月曜日, 4月 6, 2026

小中学校でゲストティーチャーに 《邑から日本を見る》128

【コラム・先﨑千尋】「私は先﨑さんの話でかっこいいなと思うことがありました。それはふるさとを大切にしていること、そしてふるさとにほこりを持っていることです。自分が勉強したことを社会のために生かそうとする姿勢がとてもかっこいいと感じました」。私は昨年秋、瓜連小学校の5、6年生と中学校の1年生24人に、ゲストティーチャーとして「自分のキャリアをデザインしよう」という話をした。 私だけでなく、市長、住職、花栽培農家、看護師、消防士、新聞記者など、瓜連地区に住んでいるさまざまな職種の人が教壇に立った。 「自分の人生について考えようという総合的な学習の時間」の一コマで、地域と学校の子どもたちはつながっていることを学ばせたい、地域で活躍する人の話を聞き、自己の生き方を考えていく資質・能力を育成させたい、というのが学校側のねらい。3学年の生徒を異学年交流させ、一緒に聴いたあとで、講師の話をどう受け止めたかをディスカッションするというのがみそだ。 私はこの中で、小学生の時から家の仕事(農作業)を分担してやった、宿題は少なく放課後は友達とよく遊んだ、貧しかったが楽しかったという70年も前の子どもの暮らしや、小中学校の時どういう勉強をしたのか、社会に出て大事なことはどういうことかなどを話した。私が強調したのは、とにかくたくさん本を読むことと友だちをたくさん作ることの二つ。本を読むことによって、自分の世界が広がっていく楽しさを語った。 多く学べばそれだけ遠くへ飛べる そのあと、しばらくして子どもたちから手紙が届いた。冒頭の文もその一つ。他に「自分がどう生きたいのかは自分で決める。瓜連はステキな所だということがわかった。本をたくさん読む。食べることに感謝する。世のためにがんばりたい。自分の一生は世のために使いたい」などがあった。 私は手紙が届くとは考えていなかったので、うれしかった。いずれも、私の言いたかったこと、訴えたかったことを的確にとらえ、自分のものにし、これから進む道への希望を書いてくれている。 私は返事を書くことにし、話を聞いてくれた一人一人に万年筆で名前を書き、学校に届けた。「子どもの時に多くのこと、人間の基礎となることを学ぶことが大事。多く学べばそれだけ遠くへ飛べる、行ける。心も豊かになれる」と書いた。そして「道」という松下幸之助の次の詞(うた)を添えた。私の孫よりもさらに若い世代の人との対話。希望が見えてくる。 自分には 与えられた道がある広い時もある 狭い時もあるのぼりもあれば くだりもある思案にあまる時もあろうしかし 心を定め 希望をもって歩むならば 必ず道は開けてくる深い喜びも そこから生まれてくる(元瓜連町長)

日本の外科のルーツを探る 《くずかごの唄》122

【コラム・奥井登美子】盛岡恭彦先生への手紙 清へ「お元気ですか?」のおはがきいただき、ありがとうございました。彼は昨年4月、「ピンピンコロリバタンキュー。家で死にたい」という彼の望み通りの死に方で、宇宙のかなたに飛んで行ってしまいました。 93歳。先生方の手厚い医療のおかげで、痛い所もなく、個性を残しながら、うらやましいような最後でした。コロナのクラスターを恐れて、どなたにも通知せずに納骨など家族だけで行いました。 清の76歳の大動脈解離の時、近代外科の父・アンブロアズ・パレ400年祭の時、東京歴史散歩の時…。ずいぶんお世話になった先生に、ご通知が遅れてしまいましたのを、お許し下さい。 昨年の秋、五所駒瀧(ごしょこまがたき)神社(桜川市真壁町)へ紅葉を見に行ってきました。盛岡先生がパレの400年祭の時に記念に植えたヤマボウシの木も、2メートルの高さになって元気でした。宮司の桜井崇・まゆみさん夫妻もとても喜んでくださり、ヤマボウシの花は普通、白ですが、この木は特別、紅色の花が咲くことを教えてくださいました。 どちらが先に読むか、清とけんか 1991年、日本古来の手作り石灯籠を、フランスの外科医の本源を確立したパレの400年祭に合わせて、生誕地に送るために日本の伝統的な禊(みそ)ぎ行事を真壁の五所駒瀧神社で行いました。 『近代外科の父・パレ‐日本の外科のルーツを探る』(NHKブックス、1990年刊)の著者3人、佐野武先生(東京大学医学部)、大村敏郎先生(慶応義塾大学医学部)、盛岡恭彦先生(東京大学医学部)と、加賀美尚先生(埼玉医大)、奥井勝二(千葉大学医学部)、真壁町医師会の草間昇氏、仏大使館グルギェール氏、仏薬剤師会のテメム氏、石工の加藤征一氏。 画家の新居田郁夫氏、日仏薬学会事務長の奥井清。 今考えると、再現することができない人材。すごい個性の人たちが、かやぶき屋根の神社に集まって、1000年の伝統がある桜井崇さんの祝詞(のりと)を聞き、禊ぎをしたのでした。私にとっても、人生の大事な、いい思い出となりました。 先生の著書「医学の近代史・苦闘の道のりをたどる」(NHK出版)、「人は人をどう癒してきたか」(同)などなど。清と、どちらが先に読むかけんかしながら読み、そして今でも手元に置いて、時々広げて内容を味わっております。(随筆家)

夢の「青いラン」特別公開 つくば蘭展 22日開幕 実験植物園

世界の野生ランを収集、保存する国立科学博物館 筑波実験植物園(つくば市天久保)で「世界のランと出会う つくば蘭展」が22日から開催される。今年は、ツユクサの遺伝子を導入し開発された「青いラン」が特別公開されるほか、同館がコレクションする3000種余りのランの中から現在咲いている約200種が展示される。 29日まで。同展は1980年代に始まり、コロナ以前は毎年9000人余りが訪れてきた。 青いランは石原産業(大阪市、田中健一会長)と千葉大学が共同開発した。監修する同博物館研究員の遊川知久さん(61)によると、2012年に初めて花をつけた第1世代に続く第2世代にあたる。遊川さんは青いランについて「極めてまれ。花の品種改良をする人にとって、人生を賭ける人もいるほど。『夢』みたいなもの」と希少性を伝える。 ランの謎に迫るセミナー開催 期間中に開くオンラインセミナーでは、展示される各種のランを専門家がオンラインで解説する「つくば蘭展ラン♪らん♪ガイド」を27日午後7時から、ランを取り巻く最先端の科学技術を解説する「バイオテクノロジーでランを未来へ」を29日午後1時から、それぞれ同館の公式YouTubeチャンネルでライブ配信する。オンラインセミナーはコロナ禍をきっかけに始まった。 対面企画として22日午後1時から植物園内研修展示館3階セミナー室で、遊川さんが絶滅の危機にあるランをめぐる最新研究を紹介する。遊川さんによると、ランは絶滅の恐れのある種が最も多い仲間の一つ。実に、日本のランの3分の1ほどが絶滅危惧種であるという。セミナーでは「ランがなぜ、特異的に絶滅の渦に巻き込まれているのか、その謎解きをしてみたい」と言い、「話の中で意外性が出てくるはず。ランのことをよく知らなかった方々に聞いてもらいたい。『ランってこんな植物だったの?』という発見があると思う」と参加を呼び掛ける。 同館広報の田中庸照さん(36)は「国内外を含めてこれだけの種類のランが見られる機会は少ないと思う。毎年開催時期が少しずつ違うので、咲いている種類も異なる。毎年来られている方にも楽しんでいただけるはず」と話す。(柴田大輔) ◆企画展「世界のランと出会う つくば蘭展」は22日(日)から29日(日)まで、つくば市天久保4-1-1、国立科学博物館 筑波実験植物園で開催。会期中は無休。開園時間は午前9時~午後4時30分▷期間中はパンフレットやランをモチーフとしたぬり絵の無料配布、平日に限り先着100人に青いランのポストカードがプレゼントされる。会期中の平日午前9時から11時の間に限り、熱帯資源植物温室と多目的温室で三脚と一脚を使っての写真撮影が可能▷入園料は一般320円(税込み)、高校生以下と65歳以上は無料。問い合わせは電話029-851-5159(同園)。詳細はイベントホームページまで。

運か才能か努力か《続・気軽にSOS》125

【コラム・浅井和幸】2022年のイグノーベル賞で、最も成功するのは、そこそこの才能と大きな運が大切であるという論文がありました。それはさておき、全ての人は一生懸命に頑張って生きていると私は考えています。 ですが、一生懸命に頑張ってもうまくいかないことがあります。自分より豊かな人は何かずるいことをしているのではないか、ただ運がいいだけじゃないのか―と捉えてしまうこともあります。自分よりも豊かでない人には、自業自得だとか、努力が足りないからだ―と捉えてしまうこともあるようです。苦しいときは、このような考えが浮かび、やりきれなくなるものです。 私が代表理事をしている一般社団法人LANSという居住支援法人があります。「住宅確保要配慮者」の方々、つまり住まいが不安定な方々を様々な面で支援しています。 暴力からの避難。会社を辞めさせられ社員寮からの退居。住居取り壊しや火災。自己破産での自宅手放し。家賃の滞納。近隣住民とのトラブル。低所得者や障害者や高齢者。母子・父子家庭。ホームレスや車上生活者。刑余者などで住まいを見つけることが困難な方。 保証人がいない、天涯孤独で緊急連絡先になる人がいない、保証会社が通らない、初期費用が払えない―などで賃貸住宅の契約ができない方もいます。 そのような方には、不動産会社、福祉事業所、病院、自治体などと連携し、各種の制度を利用して、住まいのマッチングを考えます。中には、冷蔵庫や洗濯機などを所持していないし購入もできない、プロパンガス契約の保証金1万円が払えない―というような人もいます。 日用品を購入してまで寄付をいただく そのような状況に理解のある方から、寄付を常時募集しています。昔、自分も貧乏で大変だったから、役立ててほしいと、寄付をいただくこともあります。捨てるに捨てられないで家に置いてある衣装ケース、昔使っていた布団が押し入れに眠っている―などです。 定期的に寄付をいただく方が言っていました。今、自分は不自由なく暮らしている。それなりに良い暮らしをしている。でもそれは運が良かっただけ。支援を受けることになっていたかもしれない。これからも分らない。 とても努力をされたであろうことは想像に難くない方です。ですが、客観的にご自身をそのように捉えられているのでしょう。日用品を購入してまで寄付をいただくこともあります。感謝に堪えません。自分もこのような気持ちを持っていたいと考えています。(精神保健福祉士)

公認競技場の存在意義 筑波大陸上競技場(下)

筑波大学陸上競技場(つくば市天王台)が日本陸連の公認を必要とする理由は何か。同大陸上競技部前副主将の伊藤海斗さん、同じく学年代表の池田涼香さんは、同競技場で開催される競技会が、同大陸上競技部の活動に大きく関わるだけでなく、地域の競技者にとっても、主要大会への出場資格となる公認記録を得るための貴重な機会となっていると話す。 競技会は地域貢献にも 陸上競技で、県大会や全国大会などの主要な大会に出場するには、多くの場合、参加標準記録の突破が条件になる。必要な公認記録を取ることができるのは、公認の競技場で開催されるなど一定の条件で開催された競技会に限られる。 同大陸上競技場では年十数回の競技会を開催している。このうち筑波大学競技会は、コロナ前は県内外から毎回5000人ほど、年間にしてのべ約3万人の参加者があった。 主に外部の中高生や一般競技者が記録を取得するための競技会で、同大陸上競技部が運営している。陸上競技の各種目をフルで行う場合、公認審判員や計測員、記録員などの大会係員がのべ200人ほど必要だ。これらの人的資源を学生の協力で賄えるのが大学競技会の利点であり、学生が自力で通える大学の競技場だからこそ可能になる。 強豪校に不可欠な環境 もう一つ、筑波大学記録突破会がある。学生が自分たちで記録を出すための、学内向けの競技会だ。陸上競技部の目標とするインカレ総合優勝を達成するには、その第一歩となる公認記録の取得が欠かせない。このため学内の競技場が公認を失うことは、陸上競技部にとって大きな痛手となる。 他大学など外部の競技会へ遠征するとなると、参加費や交通費などの個人負担がかさむほか、移動時間が長くなり、選手のコンディションにも影響する。学内であれば良い条件の日を選んで開催でき、より良い記録が出しやすい。 こうした状況はいずこも同じで、陸上競技が強い大学の多くが自ら公認競技場を持ち、競技会を開いている。公認競技場を持たない大学でも、市や県の公認競技場と連携することで同様の体制を築いている。 例えば第3種公認の龍ケ崎市陸上競技場は、ネーミングライツにより流通経済大龍ケ崎フィールドと呼称し、同大陸上競技部が競技会を開催している。今年度は陸上競技会を8回(うち2回は学内向け)、長距離・投てき競技会を2回予定し、参加者は陸上競技会で平均200人、多いときは500人を超えることもあるという。 市との連携望む声も 筑波大学陸上競技場では、ほかに小・中・高校生向けの陸上教室や、パラ陸上教室、指導者研究会なども開催されている。 つくば市内の陸上競技大会の多くも以前はここで開かれていた。だが今は筑波大離れが進んでいる。 同市小学校陸上記録会は、もともと公認競技場を使う必要のない大会でもあり、働き方改革に伴う教員の負担軽減のため、2019年度からは各学園で開かれている。市中学校陸上競技大会は、今年度は第3種公認の石岡市運動公園陸上競技場で開催された。つくば陸上競技選手権大会は、コロナ禍を理由に昨年度と今年度は中止されている。つくばマラソンは、昨年も筑波大学陸上競技場を発着地点として開催されたが、これはコース自体が日本陸連の公認を得ており、競技場自体の公認の有無は関係ない。 現在、つくば市では新たな陸上競技場の建設計画が進められている。同市の人口規模からしてもあって然るべき施設だが、「あえて交通の不便な上郷高校跡に、高いコストをかけて造るのは無駄が多い」「市と大学の連携により、筑波大学陸上競技場の受け入れ能力を最大限活用し、さらなる地域利用を図るのが最適解ではないか」という市民の意見もある。(池田充雄) 終わり ◆公認の陸上競技場を持つ関東圏の主な大学は以下の通り第3種:筑波大、順天堂大、日本体育大、国際武道大、中央大、法政大、国士館大、東海大第4種:日本女子体育大、東京学芸大、日本大、一橋大、東京大、帝京大、東京女子体育大、立教大、早稲田大、大東文化大、慶應大※第3種と第4種の主な違いは、トラックが全天候舗装に限られるか、土質でも可か。

つくば松代公園の雪景色 《ご近所スケッチ》2

【コラム・川浪せつ子】つくば市には49もの公園があるとか。種類はいろいろで、松代公園(松代3丁目2)は、都市計画上「近郊公園」と言うそうです。つまり、近くに住む市民のための公園ということでしょうか。 公園のお隣は小学校です。斜め前には、児童館、幼稚園、保育所などがあり、子供たちのかわいい声が、いつも聞こえてきます。放課後や休日には、親たちも加わって集いの場所になります。 小さめですが池があり、自然のアカマツ林を生かした公園で、ガチョウ、ハクチョウ、シラサギなどが遊び、自然の宝庫でもあります。 四季折々の花々も素晴らしいです。春には、桜の花はもちろん、藤棚も2か所あり、豪華なしつらえです。夏には、心地よい日陰のベンチに座って、ポワ~ンと空や木々を眺めるのが好きです。紅葉の時期は、色付いた木々が心まで温かくしてくれます。 我が家の子供たちが小さいころには、この公園まで乳母車を押して。少し大きくなったら、一緒に自転車で。松代公園は、近くの住民しか知らないパワースポット? 「え~、これが、あの公園!」 この大好きな公園。雪の降った日にはどんな風景が見えるのか、訪ねてみました。家から1時間ほど歩き、雪の日の絵の取材。とても寒かったですが、素晴らしい雪景色にたくさん出合うことができました。 後日、公園の近くに住む友人に、この絵を見てもらったら、「え~、これが、あの公園!」と、ビックリしていました。 そうです、雪は、いつも見ている場所を変身させてしまうのですね。雪国の友だちは「雪とは、日々、戦いなんだよ」と言っていましたが、絵を描く者にとっては、天からのプレゼントです。雪国で大変な方々、ごめんなさい。(イラストレーター)

公認更新へ危機脱する 筑波大陸上競技場(上)

募金に加え工事絞り込み 予算不足で4月から、日本陸上競技連盟(日本陸連)第3種公認の更新を受けられるか否か危ぶまれていた筑波大学陸上競技場(つくば市天王台)が、公認更新に必要な工事を実施できる見通しとなった。昨年11月5日から急ぎ募金活動を開始、12月12日までに約1370万円が集まり、これに大学の予算を加え、さらに改修項目を絞り込むことで危機を脱した。 レーン幅の修正必須 陸上競技場の公認制度は、日本陸連が競技規則に従い、公認競技会を開催するために適切な施設であることを認定するもの。第1種から第4種L(ライト)までの5種別があり、いずれも有効期間は5年間で、更新の際は再検定が必要となる。 筑波大の場合、第3種公認の有効期限が今年3月31日に迫っており、しかも今回の更新では、レーン(走路)幅の修正を含む大がかりな改修工事が必要となっていた。 従来、陸上競技のレーン幅は国内規格の1.25メートルと国際規格の1.22メートルが競技場ごとに混在していた。2019年度から国際基準への統一が図られ、旧レーン幅の競技場は次回の公認更新までに修正することになった。該当する競技場は全国で256ある。 2カ年に分けて工費分散 同大教育推進部教育推進課体育センター主幹の菊池文武さんによると、体育センターでは、今回の改修が厳しいものになると予想し、補修個所を必要最小限にとどめる一方、工事を2期に分けることで予算の分散化を図った。 2021年度の工事内容はトラック部分が中心で、レーン幅の修正とそれに伴うラインやマークの打ち直し、高圧洗浄などを行った。路面の傷みが激しいスタートライン付近などは、舗装を切りはがし、クッション材やエンボス材を再度吹き付ける「切削オーバーレイ」という工法により修復した。 22年度はフィールド部分で各種目のレーン幅修正と、踏み切り地点などの切削オーバーレイをする予定。加えてトラック部分の追加工事もある。8レーン中最内の第1レーンは、特に酷使され摩耗が著しく、切削オーバーレイが必要となった。ほかにも跳躍場の砂の補充や、インフィールドからはみ出した芝の刈り込みなど、こまごまとした補修も多い。これらは日本陸連の事前審査で指摘された部分だ。 物価高が大きなハードル 21年度の工事費約2860万円は大学の予算で賄うことができた。今年度分については、昨今の物価高、円安による資材費や物流費などの高騰、光熱費の高騰などに対応した学内全体の予算編成を行っていることを踏まえて、調整を行っているという。 不足分は寄付に頼るしかないと、昨年11月5日からメールやSNSなどを通じて寄付を募り始めた。当初は11月末だった期限を12月12日まで延長、陸上競技部の部員らも一部を負担することで、何とか学外からも寄付を募ることができた。なお寄付は現在も受け付けており、追加予算が取れれば、今回は断念した部分の修復に充てていくという。 支援金で予算不足を補う 予算不足には同大固有の事情もある。今年10月、開学から50年になり、多くの施設が一斉に改修時期を迎えている。他の施設・設備の老朽改善なども順次進めている。 総合大学として多様な施設・設備を有し、しかも国立大学では数少ない体育専門学群があるため体育施設は特に多く、一部施設に大きく予算を割くことは難しい。インカレなどの大舞台でしのぎを削る有力私大と比べると、収入や財源で差があり、同窓会の規模や年齢層の厚みも違うため、寄付金の額も大きく異なる。 そのような事情の中、いち早く活用してきたのがクラウドファンディングだ。陸上競技部の長距離パートでは、箱根駅伝復活プロジェクトの一環として2016年から取り組み、得られた支援金で強化費や遠征費などを捻出し、2020年の本戦出場を果たした。今年度は蹴球部が第1サッカー場の改修で約1820万円を集め、老朽化した人工芝の張り替えを実現できた。 大学としても今後、産学連携による企業からの資金導入や、文科省が創設した10兆円規模の大学ファンドの活用などにより、収入の改善を図るという。(池田充雄) 続く ◆筑波大学陸上競技場の改修寄付申し込みフォームはこちら

「至高の暗黒シート」を開発 産総研 光閉じ込める漆黒 

産業技術総合研究所(つくば市)物理計測標準研究部門の雨宮邦招研究グループ長(応用光計測研究グループ)が名付けた「至高の暗黒シート」は、これまで誰も見たことのない「黒さ」を実現する。特殊な黒色樹脂の表面に微細な凹凸を形成して光を閉じ込める構造をしており、可視光の99.98%以上を吸収する。従来の暗黒シートと比べて可視光の反射率が一桁低く、触っても壊れない耐久性を有する素材としては世界一の黒さを達成したという。 雨宮グループ長らが18日、記者発表し、従来品などと「黒さ」を見比べるデモンストレーションを行った。 「黒さ」の度合は光、特に可視光の吸収率によって決まる。暗黒シートは、ミクロなサイズの円錐孔型の黒体を並べた構造を、面上に敷き詰めている。この構造は、光閉じ込め構造になっていて、入射した光は、壁面で何度も吸収・反射を繰り返し、正味の反射率がゼロに近づいていく。 産総研は2019年に、紫外線~可視光~赤外線の全域で99.5%以上の光を吸収する「究極の暗黒シート」を開発した。カーボンブラック顔料を混錬したシリコーンゴムを素材に用い、量子科学技術研究開発機構(高崎市)のサイクロトロン加速器からのイオンビーム照射と化学エッチングによって光閉じ込め構造をつくった。 吸収率を99.5%から99.98%にまで高めたとは、光の反射率を0.5%から0.02%まで低減させたともいえる。正味の反射率が0.1%を大きく下回るには、光閉じ込め構造の勾配を急峻にし、エッジは鋭く、壁面はナノレベルで滑らかにする必要があった。従来の微細加工技術では作製が困難で、サイクロトロン加速器の高エネルギーイオンビームを用いた。以来素材探しと作製法の改良を繰り返したのが「究極」から「至高」に至る4年間だった。 これまで暗黒シートの反射率低減を制約してきた原因が、カーボンブラック顔料による散乱であると突き止めた。カーボンブラック粒子は光の散乱が生じやすくなるため、光閉じ込め構造から散乱光が一部逃げてしまう。そこで、低散乱な黒色基材の探索を行い、漆(うるし)塗りの代用にも用いられるカシューオイル樹脂に着目したという。 カシューオイル樹脂を構成するポリフェノール類は、漆の成分と類似しており、鉄と錯体を作ることでポリマー自体が顔料を加えなくても黒くなる。この黒色樹脂膜は散乱反射(くすみ)の量が極めて少ないことがわかった。「漆黒」は通常、鏡面に磨いた光沢のある黒を指すが、同時にくすみの少ない「深みのある黒」も意味すると言える(雨宮グループ長)という。 機能性ポリマーの精製カシューオイルは工業製品として市販されている。炭素素材に代えて使ったことで、もろく壊れやすい難点の克服にもつながった。取り扱いが容易になったことで利用範囲も広がりそうで、今後は作製方法の改良など実用化に向けた研究に踏み込んでいく構えだ。 低反射な黒色材料は、装飾、映像、太陽エネルギー利用、光センサーなど、光の応用分野で幅広く用いられている。特に、カメラや分光分析装置内部の乱反射防止、迷光除去などの用途では、理想的には完全に無反射の黒体材料が切望されている。(相澤冬樹)

政治判断より技術的判断を TX県内延伸で塚本元県議

土浦商工会議所青年部主催のTX県内延伸討論会が17日夜、土浦市内で開かれた。パネル討論に先立ち基調講演した塚本一也氏(大曽根タクシー社長、元県議)は、延伸先候補地域の誘致活動が過熱化していることを念頭に置き、「延伸ルートは、政治判断よりも技術的判断を優先すべきだ」と述べ、選定作業を進めている茨城県に対しクールな判断を求めた。 県の選定委員会は現在、4候補(水戸市、土浦市、筑波山、茨城空港)の中から延伸先を1つに絞り込む作業を進めている。県のスケジュールでは、2月9日に選定委から答申をもらい、広く県民の声を聞いた後、3月末までに決定する段取りになっている。 JRとの交差=都心への選択肢 JRに15年勤務(専門は駅舎設計)しTXに関する著作もある塚本氏は、鉄道についての豊富な知識を駆使、①現在の最速運転は毎時130キロだが、なだらかな線形から同160キロの運転が可能、②高架と地下で構成され、踏切がない鉄道なので輸送障害が少ない、③自動列車運転装置(ATO)により、安全で効率的な運行ができる―などの強みを列挙、こういった特性を生かされる延伸ルートが好ましいと強調した。 また、現TX(秋葉原―つくば市)については、①JR常磐線の混雑緩和、②沿線に住宅を供給し、首都圏住宅問題の解決―を目的にしていたと指摘。TX延伸ルートが常磐線と交わることによって、当初の建設目的がより充実することが望ましいとの視点を提供した。 この関連で、土浦が延伸先になる利点として、①土浦には、公的機関、教育施設、娯楽施設などが充実しており、既存のTX沿線地域にはない都市機能が整っている、②JR駅も複数あり、利用者は都心へのアクセス手段を選択できる、③JRに事故があった際、振り替え輸送が可能になる、④東京へのルートが違うため、JRとの共存が可能になる―などを挙げた。 土浦通過=ずばり経済効果が大 討論会では、「TXが土浦を通過すれば、ずばり経済効果が大きい。それは(既存沿線の)守谷市、つくば市を見ればわかる」(中川喜久治・土浦商工会議所会頭)、「(公開されている)選定委員会の討議資料を見て、土浦延伸を確信している」(小坂博・土浦市議会議長)、「土浦になれば、定住人口、交流人口が増え、会議所会員の仕事の幅が広がる」(池田雄一・土浦商工会議所青年部会長)などの発言があった。 TX土浦延伸を盛り上げる講演・討論会は、青年部の新春交歓会の目玉としてセットされた。討論会の後、会議所の若手会員は3年振りの懇親会に移った。(岩田大志)

国連は誰のことも否定していないか 《電動車いすから見た景色》38

【コラム・川端舞】昨年9月、「国連が特別支援教育の中止を勧告した」と報道されたとき、特にインターネット上では様々な意見が聞かれた。特別支援学校を卒業した障害当事者や、今、特別支援学校で障害児ひとりひとりと向き合っている教員からすれば、自分の経験を否定されてしまったように感じたかもしれない。 しかし、改めて国連の勧告を読むと、「分離された特別支援教育を中止するために、国家政策などの中で障害児がインクル―シブ教育を受ける権利を認め、全ての障害児が、あらゆるレベルの教育において、必要な支援を受けられるように国家計画を採択すること」とある。 国連は今すぐに特別支援学校などを廃止することは求めておらず、どんな障害があってもインクルーシブ教育を受けられるようにするために、普通学校が障害児の入学を拒否できないようにするなど、普通学校のあり方を変えるように求めているのだ。 現在、特別支援学校でやられている障害児ひとりひとりに合わせた丁寧な指導を国連は否定しているわけではないと、私は思う。 特別支援学校の良さを教えて 私は特別支援学校に通った経験がないため、今の特別支援学校の良さを十分には理解できていないだろう。だから、特別支援学校の先生方や卒業生に、ぜひ特別支援学校の良さを教えてほしい。そして、今の普通学校をどう変えていけば、特別支援学校の良さを普通学校でも実現できるか、一緒に考えてほしい。これは、長年、特別支援学校を経験してきた障害当事者や先生方にしかできないことだ。 全く違う立場で経験してきたことを、お互いに共有し合うのは勇気のいることかもしれない。しかし、異なる経験や意見を持つ人同士がお互いを知っていくことで、どんな障害があっても、その子らしく居られる新しい普通学校の形が見えてくるのかもしれない。(障害当事者)

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