実証実験同意の個人情報を漏えい つくば市立保育所の保護者27人分
実験は中止
つくば市は25日、民間企業が市立保育所2カ所で予定していた実証実験で、実験に参加することを同意した保護者の個人情報が、6日から11日の6日間、他の参加同意者に閲覧できる状態になっていたと発表した。市は個人情報の不適切な取り扱いがあったとして、今回の実証実験は中止するとしている。
市科学技術戦略課によると、漏えいしたのは、保護者の氏名、メールアドレスと、子供の発達状態に関するアンケートを集計した概要。アンケートの概要は、保護者個々人の氏名などと紐づけされたものではないという。
先端技術を活用し子育て支援サービスを開発、提供するエフバイタル(東京都中央区、安島真澄社長)が作成したインターネット上の回答フォームで、実証実験に同意した保護者が、他の保護者の氏名などを閲覧できる状態になっていた。
同社は昨年10月、同市と「先進技術を活用した子育て支援及びSDGsの推進に係る包括連携協力協定」を締結した。協定に基づいて、市立保育所2カ所で、3~5歳の園児の保育所での様子を動画で撮影し、人工知能を活用して行動の特徴や傾向を解析し、得られた結果を保育所で活用する可能性について検証する計画で、6日から回答フォームで保護者に参加を募っていた。
11日午後6時ごろ、保護者の一人から、他の保護者の回答内容が閲覧できる状態になっていると市に連絡があり発覚した。
市は同社に対し、保護者の回答情報を閲覧できないよう速やかに設定を変更するよう指示したとし、さらに27人を含む2カ所の保育所の3~5歳児の保護者全員に、市と同社がそれぞれ謝罪し対応状況を知らせたとしている。
原因について市は、エフバイタルがオンライン回答フォームを作成した際、設定を誤ったためだとし、同社に対し、検証と再発防止策を求めているとしている。今後の同社の実証実験について市は、現時点で未定だとしている。
広さ最大、コインランドリー併設 ガソリンスタンド「つくばみどりの店」開所
ライフスタイルの中のSSへ、新しい形態目指す
セキショウグループのセキショウカーライフ(つくば市、萩原孝弘社長)は25日、つくばエクスプレス(TX)沿線のつくば市みどりの地区にガソリンスタンド「つくばみどりの店」(菊地東人店長)をオープンした。コインランドリーを併設し、最新型のドライブスルー洗車機と、9台分の屋根付き拭き上げ場を備える。敷地面積は約4084平方メートルで、県内のほか栃木、群馬、福島に計54店を構える同社のガソリンスタンドの中で最大。同社が新店舗を開所するのは5年ぶりという。
菊地店長は「若い世代が多い地域なので、例えば季節によって餅つきや豆まきなどのイベントを開いて、地域住民の新たなコミュニティーをつくる場となれば」と話し、「今までのサービスステーション(SS)とは違った目線で、カーライフの中にあるSSから、ライフスタイルの中のSSというような新しい形態をつくっていくことができれば」と話す。
市内のTX沿線を結ぶ新都市中央通り線と国道354号の交差点に位置する。24時間営業、セルフサービスのガソリンスタンドで、8台分の乗用車給油レーンと、ドライブスルー洗車機2台、タイヤなどの下回りを予備洗いする高圧洗浄機、洗車後に水滴などを拭く屋根付きの拭き上げ場が9台分ある。オイル交換など車の整備をするカーメンテナンス場は設置しておらず、整備や修理は近くのみらい平店と連携して実施する。
併設のコインランドリーもセルフ式、24時間営業で、通常の洗濯や乾燥のほか、羽毛布団やスニーカーなどを洗濯、乾燥する機械を備える。
オープンに先立って25日、同所で竣工式と開所式が催された。関彰商事の関正彬取締役は「新店舗を運営できるのはうれしい限り。今回はセルフ式の新店舗となる。お客様の利便向上を目指し、地域のお客様に選ばれる店舗運営を目指したい」とあいさつした。
エネオス関東第1支店の小金丸大輔副支店長は「国内は経済的に活況を呈しているが、資源高やインフレが続き、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出ゼロ)は以前にも増して議論が活発になっている。先行きが読めない中、関彰商事は将来に目を向けて手を打ってこられた。つくばみどりの店もそういう店。道路の開通や住宅増加を見越してこの場所につくってくださった。単にセルフSSではなく、新しいサービスとして地域密着で近接性の高いランドリーを設置いただいた。エリアナンバー1のSSとなるようけん引していただければ」と話した。
◆つくばみどりの店はつくば市谷田部871(陣場F-22街区7)。4月5日(金)~7日(日)の3日間、オープンイベントを開催する。問い合わせは電話029-886-6722(同店)
常総学院、日航石川を破り1回戦突破 選抜高校野球
第96回選抜高校野球(西宮市、甲子園球場)は大会6日目の25日、第1試合で茨城県代表の常総学院(土浦市)が日本航空石川(石川)と対戦。エース小林心汰の好投と4番・武田勇哉の決勝打により、1-0で常総が競り勝った。2回戦は第3試合(27日午後2時からの予定)、報徳学園(兵庫)と対戦する。
第96回選抜高校野球 1回戦(25日、甲子園球場)常総学院 000001000 1日本航空石川 000000000 0
試合前に両チームの監督が予想した通り、ロースコアの締まった試合になった。ともに放った安打は5本ずつで無失策。常総学院はエース小林が9奪三振で完封、日航石川は2年生左腕の猶明光絆が5回まで2四球4奪三振の好投で常総学院打線を苦しめた。
4回表の常総学院は、武田の四球と5番・森田大翔の中前打などで2死一・二塁とするが、ダブルスチール失敗で好機を逃した。4回裏には日航石川に1安打1四球と暴投で2死一・三塁とされるが、小林がカットボールで次打者を三振に取った。
スコアが動いたのは6回表。先頭の2番・池田翔吾が四球で出塁後、ボークで進塁。3番・若林佑真の送りバントで1死三塁とする。ここで打席に立った武田は右翼への犠牲フライ。4番の仕事で常総学院が貴重な決勝点を手にした。
常総学院は8回表に2死満塁、9回表に1死一・二塁の好機をつくるが、日航石川の継投の前に追加点は挙げられず。9回裏の日航石川は、四球と盗塁、単打で1死一・三塁と逆転のチャンスをつくるが、次打者が遊ゴロからのダブルプレーで試合終了。能登半島地震の被害に苦しむ地元の輪島市に、勝利を届けることはできなかった。
「さすが」「やる時はやる」
土浦市中村西根の常総学院高校では、生徒ら約70人が視聴覚室に集まり、大型スクリーンの前で観戦応援をした。バスケットボール部の海老澤慶人さん(3年)は、野球部員とも親しく、日頃から試合の結果などを話して互いに励まし合っている。武田選手の決勝打には「さすがだなと思った」と感想。次戦では、仲の良い杉山陽大選手の活躍に期待しているという。
「みんな最後まで集中を切らさず、全力を出しきってくれた」と話すのは相澤宥愛さん(3年)。特に小林投手の投球と、6回裏の池田選手のダイビングキャッチが最高だったという。「2人とも教室ではおちゃらけてるが、真面目なところもあり、やる時はやるなという感じ」とのコメント。自身は剣道部で、大会があるため甲子園に応援には行けないが「次戦も頑張ってほしい」と期待を託した。(池田充雄)
つくばオフィスをオープン バックオフィスのタスキー
経理や労務などの業務を後方から支援するバックオフィス総合支援事業のタスキー(本社 東京都中央区、青谷貴典社長)は22日、つくば市二の宮に「つくばオフィス」をオープンした。同グループの拠点としては5カ所目となる。つくば市内のホテルで21日、関係者約200人を集め記念式典が催された。
つくばは人口増加が続き、集積する研究機関を中心にスタートアップ企業が生まれ続けていることから、ローカルビジネスやスタートアップビジネスを支援しようと開設した。
つくばオフィスは、スタートアップ企業の創業支援や、中小企業の会計、税務、人事、労務などを支援する。公認会計士の菊池友博さんが所長を務め、公認会計士、税理士など4人が配属される。
会計ソフトなどを開発するマネーフォワード社のクラウド型会計ソフトを積極的に活用し、業務を代行する企業の日々の取引データの入力などを効率化して会計業務にかかる時間を大幅に短縮。さらに給与計算、売上管理、労務管理、経費精算などをネットワーク化することなどが特徴だ。
地域開発を行うグループ会社のBTも同オフィスに拠点を置く予定で、外食産業の坂東太郎(青谷英将社長)と、筑波山麓でフォトウェディング事業や複合施設運営事業などの地域開発を行う。
タスキーは2018年に設立された。バックオフィスのDX化が強みで、バックオフィス総合支援事業、HR(人材)ソリューション事業、経営コンサルティング事業を3つの柱としている。マネーフォワード主催のフォワード・アワード2021では「バックオフィス改革 チャレンジ賞」を受賞した。
タスキーグループは、グループを統括するタスキ―を中心に、士業業務を担うタスキー税理士法人、タスキー社会保険労務士法人、バックオフィスアウトソーシング事業を運営するB-tas、地域開発事業を担うBTの5社から構成されている。グループ全体で、公認会計士、税理士、中小企業診断士、社会保険労務士、行政書士など計32人のスタッフがいる。
21日の記念式典であいさつした青谷貴典社長(44)は「坂東太郎、青谷洋治会長の次男として生まれ、両親が事業を大きくしていくのを見てきた。社員や地域のために、坂東太郎の後を継ぎたかったが、公認会計士の道を目指した。主に仙台で仕事を学び、自分のふるさと茨城の地で事業を始めることになった。人手不足など経営者の悩みに沿った運営をしていきたい」と語った。
つくばオフィスの所長を務める菊池友博さん(34)は「人と人をつなぎ未来へたすきをつなぐということで、会計、労務、人事、情報サービス、ウェブサービスなど専門的な業務を総合的にやっていく。スタートアップ企業の多いつくばという地で役立ちたい」と意気込みを語った。
式典ではつくば市の五十嵐立青市長、筑西市の須藤茂市長、阿見町の千葉繁町長、境町の橋本正裕町長のほか、桜井姚つくば市商工会長、岡田広元参議院議員らが祝辞を述べた。続いてマネーフォワードSMB事業推進本部の服部穂住さんが「企業を成長させる組織づくりとは」というテーマで記念講演し、中小企業のDX化やバックオフィスの重要性などを語った。(榎田智司)
植物のありのままを芸術的に描いた絵《邑から日本を見る》156
【コラム・先﨑千尋】今、水戸市千波町の県近代美術館で、企画展「英国キュー王立植物園 おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり」が開かれている。私は絵心がないので、ボタニカル・アートとはどんなものかを知らなかった。本によれば、ボタニカルとは日本語では“植物学の”、アートは“芸術”だから、ボタニカル・アートとは「植物学的な絵=植物画」という意味になる。
「植物のありのままの姿を、誇張を交えずに、正確に、細密に表現し、かつ鑑賞に堪える芸術性を合わせた絵画」だそうだ。そう言われても、実際に見てみないと分からない。
この企画展は、キュー王立植物園が所蔵する作品や個人コレクションを主体に構成され、食用植物を題材にした18~19世紀のボタニカル・アートとともに、英国の食文化を伝えるティー・セットや家具、18世紀ごろの古いレシピやヴィクトリア王朝期の主婦のバイブル「ピートン夫人の家政読本」など、約190点が展示されている。
これらによって、この時代に貿易大国として世界に君臨した英国の食の歴史や文化、生活様式が分かるというものだ。同植物園は、18世紀に王室の宮殿に併設した庭として始まり、現在は世界有数の植物や菌類の研究機関でもある。
五感が刺激される不思議な絵
会場に入ると、リンゴや洋ナシ、ザクロなどの果物やカブ、キャベツなどの野菜、紅茶やコーヒー、チョコレートの原料となるカカオ、ハーブやスパイスなど、私たちが日ごろ口にする食べ物や飲み物になる植物が目に飛び込んでくる。写真と見間違うほど、正確、精密に描かれた絵だ。
普通の絵だと、日本画でも西洋画でも、描く人の個性によってどこを強調するかがはっきりしており、見る人にもそのことが分かる。しかしボタニカル・アートはそうではなく、あくまでも対象となる野菜や果物を、主観を交えず正確に描写することに力点が置かれる。1枚の絵の中に葉の裏表や果実の内部などが綿密な手わざで描かれ、実物を見ているような気分になる。果物や野菜、花などが生きているのだ。手に取ってみたくなる。
写真とは違い、生命の力強さを感じる。描き手には、例えば、花びらの数、おしべ・めしべの形や数、茎に葉がどのようについているか、とげや毛があるかなどを注意深く観察することが求められる。ボタニカル・アートは「科学と芸術の融合」だそうだが、展示されている作品を見ていると、私の五感が刺激されてくる。
NHKの朝ドラ、植物学者・牧野富太郎をモデルにした番組を思い出した。牧野は収集した植物を、時間を置かずに描き、残した。全体図だけでなく部分図も多く描き、まるで解剖図のようだった。牧野は画家ではなかったが、誰にでもできる技ではない。同館では、昨夏の「土とともに 美術にみる<農>の世界」に続く好企画だ。(元瓜連町長)
◆ボタニカル・アート展は4月14日まで(月曜休館)。電話029-243-5111(同館)。
路上から対抗 筑波大生「本を読むデモ」でパレスチナと連帯
イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への軍事侵攻が続く中、「理不尽な暴力に、学ぶことで対抗する」という思いを抱く学生らが23日、犠牲者への連帯を示す「静かに本を読むデモ」をつくば市天王台の筑波大学構内で行った。
「もしよかったら、本読んでいってください」
雨上がりの午後5時、冷え込む屋外で筑波大大学院1年の安田茉由さん(23)が、通りかかる学生に声を掛ける。地面に敷いたシートの上には19冊のパレスチナ関連書籍と印刷した資料が並んでいる。誰でも自由に手に取り、時間をかけて読むことができる。「大学内に、パレスチナの今を学べる空間をつくれたら」と考え用意した書籍は主に安田さんと、企画に協力する同大大学院3年の上田由至さん(31)によるものだ。上田さんによる短い感想が添えられたものもある。風に飛ばないよう印刷物に置かれた小石には、「停戦」「誰も殺すな」など安田さん直筆のメッセージがカラフルなイラストとともに描かれている。
「スタートは午前11時。これまでに5人くらいが長い時間読んでくれ、その他に話をしてくれた親子や、立ち止まって見てくれる学生などがいた」と、厚手のコートに身を包む2人は笑顔で話す。
きっかけはデモ参加
きっかけとなったのが、3月14日につくば駅前で行われたガザ地区攻撃への抗議デモだった。参加した安田さんはパレスチナ問題に関心を持ち、署名活動に協力するなど行動してきた。ただ、大きい音が苦手な安田さんはデモでの音に馴染めなず、「自分ができる他のことがあるんじゃないか。大学という場がせっかくあるのだから、学ぶことで暴力に対抗できないか」と考えた。そこで思い至ったのが「静かに本を読むデモ」だった。「知らないことで、日本人の私たちも民族浄化や虐殺への加担につながってしまった」という反省があった。
活動の場を屋外にした理由は「室内で読書会をやるより、ランダムに人と出会うことができる外が良かった。屋外なら、ちょっとだけ見て去っていく、じっくり見る、遠くから眺めるなど様々な関わり方ができる。静かにできるのも大事にしたい。スピーカーを使ってデモをするのも素敵で応援したいと思いつつ、私のように大きな音が苦手だったり気後れしちゃう人でも関われる場をつくりたかった」という。そして同じ学科で学ぶ上田さんに声を掛けた。
安田さんは都内の大学に通っていた学部時代に、駅前の広場や路上に敷いた大きなロール紙にペンで誰でも落書きできるイベントを開いた。路上を行き交う人同士が絵を描くことでつながり、そこで生まれる交流に心を動かされたという。海外から来た人、路上生活する人、多様な職業の人、子ども、大人、高齢者がそこで交わった。上田さんは、大正期の路上での芸術、政治活動などを始め「路上」で繰り広げられた表現活動を研究対象としている。2月には、国内外の事例や思想を論じる雑誌「路上の抵抗誌」を創刊した。
暴力に抗う
「暴力」に対して2人はこう話す。自身の研究対象であるフェミニズムとの関わりから安田さんは「私はフェミニズムを研究する中で性暴力についても学んでいる。暴力に対して誰が一緒に怒り、周囲がどうそれに応答したのかが性暴力被害に遭う人にとって、その後の回復や残る傷の深さを左右する。パレスチナで人々が負う傷やトラウマは今だけでなく一生続くかもしれない。それに対して命を落とす一人一人を悼むととともに、私がその傷を広げてしまわないよう何とかできればというのも個人的な動機になっている」
上田さんは「ガザでは日々死傷者数が増えている中で欧米諸国がイスラエル支援に立っている。マイノリティーの側に立つことが、自分が学んできた人文学だと考える。学ぶこと、実際に声を上げることが大切」と話す。
安田さんはさらに「一番は続けていくこと」だと言う。今後については「足を止めてくれる人が同じ空間で本を読んで、同じ思いを共有できるのは良い経験。今すぐ何かが変わるわけではないかもしれないが、家に帰ってから思い返すなど、少しでも変化を与えられたらと思っている」と話す。「私はパレスチナのことを知らなかった。だからこそ声を上げてこなかった。そのために暴力に加担し、また、させられてきたのが悲しかった。大学院生として学ぶことで(暴力に)加担しないよう抗っていきたい」と述べる。今後の活動は、SNSを通じて発信していくという。(柴田大輔)
確定申告が終わって思うこと《文京町便り》26
【コラム・原田博夫】自民党安倍派で蔓延(まんえん)していた、派閥パーティ券の売り上げの一部を派閥から戻す際、政治活動であれば政治団体の収入に記載しなくていいとの慣行・指示・経緯は不透明なまま、結局はうやむやに終わりそうな気配である。今年の確定申告でも、多くの国民は不承不承ながらも、国民の義務を果たすべく、申告会場に出向いたり、電子納税・申告システムe-Taxに付き合ったはずである。
そもそも、確定申告をしている納税者はどの程度いるのだろうか。そして、その納税額はどの程度なのか。
国の租税・印紙収入を2022年度決算で確認すると、一般会計分計は71.1兆円、うち所得税は22.5兆円(源泉分18.7兆円、申告分3.8兆円)である。今や消費税23.1兆円の後塵(こうじん)を拝しているが、法人税14.9兆円を上回っている。
申告納税分3.8兆円は、個人の確定申告の結果、その申告分だけが計上・納税されているわけでもない。国税庁『民間給与実態統計調査(1949年分から調査開始)』と『申告所得税標本調査(税務統計から見た申告所得税の実態、1951年分から調査開始)』から読み解いてみよう。ただし、両調査とも全数調査ではなく、復元推計手法による標本調査である。たとえば、大規模・多額の場合は全数だが、小規模・少額の場合は(1/400などの)サンプリングなので、所得税の納税状況の全体像をイメージするしかない。
給与所得者の申告納税額は少ない
『民間給与実態統計調査』によれば、2022年12月31日現在の源泉徴収義務者(要するに民間事業者)は287万件、給与所得者数は5967万人、支払われた給与総額は231.3兆円、源泉徴収所得税額は12.0兆円で、給与総額に占める税額の割合は5.21%である。このうち、1年を通じて勤務した給与所得者は4360万人、その税額は11.7兆円である。
他方、『申告所得税標本調査』は、事業所得者83万、不動産所得者39万、給与所得者117万、雑所得者29万、他の区分に該当しない所得者16万で、合計285万の標本数である。
これらの所得区分は、納税者に複数の所得源泉がある場合は、各種の所得区分の中で大きいものに分類される。申告納税者数は653万人、所得金額は46.4兆円、申告納税額は6.6兆円である。所得者区分別で給与所得者の人数・税額および構成割合は、申告納税者268万人・41.0%、申告所得金額20兆円・43.2%、申告税額3兆円・46.5%である。
この『申告所得税標本調査』によれば、税額は6.6兆円(源泉徴収税額3.0兆円、申告納税額3.7兆円)である。所得者区分別の税額内訳をみると、給与所得者は給与所得に対する源泉徴収税額74.4%、申告納税額23.1%と、申告納税額の割合が低い。要するに、大半の給与所得者は、源泉徴収制度に甘んじているのである。
愚民政策から脱却すべき
1940年4月に戦費の効率的な徴収システムとして拡大・開始された源泉徴収制度は、徴収サイドは無条件の給与所得控除制度の適用範囲を限定しながらも堅持する一方で、特定支出控除(実額控除)を部分的にしか進めない結果、納税者(給与所得者、および徴税業務を代理執行している納税義務者=事業者)も確定申告まで持ち込む準備ができていない、というのが大半の給与所得者の納税状況ではないか。
少なくともシャウプ勧告(1949年)の趣旨は申告納税制度の普及にあったはずなので、『論語・泰伯』の「由らしむべし、知らしむべからず」以来の愚民政策は、脱却すべきではないか。(専修大学名誉教授)
「当事者との対話が重要」 精神障害を初のテーマに 土浦市が職員研修
合理的配慮、民間義務付け前に
障害者差別解消法の改正に伴い、スロープ設置など障害への合理的配慮が4月1日から民間事業者にも義務付けられる。義務付けを前に土浦市役所で22日、市職員に向けて障害への理解を深めるための研修が実施された。2017年から年に一度、毎年開催されている。今年は初めて精神障害をテーマにし、すべての課や室から参加した約50人が当事者の話に耳を傾けた。
講師は、精神障害の当事者が運営する「精神障害当事者会ポルケ」(東京都大田区)代表理事の山田悠平さん(39)。同団体は2016年に発足した。「精神障害があることで経験する苦い経験や辛さも含めて、ひとりで抱え込まずに言葉にしていこう!」を合言葉に、当事者同士が交流する場づくりや、精神障害に関する調査、政策提言、学習会の開催など活発に活動している。
山田さんは21歳で精神科を受診し統合失調症と診断を受け、4度の入退院を繰り返してきた。精神障害があることで、言いたいことや抱えている悩みを周りと共有できなかったり、友人関係が途絶えてしまったりしたことがあった。当事者同士のつながりを作ろうと始めたのが「ポルケ」だった。見た目でわからない精神障害について、地域の人にも知ってもらおうと関連映画の上映や写真展を企画し障害への啓発活動もしている。
対話通じ時間をずらした
講演の冒頭で山田さんは、研修が午後2時から始まったことを「合理的配慮」の具体例として語った。市は当初午前中の開催を依頼していたが、山田さんが時間変更を希望した。山田さんは「私には午前中は体調面で難しいことがある。電車のラッシュにあたると、いいパフォーマンスを発揮できず支障が出るかもしれない。そこで時間の変更を相談した。すると『会場が取れたので午後にしましょう』と言っていただけた。時間をずらすことも合理的配慮」と話す。山田さんから伝えられた特性に市が配慮を示し、当事者と実施者が互いの対話を通じて、より適切に研修が行われる状態をつくり上げたと指摘する。
事業者が障害のある人に対して、障害を理由に来店を拒否したり、サービスを提供する時間や場所を限定するなど条件をつけることは、障害者差別解消法では「差別」にあたると禁止している。山田さんの体調に応じて市が研修時間を変更したことも、障害の特性に応じて時間を調整するなどルール・慣行の柔軟な変更を行う合理的配慮に当たるのだという。
一方で、事業者にとって過度の費用負担や物理的に実現不可能な場合は提供義務に反しないとされる。個別の場面で判断が求められるが、「障害があるからと特別扱いはできない」「前例がない」と無碍(むげ)に拒むことは認められていない。そこで大事になることが「対話」だと山田さんは強調する。
「合意的配慮ではプロセスが大事になる。障害者からの申し出への対応が難しい場合でも、できるかできないかを一方的に決めるのではなく、互いが持つ情報や意見を伝え合い、代わりになる手段を見つけていくことが求められる。障害者と事業者がともに解決策を検討していくことが重要になる」
権力勾配を意識して
山田さんは、合理的配慮の民間事業所への義務化を控えたこの時期が「重要なタイミング」だと語る。「合理的配慮には、障害者の側から『障害とはどういうものか』『このような配慮が必要』だと明らかにする必要がある。しかし精神障害には、偏見・差別の問題や中途障害であることもあり、当事者から言いにくいし、言語化に長けている人ばかりではない。今回の義務化は、改めて自分の障害をどう伝えて、どのような配慮を望み伝えるか、私たちにとってエンパワーメントの機会だと思っている。過渡期ではあるが、障害のない人と一緒に育まなければと思っている」という。
「対話が必要だが、障害のある人の背景をしっかり理解してもらう必要がある。『権力勾配』という言葉がある。例えば、一緒に話しましょうと言っても、力関係があることで対等に話せないことがある。行政など力を持つ側に意識をしてもらえるといい。障害者団体を招いて勉強会をするということは他の自治体にも広がってほしい」
伝えやすい環境づくりへ
今回の研修について市障害福祉課の酒井史人係長は「職員にとっては、ほとんど知らない内容も多かったと思う。当事者の方から直接実体験を聞くことでより伝わることが多いのではと考えた。さらに理解が進む必要があると思う」と話す。同課の白田博規課長は「4月には合理的配慮の法的義務が民間事業者にも課せられる。社会全体での対応がより必要になってくる」とし「窓口に来る方は車椅子の方ばかりではない。見た目でわかりにくい障害のある方がいるという認識が共生社会を作る上で大事になる。当事者も見た目でわからない分、『障害がある』と言えない人もいると思う。自分のことを伝えやすい環境をつくっていければ」と語った。(柴田大輔)
糞かぶりの虫がいるけど、あれ何?《宍塚の里山》111
【コラム・中原直子】「なんか、糞(ふん)かぶりの虫がいるんだけど、あれ何だろう」。2023年5月下旬、宍塚の里山で一緒に活動をしていた会員の大浦さんからそう声を掛けられました。大浦さんは小さな動物や植物を見つけるのがとても上手で、いつも観察会でいろいろな生物を見せてくれます。
行って見ると、畑に植えられたスカシユリの葉の上に、糞をかぶった体長5ミリ以上はあるハムシの幼虫がたくさん止まっています。ユリにつく大型のハムシというと限られるので、すぐにユリクビナガハムシの幼虫だとわかりました。
これまで宍塚でこのハムシを見たことがありません。宍塚では初めての記録となる昆虫なので、甲虫の研究者である吉武啓さん、重藤裕彬さん、高野勉さんと共に報文(吉武啓・中原直子・重藤裕彬・高野勉(2024)茨城県南部におけるユリクビナガハムシの発生確認と生態覚書、月刊むし636号、12~18ページ)として発表することにしました。
中国地方や九州以外ではまれ
ユリクビナガハムシはハムシ科の甲虫です。成虫の体長は約1センチ、全身が鮮やかな赤色をしています。終齢幼虫の体長は約8ミリで糞を背負っています。世界に広く分布している種ですが、日本で普通に見られるのは中国地方や九州で、それ以外の地域ではまれです。ユリ科やそれに近縁な植物の葉や花蕾を食べ、園芸ユリの害虫として知られています。
まず、茨城県でこれまでに記録があるのかを調べました。博物館の報告書や地方同好会の出版物は重要な資料です。すると、2008年に水戸市と小美玉市で確認されていることがわかりました。また世界中の文献を調べたところ、日本で最初に確認されたのは1930年代に佐賀県で、外来種か在来種かは不明ということもわかりました。
その後、宍塚だけにいるのか、周辺にも広くいるのか、近くでユリがある所を見て回ったところ、つくば市内の2カ所で見つけました。調査範囲を広げれば、もっと多くの場所で見つかることでしょう。
分布調査と同時に、どのように育つのか、幼虫や蛹(さなぎ)はどんな形態をしているのか飼育観察しました。その結果、卵から1カ月~1カ月半で成虫になること、羽化した成虫は数日間食草を食べた後、いったん活動を止めることなどがわかりました。
小さな疑問が新たな知識に
野外で見つけた「これは何だろう?」を追求し、時には人々の協力を得て深掘りしていくことで、小さな疑問は新たな知識を得ることにつながっていきます。そして、それを多くの人に読まれる形にしたものが報文です。生物の学会・研究会や出版社は数多くあり、それらが刊行される雑誌に手順と規約を守って正しく投稿し、掲載されると科学的に認められた記録となります。
これは後世への貴重な共有財産です。今回私たちがたくさんの文献を調べたように、私たちの報文をこの先新たな疑問を抱いた誰かが参考資料として使ってくれるかもしれません。
身近な生物でも、実は生態や分布がよくわかっていない種も少なくありません。野外でふと浮かんだ疑問を、もっと科学的に探求してみませんか。(宍塚の自然と歴史の会会員)
地域性配慮の地区別人数割に戻る 次期つくば市農業委員
つくば市農業委員会委員の任期満了(定数24、任期は5月18日までの3年間)に伴って、新しい農業委員を任命する議案が同市議会3月議会最終日の22日、本会議に提案された。同候補者選考会(会長・飯野哲雄副市長)の答申に基づいて五十嵐立青市長が提案した24人を次期農業委員に任命することについて、議会は全会一致で同意した。
注目された地区別人数割は、谷田部地区6人(候補者は11人)、筑波5人(同10人)、桜4人(同6人)、大穂4人(同4人)、豊里3人(同6人)、茎崎2人(同2人)となり、3年前の前回の改選時に、同候補者選考会に事務局案として最初に示された農地面積や農家戸数などを考慮した地区別人数割の考え方(谷田部6~7人、筑波4~6人、桜3~4人、大穂3人、豊里3人、茎崎2人)にほぼ収まる人数割となった。24人は現職15人、新人9人。男女別は男性22人、女性2人。
前回21年5月の改選時の地区別委員は、農地面積や農家戸数が市内で最も多く、農地転用や所有権移転などの農地法許可申請件数が最も多い谷田部地区が4人だったが、24年5月からは2人増え、18年5月時点と同じ6人に戻る。
市議の一人は「(地域制を考慮した)配置の考え方(前回の事務局案)を満たしているので今回、了承した」と話す。現職の農業委員の一人は新たな地区別人数について「本来の姿になったと思う」と話している。
前回3年前の改選時は、谷田部地区の委員が少なくなったなど地区別の人数割や農地法違反などをめぐって紛糾し(21年5月20日付、同28日付)、会長選をめぐって警察の捜査が入り、農業委員の一人が贈賄申し込みの罪で罰金50万円の略式命令を受け辞任するなどの事件に発展した。
今回の選考では、前回、紛糾の種になった地区別人数割について、どうなるかが注目されていた。
選考にあたっては、昨年10月に公募を実施。39人の応募があり、同12月4日に次の農業委員の候補者を選考する同候補者選考会(会長・飯野哲雄副市長)をスタートさせた。地区別人数割の扱いについては「(法令では)市内全域が一つの選挙区になっているが、極端な差があると後の運営に差し障りが出るのではないかということもあるので、どうしていくか協議していく」(飯野会長)としていた(23年12月5日付)。
選考会では、選考委員9人がそれぞれ、候補者39人に対し、農業委員としての責務を理解し意欲があるか、農地法に違反する転用があるかなど、選考シートに基づいて17項目について評価し評点を付けた。市農業委員会事務局によると、評点を付けた結果「地区バランスがとれており、支障をきたすものではなく妥当」だとして、評点に基づいて24人を選考し、五十嵐市長に答申したという。
新しい農業委員は5月19日以降開かれる総会で辞令が交付され、新しい会長などが選任される。(鈴木宏子)
