月曜日, 4月 6, 2026

仙台という町の魅力《遊民通信》77

【コラム・田口哲郎】 前略 先日、旅行で仙台に行ってきました。私は高校卒業まで12年間を仙台で過ごしましたので、思い出深い町です。仙台といえば杜(もり)の都として有名です。杜の都というのは伊達政宗が家臣の屋敷に果樹などの樹木を植えるよう推奨したことで、都市計画と植栽が絶妙なバランスでうまくいき、その伝統が現在の仙台市にも受け継がれているという意味だそうです。 たしかに、青葉通り、定禅寺通りのけやき並木は見事ですし、メインストリートのつき当たりには西公園という広瀬川沿いの崖の上にある緑地があり、都会の中でも存分に自然を感じられます。 ヒューマンスケールに見合った町 仙台平野の北端に青葉山があり、より北には泉ケ岳がそびえます。この都心へのアクセスもよい北側エリアには、バブル期に東京に本社を置く大手デベロッパーがニュータウンを開発しました。私はそこに住んでいました。 今回、自家用車でニュータウンに行きました。団地の住人の高齢化が進んでいたものの、空気がきれいなのか家々は古びておらず、20年前とそんなに変わらない光景がありました。団地から駅前(仙台では「まち」と言います)までは車で15分でした。住んでいた当時は、郊外は「まち」まで出るのに不便だなと感じていました(バスだと40分かかりました)が、その考えが間違っていることに気づかされました。 団地から「まち」までは近かったのです。車も多くなく、道も空いていました。茨城県南を含む首都圏では考えられないことです。仙台という町がいかにコンパクトで、都市機能が集中しているのかがわかります。あまり移動に時間をかけなくても、都市生活が送れるのはとても魅力的だと思います。 仙台駅前から勾当台(こうとうだい)公園までつづくアーケイド街を歩きました。古くからの仙台のお店はかなり閉店していて、チェーン店が増えていました。残念なことですが、裏を返すと、仙台でも東京と変わらないお店に行けるようになったということです。今回は仙台という町が持つポテンシャルを改めて知る機会になりました。ごきげんよう。 草々 (散歩好きの文明批評家)

韓国事情:インドネシア、ベトナムに続き《文京町便り》22

【コラム・原田博夫】10月下旬、韓国ソウルを訪れた。ソウル国立大学アジアセンターSNUAC・政治社会学会ASPOS共催の国際コンファレンス(10月27日)に参加・発表(基調講演)するためである。コンファレンスのテーマは、“Digital Globalization and Its Unequal Impacts on East Asia: Platform Economy, Migration, and Democracy(東アジアへのデジタル・グローバリゼーションの不均等な影響:プラットフォーム経済、移民、民主主義)”だった。 政治社会学会ASPOSは2010年3月に発足し、第1回研究大会(2010年10月)を早稲田大学で開催している。私自身は創立メンバーで第2代理事長だが、この国際コンファレンスは当初から、韓国SNUACと日本ASPOSが交互に隔年で開催してきた。コロナ禍の20年・21年は開催を見送ったものの、22年に同志社大学で再開したのに続いて、今年はソウルでの開催になった。 参加者は日韓に限定せず、今回でいえば、モンゴル、台湾(香港出身)、フィリピン(東洋大学に在籍)などもいたが、この会議の特徴はあくまでも個人資格での参加なので、所属国・機関の立場・主張を代弁するものではない。この継続には、カウンターパートの韓国SNUACの創立所長であるヒュンチン・リム名誉教授・韓国科学アカデミー会員の強力なリーダーシップと先見性が貢献している。 VUCA時代にはGDPを超えて 私の基調講演は“Political Economy in 21st Century: In the Age of Volatility, Uncertainty,...

仮面夫婦《短いおはなし》21

【ノベル・伊東葎花】 サイドテーブルの上に離婚届。今日、姪(めい)の結婚式に夫婦そろって出席した後、私たちは離婚する。 「ねえ、麻衣のために、今日だけは円満な夫婦を演じてね」 「わかってるよ」 夫は白いネクタイを無表情で結び、部屋を出て行った。姪の麻衣は、子供がいない私たちにとって娘のような存在だ。麻衣を悲しませたくないのは、私も夫も同じだ。 タクシーの中ではひと言も話さなかった夫が、式場に着くなり兄と義姉のところに駆け寄り、「おめでとうございます」とにこやかに言った。 「武夫君、仕事が忙しいのに悪かったね、平日の式なんて迷惑だったろう」 「いえいえ。麻衣ちゃんは僕にとっても娘みたいなものです。かわいい姪のためなら仕事なんて休みますよ。なっ、亮子」 夫が半年ぶりに私の名前を呼んだ。まあ、演技がうまいこと。それなら私も女優になろう。夫に寄り添い、仲良し夫婦みたいに笑った。 「麻衣の理想の夫婦はね、武夫さんと亮子さんなのよ」 「え?」 「お互い仕事を持っていて、尊敬しあっているからですって」 義姉の言葉に、思わず夫と顔を見合わせてしまった。 「ふたりの生活スタイルが、おしゃれでカッコいいって言ってたわ」 麻衣が頻繁にうちに来ていたころ、夫と私は今みたいに険悪じゃなかった。家事を分担したり、お互いの仕事の話で意見を言い合ったりした。あの頃は楽しかった。 いつから歯車が狂ったのだろう。夫も同じことを考えていたようで、席に着くなりため息をついた。 「子供がいたら違ったかしらね」 私の小さなつぶやきに、夫は何も答えなかった。子供がいない人生を選んだのは私。原因がそこにあるなら、もはや修復は不可能だ。 ウエディングマーチが流れて、兄と腕を組んだ麻衣がバージンロードを歩き始めた。ため息が出るほどきれいだ。麻衣は、私たちを見つけると、無邪気な笑顔で手を振った。途端に、夫が号泣した。うそでしょう。それはもう、周りが引くほど泣いている。ハンカチを手渡して、気づけばその手を握っていた。 式と披露宴、私たちは円満な夫婦を演じきった。私たちの演技はうまかった。演技であることを忘れるほどだった。披露宴の後、麻衣が私たちのところに来て言った。 「今日はありがとう。私、ふたりのような家庭をつくるね」 さすがに胸が痛む。 「私たちみたいになっちゃだめ。ちゃんと子供を産んでお母さんになりなさい」 いくらか涙声になってしまった。すると夫が、後ろから私の肩に手を置いた。 「俺は子供がいなくてよかったよ。だってさ、姪の結婚式でこんなにぼろぼろだよ。自分の娘だったら会場が洪水になる」 あははと麻衣が笑ったけれど、私は涙が止まらなくなった。 帰りのタクシーを待っていると、夫がネクタイを緩めながらぽつりと言った。 「ちょっと飲んでいくか」 「…じゃあ、武夫のおごりね」 私は、久しぶりに夫を名前で呼んだ。 仮面が少しだけ外れた11月22日。世間では、「いい夫婦の日」と言うらしい。 (作家)

給食費の不明金860万円 小学校事務職員に損害賠償請求へ つくば市

つくば市立小学校に勤務していた事務職員が、2018年6月から21年3月までの間、不適正な会計処理を行い、保護者から集めた給食費計約860万円を紛失したなどとして、つくば市は21日、事務職員を相手取って、約860万円と延滞金などの返済を求める損害賠償請求訴訟を起こす方針を明らかにした。30日開会の市議会12月定例会に提案する。 市健康教育課によると、事務職員は当時、保護者から集めた給食費を毎月、学校の銀行口座から現金で引き落とし、市役所の口座に振り込む仕事をしていた。 徴収した給食費の総額よりも、18年度は約40万円、19年度は約235万円、20年度は約584万円少なく、市の口座に振り込んでいたという。 20年12月、学校が保護者から徴収した給食費とは別の諸費用について、保護者の一人から、重複して引き落とされていると学校に連絡があり発覚した。調査したところ、同じ事務職員が担当していた給食費について、徴収した総額と、市の口座に振り込まれた金額が一致しないことが分かった。 市の調べに対し事務職員は、総額860万円が不明であることを認め、紛失させてしまったなどと釈明したという。事務職員は今年3月、860万円を市に返済すると誓約書を書いて約束、市は6月に請求書を送ったが支払いがなく、さらに督促状を送付したが、期限の8月18日までに支払いがなかったことから裁判に訴えるとしている。 事務職員の氏名や年齢、性別、現在の勤務先などについて市は、公表できないとしている。一方、今年7月、学校長が不明金について警察に被害届を出したという。 同課によると現在の学校給食費の徴収方法は、19年7月に文科省から学校給食費徴収・管理ガイドラインが出されたことを受けて、同市では21年4月から、学校を経由せず、市が保護者の口座から引き落とす方法に変更している。

障がい者の意志を伝える装置《デザインについて考える》2

【コラム・三橋俊雄】私が浪人時代、高校の友人に誘われて、障がい者施設にボランティアに行きました。施設のガラス窓を拭いたり、石膏のギブスを埋める大きな穴を掘ったり…。あるとき、施設の子どもたちと遊んでいて、小さな女の子に「おにいちゃん、ぶらんぶらんして」と言われ、その女の子を遊ばせていましたが、彼女の両腕が無いことに気付きました。その子はサリドマイドの子であり、それが私にとって初めての障がい者との出会いでした。 そんなこともあって、大学での卒業研究のテーマが障がい者のためのデザインになったのだと思います。夏の熱い日差しを今でも覚えています。卒業研究のために訪れた千葉県の障がい者施設で、脳性小児麻痺のT君(14歳)と出会いました。 彼は、自分で歩くこともできない、話すこともできない、食べることもトイレに行くことも自分の力ではできませんでした。まさに、ないないづくしの少年でした。はじめ私は、彼のための車いすのデザインをしようと、その少年を紹介してもらったのですが、彼と一緒の時間を過ごし、彼を観察していくうちに、彼にとって一番大切なこと、一番解決しなくてはならないことは何なんだろうと考えました。 彼が使いやすい車いすのデザインや食器・便器のデザインも大切ではあるけれども、それよりも、彼の心の中にある「考え」や「思い」を、お母さんや家族、そして友達に伝えることのできる道具のデザインが、彼にとって一番必要なものではないかと考えました。彼は今までの14年間、自分の思いを伝えたくても伝えられず、我慢し、あきらめていたのではないかと思いました。 人間にとって何が大切な問題か そこで私は、まず、T君の認知能力や身体的な可動部位、可動範囲などを知ることから始め、自分の気持ちを人に伝えるための道具のメカニズムや道具の使いやすさなどを検討しました。 最終的に、私は、T君のわずかに動く左の足指で、足下のキーボードの穴を押すと、机の上の「あいうえお」表示ボックスの豆電球が点灯し、例えば「お・な・か・が・す・い・た」と押すと、彼の気持ちがお母さんや家族に伝えることができる、足動式意志伝達装置をデザインすることにしました。 出来上がった試作モデルはT君に使ってもらいましたが、そのとき、こう実感しました。お医者さんにも、リハビリテーションの先生にも解決できない領域…人間にとって何が大切な問題であるかを発見し、その問題を解決するための道具を具体的に考案し、設計・制作する。その一連の行為が、デザインという世界であり、デザインの役割ではないかと。(ソーシャルデザイナー)

20回目で初の女性受賞者 江崎玲於奈賞に理研の2氏

ナノサイエンス分野の研究で優れた業績を挙げた国内研究者を顕彰する江崎玲於奈賞の審査会が20日、つくば市内で開かれ、第20回受賞者に理化学研究所(埼玉県和光市)の十倉好紀(とくら・よしのり)CEMSセンター長(69)と于秀珍(う・しゅうしん)CEMSチームリーダー(58)の両氏が選ばれた。ナノスケール(1ナノメートルは10億分の1メートル) で起こるスピン渦結晶の直接観察とその物性の研究が対象となった。茨城県科学技術振興財団(つくば市、江崎玲於奈理事長)が、ノーベル賞受賞の白川英樹、野依良治、小林誠各氏らを審査委員に選出する。1回目から関彰商事(つくば市・筑西市、関正樹社長)が協賛し、受賞者に副賞1000万円を贈っている。審査委員長の江崎理事長は「20回目にして初めて女性の研究者を選べたことは意義深い。新しい科学に向けてのプログレス(進歩)に貢献する重要な研究だ」と語った。対象となったスピン渦の結晶配列は「スキルミオン」と呼ばれる。ナノスケールの電子スピンの渦である原子核を構成する核子のトポロジカルな渦からなる準粒子であり、その電子スピンは少しずつ方向を変えながら、渦状に配列していることが理論的に予言されていた。次世代の低消費電力・高密度・不揮発性メモリ素子の担体の一つとして期待されているが、その応用には至っていない。両氏は2010年、磁気顕微鏡により渦構造を実空間で直接観察することに成功した。その後、15年にはスピン渦結晶が準安定で、広い温度範囲で存在し、敏感な電気応答を示すことや、室温以上でも安定に存在し、超低電流で駆動できることなどを発見した。それによりスピン渦結晶を支配する基本原理と物性を解明し、エレクトロニクスを拡張する次世代の電子工学「スピントロニクス」への応用など可能性を開く成果という。今回は19件の推薦のなかから選ばれた。審査員の白川氏によれば「たぐいまれな独創力で十倉氏が研究分野を切り開き、卓越した技術で電子顕微鏡を読み取った于氏による二人三脚のすばらしい成果」としている。 つくば賞は筑波大の江面氏 県内において科学技術に関する研究に携わり、顕著な研究成果を収めた研究者を顕彰し、研究者の創造的な研究活動を奨励する「つくば賞」には筑波大学生命環境系、江面浩(えづら・ひろし)教授(63)が選ばれた。 江面氏は、トマトの突然変異体集団を構築することで、世界最大規模のリソース基盤を構築した。さらにその活用によってトマトの日持ち性、高糖度性、機能性成分に関わる遺伝子の機能解明に貢献した。それらの知見とゲノム編集技術を融合することにより、健康機能性成分であるガンマ アミノ酪酸(GABA)を高蓄積するトマトを開発して2021年から市場化、一般流通食品としては世界第1号の事例となった。このほか、つくば奨励賞は以下の各氏に贈られる。(敬称略)◆つくば奨励賞(実用化研究部門)今村岳(物質・材料研究機構主任研究員)、南皓輔(同主任研究員)、吉川元起(同グループリーダー)<研究主題>膜型表面応力センサ(MSS) を用いた嗅覚センサの総合的研究・開発と社会実装◆つくば奨励賞(若手研究者部門)内田健一(物質・材料研究機構上席グループリーダー)<研究主題>スピンカロリトロニクスに関する基盤研究 (相澤冬樹)

現代の名工 洋裁家・伊賀玲子さん 黄綬褒章を記念し作品展 つくば

日本洋裁協会会長で、つくば市で洋裁教室「アトリエ玲子」を主宰する伊賀玲子さん(68)が、21日から同市吾妻、県つくば美術館で作品展「第5回伊賀玲子 洋裁アトリエコレクション」を開催する。2020年に受章した黄綬褒章を記念し、独自の世界を衣服で表現する伊賀さんの作品が一堂に会する機会となる。伊賀さんの作品とともに、洋裁教室の受講生や、伊賀さんが教える県内三つの高校の生徒らによる作品計100点あまりも展示される。 伊賀さんは高い洋裁技術が評価され、18年に厚労省による「現代の名工」に選出されるなど、多数の受賞歴を誇る。昔からある技法をよりやりやすく、きれいに仕上げられるよう工夫を重ねた伊賀さん独自の技法は「伊賀流」と呼ばれている。洋裁の魅力を広く伝えるために、技法にこだわりながらも、見る人に喜びと驚きを与える作品作りに情熱を注いでいる。 輝く大小のビーズを黒字のドレスにあしらうことで、夜空をかける流星を表現し、シルク仕立てのドレスには、太さの異なる金色のロープを首元から足首にかけて縫い込んで、流れる雲のような柔らかい曲線を描く。 30代で、本格的に洋裁の道へ 伊賀さんがこの道に関心を持ったのは、洋裁が趣味の母親の影響だ。”初作品”は、小学生で手がけたバービー人形のドレス。当時の夢と憧れが、原動力となった。 これまでの作品で格別だったのは、3人の子どものために手がけたウエディング衣装。孫たちの習い事の発表会用の衣装を作るなど、家族への愛情を作品に込める。 子育てがひと段落した30代前半、当時、伊賀さんが住んでいた千葉県で洋裁教室を主催する千田芳江さんに師事し、以来、毎年コンクールに出品する中で腕を磨いてきた。1996年につくば市に転居し、自宅で洋裁教室を始めた。現在は週に3日、約30人が通い、生徒たちと洋裁の楽しさを追求している。15年間、伊賀さんの教室で学んできた田澤貴子さんは、伊賀さんの魅力を「新しい技術に果敢に取り組む探究心。先生のエネルギーに引き込まれています」と笑顔で語る。 洋裁を通じたコミュニティーづくり 人に洋裁を教える理由について伊賀さんは「洋裁を通じたコミュニティーをつくりたかった」と語る。教室の後で受講生らと語らうひとときも大きな楽しみ。高校の授業では、生徒の「恋バナ」にも乗りながら、元気な若者たちとの交流も何よりのエネルギー源となっている。 「洋服作りが好きな人が集まって、いろんな話ができると楽しいじゃないですか。さまざまな世代の方に楽しく洋裁に取り組んでもらいたい。出会いの広がるコミュニティーをこれからもつくっていけたら」と伊賀さん。(柴田大輔) ◆伊賀さんと教え子らによる作品展「第5回伊賀玲子 洋裁アトリエコレクション」は、11月21日(火)から26日(日)まで。会場はつくば市吾妻2-8、県つくば美術館。開館時間は午前9時半から午後5時まで。最終日は午後3時まで。入場無料。問い合わせは電話090-9803-3899かメールreiko0411@gmail.com(伊賀さん)へ。

つくば市の洞峰公園「劣化容認」計画《吾妻カガミ》171

【コラム・坂本栄】つくば市は洞峰公園を県から無償で譲り受け、市営公園として管理する方針ですが、その予算を節約するため、園内にある体育館などの電気・機械設備が古くなっても新品に取り替えず、修理ー修理で持たせる考えです。この施設「劣化容認」計画が市議の間で問題になっています。 「ケチ・ボロ」計画に市議から疑問 市の維持費ケチケチ⇒諸施設ボロボロ計画について、複数の市議が全員協議会で問いただしました。そのやりとりは、記事「34億円超の県試算認めるも平行線 洞峰公園の補修・更新費」(11月2日掲載)をご覧ください。市の管理方針と市議が指摘する問題点を整理すると、以下のようなことです。 <執行部の考え方> ▼県の計画には、約31億円(20年でならすと毎年約1億5500万円)の電気・機械設備、内装・外装、屋根などの更新費が入っていた。しかし、市はそういった設備等を新しいものに取り替えず、修理-修理で維持していく。 ▼修理-修理で80年(体育館は築43年+あと37年)持たせ、その予算を毎年約3500万円計上する。 <市議からの疑問> ▼市営体育館は築60年で設備等を更新(長寿命化改修)することになっている。洞峰公園の施設だけ修理-修理で80年持たせるというのは、ダブルスタンダードではないか。 ▼県の基準を無視して、モーターなどを新しいものに取り替えず、施設が80年も持つはずがない。家電などを使う生活人として、とても理解できない。 公園の管理費を少なめに見せたい? 常識的な更新計画を無視して、市はどうして修理-修理にこだわるのでしょうか? この疑問を解き明かすために、洞峰公園をめぐる県と市のバトルを振り返っておきます。 発端:洞峰公園に民営のグランピング施設を設ける計画を県が発案⇒反対:グランピング施設を設けることに市は大反対⇒対案:施設利用料の値上げによる公園管理費ねん出を県に提案⇒拒否:他の県施設とのバランスが悪いと県は市案を拒否⇒名案:公園を市に無償で譲渡する(押し付ける)案を県が提示⇒譲受:市は県案を受け入れ公園を市営化する方針。 当たり前のことですが、譲り受けることで市は洞峰公園を自分好みに管理できるものの、その経費は自分で負担しなければなりません。しかし、「グランピング施設があってもいいから公園管理は県に任せておけ」といった反対の声もあります。こういった市民を少しでもなだめるために、市が考え出したのが「ケチ・ボロ」計画なのでしょう。 市施設の将来に対する無責任の構図 でも何か変です。市が抱える懸案処理のため、これまで県がきちんと管理してきた公園の諸施設を粗末に扱おうとしているわけですから。市長は、20~30年先、自分はその職にいないと思っているのでしょう。市議の多くも、先々のことは自分に関係ないと考えているようです。市施設の将来に対する無責任の構図と言えます。 私は、169「…苦慮する市議会…」(10月17日掲載)で議会に三つの選択肢を示しました。①更新無視で設備・器機が老朽化するのを承知で譲り受ける(市案に賛成)②地域の大事な公園だから更新費用はケチらない(市案を増額修正)③新規の支出を避けるため洞峰公園を譲り受けない(市案に反対)―です。 どれを選択するか、各市議は判断力を問われます。洞峰公園を市営化する条例案(①ないし②を選ぶ市議は賛成? ③を選ぶ市議は反対?)、公園管理に必要な補正予算案(①を選ぶ市議は賛成? ②ないし③を選ぶ市議は反対?)について、各市議が12月議会でどういった採決行動を取るのか、その一覧表を本欄に載せる予定です。(経済ジャーナリスト)

「土浦の花火2023」を振り返る《見上げてごらん!》21

【コラム・小泉裕司】好条件に恵まれて、「土浦の花火2023」は無事に幕を閉じた。とは言え、途中、10号玉が上空で開花せず落下、地上開発(爆発)、競技中断のアクシデントもあった。詳細は、記事「地上で10号玉開き10分間中断」(11月6日掲載)をご覧いただくとして、今回は、前回の「土浦の花火 歴史と見どころ」(11月3日掲載)に沿い、受賞作品を中心に大会を振り返ってみたい。 全日本種目別選手権 国内最高峰の内閣総理大臣賞は、大曲の全国花火競技大会と土浦全国花火競技大会のみに授与されている。大曲は、28社限定、各社4種目に出品し順位を争うことから、「全日本総合選手権」。土浦は、今回57社が2種目以下に出品、3種目の優勝者から選ばれることから、「種目別選手権」に例えるとわかりやすい。 10号玉の部 優勝は、昨年に続き、山﨑煙火製造所(つくば市)の十八番(おはこ)「昇曲付五重芯銀点滅」。相変わらず見事な消え口の「銀点滅」に加えて、今年は「芯」の見え方を少し変えたことで、残像がより印象的になった。 上位入賞した野村花火工業(水戸市)や小松煙火工業(秋田県)もいつも通りと言いたいところだが、優勝作品以外は芯の乱れが気になり、結局、6社による五重芯対決は、昨年から安定した成績を残している山﨑煙火の1強という印象。 上位5作品には、「自由玉」2作品が入賞。北陸火工(新潟県)の「椰子芯入り」は、大きな盆と星先変化が特徴。マルゴー(山梨県)の「瞬き閃光」は、色彩豊かな星々をこれでもかと点滅させた。歓声が、審査席に届いたのだろう。 創造花火の部 優勝は、型物花火を復活した北日本花火興業(秋田県)の「夜空にしんちゃん!オラは人気者」。これで17回目の優勝。 準優勝は、芳賀火工(宮城県)の「軌跡を見せます!!トライ&ゴール」。技術貢献度の高い作品に贈られる日本煙火協会会長賞も受賞。特等の北陸火工「ジュワッと揚げたて!えびFLY」とともに、見る前から「想像力」をかき立てるタイトルと奇想天外な花火センスはぴかいち。会場を大いに沸かせたが、残念ながら「型物の神様」に、つま先分及ばなかった。 和火屋(秋田県)の「ゴッホのひまわり」やファイアート神奈川(神奈川県)の「スマイル×スマイル=」などを含めて、創造花火の部は、その名の通り、花火師の創造性を存分に発揮した作品ひしめく狭き門となり、入賞者一覧からも、順番を付けなければならない審査員の葛藤が垣間見えるよう。 スターマインの部 優勝した菊屋小幡花火店(群馬県)のスターマイン「風神雷神」は、実は8月の大曲に出品した「風神雷神炎舞」のリメーク作品。閃光雷や群声、十八番のフレッシュグリーンを場面ごとに散りばめながら、圧巻の連発でエンディングまで息もつかせぬ怒濤(どとう)の展開。 大曲より100発多い、土浦の400発以内というレギュレーションを存分に生かした、音と光の迫力ある「速射連発型」の作品に仕上げてきた。 5代目小幡知明(としあき)社長は、表彰式のあいさつで、勝利へのこだわりや地元群馬県へのふるさと愛を披露しつつ、遅い打上順番や客席に一番近い打ち上げ位置など、幸運にも恵まれたことを勝因に挙げ、その謙虚なメッセージは私を泣かせた。思えば、今年の花火初めは、1月2日、菊屋小幡花火店の「New Year HANABI」(1月15日掲載コラム)だった。 内閣総理大臣賞 内閣総理大臣賞は、今回もスターマインの部の優勝者が受賞。これで20回のうち、19回がスターマインの部から、1回が10号玉の部からとなった。 「スターマインの土浦」と呼ばれていることから、至極当然のようだが、10号玉の部優勝の山﨑煙火はスターマインの部でも入選。秀作・奇作多数の創造花火の部の充実ぶりもあって、もしかしたら「総理大臣賞はスターマイン以外から!?」という、淡い期待を抱いて帰路に着いたのだが…。 いつまでも、至極の花火作品を堪能した感動の余韻に浸っていたいのだが、すでに来年の花火大会に向けた「宿取り」レースがスタート。遅ればせながら参戦すべく、本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

クリスマスリース作りの季節《くずかごの唄》133

【コラム・奥井登美子】霞ケ浦市民協会主催のクリスマスリース作りの日が迫ってきた。「どんぐり山」から採ってきた葛(かずら)などの蔓(つる)植物を利用する。この山は、かすみがうら市加茂の岡野静江さん(故人)が提供してくれた土地に、子ども達と一緒にどんぐりの種をまいて、みんなで育てた山である。2000年10月、130人もの人が参加して森を造った。 岡野さんは、若いころに恵泉学園の助手をしていた人で、植物利用の大家。特にリース作りは天才的に上手だった。東京・四谷の教会の大きなリースをはじめとして、クリスマス前になるとリースづくりで忙しそうであった。 「どんぐり山」は近くにエノキの木があって、2005年に日本の国蝶「オオムラサキ」が自然発生してからは、「オオムラサキ観察会」の場として、市民協会が草刈りなどの手入れをしている山である。 行事のときの私の役目は救急係。皮膚科前の薬局の薬剤師を10年間経験し、いろいろ勉強させていただいた。どんな虫に刺されたら、医者と薬剤師はどんな手当をすればいいのか大体のことはわかっているが、困ったのはヤマカガシの蛇対策である。 面白い個性的な蛇 ヤマカガシ 加茂の辺りは、マムシはいなくなったが、ヤマカガシはかなりたくさんいた。面白い個性的な蛇で、人間に友好ムード。何を考えて行動しているのかわからないことが多い。 ある日、山に観察会の下見に行って、木の枝の途中で遊んでいるヤマカガシ君を見つけてしまった。私の目の高さ。「一体何をして遊んでいるのだろう」。じっと、目をこらして観察していたら、いきなり50センチ以上離れた私のおでこに飛びついてきた。 かまれないように、とっさに払いのけて、無事だったものの、油断をしていると、意表を突いた行動に出ることもわかった。 マムシ君の方がおとなしくて平凡で付き合いやすい。最近の朝日新聞「くらし」欄の「患者を生きる」に、ヤマカガシにかまれてしまった人が、抗毒素を手に入れ、治療をするまでが大変だったという苦労話がくわしく書いてあって、とても勉強になった。 今年の夏の暑さは異常だった。この気候を乗り越えた数少ない強い虫や蛇たちが、どんな行動をするのか、興味深い。(随筆家、薬剤師)

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