土曜日, 4月 20, 2024
ホーム検索

筑波大学 -検索結果

If you're not happy with the results, please do another search.

市民参加の文化財保護へアプリ開発 つくば平沢遺跡で3Dスキャン実証実験

スマホで遺跡を多方向からスキャンして3次元データを集め、市民参加の文化財保護に組み立てるという実証実験が26日、つくば市平沢の平沢官衙(かんが)遺跡で行われた。同市のSociety(ソサエティー)5.0社会実装トライアル支援事業の採択案件の一つで、筑波大学が遺跡管理を行うアプリ開発を目指して取り組んできた成果を五十嵐立青市長、森田充教育長らと市民一般に公開した。 実験は3Dスキャンアプリを使って遺跡のモニタリングをするトライアル。奈良・平安時代の筑波郡の役所跡で、国の史跡に指定されている平沢遺跡に復元された高床式倉庫など3棟の建物が対象になった。 スマホからミリ波レーザーを照射し、対象に当たって跳ね返ってくる時間をとらえ、スキャンデータを取得、撮影画像と合わせて3次元イメージに加工する。今回は、建築に使われている市販のアプリを使い、専門業者による詳細な計測データを集約することで、遺跡の最新状態を把握した。 参加者は、対象物を一筆書きでなぞるようにスキャニングする手順の説明を受け、貸与されたアプリ内蔵のスマホで思い思いのポジションで撮影に取り組んだ。平面の土地から高床式倉庫を見上げるように撮影しても、柱が垂直に並んで立ち上がる様子が立体的にとらえられた。 筑波大学芸術系の黒田乃生教授によれば、こうして多方面からスキャンされたデータを集積していくと、VR(バーチャルリアリティー)の形で多くが共有できる。文化財の保存状態の確認や新たな発見による書き変えが継続してできるという。 市民向けの公開に帯同した研究室メンバーは「遺跡の見方が『見物』から『観察』に切り替わり、楽しみ方も変わってくることで参加意欲も湧いてくるようだ」と手応えを語る。 五十嵐市長は「文化財をどう維持管理するかはコストも労力も大変だ。その作業に市民が参加する意義は大きい。市民の意識も変わってくるなら、どうかアプリ開発を加速させてほしい」と感想を述べた。 同市による今年度の支援事業はこれで一旦終了する。筑波大学側はこの先、アプリ開発を継続して進めるための実施主体と資金調達に見通しのついたものではないとしている。(相澤冬樹)

エッセンシャルワーカー向けPCR検査所 県がつくばに開設

濃厚接触者の早期職場復帰へ 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、濃厚接触者となったエッセンシャルワーカー(社会機能維持者)を対象とした県の無料PCR検査所がつくば市山木、つくばウェルネスパーク駐車場内に開設され、2月1日からドライブスルー方式による検査が実施されている。 自宅待機5日目以降で無症状の医療従事者、保育園や幼稚園職員、警察官、消防士や救急隊員、高齢者や障害者施設の職員などが対象。検査で陰性が確認されれば、早くてその日から安心して職場復帰できる。開設はつくば市1カ所のみで、県内全市町村のエッセンシャルワーカーが対象になる。 筑波大の水素燃料電池バスが出動 抗原検査キットが手に入らなかったりPCR検査が受けられないなど、検査体制のひっ迫が続いていることから、県の要請を受けて、現場で精密なPCR検査ができる筑波大学の水素燃料電池バスが出動し、臨時の検査所が開設された。 現在は1日3時間受け付け、1日最大240人分の検査ができる。2月末まで開設し、平日に検査を受け付ける。検査体制のひっ迫が続けば、3月以降も延長される予定だという。 前日までにインターネットで予約することが必要。会場では、自家用車の車内でだ液を採取し、担当職員に検体を手渡せば、5分程度で終了となる。検体は、会場に駐車してある水素燃料電池バスの車内で1検体ずつ検査され、40分から1時間後に本人のメールに結果が通知される。一般の検査センターでPCR検査を実施する場合に比べ、半日ほど早く本人に結果が届くという。 筑波大によると、2月1日からこれまで、1日平均100人程度、最大で1日169人が検査を実施した。濃厚接触者の場合、自宅待機5日目では1割程度が陽性になるとされるが、筑波大の検査でも169人中11%が陽性だったという。陽性の場合はさらに6日間、自宅待機が必要となる。 16日は午前11時に検査がスタートし、事前予約していたエッセンシャルワーカーの車が次々にやってきて、検体を手渡す姿が見られた。 同大医学医療系感染内科学の鈴木広道教授は「医療従事者などエッセンシャルワーカーの早期職場復帰や、施設内でのクラスター発生防止に協力できれば」などと話している。(鈴木宏子)

つくば生まれのHAL 病院導入にはずみ 4月からの診療報酬改定で

装着型ロボットスーツ開発のサイバーダイン(つくば市学園南、山海嘉之社長)の主力製品である「医療用HAL下肢タイプ」が4月から、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなどの難病で入院する患者への治療に用いられた場合、診療報酬として出来高評価で加算できることになった。診療報酬の増点もあり、病院がHALを導入しやすくなる条件が整った。 9日開催の中央社会保険医療協議会 (中医協)総会で、2022年度診療報酬改定の答申書が承認された。この中で医療用HALによる入院患者への治療については、DPC包括評価の対象外項目(出来高算定項目)に追加された。 DPCは急性期入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度で、1日当たりの定額(包括)の医療費で計算をする方式。投薬、注射、検査などが包括されている対象項目は別々には算定できない。今回の改定案で医療用HALは、包括評価から出来高算定項目に切り替わり、外来患者同様、診療報酬算定ができるようになった。 同時に診療報酬点数の基本点数が900点から1100点に増点され、難病加算や導入加算を加えると4月以降、1回あたりの出来高評価は4000点となる。サイバーダイン社によれば、診療報酬は1回4万円となり、HALを装着して入院中に週2回月9回、各1時間程度の歩行機能改善を行った場合、36万円が出来高分に算入できるという。 難病入院の患者に治療機会 中医協の答申を踏まえ、厚生労働省は3月までに診療報酬の算定方法の改正に関わる告示・通知を発出する見込み。DPC対象病院は難病指定病院の約8割を占める。これまでHALを使った治療を実施しても、診療報酬として加算されなかったDPC対象病院には導入への大きな動機付けになる。 同社の宇賀伸二CFO(最高財務責任者)は「DPC対象は現在全国に約2000病院あるが、導入先は現行60病院にとどまる。これを当面200病院に拡大して、難病患者の治療機会の確保に努めたい」としている。 HALは筑波大学ベンチャーによって開発された装着型サイボーグ。脳から出る生体電位信号を利用して、身体機能を改善・補助・拡張・再生することができる。下肢などの機能回復を促す医療用のほか、作業支援用、介護支援用がある。 HAL医療用下肢タイプは、筋萎縮性側索硬化症や脊髄性筋萎縮症(SMA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)など8つの緩徐進行性の神経・筋疾患を対象に、2015年11月に新医療機器として薬事承認され、医薬品医療機器法(薬機法)に基づき、5年間にわたり有効性や安全性の確認を目的とした使用成績調査が実施されてきた。その結果、他に有効な治療方法が確立していない緩徐進行性の患者に対して、既承認薬も含め前例のない顕著な機能改善効果が確認された。さらに安全な治療法であることを証明する「医療技術評価提案書」が日本神経治療学会から提出され、今回の改定案答申に至った。(相澤冬樹)

カエル像36体の物語 つくばテクノパーク桜 住民ら絵本づくり

つくば市桜のまちづくり団体、テクノパーク桜まちづくりを考える会(水谷浩子代表)がこのほど、地区内のあちこちに36体あるカエルの石像を主人公に、絵本『36ぴきのかえるちゃん』(A4判、20ページ)を制作、発行した。同会の古場容史子(よしこ)さんが朗読を担当し、YouTubeでも読み聞かせ動画を配信している。 36体のカエルの石像が会議をし、音楽のあるまちづくりをしていく物語。代表の水谷さんを中心に会員らが考え、筑波大学卒業生の高橋理恵子さんが絵本のイラストを描いた。 テクノパーク桜は1997年に、土地区画整理事業により完成した。筑波大学の東に隣接し、商業施設や住宅、研究施設が立ち並ぶ。同会は2009年に地域の良好な環境を守り、まちの活性と交流を目指すことを理念として発足。桜まつりや街角音楽会などさまざまなイベントを実施してきた。 地区内には事業の完了時点で、さまざまなポーズの36体のカエル像が設置されていた。腕を組んだり、ほおづえをついたり、一体一体ポーズが異なる。 代表の水谷さんは1998年からテクノパーク桜に住んでいる。当時はカエル像を気に留めていなかったが、ある時、数を数えたら36体あることが分かり、また1体ずつポーズが違っていることから興味を持ち始めたという。絵本の制作について「コロナ禍で会の活動がなかなかできなかったので、カエルの本を作ってお店に置いてもらったら街のことを知ってもらえるのではないかと思った」そう。 当時、石像を製作したのは桜川市に住む岩瀬照夫さん(72)だ。岩瀬さんは「ずいぶん前のことで記憶があいまいだが、注文を受けて制作した。カエルのデザインについては一任されていた」と話す。両国国技館(東京・墨田区)前に設置する四つに組んだ力士の像を手掛け、その制作のすぐ後にテクノパーク桜のカエル制作を始めたため、力士の姿をしたカエル像を思いついたという。 同会ではカエル像を皆に知ってもらい、地域の宝にしたいと、2019年に「カエルまっぷ」を制作した。一体ずつポーズの異なる像を「まねきカエル」「かたつむりカエル」「まんぷくカエル」などと名付けた。相撲のまわしを付けてポーズをとるカエル像は「はっけよいカエル」と名付けて、イラストを付けて36体をマップで紹介した。イラストは絵本と同じ高橋さんが描いた。 36体のカエル像をモチーフにした、マップに続く第2弾の取り組みとなる。カエル像は歩道に車が入ってこないようにする車止めの役割を果たしているものもあるが、36体作られた理由や配置については謎のまま残された。 「テクノパーク桜は新しい街なので伝統がないけれど、ここで育つ子どもたちが絵本を見てふるさとを思い出せるよう、ふるさとへの愛着を持てるようにしたい。テクノパーク桜にあるお店の人たちにも愛着を持ってもらいたい」と水谷さん。 絵本は500冊制作し、地区内の商店に置いてもらうほか、保育園などの施設にも配布するという。 動画の朗読を担当した古場さんは「絵本を見ることで、こんなカエルがあるんだよとみなさんに知ってもらいたい。春になって暖かくなったらみんなでカエルを巡り散歩して、楽しみながら興味を持ってもらえたら。とにかくカエルちゃんのしぐさがいい。カエルは他の場所にはない貴重な存在」と話している。(田中めぐみ) YouTube『36ぴきのかえるちゃん』読み聞かせはこちら

追悼、里内龍史さん 障害者の権利獲得目指し闘い続けた

障害者の当事者団体「茨城青い芝の会」会長の里内龍史さん(土浦市神立)が9日、亡くなった。66歳だった。障害者の権利獲得を目指して闘い続けた。脳性まひがあり、車いすで市民運動の闘いの現場に出掛け、文字入力音声読み上げ装置を使って発言した。昨年6月には「茨城青い芝の会」60周年記念誌(21年7月29日付)を発行したばかりだった。 滋賀県の浄土真宗の寺に生まれた。1980年、かすみがうら市の閑居山(かんきょざん)にあった障害者のコロニー「マハラバ村」に移り住んだ。滋賀の共同作業所で働いていた頃、同僚から「作業所で働いて善人ぶってもしょうがない。現代の親鸞のような面白い人が茨城にいる。浄土真宗だから、その人のところへ行って、親鸞の悪人正機の思想を学べ」と言われたのがきっかけだった。 マハラバ村は64年、閑居山の麓にあった願成寺(がんじょうじ)住職の大仏空(おさらぎあきら)=故人=がつくった。後にマハラバ村を出た障害者が全国各地で「青い芝の会」を結成し、70年代に先鋭的な社会運動を起こした。マハラバ村自体は長続きせず、ほとんどの障害者が数年で村を出た。残る人が少なくなった状況の中、里内さんはマハラバ村に移住し、最後の大仏門下生となった。 その後、大仏住職は死去し、84年12月、里内さんは村を出て、土浦市神立で自立生活を始めた。 「きれいな目をしている大人」 1人暮らしをする里内さんを長年、介助し、支えた土浦市の天海(てんかい)国男さん(79)は、大仏住職と知り合い、マハラバ村に行くようになり、里内さんと出会った。「ある日、和尚に呼ばれてマハラバ村に行った。車いすの若い男の人に声を掛けられて、政治のこととか何か議論するようなことを言われた。大仏和尚にそのことを話すと『あれは滋賀県のお寺の坊主だ』と言われた。それが里内さんとの最初」と話す。 天海さんは「里内君と初めて会ったとき、子どものようにきれいな目をしている大人だと思った。そこから付き合いが始まった」と当時を振り返った。 里内さんは生前、天海さんとの出会いについて「閑居山に来る人の中に天海(てんかい)さんがいた。大仏和尚が亡くなる1カ月前に天海さんを閑居山の手伝いに呼んだ。大仏和尚は自分の死期を悟って天海さんに閑居山に残した私を託したかった」と茨城青い芝の60周年記念誌に書いている。 天海さんは「(マハラバ村を出た後)どうしているかと気に掛かり、里内君の家を訪れるようになった。当時は介助という制度があったわけではなかったが『介護をやってくれ』ということになり、やるようになった」と話す。 「塩辛を食べること」が掟 記者が筑波大学に在籍していた2021年年3月、里内さんのお宅に伺い、話を聞く機会があった。ちょうど「青い芝の会」をテーマに卒業論文を書いたこともあり、当時アルバイトをしていた介助事業所の関係者がつないでくれた。 里内さんは、マハラバ村での暮らしのこと、茨城青い芝の会の活動のことを、文字入力装置に打ち込み、伝えてくれた。「大仏和尚は塩辛が好きで、塩辛を食べることが村の掟(おきて)だった。掟を破ると村から追い出された」という話が記者の印象に残った。当時のことをなつかしそうに話す里内さんの姿から、最後の大仏門下生の生き様の一旦が、少しだけ分かった気がした。 87年には、脳性まひ者の折本昭子さん=故人=と大仏住職らが創設した「茨城青い芝の会」の会長に就任し、JR土浦駅のスロープ闘争、障害者だけの国立大学として設置が構想された筑波技術短期大学設置反対闘争、知的障害者に対する暴行事件である水戸パッケージ事件の糾弾闘争など、障害者の権利獲得のための闘いを続けた。 近年は、地元、土浦市のバリアフリーのまちづくりにも尽力した。バリアフリー新法が策定され、住民提案制度が創設されたのを機に2007年、里内さんは、市民団体「バリアフリー新法にもとづく基本構想の策定を実現させる会」の一員として全国で初めて、土浦駅周辺のバリアフリー化などを求める基本構想策定を土浦市に住民提案し、市が実施する道路や施設の整備にあたっては、障害がある当事者が計画策定に関わるという仕組みづくりを実現させた。 当時、里内さんと共に市に住民提案した市民団体「アクセス・ジャパン」(東京都板橋区)代表の今福義明さん(63)=当時はDPI日本会議常任委員=は「里内さんは基本構想策定のときに一緒に取り組んだ仲間。里内さんが当時からおっしゃっていた、神立駅近くの危険な踏切問題はまだ解決していない」とし「昨年以降、コロナでお会いすることもなかったが、NEWSつくばで茨城青い芝の会60周年の記念誌が発行されたのを知り、シェアした。訃報を知り、本当にショック」だと話した。(山口和紀)

コロナ急拡大、感染対策プラス警備も強化 大学共通テスト始まる

大学入学共通テストが15日、始まった。茨城県内では、7つの大学が会場となり、昨年とほぼ同数の1万2864人が志願した。2日間で6450人が受験予定の筑波大学(つくば市天王台)では午前8時ごろから、受験生が続々と集まり始めた。新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染が急速に広がる中、本格的な大学入試シーズンが幕を開けた。 「自分の力を出し切りたい」 試験会場の入り口付近では、冬晴れの空の下で学生服にコートを羽織り、ギリギリまで参考書に目を通す受験生も見られた。入室時間を待つ筑西市出身の高校3年生、高橋悠希さんは「人が集まるのでコロナ感染が心配ですが、ここまでしっかり勉強してきました。自分の力を出し切りたいです」と緊張の面持ちで、言葉に力を込めた。 笠間市在住の山本義則さんは、試験にのぞむ娘さんを大学構内の駐車場まで送り届けた。スマホを向けて記念の写真を撮ると、肩に手をやり「がんばれ」と声をかけ、会場へ向かう後ろ姿をいつまでも見送った。 初日のこの日は地理歴史、公民、国語、英語(リーディング・リスニング)、ドイツ語・フランス語・中国語・韓国語の外国語(筆記)の各試験があった。16日は午前9時30分から理科1・2、数学1・2の試験が開始される。 感染対策として試験室では、合間に出入り口や窓を開けるなどの換気がなされた上で、空調のほかに扇風機とサーキュレーターが設置された。受験生はマスク着用の上で手の消毒をし、健康管理として、試験2週間前からその日の体温と体調を書き込む「健康観察記録」の提出が求められた。 当日、発熱・咳等の症状など体調不良がある受験生に対して、試験実施機関である大学入試センターは、無理をせず、必要な手続きをした上での追試験受験を勧めている。茨城県での追試験は、今月29、30の両日に筑波大学第3試験場で行われる予定だ。 東京での事件を受け警備強化 共通テスト初日の朝、東京大学(東京都文京区)の近くの路上で、受験生ら3人が刺された事件を受け、末松文部科学相は、全国の会場で警備態勢を強化する方針を明らかにした。つくば警察署では、通常よりも巡回警備にあたる車両台数を増やし大学周辺の警備体制を強化、明日も同様の体制を継続するとNEWSつくばの取材に回答した。(柴田大輔)

コロナ禍にかみしめる成人式 つくば・土浦で2年ぶり開催

つくば市、土浦市で9日、成人式が開かれた。昨年は新型コロナウィルス感染拡大防止のため中止となり、両市共に開催は2年ぶり。今年は感染拡大防止対策として、つくば市は式典を9日、10日の2日間に分け、それぞれ午前・午後の2部制とし、計4回の各式典への参加者数を絞っての開催となった。入場に際しては、17日に発表された知事からの要請に基づき、ワクチン2回接種済証、もしくは陰性確認の検査済証の提示が義務付けられた。 「君が生きていたなら…」歌詞の一節贈る つくば 式典開始30分前、会場のつくばカピオ前には晴れ着に身を包む数百人の新成人が集まっていた。大穂出身の飯島直人さん(19)は、「成人式が近づく中で、コロナ感染が急激に拡大し、開催できるか不安だった。無事開催できて安心した。久しぶりの友人達との再会がとても嬉しかった」と喜びを表現した。 会場脇のスペースには、筑波大学が昨年開発した、PCR検査ができる国内初の災害医療用水素燃料電池バスが、検査を受ける新成人に応対した。車両開発を担った筑波大学、鈴木広道教授が現場に立ち合い、「今春ごろに予定していた最初の社会実装を繰り上げての実装機会となった」と話す。 式典には、市内の出身中学校を3~5校ずつに分け、参加者を各回500人程度に制限した。参加者は入場時に氏名、住所、電話番号とその日の体温などをあらかじめ記入した入場券を提出し、ワクチン2回接種済証か、陰性確認の検査済証を提示し入場した。 式では新成人代表の高橋創さんが、コロナ禍を振り返りつつ「大人としての責任と社会の一員としての自覚をもち、これからの人生を歩んでいきたい」と今後への誓いの言葉を述べた。五十嵐立青市長は、厳しい状況で成人を祝えた喜びを伝えると共に、重い病や障害など、さまざまな理由でこの場に立ち会えない若者がいることに触れながら、「君が生きていたならそれでいい」という、「命に嫌われている」(作詞:カンザキイオリ)の一節を新成人におくった。 式の最後にはアトラクションとして、つくば市を拠点に活動する男女のボーカルユニット「森と林」がオリジナル曲を3曲熱唱し、新成人の背中を押した。(柴田大輔) 「ピンチをチャンスに変える力持っている」土浦 土浦市は9日、同市東真鍋町、クラフトシビックホール土浦(市民会館)で式典を催した。出身中学校を3~5校ずつ2グループに分け、午前・午後の2部制とし、振り袖やスーツ姿の新成人が合わせて921人出席した。 今年はコロナ対策として会場の敷地境界に規制線を設け、市の担当者が入り口で新成人全員の検温を実施し、ワクチン接種の有無を口頭で確認した。未接種者のため抗原検査ができるスペースを用意したが、出席者はワクチン2回接種を済ませており、午前、午後いずれも抗原検査を実施した新成人はいなかった。新成人は受付でさらに、あらかじめ氏名、住所、電話番号などを記入した入場券を提出して入場した。 午前の部の式典では、安藤真理子市長が「皆さんは高校を卒業するころからたくさんの影響が出て、進学先の学校では入学式ができなかったり、就職しても入社式ができなかったり、学校に行けなかったり、オンラインで仕事をしたりした人たちもたくさんいた。皆さんはコロナで誰よりも家族や友達に直接会える大切さを感じていると思う。コロナで急速にIT化が進んだように、ピンチをチャンスに変える力を皆さんはどの世代よりも持っている」などと呼び掛けた。 新成人を代表して大学2年の富田龍心さん(20)が「私は高校の時の恩師から言われた『人間的成長なくして技術の進歩なし』という言葉をモットーに、人の見本となれるようにと日々努力することで成長した。これからも一生懸命、目標や夢に向かって前向きに歩んでいきたい」などと誓いの言葉を述べた。 式典は市長による贈る言葉、新成人の謝辞のほか、来賓の紹介のみで30分ほどで終了した。 4月からコンピューターシステムを運用する都内の会社でエンジニアとして働く専門学校2年の千田衣良(ちだ・そら)さんは「式典は思ったより短かかったけど、成人式が開催できて良かった」などと述べた。スポーツインストラクターを目指している都内の大学2年の坂本絢美さん(20)は「大学に広島出身の友人がいて(まん延防止重点措置が適用され)広島では急に成人式が延期になった。友人からは土浦はうらやましいと言われている。開催できて良かった」などと話していた。 会場には警察官が出動し警備に当たったが、今年は酒を持ち込んだり、大騒ぎをする新成人はなかった。参加した新成人は式典が終わってもしばらく会場に残り、数年ぶりに会った友人らと名残惜しくおしゃべりをして旧交を温めていた。(鈴木宏子)

今季はプロへ6選手 筑波大蹴球部が合同記者会見

筑波大学蹴球部からプロサッカーチームへ加入する6選手の合同記者会見が27日、つくば市天王台の同大学会館特別会議室で開かれ、各選手が来季への意気込みなどを語った。今年は6人中5人がJリーグ1部のチームに進むなど、日本のプロサッカー界における大卒選手の存在感がいっそう高まりそうだ。 プロに挑む6選手の抱負 清水エスパルスに内定した山原怜音選手は、大学ではサイドハーフやサイドバックとしてゴールやアシストを量産してきた。「清水では持ち味の攻撃力を生かして多くの試合にからみ、クラブの勝利のため日々努力したい」と語る。両足からの精度の高いキックが持ち味で「クロスやミドルシュートなど得点に直接結び付くプレーをしたい。どこで出てもチームの勝利に貢献できると思うが、一番強みがあるサイドバックで主にやりたい」と意気込む。 柏レイソルに加入内定の加藤匠人選手は「巧みな技術と鋭い観察力の頭脳派ボランチ」とのチーム評。今季は大学と並行し、柏の特別指定選手としても活動してきた。「柏は小5から高3まで7年間過ごした愛するクラブ。幼いころからのプロ選手への夢がかない、責任と覚悟が増してきている」。目標はクラブのレジェンドである大谷秀和主将を超えること。「大谷選手は小学生のときからのあこがれ。今の柏のボランチには球際に強い選手がそろっているが、その中でポジションを勝ち取りたい」 角田涼太朗選手は今年7月、横浜Fマリノスでプロ選手としてのキャリアをスタートさせている。「半年間マリノスでプレーし、自分の決断は間違ってなかったと胸を張れる。来年は勝負の年。自分のプレースタイルを順応させ、自分にしかできないプレーをしたい」武器は対人の強さと正確なキック。左利きでセンターバックとサイドバックの両方をできる希少な選手だ。「ビルドアップで相手がプレスをかけにくい利点を生かし、自分の持ち味である攻撃の起点となるパスを供給したい」 井川空選手は北海道コンサドーレ札幌に内定。「高い守備力と正確な技術で試合の流れを引き寄せる」とされるユーティリティープレーヤーで、大学ではボランチ、センターバック、サイドバックを務めた。「札幌ではボランチで勝負したいが、どのポジションで試合に出ても自分の力を100パーセント生かし、チームに勝利をもたらしたい。ピッチを広く使える展開力や運動量などダイナミックさが取り柄。チームのため献身的に戦い、ボールを刈り取る姿を見てほしい」 小林幹選手はシンガポールプレミアリーグのアルビレックス新潟シンガポールに内定。「U23のチームなので1年がリミット。その間にどれだけ成長できるかが試される。逆輸入され、この5人と同じJリーグのピッチに立つことが目標」。フォワードからボランチまで攻撃的ポジションは全部経験があるが、クラブからはボランチとして期待されているという。「全試合フルタイム出場し、攻守に圧倒的な存在感を放つことが必要。小林のチームと言われるくらいになりたい」 森海渡選手は柏レイソルに内定。今は大学3年だが角田選手同様、蹴球部を退部してのプロ入りとなる。「大学で4年間プレーする選択肢もあったが自分のキャリアを見据え、もっと上へ行きたいと決断した。この決断をして良かったと思えるようになりたい」。今季関東大学リーグ1部で14ゴールを挙げ、トップスコアラーに輝いたストライカー。「控え目だが来季目標は5ゴール。FWは結果が全ての世界。スピードや得点感覚では負けてなく、一年目から活躍したい」 卒業を待たないプロへの道筋 近年は角田選手や森選手のように、大学卒業を待たずしてプロ入りする例が増えている。筑波大蹴球部の小井土正亮監督は「一昨年の上田綺世選手(法大→鹿島)らが道筋を作ってくれ、大学生でもこれほどのプレーができるという見本となり、戦力として考えてオファーしてくれている」と分析する。だが、選手として評価されたから即プロになれるといった甘い考えではいけないと指摘する。「学生として学業も十分やっていることが大前提。大学にサッカーだけをしに来ているようではプロとして通用しない。所属する部の仲間を納得させ、快く送り出してもらえるような努力をしてきたのか。そうでなくてはプロへ行っても応援される選手にはなれない」 例えば角田選手は、傍目には一足飛びにプロ入りしたように見えても、本人としては満を持してという思いが強いそうだ。昨年10月に横浜Fマリノスに内定し、特別指定選手としてプレーも経験したが、今季前半は学業に専念。「筑波大に進んだ意味は人間的成長やセカンドキャリアを考えて。だから学業をおろそかにしたくなかった。教育実習はさまざまな経験ができるのでぜひ行きたかったし、そのタイミングが被ったので半年間の猶予をもらった」 森選手もまた入学時からプロキャリアを見据え、目標高く取り組んできた。1年次から積極的に授業に出て、3年で卒業に必要な単位はすべて取得。教育実習だけはあきらめたが、これは後から好きなタイミングで行くことができる。小井土監督も「選手として飛びぬけた能力を発揮し、大学ではやり残したことはないと思えるほどの活躍を見せたのだから、さらに上を目指したいという思いが芽生えるのは自然なこと。学生の本分とサッカー選手としてのキャリアとの間で何が大事か考えてあげ、できる状況にあるならトライするという選択も指導者として尊重したい」と巣立ちを温かく見守る。(池田充雄)

累計50万ダウンロードの医療相談アプリ【人と仕事の回顧録’21】2

リーバー 伊藤俊一郎さん つくば市 医療相談アプリ「リーバー」を開発、資金調達にもメドを付け、法人向けサービスに打って出る体制を整えたのは2020年の新年だった。リーバー(つくば市高野、旧社名アグリー)社長、伊藤俊一郎さん(42)は講演で、筑波大学医学専門学群卒業後の医師、起業家としての波乱に満ちた経歴を語っていたが、直後、新型コロナ感染症がわが国を襲った。アプリの担う役割は大きく膨らみ、伊藤さんはさらなる激動の2年間を駆け抜けることになる。 リーバーは、スマホを操作して医師と相談するアプリで、18年1月にリリースされた。登録ユーザーはチャットスタイルの自動問診で、「痛い」「かゆい」などの症状を伝えると、医師が即刻回答に応じ、最寄りの医療機関や適切な市販薬などがアドバイスされる仕組みだ。24時間365日の相談体制を敷き、医師と患者家族の負担を軽減するヘルスケアのツールとなるはずだった。 ところが、感染症は一気に拡大の気配を見せ、伊藤さんは2月、アプリの無償提供を即決した。この時点で登録者数は8000人ほど、つくば市内では25人を数えるだけだった。茨城県からの要請を受ける形で、県内120万世帯を対象にした無償提供は9月まで続いた。 同年6月からはつくば、つくばみらい両市の児童・生徒向けに「リーバー・フォー・スクール」の提供を開始し、学校現場や学級管理の担当者へ家庭からデータを自動送信できる体制を整備した。「朝の忙しい時に面倒と反発されましたけど、学校現場は何もしないわけにはいかない。検温や体調管理の集計を紙ですることに比べたら場所や手間を取らない分、随分助かったと言われるようになったし、保護者からも継続の意向が示された」。現在は連絡事項を伝えられるメッセージ機能などが追加され、全国1000校以上の教育機関で利用されている。 職域接種は10万人に 医師としての伊藤さんは、1都5県15カ所に展開するアグリグループ(つくばみらい市、日馬祐貴代表)で訪問診療などを行うクリニックを運営してきた。2021年に入ると、同グループと連携し、新型コロナワクチンの「職域接種」実施企業の受付を開始した。地銀や商工会などの企業・団体を含め、6月以降57カ所で10万人への接種を手がけた。「医療従事者の手配にかかる費用が無料で驚いた」「医療従事者の手配や複数団体での予約の際の管理が大変だったので助かった」などの声を聞いているという。 アプリ自体は11月に、累計50万ダウンロードを突破した。相談に当たる登録医師数は350人を超えている。「昨年だと熱があるけど病院に行くべきかといった相談が多かったけれど、今年はワクチンに対する相談がぐんと増えた。多くが副反応を心配するものだった」 アプリに付加する形でデジタルワクチン手帳の提供も始めた。接種したワクチンのメーカーや日にち、接種済証の写真を保存しておくことができる。定期チェックを受けることもできるため、副反応が正常なものかを確かめることも可能となるという。 新型コロナは「第5波」以降、オミクロン株という不安要因を抱えながらも落ち着いた推移をみせている。感染力は強いものの重症化のリスクは低いとされるオミクロン株に警戒を怠ることはできないとする伊藤さんだが、「今後、新型コロナは一般的な病気になっていく」との見方を示している。 「ただ、インフルエンザなどと違って後遺症の懸念が大きかったりする。自宅療養患者が増えると急変に対する備えもいる。健康観察アプリの役割は増えていくはず」と来年以降を見据えている。(相澤冬樹)

2台ピアノで奏でるオーケストラ 年明けのつくばリサイタルで実現

「2台ピアノで奏でるオーケストラ~名曲を旅する」をテーマに、第11回つくばリサイタルシリーズ(同シリーズ実行委員会主催)が来年1月23日、つくばカピオホール(つくば市竹園)で開かれる。筑波大学の有志学生が「つくばの地で市民や学生に気軽にクラシックを楽しんでもらいたい」と毎年開催している公演。今回は、国内外で活躍する中井恒仁&武田美和子ピアノ・デュオを迎え、ピアノで奏でるオーケストラの名曲を聴く。 実行委員会の佐藤祐人さん(筑波大人文学類2年)によれば、「一流の演奏を一般1000円、学生無料という手頃さで堪能できるのは、つくばリサイタルシリーズならでは。普段あまりコンサートになじみのない学生にも、気軽に足を運んでほしい」という。 今回はピアノが主役で、管弦楽を中心的に扱ってきたリサイタルシリーズ10年の歩みにとっても新鮮な公演となる。国内外問わずその深く誠実な音楽性で高い評価を得るピアニスト夫妻、中井恒仁・武田美和子の連弾と二重奏が彩る。「中井さんと武田さんは日本のピアノデュオ界をけん引し続けている演奏家。プログラムにはベートーベン『歓喜の歌』をはじめ世界中で広く親しまれている名曲を取り揃えており、クラシック初心者から通な人まで楽しめるコンサートになっている」と佐藤さん。 実行委員会の岩永彩花さん(同 比較文化学類3年)は「前回の公演が終わってから、ピアノが主役のコンサートをやってみたいという声があがっていた。ピアノを自ら演奏する実行委員もいる。多くの人にとって身近な楽器であり、関心が強かった」と話す。「通常はピアノが1台のカピオに、さらに東京から1台持ってくる。カピオホールでピアノが2台というのは迫力の舞台になるはず。その響きをぜひ実際に体験してほしい」。 今回のテーマは「旅」。「プログラムの曲は、ウィーン、プラハ、パリなどヨーロッパの由緒ある美しい都市を彷彿(ほうふつ)させる。演奏を聴きながらまるでヨーロッパを旅している気持ちになれるはず。コロナ禍でなかなか旅行に行けないが、コンサートで晴れやかな気分になってもらえたらうれしい」と岩永さん。(山口和紀) ◆中井恒仁&武田美和子ピアノ・デュオ(第11回つくばリサイタルシリーズ) 2022年1月23日(日)午後2時開演。プログラムは、連弾でJ. シュトラウスII世「美しく青きドナウ」ほか、2台ピアノでベートーベン「歓喜の歌」(交響曲第9番第4楽章)ほか。チケットは一般1000円、学生無料。未就学児入場不可。チケットの予約はこちら。つくばリサイタルシリーズ公式ブログはこちら

季節感じる工作体験をプロデュース つくば スタジオ’Sで「キッズアートおうえん展」

子供たちに楽しいアート体験を提供する「2021冬のキッズアートおうえん展」が26日まで、つくば市二の宮のスタジオ'Sで開催されている。関彰商事と筑波大学の連携による芸術活動「スタジオ'S with T」の企画だ。今年は展覧会形式で、筑波大生が考案した自由工作の完成品と、その作り方を動画やパネルで一緒に紹介している。昨年の冬はオンラインでの開催だった。 筑波大学で芸術を学ぶ学生たちの協力により、毎年開催している。展示は6ブースで、今回は投票箱が置かれ、気に入った作品に投票して応援できる。内容はクリスマスのリースやとんがりハット、毛糸のコースターなど季節感あふれるものが多い。 お正月向けの「書き初めでカレンダーを作ろう!」は、台紙の下半分がカレンダーになっていて、身近な場所などに飾って1年間楽しむことができる。 館内の飾り付けも、天井や壁の星型のペーパークラフトや、正面奥の大きなクリスマスツリーが、クリスマスの気分を盛り上げている。ツリーに飾られた写真入りのオーナメントカードも自由工作の一つ。24日にはキットのプレゼント(なくなり次第終了)と、カードに入れる写真の撮影サービスもある。 ツリーの隣にあるメッセージカードのコーナーでは「今年あったハッピーなできごと」を書き込んで壁に貼り、1年を振り返ってみるのもいい。土浦市から来た青山杏奈さん(小4)と咲良さん(4歳)の姉妹も、カードを書くのを楽しんでいた。杏奈さんが一番気に入った工作は「かわいいきのこを作ろう」。理由は「図工の授業で、粘土の作品づくりをするときに参考になりそうだから」とのこと。 期間中の土・日曜日に、工作の制作キットを日替わりでプレゼントする。キットには説明書と共に、粘土や絵の具といった主要な材料も入っているので、家にあるはさみやのりなどの道具を使い、すぐに工作に取りかかることができる。各キットとも先着15人限定。配布日はスタジオ'Sのホームページか、フェイスブックを参照。(池田充雄) ◆2021冬のキッズアートおうえん展は18日(土)~26日(日)、つくば市二の宮1-23-6、関彰商事つくば本社内スタジオ'Sで。開館時間は午前10時~午後5時、入場無料。

水素燃料電池バスでPCR検査 筑波大、市と実証実験

災害などで電源を失った場所でも、高精度の感染症検査を可能にするシステムを開発中の筑波大学(つくば市天王台)が、同市のPCR検査会場で実証実験を行った。17日までの3日間、市独自のPCR検査が行われた会場に水素燃料電池バスを持ち込み、装置の稼働状況、検査から通知までの所要時間を調べるなどした。 検査会場の市役所本庁舎駐車場に持ちこまれたのは、トヨタ自動車の燃料電池バス「SORA(ソラ)」をベースに車内を改装した車体(11月18日付)。医学医療系感染症内科学の鈴木広道教授、システム情報系の鈴木健嗣教授らが、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムにより開発している。車内にはPCR検査に使う全自動の遺伝子解析装置や核酸抽出装置などが設置されている。今回大学と市が協力し、PCR検査希望者の協力を得て実証実験を行った。 つくば市では新型コロナ感染拡大の第6波に備え、10月から無症状の市民や市内在勤・在学者を対象にPCR検査を行っている。15日は45人、16日には54人が実験への協力に同意した。受付で検査キットを受け取り、検体として唾液を採取。キットは「SORA」の車内に持ち込まれて検査された。検査結果はQRコードを読み込み、識別情報を入力するとメールで通知されるシステムを想定しており、16日までの集計では、受付から検査結果が返ってくるまで最短48分、中央値は53分だったという。 鈴木広道教授は「いつでもどんな場所でも同じ質の検査を提供できることを目指す。現場によって状況や人の流れも異なるため、不具合が起きないかどうかを検証している。少しでも早く検査結果が分かるよう検査受付から結果通知まで常に60分を切ることが目標」と話す。検査自体の時間はこれ以上短縮することが難しいため、今後は通知システムの改良を重ねていく考えだ。 年を越し足を延ばす実証実験 17日には市の公用車である水素燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」を「SORA」にケーブルでつなぎ、電力を供給した。車内で行うPCR検査に必要な電気は「SORA」だけでまかなえるが、「MIRAI」をつないで電力供給することによりさらに遠隔地に出向くことが可能になるそう。 来年1月からは狭い場所を行き来できるマイクロバスの検査車も導入し、大型バスと2台で県央や県北、鹿行地域に赴いての実証実験を予定している。2月から3月には大学内外のイベントで無料のPCR検査を行い、社会実装に向けて調整を続けていく。 緊急時、災害時の感染症対策は地域の課題解決につながるとして、市は今後も筑波大に実証実験の場の提供を行っていく予定だという。(田中めぐみ)

エスカレーター取り止め つくばセンタービル 改修計画を大幅見直し

専門家や市民団体から見直しを求める要望が出ていた、つくば市によるつくばセンタービル(同市吾妻)の改修計画について、市は17日開かれた市議会中心市街地まちづくり調査特別委員会(ヘイズ・ジョン委員長)で、エスカレーターの設置を取り止めるなど当初の改修計画を大幅に見直すことを明らかにした。 建築デザイン残す形に 見直し計画は、エスカレーターの設置を取り止めるほか、センター広場を囲む外壁、ノバホールと小ホールの間の1階大通路、ノバホール西側の外階段をいずれも取り壊さず、現在の建築デザインをそのまま残す。センター広場の床にテントを固定する床穴を開ける計画も取り止める。 今回の見直しについて五十嵐立青市長は「市民、(市議会)特別委員会、利用者からの意見を反映し、意匠にさらなる配慮をした」などと話した。 つくばセンタービルは、プリツカー賞を受賞した磯崎新さんが設計したポストモダン建築の代表作だと世界的に評価されていることから、建築意匠が専門の筑波大学、鵜沢隆名誉教授の見解をもとに、市民団体「つくばセンター研究会」(冠木新市代表)が、五十嵐市長や小久保貴史市議会議長に対し、計画の見直しを求める要望書を2度、提出していた。 さらに市が10月1日から31日まで市ホームページで実施した意見募集では、エスカレーターについて意見を出した17人中、15人がエスカレーターの設置は必要ないなどの意見を出していた。 市議からは「そもそも市民説明会を最初からやっていればそんなことはなかった。見直し案ではなく、やり直し案。エスカレーター2基とも無くなるような計画は行政としてあり得ない」(飯岡宏之市議)、「基本設計をやる前に市民意見を聴取していなければならなかった。大きな誤りだったと感じている」(山中真弓市議)など厳しい意見が出た。 価値喪失など懸念する指摘受け 西側(旧ライトオンビル側)に設置予定だったエスカレーターを取り止める理由について市は、意匠への配慮、費用対効果などのほか、市民窓口を当初予定のつくばセンタービル1階から隣接のBiViつくば2階交流サロンに移すため、エスカレーターの利用者が減るなどとした。エスカレーターについては、2基の計画のうち北側の1基を今年6月、議会の意向を受けて市が設置を取り止めた。今回取り止めが決まった西側のもう1基については市民団体から、設置に伴いセンター広場の外壁を改変することになり、センター広場と不可分な空間として国際的に高い評価されてきた広場の価値を喪失させる、10メートルも離れてない位置に既存のエレベーターがある―などと指摘していた。 センター広場を取り囲む外壁は、現在の壁を撤去し開閉式のガラス扉に取り換える計画だったが、意匠へのさらなる配慮と費用対効果を考慮しそのまま残す。市民団体は、中央広場の壁はメタリックなアルミの正方形とガラス窓、ガラス扉のバランスで構成されており、外壁を撤去することは中央広場の形状を変えることになるなどと指摘していた。 ノバホールと小ホールの間の1階通路の片側の壁を壊して通路を狭める計画は、意匠に配慮して取り止める。併せて市民活動総合センターの設計を見直す。通路については市民団体から、堅牢な石造りの壁でできた通路は研究学園都市の都市軸を形成しているなどの指摘があった。一方、通路を保全することに伴って、高校生が勉強などするフリースペースが、現在の市民活動センター部分から通路部分に移動する。現在の通路は照明が暗く室温の調整もなされてないことから、照明を明るくしエアコンを整備して室内環境を向上させるという。一方「気の毒。落ち着いて勉強できるのか」(橋本佳子市議)など、課題を指摘する意見も出た。 ノバホール西側外階段は、土浦学園線から車両の乗り入れができるよう半分を改変しスロープをつくる計画だったが、安全性を考慮して取り止める。市民団体は、スロープの傾斜角が急で、車いすやベビーカーには使用できず建築基準法やバリアフリー法からみて問題。急勾配のスロープを下りた自転車などが、歩行者と接触したり、交通量が多い土浦学園線で事故が発生する危険がある、すでにキッチンカーが出入りしている既存の車用スロープを利用すれば足りるなどと指摘していた。 市による今回の大幅な見直しについて、建築意匠を守るよう要望していたつくばセンター研究会の冠木代表(70)は、「全面的に市の計画が変わりびっくりしている。(当初の計画が)すべて撤回され、ひじょうに良かった。ただここまでこじれたのは手続き上、問題があったのだと思う」と話している。(鈴木宏子)

感覚過敏に対応 心地よく学び休める部屋 筑波大が公開

障害のある学生への修学支援組織、筑波大学(つくば市天王台)のダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター(DACセンター)が、試行運用中の「アクセシブルスタディルーム(ASルーム)」を公開した。同センターを利用する障害学生向けの学習・休憩スペースで、特に感覚過敏のある学生の使用に配慮した。多様な学生一人ひとりが自分の感覚に適した学び方、休み方を見つけられるという。 落ち着きと集中に配慮した2室 大きな音やまぶしい光、人混みなどが苦手な人にも安心して過ごせる環境を提供する「センサリールーム」の取り組みが国内外で始まっている。ASルームも、聴覚や視覚など感覚過敏のある人が落ち着いて快適に過ごせるよう企画・設計された。「アクセシブル」は近寄りやすさ、利用しやすさをいう。海外の大学で導入され、日本でもサッカースタジアムへの導入例などあるが、国内の大学では初めての設置、運用となった。 一人用の学習・休憩スペースと複数人で使用できる共同スペースの2室に分け、設けられた。個人で使用するスペースは自分の心地よさに合わせて空間をカスタマイズできる。照明の明暗や赤、青、緑など部屋の色調は調整可能だ。天井に設置されている無線通信のスピーカーから音楽や作業用BGMなど、自分がストレスに感じない音を流すことも出来る。 泡による視覚と音波の効果によって感覚を落ち着けられるバブルチューブ、狭くて暗い空間を作り出すための簡易式テントなど、落ち着いたり集中するための様々なグッズが配置された。障害学生は1人当たり1日3時間を上限に利用できる。 感覚過敏な人との相互理解 発達障害のある学生は近年、全国的に増加しており、筑波大でも障害学生全体のうち67%にあたる110人が発達・精神障害だという(12月1日現在)。発達障害のうちの一つが自閉スペクトラム症で、その69%~95%には感覚過敏という特性があるという。 感覚過敏は個人差が大きく、体調や不安の程度によっても変動することがある。しかし、大学の環境は感覚過敏の学生らに十分に対応しているとは言い難く、これまでは耳栓などの器具の利用許可を得るなど障害学生側が工夫する対策に留まっていた。さらにコロナ禍の昨今、オンライン授業により「目が疲れる」「集中力が続かない」と訴える障害学生は、発達障害に限らず全国的に増えている。 筑波大では2019年12月に、ASルームの企画・運営のため、教員・学生の共同プロジェクトチームがスタート、当事者目線での意見を共有するために障害学生も参画した。書店や図書館では周囲の目が気になってしまうという障害学生の指摘を受け、発達障害に関する書籍やリラックスするためのグッズを置いたり、注意が逸れないよう本棚に目隠し用のカーテンをつけるなど、意見の反映を図った。 8月の試行運用開始から障害学生16人が利用登録し、利用者からは「ルームでは靴を脱いでカーペットに座ったり、自分にあった聞き方で受講できるのが良かった」という声が上がった。 今回の公開を機に試行運用期間による利用学生の限定も拡大していく予定という。活用事例の蓄積による他大学や社会への情報発信、持ち運び可能な簡易型、貸出型のセンサリールームの検討も視野に入れ運用していく方針だ。 芸術系の小山慎一教授は、コロナ禍のマスク着用で感覚過敏の人々が感じている困難を例に「感覚過敏な人とそうでない人の相互理解が進むと良い」と語った。人間系の佐々木銀河准教授は「感覚過敏は外からは誰も分からないし、本人自身も気付いていないかもしれない」と述べ、ASルームが障害学生自らの感覚特性を知るための機能を担っていると位置づけた。(渡辺陽)

車いす席への配慮を実地見分 筑波大吹奏楽団 定期演奏会

筑波大学吹奏楽団が定期演奏会における車いす席への配慮を模索している。一般席とは別に車いす席のチケットもインターネットから購入できるようにし、車いす席の隣には介助者席も設ける形で12日、今年2回目の定期演奏会を開いた。車いす利用者である記者も演奏会場を訪れ、団長で数学類3年の小林萌愛さん(21)と副団長で障害科学類3年の宮田桃佳さん(21)から話を聞いた。新たな課題も見え隠れしている。 介助者と隣り合わせの社会距離 楽団では毎年2回、ノバホール(つくば市吾妻)で定期演奏会を開催しているが、コロナ前は障害者への配慮は特に考えていなかった。今年6月、初めて感染対策をしながらの演奏会を準備する中で、一般席と同様に車いす席周辺も1席ずつ間隔を空けるべきではという議論が上がり、楽団内で車いす席の扱いを考え始めた。これまでは特段、車いす席用のチケットを販売していなかったが、「車いす席は会場に4席しかないため、一般席とは分けてチケットを販売する必要があるのでは」と気づき、チケット販売サイトで一般席か車いす席かを選択できるようにした。 議論を進めていた中、宮田さんが「車いす席の隣は介助者が座ることを前提に考えたらどうか」と提案した。宮田さんは週2回、アルバイトで記者の介助をしている。 記者は外出時、常に介助者を同伴しているが、コロナ禍になってから、映画館などで車いす席を予約すると、介助者とは1席分空けて座ることを求められ、上映中に、姿勢を直したり、パンフレットを見る動作を介助者に手伝ってもらうことが難しかった経験がある。介助者はすぐ隣に座った方が演奏会中も気軽に介助を受けられ、演奏会に集中できると考え、宮田さんに相談した。 楽団では当初、観客が隣り合って座らないための張り紙を、車いす席の隣席にもする予定だった。しかし、宮田さんからの提案を受け、車いす席の隣には介助者が座る前提にし、その周囲の客席をどう割り当てたら他の観客とソーシャルディスタンスを保てるか考えた。客席は全て自由席だったが、一般の観客は車いす席の隣には座らないように、介助者席だと分かる張り紙をした。さらに受付から車いす席までの誘導経路も確認した。 多様な障害者への配慮 今年6月と12月に開催した演奏会では、いずれも4つある車いす席は完売した。宮田さんは第86回となる12日の定期演奏会に記者を誘ってくれた。 今回の演奏会で車いす席を購入した40代男性に話を聞くと、「私は歩くことは可能だが、階段の上り下りは大変。今回、車いす席の隣に介助者席もあると聞き、私は介助者同伴ではないが、車いす席の隣席に座ることができれば、階段を使わずに席まで行けると思い、車いす席を購入した」という。 小林さんは「今まであまり障害について学んだことがなく、車いす席の必要性までは考えられても、介助者を同伴する障害者の存在など知らないことが多く、もっと普段から問題意識を持つ必要があると気づいた」と話す。 宮田さんは「大学で障害について学んでいるが、今まで車いす席のことをあまり考えていなかった。しかし、私から楽団に提案すると、チケット担当や当日の受付担当など、団員それぞれの役割の中でできることを考えてもらえた。準備段階から車いす席の存在を考慮に入れておけば、多くの人が参加しやすい環境にできることに気づいた」と振り返る。 宮田さんは今年度で楽団を引退する予定。「車いす席の配慮は後輩に継承してもらいたい。今後は、車いす席だけでなく、長時間着席することが難しい人など、多様な障害を持つ人への配慮も考えていければ」と楽団に期待する。(川端舞)

私の「生き字引」竹内さん逝く 《邑から日本を見る》101

【コラム・先﨑千尋】図書館学の泰斗、竹内悊(さとる)さんが10月に93歳で亡くなったという知らせが届いた。私の生き字引。それこそ「困った時の竹内さん」だった。 竹内さんは米国のフロリダ州立図書館学大学院やピッツバーグ大学図書館情報学大学院で学び、1987年につくば市の図書館情報大学(現筑波大学)副学長に就任した。古今東西の図書館に関する情報に精通し、2001年から2005年まで日本図書館協会理事長を務めた。 図書館に関する著作も『図書館のめざすもの』(編・訳、日本図書館協会)、『図書館のこと、保存のこと』(共著、けやき出版)などがあり、一昨年にはその集大成として『生きるための図書館』(岩波新書)を出版した。 私が瓜連町長の時、小学校を木造で建て替えたが、その際に図書室を理想の姿にしたいと考え、谷貝忍水海道市立図書館長(当時)、寺田章阿見町立図書館長(同)らと一緒に、竹内さんにも相談に乗ってもらった。もう30年も前のことだ。それ以来、竹内さんから、図書館とは何か、図書館をどう活用すればいいのかなどを教えてもらった。 それまでの私は、本は買うもの、資料は集めるものと考え、図書館の利用は、新聞雑誌を見たり小説を借りたりする程度だった。 しかし、自分で郷土茨城の人や事績を書くには図書館を使わざるを得ない。『ほしいも百年百話』『前島平と七人組』(いずれも茨城新聞社)を書くために、ひたちなか市や常陸太田市の図書館に行ったが、それこそ何もない。静岡県内の図書館や鹿児島県枕崎市、函館市の図書館から多くの情報を得た。 「本は人の感覚と思考と行動の記録」 大部分の郷土資料を閉架にして利用者に見せない水戸市立中央図書館とのバトルの時には、竹内さんに「これからの図書館はどうあるべきか、図書館にとって最も大事な仕事はレファレンス」などのことを教えてもらった。その時、幕末から明治にかけて『大日本史』編さんなどに関わった栗田寛の残した麗澤館文庫は現在どうなっているのか、という宿題をいただいた。 県立歴史館、茨城大学図書館、水戸市立図書館などで調べてもらったが、分からずじまい。結局、那珂市立図書館員から「戦前の火事で焼失した」と連絡があり、一件落着した。 わが家にある戦前の右翼の思想家権藤成卿(ごんどう・せいきょう)の扁額の文字と意味がずっと分からなかった。水戸学の大家などに聞いたが、最後は竹内さん。一発で内容が分かった。竹内さんは中国の古典にまで通じていた。 若いころ、図書館は水戸市にしかなかった。しかし今では、どこの市町村にもある身近な存在だ。自分で必要な本をすべて買う経済的余裕はないし、またその必要もない。近くの図書館を利用、活用する。国立国会図書館の文献も地元の図書館で見られるし、コピーもできる。他の市町村の図書も地元の図書館で借りられる。分からないことは調べてもらえる。インターネットで問い合わせもできる。 竹内さんは、最後の著書に添えて「図書館とは人が生きる上で一体なんなのだろうと考え続けてきた結果、本は、人の感覚と思考と行動の記録。人が生きていく上で大きな働きを持つ。多彩な本と人の多様な要求をつなぐために図書館があると考えるようになった」と私に書き送ってくれた。 竹内さんは私に「これからは人に頼るな。自分で道を切り拓(ひら)け」と呼びかけている気がする。「ありがとうございました。そしてさようなら」。竹内さんへの最後の手紙になる。(元瓜連町長)

私の「生き字引」竹内さん逝く 《邑から日本を見る》101

【コラム・先﨑千尋】図書館学の泰斗、竹内悊(さとる)さんが10月に93歳で亡くなったという知らせが届いた。私の生き字引。それこそ「困った時の竹内さん」だった。 竹内さんは米国のフロリダ州立図書館学大学院やピッツバーグ大学図書館情報学大学院で学び、1987年につくば市の図書館情報大学(現筑波大学)副学長に就任した。古今東西の図書館に関する情報に精通し、2001年から2005年まで日本図書館協会理事長を務めた。 図書館に関する著作も『図書館のめざすもの』(編・訳、日本図書館協会)、『図書館のこと、保存のこと』(共著、けやき出版)などがあり、一昨年にはその集大成として『生きるための図書館』(岩波新書)を出版した。 私が瓜連町長の時、小学校を木造で建て替えたが、その際に図書室を理想の姿にしたいと考え、谷貝忍水海道市立図書館長(当時)、寺田章阿見町立図書館長(同)らと一緒に、竹内さんにも相談に乗ってもらった。もう30年も前のことだ。それ以来、竹内さんから、図書館とは何か、図書館をどう活用すればいいのかなどを教えてもらった。 それまでの私は、本は買うもの、資料は集めるものと考え、図書館の利用は、新聞雑誌を見たり小説を借りたりする程度だった。 しかし、自分で郷土茨城の人や事績を書くには図書館を使わざるを得ない。『ほしいも百年百話』『前島平と七人組』(いずれも茨城新聞社)を書くために、ひたちなか市や常陸太田市の図書館に行ったが、それこそ何もない。静岡県内の図書館や鹿児島県枕崎市、函館市の図書館から多くの情報を得た。 「本は人の感覚と思考と行動の記録」 大部分の郷土資料を閉架にして利用者に見せない水戸市立中央図書館とのバトルの時には、竹内さんに「これからの図書館はどうあるべきか、図書館にとって最も大事な仕事はレファレンス」などのことを教えてもらった。その時、幕末から明治にかけて『大日本史』編さんなどに関わった栗田寛の残した麗澤館文庫は現在どうなっているのか、という宿題をいただいた。 県立歴史館、茨城大学図書館、水戸市立図書館などで調べてもらったが、分からずじまい。結局、那珂市立図書館員から「戦前の火事で焼失した」と連絡があり、一件落着した。 わが家にある戦前の右翼の思想家権藤成卿(ごんどう・せいきょう)の扁額の文字と意味がずっと分からなかった。水戸学の大家などに聞いたが、最後は竹内さん。一発で内容が分かった。竹内さんは中国の古典にまで通じていた。 若いころ、図書館は水戸市にしかなかった。しかし今では、どこの市町村にもある身近な存在だ。自分で必要な本をすべて買う経済的余裕はないし、またその必要もない。近くの図書館を利用、活用する。国立国会図書館の文献も地元の図書館で見られるし、コピーもできる。他の市町村の図書も地元の図書館で借りられる。分からないことは調べてもらえる。インターネットで問い合わせもできる。 竹内さんは、最後の著書に添えて「図書館とは人が生きる上で一体なんなのだろうと考え続けてきた結果、本は、人の感覚と思考と行動の記録。人が生きていく上で大きな働きを持つ。多彩な本と人の多様な要求をつなぐために図書館があると考えるようになった」と私に書き送ってくれた。 竹内さんは私に「これからは人に頼るな。自分で道を切り拓(ひら)け」と呼びかけている気がする。「ありがとうございました。そしてさようなら」。竹内さんへの最後の手紙になる。(元瓜連町長)

筑波大教授、強制わいせつ容疑で逮捕

筑波大学教授が強制わいせつ容疑で7日、つくば警察署に逮捕されたとして、同大は同日、記者会見を開き「大学としてこのたびの事態を極めて重く受け止めています。被害者の女性に対し心からお詫びします」と謝罪した。 逮捕されたのは生命環境系長の男性教授(61)。今年4月から9月にかけて同大の研究室で、20代の女子学生の胸などを複数回触ったとされる。 同大によると、被害学生本人から9月28日、同大のハラスメント相談センターに「先生の研究室でセクハラ行為を受けた」などの相談があった。 10月11日、加藤和彦副学長に報告があり、加藤副学長は同日、被害学生の話を聞いた上で、男性教授に対し、被害学生とは接触せず電子メールなども送らないよう申し渡した。 その後11月2日から同大懲戒審査委員会が、双方から聞き取り調査などをしていたという。同大は、男性教授がわいせつ行為を認めたかどうかについては調査中だとしている。 一方、その後も男性教授は、他の学生に対し教育・研究の指導業務を行っていた。 男性教授は1998年、筑波大に赴任し、今年4月、生命環境系長に就任した。教員と研究生約300人を束ねる立場だったという。 加藤和彦副学長は「本学の教員が強制わいせつ容疑で逮捕されたことは誠に遺憾で、大きな衝撃を受けている。国立大学法人の教員という立場の者が、構内でかかる行為を行ったことは許されざること」とし、今後、詳細が明らかになった段階で厳正な処分を行うとしている。 同大は「これまでも法令順守や職員倫理について指導を徹底してきたが、このたびの事態を受け、全学を挙げて更なる取り組みの強化を進める」としている。

つくばの市街地にイノシシ出没

つくば市の市街地にイノシシが出没している。11月初旬から12月初めに天久保4丁目、学園の森、天王台付近で相次いで目撃された。農村部ではイノシシによる農作物被害が大きな問題になっているが、街中でイノシシが目撃されるのは同市で初めてだ。市や警察は連日パトロールを実施している。現時点で被害の報告はない。 市鳥獣対策・森林保全室によると、11月4日、松塚と古来で目撃された。その後、7日に筑波大学近くの天久保4丁目の住宅地で目撃され、20日と21日には学園の森の商業施設周辺で目撃された。11月25日から12月4日には天王台で目撃された。 大きさなどは不明だ。これまで市内各所で目撃されたイノシシが同じ個体なのか、別の個体なのかなども分かっていない。 目撃場所付近では、市と警察などが巡回を続けているほか、学園の森付近では目撃場所近くにわなを設置している。3日までにまだ捕獲されていない。 「初期段階の対策重要」 農研機構畜産研究部門 動物行動管理研究領域の平田滋樹上級研究員。右の画像はイノシシの頭とあごの骨 つくばの街中にどうしてイノシシがいるのか。農研機構畜産研究部門 動物行動管理研究領域の平田滋樹上級研究員は「いつ、どこから来たのかは分からないが、イノシシは平地の休耕地や平地林、やぶなどが好適地。つくばは市街地でも豊かな自然が広がっているので、市街地でイノシシが目撃されても不思議ではない」と話す。平地林ややぶなどで、ススキやクズの根っこ、ドングリなどを食べているという。 目撃した場合の対応については「イノシシは警戒心が強い。石を投げたり、犬をけしかけたりなどは絶対せず、その場からそっと立ち去ってほしい」と話す。 一方「初期段階でどれだけ早く対策をとれるかで、その後の増え方が変わってくる」とし、住民ができることとして「目撃したら、日付けと時間、どっちに行ったかをメモし、行政に通報してほしい」とする。情報がたくさん集まれば集まるほど、居場所を絞り込むことができる。 さらに、えさを置いたり、飲食容器のごみを捨てると知らず知らずのうちに餌付けになってしまったり、人を恐れなくなってしまうので、餌付けやポイ捨てをしないことが重要だと強調する。 イノシシはどこに食べ物があったか覚えていて、目撃場所周辺に再びやって来ることがあるという。草が茂っていると茂みに隠れて、急にとび出してくる恐れがあるので、目撃場所付近では草を刈って茂みを減らすことなども対策の一つになるという。 市内では2018年1月、同市沼田のつくば霞ケ浦りんりんロードで住民2人が相次いでイノシシに襲われ、けがをする事故が発生している。 つくば市内の市街地でイノシシを目撃した場合の連絡先は以下の通り。市役所鳥獣対策・森林保全室 電話 029-883-1111つくば警察署  電話 029-851-0110

つくば駅前にチャレンジショップ2店オープン

つくば駅前の商業施設キュート1階とBiViつくば2階に3日、古着店と弁当店がそれぞれオープンした。市内での新規出店や創業を目指す若者を後押しする市のチャレンジショップ事業で、来年2月末まで期間限定で出店する。 自分に合うおしゃれをコーディネート 古着店 古着店は、筑波大学理工学群社会工学類2年の岡本萌実さん(20)が代表を務める「リリー・オブ・ザ・バレイ(Lily of the valley)」で、約90平方メートルの店舗に、ジーンズやジャケット、シャツ、スカート、ワンピースなど1着3000円から6000円の普段着約300点が並ぶ。中高生や大学生など若い世代がターゲットで、アクセサリーやバッグなどもある。 岡本さんは秋田県出身。服が好きで、高校1年の時から、自分が着ている服を写真に撮り、コーディネートのポイントと共にインスタグラムでほぼ毎日紹介してきた。大学に入ってからはアパレル会社から依頼を受け、はやりの服を紹介したり、コーディネートの相談に乗ったり、服を貸し借りする市内の大学生同士のLINEグループを立ち上げるなどしてきた。友人から服のコーディネートを頼まれることも多いという。 ファッションへの愛が高じ、着られてない服を次の持ち主に届けて服を循環させ、さらにファッションの相談に乗りながら、昨日よりちょっぴりおしゃれになれる場所をつくりたいと、市の事業に応募し出店した。 古着店を運営するスタッフは筑波大生17人。古着などを購入する資金は、岡本さんが知人らを集めて事業提案し約100万円を集めた。スタッフが千葉県内などの古着卸業者に買い付けに行く。 店名のLily of the valleyは、すずらんを意味する。花言葉は幸福の再来で、着られなくなった服を次の持ち主に届け再び幸福にするという願いを込めた。 岡本さんは「その人に合う色やコーディネートを提案したい」とし「古着好きだけでなく、自分に合う色や自分に似合うおしゃれが分からない人も気軽に来て、相談してほしい」と話す。来年夏には筑波大近くに古着店を出店する計画もある。 野菜の味を発酵調味料で引き出す 弁当店 弁当店は、今年3月、埼玉県からつくば市に移住してきた発酵料理家の宮崎絵美さん(38)が経営する。店名は「森と海のおべんとう」で、市周辺の農家が栽培した無農薬野菜を、宮崎さんが、みそや麹(こうじ)、酒かすなど発酵調味料で料理した手作りの弁当と惣菜を販売する。 店舗はBiViつくば2階の約25平方メートル。3日の弁当のおかずは、白菜とカリフラワーの鶏ブロス煮込み、切干大根と豚の甘酒アラビアータ、ブロッコリーソースのフワとろ卵焼き、熟成ビーツと有機ニンジンのサラダなど。ごはんは合鴨農法で栽培した白米に黒米を混ぜた。 つくば市と守谷市内3カ所の農家から仕入れた野菜を、栄養素などが逃げないよう、水を使わず野菜に含まれている水分だけで無水調理し、野菜本来の味を引き出しながら発酵調味料で味付けする。 弁当は8種類のおかずが入った1200円(税込み)のものと6種類が入った850円(同)の2種類で、おかずと惣菜は、季節ごとに変わる。水、木、金曜の週3回、弁当は1日限定40食を販売する。 宮崎さんは千葉県出身。大学を卒業後、外資系の広告代理店に勤めた。深夜まで働きづめの日々を10年ほど続けたが、30歳手前で体と心のバランスを崩し、自分は何のために生きているのか、自分の時間の使い方を変えたらもっと人を幸せにできるのではないかと考えるようになった。母親ががんを患った時期とも重なり、大事なのは自分の健康と家族だと、32歳のとき会社を辞めた。 その後、千葉県いすみ市で、自給自足の生活を送りながら暮らすグループに参加し、1年間ほど住み込みで農業をしたり、発酵調味料作りを学んだり、カフェを手伝うなどした。食を一生の仕事にしようと決意し、続いて南アフリカに赴きオーガニックマーケットを学ぶなどした。 帰国後は、子育て中の母親の家などに出向きケータリングや出張料理をした。しかしコロナ禍で仕事のスタイルの変更を迫られ、今年3月、もともと野菜を仕入れるため通っていたつくば市に移住した。9月からは、閉店したレストランの厨房を借りて、市内で弁当の販売をスタート。今日収穫した野菜を、明日のお弁当で出せる農家との距離感が、つくばを選んだ理由という。 これまでの活動を通して「発酵調味料を使った料理方法を教えてほしいとか、みそ作りのワークショップを開いてほしいとか、子どもと一緒に畑に行って皆で料理がしたいとか、いろいろな声をいただいた。ママコミュニティーを盛り上げ、一緒に地域をつくり上げる活動をしていきたい」と話す。 13人が応募 チャレンジショップ事業は、市がセキショウキャリアプラスに委託して実施している事業で、今年度で3年目。出店者の家賃を補助するほか、経営の専門家がアドバイスしたり、顧客や販路開拓を支援する。今年は7、8月に出店者を公募し、13人の応募者の中から、長期出店者として岡本さんの古着店と宮崎さんの弁当店、短期出店者としてほかに3人が選ばれた。今年度の事業費は約1140万円。

Most Popular