水戸市文京)で行われる追試験を受験するよう、呼びかけている。 昨年、高知県内の試験会場でスマホ使用の不正が発覚したのを踏まえ、試験開始前のチェックも入念に行われた。携帯電話やスマートフォン、スマートウオッチ等のウエアラブル端末の電源が切られているかの確認のため、机に並べるよう試験官が受験生に求めた。不正が発覚した際に受験中止と退出が指示されること、場合によっては警察へ被害届が出されることが伝えられた。 都内の試験会場周辺で昨年、受験生を狙った障害事件が起きたことから、各地で試験会場周辺の警備が強化されていると報道されたものの、同市内では「試験会場周辺をパトロールするなど通常警戒の範囲に留めている」(つくば署)という。 使用機器に不具合、再テスト実施 筑波大学広報局によると、この日、午後5時10分から開始された英語リスニングで、使用されるICプレーヤーのうち一台に不具合が出たため、該当する受験生1人が、試験終了後に同会場にて再テストを行った。他の受験生に関しては、定刻で終了したとしている。(柴田大輔)

筑波大でアトリエ見学やアート体験を 10日「キッズツアー」 3年ぶり対面で

スタジオ'Sが参加者募集 子どもたちがさまざまなアートを体験する「キッズアートツアー」が10日、筑波大学で開催される。つくば市二の宮のアートスペース、スタジオ'Sが筑波大と連携し運営する「スタジオ'S with T」の企画だ。今回は同大芸術系学生の案内で子どもたちが大学のアトリエ施設を見学したり、ワークショップを体験する。コロナ禍、2020年から22年夏までは展覧会形式での開催となっていた。対面での開催は3年ぶりとなる。 今回のテーマは「日本画」だ。同大の芸術系日本画領域と協働する。会場となるのは同大芸術系アート&デザイン実習室で、アトリエ見学ができる。見学コースの一つ、大石膏(せっこう)室は巨大なダビデの石膏像などがあり、同大の象徴的施設の一つだ。その後、日本画ワークショップが行われる。絵の具を和紙にしみ込ませて模様を付け、クリスマスランタンを作る。 キッズアートツアーはこれまで同市二の宮にあるスタジオ'Sで開かれてきた。今回は場所を移し筑波大学での開催となる。スタジオ'Sは「今回は2016年から行ってきた企画のリニューアルとして筑波大学でやることになった。今後も継続して筑波大学で行っていくかは分からないが、一つの試み」と話す。 スタジオ'Sは関彰商事が「地域とともに『文化』を作り上げていく」との運営方針で、1989年に開設した。2016年5月からは県文化振興計画にのっとった人材の育成、文化の担い手の育成、次世代を担う子どもの育成、文化に関する教育の充実を目指した活動を行ってきた。「キッズアートツアー」は2016年から筑波大学との協働で始まった。 ◆キッズアートツアーは10日(土)①午後1時~2時30分と②午後3時~4時30分の2回、筑波大学体芸術エリア(筑波キャンパス南地区)で開催。対象は小学生(1家族1人まで保護者の同伴可)。参加費500円(材料費及びイベント保険料など)。定員は各回15人。参加申し込みはスタジオ'Sのホームぺージ、問い合わせは電話029-860-5151(関彰商事総務部)またはEメールstudio@sekisho.co.jp。

W杯応援に1000人 筑波大でパブリックビューイング

つくば市天久保の筑波大学サッカー場で27日、カタール・ワールドカップ(W杯)のパブリックビューイング(PV)が催され、コスタリカ代表と対戦した日本代表に声援を送った。日本は終盤の失点から0-1敗れ、1次リーグ突破は次のスペイン戦に持ち越された。 PVは筑波大学蹴球部と大学公認学生団体の「ワールドフットつくば」が主催した。事前申し込みで無料招待された地域住民と大学生の合わせて約1000人が試合を見守った。 三苫選手ら先輩に声援送る 筑波大は、代表メンバーの三苫薫(2019年度卒)と谷口彰悟(2013年度卒)両選手の母校。PV会場の第1サッカー場は、2人が学生時代に練習で汗を流した場所となる。 企画した山内健太朗さんは「サッカーによって生まれるつながりを大事にしたい。最近はコロナ禍で活動が限定されていたが、この機会を生かし、市民も巻き込んで、たくさんの人たちにサッカーの魅力を伝えたい」と意図を話す。大学との折衝では開催の意義は理解してもらえたが、感染対策などクリアすべきハードルは高かったという。放映権の購入費用にも大学OBなど大勢の人に協力を仰いだ。 蹴球部副務の林田伊吹さんは、第1サッカー場改修に向けて実施したクラウドファンディングの代表も務めている。「イベントを通じてつくばの街を盛り上げ、大学生や子どもたちが来てくれて一緒にサッカーを見ることにより、蹴球部がより大きく人の心を動かせる存在になりたい」と話す。改修は来年2月に完成予定、「改修前に有意義なイベントができた。新しい人工芝になったグラウンドに興味を持って、足を運んでくれる子どもたちも増えるのではないか」と期待している。 試合は、前半立ち上がりから日本が数多くチャンスを作り、その度に観客席からは拍手やどよめきが沸き起こった。だがコスタリカが守備を固めてくると日本の攻撃は鈍り始める。日本は後半16分に三苫選手を投入するなど攻撃のテコ入れを図る。だが後半36分、クリアミスのボールを奪ったコスタリカが先制し、そのまま逃げ切った。 観戦者の一人、津島陸人さん(牛久市・中根小5年)は「悔しい。クリアをもっとしっかりやればよかった。三苫選手はドリブルがすごかった」と振り返った。 三苫選手を学生時代から応援しているという藤浪莉子さん(つくば市)らのグループは「大舞台で活躍するところが見られて嬉しい。スペイン戦でも頑張ってもらって決勝トーナメントに進出してほしい」と話す。三苫選手の印象は「当時からずば抜けて上手で、すごく優しく、いつもチビっ子に囲まれていた」という。 「友達に教えてもらって来た」という大学生の岡田航平さん(千葉県八千代市)は「惜しい展開だったが決めきれなくて悔しい」との感想。スタンプラリーで谷口選手のサイン入りスパイクをもらい「まさか当たるとは思わなかった。家に飾りたい」と話した。(池田充雄)

染色家の協力で洋服アップサイクルに挑む 古着好きの筑波大1年生

たんすに眠っているTシャツなどの洋服を集めて、地元の染色家が地元産の農産物で染め、新しい服に生まれ変わらせて販売する洋服のアップサイクルを、つくばで実現しようと筑波大生が奔走している。筑波大学総合学域群第一類1年、大本裕陶さん(18)は、昨年NEWSつくばに掲載された記事をきっかけに、染織に興味を持ち、自分らしいイベントを開催しようと奔走する。 アップサイクルは、本来は捨てられるはずだったものに新たな価値を与えて使う取り組みをいう。「リユース(再使用)とリサイクル(再利用)のちょうど中間のような概念。リユースはもう一度使うこと。リサイクルは一度、細かく分解してから使うこと。アップサイクルは、ものを分解せず、そのままの形を活かしてさらに価値を加えることを指す」と大本さん。 古着と出会う 進学した千葉県の県立高校時代に古着と出会い、魅力に取りつかれた。「よく東京に行って、好きなアーティストが開いている古着の店に通った。映画に出てくる服とかも見て回った」2022年に筑波大学に入ってから、今ある仕組みやシステムにただ参加するのではなくて、自分で新しいことがしたいという気持ちを強く感じた。そこで自分が好きな古着で何かできないかと思うようになった。 現在の洋服の生産・流通・販売の仕組みは環境に大きな負荷をかけてしまっているとの問題意識からだ。大量の服がごみとして捨てられている問題などを知って、環境に負荷をかけずにファッションを楽しめる仕組みをどうにかしてつくれないか、もどかしさを抱えていた。 染織のことはよく知らなかったが、NEWSつくばの連載を読み、身近なつくばや土浦にも染織家がいることを知った。2021年10月27日~30日に4回連載の「染織人を訪ねて」は、つくばにゆかりのある染織家を追った記事だったた。 大本さんはアップサイクルの協力を依頼するため、土浦市板谷の染織工房「futashiba248(フタシバ)」(21年10月29日付)を訪れた。草木染を行う工房で、剪定された木枝や規格外で市場に出ない野菜・果物などを県内各地の農家から提供してもらい、農業廃棄物から取り出した染料を用いる草木染を特徴にしている。 「絶対断られるだろうな」と思いながら、自転車で1時間かけて染織工房に行った。「反応は予想外のもので、自分の話をとてもよく聞いてくれて、協力してくださることになった」 顔の見える関係 来年春、つくば市内で集めたTシャツなど衣服約30着を染めて売り出すイベントを開催する予定だ。資金はクラウドファンディングで集め、10月末までに12万円に達した。販売会場などの詳細は検討中だ。「今、友達に呼びかけて服を集めている。つくばで集めて、つくばで染めて、つくばで売る。自分が住んでいるこのつくばで完結することも大事なことだと思う」と話す。 大本さんにとって、顔の見える関係の中でアップサイクルを行うことが重要だという。「元々の洋服の持ち主、それを染めて加工する染色家、染め上げた洋服を販売する人、その人たちがアップサイクルを通じてつながるきっかけをつくりたい」という。「友人のなかには古着を汚いと思い、避けている人もいるけれど、アップサイクルには好印象を持っていたりする。アップサイクルに興味を持ってもらうことで、捨てられてしまう衣服が減ることになる」大本さんの目標は洋服のアップサイクルを普及させること。まずは染織によるアップサイクルの形を模索するが、染色以外の手法もこれから考えていく。「まだ大学に入学したばかりの18歳で、なにか実績があるわけでもない。いろいろな方の手助けをいただくことができたらうれしい」と話した。(山口和紀)

11/23 筑波大学ホームゲーム「TSUKUBA LIVE!」

バレーボール男子、筑波大学 vs 東京学芸大学を開催する。 「スポーツを中心に会場が一つになる瞬間」を形づくることで、来場者を中心に地域のつながりを醸成・強化する試み。

筑波大学そばの「こおひいはうすらんぷ」 《ご飯は世界を救う》52

【コラム・川浪せつ子】1978年の創業から、今年で44年になるお店「こおひいはうすらんぷ」さん(つくば市天久保)は、広大な敷地が広がる筑波大学の横にあります。以前から知ってはいましたが、なかなか行けなかったカフェです。 実はバブル経済のころ、らんぷさんから2分くらいの所にある不動産屋さんから、毎週のように、建築物の完成予想図を描く仕事をもらっていました。ですが、男の子3人を保育所に預けながらの子育て中の私は、喫茶店などで外食をする時間もありませんでした。横目で見て通り過ぎていました。 ほかの社からの仕事の依頼も多く、あまりの忙しさで、当時の子育ての思い出は記憶から吹っ飛んでいます。またバブル時代が過ぎたころには。実母のがんがわかり、都内の実家まで通わなくてはならなくなりました。 「おいしい」は、人を幸せにする やっと最近、「あぁ~、あのカフェに行きたい」と。そのらんぷさんは、店内のインテリアとスィーツも想像以上でした。 あまりにうれしくて、うれしくて、すぐにまた訪問して、今度はランチ。何気ないミックスサンドなのですが、とてもおいしい。こんなに長いことやっていてくださって、ありがとうございます。 30数年間の、いろんなシンドかったことが、消えていくようなお味。「おいしい」は、人を幸せにするのね。(イラストレーター)

筑波大学そばの「こおひいはうすらんぷ」 《ご飯は世界を救う》52

【コラム・川浪せつ子】1978年の創業から、今年で44年になるお店「こおひいはうすらんぷ」さん(つくば市天久保)は、広大な敷地が広がる筑波大学の横にあります。以前から知ってはいましたが、なかなか行けなかったカフェです。 実はバブル経済のころ、らんぷさんから2分くらいの所にある不動産屋さんから、毎週のように、建築物の完成予想図を描く仕事をもらっていました。ですが、男の子3人を保育所に預けながらの子育て中の私は、喫茶店などで外食をする時間もありませんでした。横目で見て通り過ぎていました。 ほかの社からの仕事の依頼も多く、あまりの忙しさで、当時の子育ての思い出は記憶から吹っ飛んでいます。またバブル時代が過ぎたころには。実母のがんがわかり、都内の実家まで通わなくてはならなくなりました。 「おいしい」は、人を幸せにする やっと最近、「あぁ~、あのカフェに行きたい」と。そのらんぷさんは、店内のインテリアとスィーツも想像以上でした。 あまりにうれしくて、うれしくて、すぐにまた訪問して、今度はランチ。何気ないミックスサンドなのですが、とてもおいしい。こんなに長いことやっていてくださって、ありがとうございます。 30数年間の、いろんなシンドかったことが、消えていくようなお味。「おいしい」は、人を幸せにするのね。(イラストレーター)

200億円の大学債を発行へ 筑波大

筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)は大学債権(大学債)を19日に発行すると発表した。発行額は200億円で、愛称は「筑波大学社会的価値創造債」。国立大学法人としては東京大学、大阪大学に次ぐ3例目となる。 自由度高い資金調達 国立大学法人による大学債は発行条件が厳しかったが、2020年6月の国立大学法人施行令の改正によって緩和された。改正前は、償還(返済)の見込みが十分に立った上で、附属病院の整備やキャンパスの移転などの目的でしか発行できなかった。改正後は発行条件の規制緩和がなされ、教育研究事業のための積極的な債権の発行が可能になった。大学としては、自由度が高い資金調達を行うことができるようになったといえる。 大学債は国立大学法人の新たな資金調達先として、すでに東京大学が一番手として、20年10月に200億円、21年12月には100億円、合計で300億円の発行を行っている。東大は大学債によって、10年間で1000億円の資金調達を目指すとしている。続いて今年4月には大阪大学が300億円の大学債を発行した。 地球環境や社会の課題解決に 3例目となる筑波大学は、調達する資金の使途について「本学が社会とともに新たな社会的価値に根ざした未来社会を創造するために取り組むプロジェクトに充当する」としている。地球環境や社会的課題の解決に使途を限定するもので、こうした債権はサステナビリティボンドと呼ばれる。サステナビリティボンドとしては国内で大阪大学に続く2例目となる。 永田学長は「大学債の発行は資金調達という意味から重要。さらに重要なのは大学債は筑波大学と社会とのエンゲージメント(誓約)の構築の方法であるということだ」とする。 資金の具体的な用途として同大は、大規模研究施設「未来社会デザイン棟(仮称)」、複合スポーツ施設「スポーツ・コンプレックス・フォー・トゥモロー(SPORT COMPLEX FOR TOMORROW、仮称)」をあげている。「未来社会デザイン棟」についてはすでに基本設計業務が発注予定となっている。 償還は新たな投資の収益など 現在、同大の主な財源は運営費交付金、学生納付金、附属病院収入、寄付金等の外部資金がある。同大の21年度の事業報告書によれば、経常費用が約1023億円、経常収益が約1060億円と約44億円の黒字の状況だ。さらに同大の21年度の統合報告書によると、運営費交付金による収益は近年はほぼ横ばい、附属病院の収益および外部資金による収益は増加している状況だ。 大学債を償還するための財源としては、新たな投資対象事業の収益や業務上の余裕金等を充当するとしている。 「いきなりの決定」 一方、同大の大学債発行に対し、同大教職員などでつくる「筑波大学の学長選考を考える会」の吉原ゆかり教授(人文社会学系)は「大学債の発行をどこでどのように決めたのか、教職員にも学生にも明らかにしない、いきなりの決定だ。指定国立大学指定のプロセスと同様のパターンだと思う」と指摘している。(山口和紀) ◆同大の大学債の利率は年1.619%。償還年限は最大で40年。償還日は2062年3月17日。主幹事証券会社は事務主幹事として野村證券(東京都中央区日本橋)、共同主幹事が大和証券(東京都千代田区丸の内)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券(東京都千代田区大手町)の2社。募集の受託会社は三井住友銀行(東京都千代田区丸の内)が務める。格付け投資情報センター(東京都千代田区神田錦)および日本格付研究所(東京都中央区銀座)による同大の格付けは、それぞれAA+、AAAとなっている。

40代男性助教を懲戒処分 給与や交通費を架空請求 筑波大

筑波大学は21日、2014年度から19年度までの6年間の間に、給与や交通費の架空請求をしたなどしたとして、40代の男性助教を同日付けで懲戒解雇処分にしたと発表した。 男性助教は、自身の研究室に所属する5人の学生を、勤務実態がないにも関わらず業務を実施したかのように装い、大学から給与を支払わせ、全額を学生から自身に戻させたとされる。 さらに学生を連れた複数の出張で、自家用車で移動したにも関わらず、公共交通機関を利用したと虚偽の申請を行い、実際よりも過大な旅費を大学に支払わせたなどとされる。 不正に支出された教育研究費は6年間で計約124万1457円になり、すでに大学に返金されているという。 2020年6月、大学のコンプライアンス通報窓口に通報があり発覚した。 大学広報局は、男性助教の架空請求の動機については回答できないとし、警察への被害届については状況に応じて対応するとしている。 再発防止策として同大は、短期の非常勤職員の採用予定者にコンプライアンス教育の受講を必須とするほか、採用する場合、労働条件などの説明を事務担当者が行い、さらに勤務の事実の確認を、現場確認や電話連絡で行うなどとしている。 永田恭介学長は「大学教員としてあるまじき行為。学生を巻き込み、虚偽の説明を行い、資金を支払わせ還流させた行為は教育機関の教員として許しがたいものであり、極めて遺憾。学生、保護者、関係者の皆様の信頼を損なうことになり、深くお詫びし、真摯に重く受け止め全学を挙げて再発防止に取り組むと共に教育研究費の不正使用に対して厳正に対処します」などとするコメントを発表した。

筑波大 バス停ベンチリニューアルへ 創基151年・開学50周年記念事業

筑波大学(つくば市天王台)構内の合宿所前バス停ベンチがリニューアルされ、12日、永田恭介学長らが参加して除幕式が催された。同大は来年、創基151年、開学50年を迎えることから、記念事業の一つ「フューチャーシップ・シート・プロジェクト」としてリニューアルが実施されている。 同大は1872(明治5)年に設立された東京師範学校(のちの東京教育大学)が起源で、前身の東京教育大がつくばに移転する形で1973年に開学した。同プロジェクトは創基151年にちなみ、企業などから1口151万円の寄付を受け、学内のベンチや教室のイスなどをリニューアルする。 「筑波大学の中にあるイスを通じて、学生を応援して下さる皆様と学生たちを繋げるためのプロジェクト」と同大。寄附をした企業は、会社名と学生に向けたメッセージを刻印したプレートをベンチやイスに取り付けることができる。 第一弾として昨年12月から、学内にあるバス停17カ所のベンチ59脚をリニューアルするための寄付の受け付けが始まった。現在までに16社から申し込みがあったという。今回ベンチに設置されたプレートは同大芸術学群の学生がデザインした。 12日の除幕式には同プロジェクトに寄付をした関彰商事から関正樹社長、岡本俊一常務、筑波大から永田恭介学長のほか金保安則副学長が出席した。  今回ベンチがリニューアルされた合宿所バス停近くには、関彰商事が2016年に人工芝敷設工事費用を寄付した「セキショウフィールド」があり、アメフトなどの練習・試合、授業で使用されている。除幕式のあいさつに立った同社社長の関社長はこうした経緯を踏まえて、プレートに「健全なる次世代のために」というメッセージを刻んだことを伝えるとともに「今後も筑波大と良い関係を築き、保って、世界で活躍できるような会社にしていきたい」と語った。 第2弾として、大学会館ホールや教室のイスも寄付を募りリニューアルしていく。寄付金はさらに、世界トップレベルの研究や国際交流推進とグローバル人材育成の支援に充てられる。(柴田大輔)

アルコール検知器に効果なし!? 筑波大 トラック運転者事故調べ

アルコール検知器を用いた酒気帯び確認に飲酒運転を防ぐ効果はなかった-とする研究論文が発表され、注目されている。筑波大学の市川政雄教授(医学医療系)らの研究グループは「事業用トラック運転者における呼気アルコール検査の義務化の飲酒運転事故への影響」を調べ、8月の日本疫学会誌に掲載された。 アルコール検知器による運転者の酒気帯び確認は2011年5月、旅客(バス、タクシー)・貨物(トラック)自動車運送業を対象に義務化された。1995年から2020年までに全国で発生したトラック運転者による交通事故のデータを調べると、2011年時点で飲酒運転事故の割合は0.19%になっていた。しかし、その後の10年間はずっと0.2%前後で推移し(グラフの黒丸)、アルコール検知器による酒気帯び確認の効果はなかったと推察できたという。 研究グループは、警察庁の交通事故データを管理する公益財団法人交通事故総合分析センターから入手したデータを分析した。バス・タクシー運転者では飲酒運転事故の割合そのものが低く、統計的な分析ができないため、今回はトラック運転者が起こした交通事故について調べた。 事業用トラックと自家用トラックの運転者それぞれについて、各年の飲酒運転事故の割合を計算し、その年次推移を分析した。事業用トラック運転者には酒気帯び確認が義務付けられており、自家用トラック運転者にはその義務がない。 統計的手法で年変化率を割り出すと、事業用トラックでは 2001年から12年までで13.5%減、自家用トラックでは2001年から11年までで14.9%減だった。2000年代初頭に行われた飲酒運転に対する厳罰化には大きな効果があった。 しかし、その後は減少傾向が続かず、事業用・自家用トラックとも、飲酒運転事故の割合は、いずれも大きく増減することなく推移していた。アルコール検知器による酒気帯び確認に効果があれば、事業用トラック運転者による飲酒運転事故の割合は下がるはずだが、下降は見られず、自家用トラック運転者との比較でも明確な差は認められなかった。 適用拡大にも合理的根拠なし 今年4月からは道交法の施行規則改正で、運送事業者以外のいわゆる「白ナンバー」の使用事業者の一部にもアルコールチェックが義務化され、10月からはアルコール検知器による酒気帯び確認が行われる予定だった。対象になった土浦市内の教育関係事業者は「アルコール検知器が品薄で延期になったと聞いた。機器自体はそう高いものではなく作業の負担が大して増すわけではない。統計的にあまり効果がないと言われても法律ならば従うしかない。事業者としては飲酒運転はなくしたいだけ」という。 市川教授は「アルコール検知器による酒気帯び確認はもとより、その適用拡大に合理的根拠はなさそう。交通政策の立案者には合理的根拠(エビデンス)に基づく政策の重要性について理解を深めてもらいたいと思う」としている。 飲酒運転を防ぐには別の対策を講じる必要があると市川教授。飲酒運転違反者に対して、呼気中に⼀定濃度のアルコールを検知するとエンジンがかからないアルコールインターロック装置の装備を義務付けている海外の例などをあげた。乗務の前後だけでなく、運転開始のたびに酒気帯び確認を行うことが有効であると報告されているという。(相澤冬樹)

歴史ある名門サッカーチームに危機 筑波大蹴球部が支援呼び掛け

グラウンド老朽化し劣化 126年の歴史を持つ日本最古の名門サッカーチーム、筑波大学(つくば市天王台)蹴球部が、危機に立たされている。筑波大学サッカー場が老朽化して劣化が進み、2020年11月に性能テストを実施した結果、グラウンドの衝撃吸収や安定性などさまざまな点で日本サッカー協会が定める基準値を下回り、練習環境としての安全性が低いと判断された。 はがれた箇所が原因でけがをする部員も出ているという。このままでは、来年以降使用が予定されている公式戦でも、ホームグラウンドでの試合が開催できない状況にある。 改善には、前回の改修から11年が経つ人工芝の全面張り替えが必要だ。その費用は最低で8000万円。同大によると、改修費用は大学の資金と寄付を合算してねん出する予定だが、さらに不足する1000万円をクラウドファンディングから募るとしている。資金が不足する背景には、国から大学に交付される運営交付金の減額などもあるという。 目標を上回る寄付が寄せられた場合、改修工事のグレードアップ、スタンドの改修、クラブハウス、トレーニングルームの充実など環境・施設の整備に充てる。 また人が集まる場所に 同大蹴球部の始まりは、1896年に設立された高等師範学校フートボール部にさかのぼる。これまでの歴史の中で、日本サッカー界の歴史をつくる多数の選手を輩出してきた。日本サッカー協会現会長の田嶋幸三さん、1998年にW杯日本代表初ゴールを決めた中山雅史さん、今年3月のオーストラリア戦でW杯出場を決める2ゴールを叩き込んだ日本代表の三笘薫選手などだ。そんな筑波大は2023年につくばに開学し50周年を迎える。 クラウドファンディングのプロジェクト実行責任者である蹴球部の小井土正亮監督(44)は、今回の改修について「コロナが流行する前まで、グラウンドに地域の子どもたちが集まり、試合やフェスティバルを開催していた。開学50周年記念事業として、地域を盛り上げるようなスポーツ事業をサッカー場で計画している。人工芝の張り替えをきっかけに、またここに人が集まるような場所にしていきたい」と思いを語る。 地域に愛されるチームづくり 小井土監督が話す地域とのつながりとして、約40年前から続く地元の子どもたちとの交流がある。現在201人在籍する男子蹴球部員ほぼ全員が、つくば市を中心とした13の小学生サッカーチームにコーチとして配属され、毎週末指導にあたっている。また、筑波大サッカー場に小学生を招待しての「低学年フェスティバル」や「合同練習会」、地域の小中学生を対象にしたゴールキーパー専門の「つくばGKスクール」、女子サッカー部員による、つくば市内の小学生女子を対象にした「なでしこクラス」など多様な交流の場が設けられている。 小井土監督は「私たちの先輩たちが築いた、地域に根ざし愛されるクラブという伝統をこれからも維持したい」と語る。さらに「筑波大蹴球部は日本サッカー界の歴史をつくってきた場所。ここで育った選手が、日本だけでなく世界でサッカーの歴史をつくっていくことになると考えている。そのために学生が良い経験を積むことができるよう手助けしていきたい」という。 今回、蹴球部員の橋本寛人さん(21)と林田息吹さん(20)がクラウドファンディングのリーダーを務める。橋本さんは「来年開学50年を迎える中で、芝生の張り替えが、筑波のホームグラウンドとしての新たな活動のきっかけになれば」とし、「コロナ禍で、グラウンドで選手の活躍を見てもらうことができないことがとても歯がゆかった。今後コロナが落ち着いて、これまで以上の活動をしていきたい。子どもたちを始め、多くの地域の方にホームゲームを見にグラウンドに来ていただきたい」と語る。 林田さんは、先輩部員を間近で支えるトップチームのマネージャーや地域活動を経験し、「社会人になっても、サッカーの価値をより多くの人に伝えるための活動を続けていきたい」と言葉に熱を込める。(柴田大輔) ◆クラウドファンディングは7月29日(金)23時まで。

筑波大出身の代表監督 U-23アジア杯3位を報告

19日までウズベキスタンで開かれたサッカーのU-23「アジアカップ2022」(アジアサッカー連盟=AFC=主催)に出場していた21歳以下日本代表を率いた大岩剛監督(50)が27日、つくば市二の宮の関彰商事(関正樹社長)つくばオフィスを訪れ、3位入賞を報告した。大岩監督は同社スポーツアドバイザーを務めている。 次はパリ五輪予選 大会には16カ国が参加。23歳以下のチームが闘う大会で日本代表は、2024年に開催されるパリオリンピックを念頭に、21歳以下のチームで臨み、3位決定戦でオーストラリアに快勝した。日本代表は3位となったことで、パリ五輪予選となる次回大会で、グループリーグを分ける際に有利となる「ポット1」の獲得が確実となった。 大岩監督は大会を振り返り、「優勝を目指していたし、そのチャンスがあっただけに悔しいが、(オリンピック最終予選に向けて)最低限の結果を持ち帰ることができた」とした上で、「他国は23歳以下。その中で(21歳以下で)闘うことはタフだった。この結果は評価できると思う」と話した。オリンピック予選に向けた今後の強化ポイントについては、「アジアでは通用してもヨーロッパや世界で通じないことはある。全体的に個人の能力をあげていかなければ」とした。 静岡県出身の大岩監督は、1991年に入学した筑波大学で蹴球部主将を務めた。その後、名古屋グランパス、ジュビロ磐田でプレーし、2003年から鹿島アントラーズに移籍し、鹿島のリーグ三連覇に貢献するなど中心選手として活躍した。2011年に選手を引退後はアントラーズでコーチ、監督を歴任し、2021年4月U-21日本代表監督に就いた。関彰商事のスポーツアドバイザーには2020年就任し、同社のスポーツ支援活動や運動部活動などをサポートしている。 学生時代を過ごしたつくば市に対して「学生として暮らしていた街。愛着がある」と話す大岩監督。筑波大のOBが監督を務めるチームとして、U-21日本代表に「つくばや茨城のみなさんに関心を持ってもらい、応援していただけたらとてもうれしい」と語った。(柴田大輔)

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