支援団体、感染対策を徹底 つくばの食材無料配布に感謝の列
つくば市の食料支援団体「学生応援プロジェクト@つくばPEACE(ピース)」が25日、筑波大学近くの松見公園(同市天久保)で食材の無料配布を行った。用意した200人分は徹底した感染対策の下、3時間以上をかけ同大の学生らに受け取られた。
今回は当初、配布場所として公園の使用許可がつくば市から出ず、開催が危ぶまれた(9月15日付)。市と打ち合わせを行い、新型コロナ感染症対策を講じた結果、公園の使用が認められた。その際には、前回の実施形態や写真などを市と確認したうえで、今回の松見公園での実施が決定した(16日付)。
今回、配布は30分ごと30人ずつの利用となった。利用者の滞在時間を短くするために配布の列を通常よりも短くし、レトルトや缶詰などをひとまとめにした基本セットで配布した。また、スタッフの人数も12人に制限した。加えて、「いばらきアアマビエちゃん」登録や手指の消毒と検温、利用者に手袋を使用してもらうなど、徹底した感染対策を行った。
列には筑波大などの学生をはじめ、一般の利用者が並ぶ姿も見られた。新米200キロも提供された。
持ち込んだのはモトキバイオファーム(つくば市小沢)の本木茂さん(66)。「もとから食料配布活動に興味を持っていた。今回はNEWSつくばを見て活動に参加しようと思った。娘が筑波大の卒業生で、いろいろなところに支援してもらっていたため、今度は私が支援してあげたい。皆が少しずつ支援をすれば、より大きなものになっていくだろう」と語った。
つくばPEACEの利用者の一人である湯川楓祐さん(筑波大情報学群情報科学類1年)は、「TwitterでつくばPEACEの活動を知った。松見公園で広々と開催できてよかった。屋外の方が感染リスクを抑えられることができるため、次も松見公園で開催してもらえたらうれしい。配布はとても助かっているので、これからも続けてほしい」と話した。
つくばPEACEの冨山香織代表は、「公共施設が使えてよかった。今回、松見公園使用のきっかけとなったNEWSつくばと、使用を許可してくれた市役所に感謝している。これからは、新規利用者を増やすためにもチラシなどを配布して周知活動を積極的にしていきたい。予約の壁と感染対策を講じながら、来月も松見公園で開催していきたい」という。(武田唯希)
「土浦は着物が似合う町」前野呉服店3代目、市民ギャラリーで90周年の伝承展
ことし90周年を迎えた前野呉服店(土浦市中央)が29、30日、土浦市民ギャラリー(同市大和町)で「伝承展」を開催する。節目の年に、日本の伝統文化である着物のよさを知ってもらいたいと代表取締役、前野有里さん(52)は語る。
「着物には染めと織りがある。でも、着る人が減ってどちらも職人が減っている」と前野さん。「改めて着物のよさを実感してもらい、次の世代につなげていきたい」と今回の企画につながった。
伝承展では京都在住の着物デザイナー、森尻春司さんの作品「style(スタイル)」や染めの工程の一部を展示する。昔ながらの技法と、新しい感覚の色彩やデザインの出会いが見どころだ。多数の反物が会場を彩る。
呉服店は1931(昭和6)年2月、有里さんの祖父である前野道之助さんが創業。当時は着物だけでなく、オリジナルの布団やはんてん、綿なども販売していた。嫁入り道具として、着物や布団がよく売れていたそうだ。
父、昌男さんが継いだ際は、着物のほかに洋服や生地、カーテンなども販売した。昌男さんは手先が器用で、土浦七夕まつりの飾りも毎年制作していたという。
有里さんは2年間の修業を経て1992年、24歳で店を継いだ。「基本的に父は好きなようにやらせてくれた」ため、アクセサリーや財布、バッグなど小物も置くようになった。
しかし意見の食い違いもあった。都心のおしゃれなお店の真似をして、ディスプレイの小物を最小限にした。翌朝になると、父親がびっしりと小物を並べている。また有里さんが減らす。これを何度も繰り返したそうだ。小物をたくさん並べるのは父親の「商品がない店と思われてしまう」という心配からだった。
ところが少ないディスプレイにした方が、若い女性の来店が増えるのを目の当たりにして「時代が変わると販売方法が変わる」と納得してくれたという。
「着物のすばらしさ伝えたい」
今は積極的な営業とイベント、ネットでの宣伝が重要だという。SNSの利用など、今度は自身が時代についていかなければならない。「とにかく必死」と前野さん。しかし着物もお客さんも好きだからこそ、楽しんでいる自分がいるそうだ。
今の暮らしに、着物はほとんど必要ない。しかし結婚式や成人式、葬儀などで着る機会はある。「人生の節目に着物を着たいお客さんの思いと、着物を着てもらいたい自分の思い」がつながるときがあるという。とにかく役に立ちたいと、一人ひとりに合った着物や小物をコーディネートする。
今年、カラーアナリストの資格も取った。今後は、お客さんに似合う色を、感覚ではなく理論的に説明できるという。「土浦は着物が似合う町。着物のすばらしさをこれからも伝えるのが、自分の役目だと思っている」と意気込みを語った。(伊藤悦子)
◆「2021伝承展」 9月29日(水)午後1時~6時、30日(木)午前10時~午後5時、土浦市民ギャラリー(土浦市大和町)。入場無料。見逃した人向けに10月1日(金)から4日(月)午前10時~午後6時(最終日は5時30分まで)、前野呉服店(同市中央2の8の2)でも展示を行う。
「風立ちぬ」考 その4 《遊民通信》25
【コラム・田口哲郎】前略
堀辰雄の『風立ちぬ』は1938年発表ですから正確には「戦後文学」ではありませんが、「戦後文学」がなし得なかったことを果たします。死者の真の思いを生き残った者たちに悟らせるのです。それは生者の死者からの解放です。「生きねば」派は魂を鎮めたい。生者の責務を全うするために。人間誰しも死が怖いし、逃れることはできない。こればかりはどうしようもありません。
しかし、彼らは死そのものの不安から逃れられたでしょうか? 「死者」からは逃れられても、「死」そのもの、「死」がもたらす恐怖や不安からは逃れられません。
「生きめやも」派には「生きねば」派の意図が理解できないかも知れません。「生きねば」派は自分自身の死そのものに向き合うのではなく、身近な人の死から戦争や災害による大量死の犠牲者にいたるまで、他者の鎮魂を重視します。一方、「生きねば」と考える人々からすれば、「生きめやも」はあまりに現実逃避的で軟弱な生活態度だということになります。両者の死に対するスタンスに決定的な違いが浮き彫りとなってきます。そして、アニメ『風立ちぬ』が与えた問いへの答えが導かれます。
「宮崎駿は、この設計者・堀越二郎の物語を、なぜ、堀辰雄の物語に、『強引に』接続したのだろうか」。それは、近代国家たる日本が積み上げてきた死者への鎮魂のためです。今を生きるために。宮崎氏の変奏曲としての『風立ちぬ』は小説と同じ題名を持つがゆえに、私たちを困惑させていました。
では、堀辰雄の『風立ちぬ』が読者に与えるものは、何でしょうか。実質的処女作と言われる『聖家族』を「死があたかも一つの季節を開いたかのようだった」と始めた堀は、死と向き合うはずです。死そのものと向き合うからこそ、「生きねば」ではなく、「生きめやも」なのです。死に対峙(たいじ)した時の浮世離れした躊躇(ためら)いこそが『風立ちぬ』なのです。
立原道造と遠藤周作
そして、小説『風立ちぬ』は「生きめやも」派の新たなふたりを結びつけます。立原道造と遠藤周作です。ふたりは堀辰雄を文学の師と仰ぎ、それぞれ『風立ちぬ』について評論を書きました。立原は1938年に評論「風立ちぬ」を発表し、遠藤は1950年に評論集『堀辰雄』を上梓(じょうし)しました。堀と立原の親密な交際は軽井沢・信濃追分で育まれ、彼らが雑誌「四季」を舞台に四季派として文学活動を行ったのは有名です。
一方、のちにカトリック作家として大成する遠藤は哲学者吉満義彦の紹介で堀との知遇を得たのをきっかけに文学活動に入り、堀に関する評論が作家としての処女作です。立原、遠藤に直接の交友があったわけではないです。でも、『風立ちぬ』が結んだ縁は、入れ違いのように堀の傍に現れたふたりの青年を「生きめやも」派として死を考えさせるのです。ごきげんよう。
草々(散歩好きの文明批評家)
ベトナム人材の採用に「セキショウジョブフェア」 11月にオンライン開催
総合人材サービスのセキショウキャリアプラス(本社・つくば市、渡邊誠社長)は11月、「セキショウジョブフェア」をオンライン開催する。日本企業で働きたいベトナム人大卒予定者らへの合同企業説明・面接会。専門的な技術・知識を持つ人材を採用したい企業や、グローバルな展開を考える企業へ参加を呼び掛けている。
県内企業も熱視線
フェアは2016年からこれまでに7回開催され、次第に規模が拡大。最も盛況だった一昨年は参加企業が39社、学生・求職者の来場は2日間でのべ1089人に達し、うち101人が内々定を得た。このときは現地開催だったがコロナ禍により昨年からオンライン形式に変更された。「直接会って話すに越したことはないが、採用担当者が現地へ渡航しなくても、日本にいながらベトナムの学生と面接できるメリットもある」と、同社海外事業課の小田倉千明さん。
開催の背景には理系、特にシステム・IT系人材の確保が難しく、優秀な人なら国籍を問わず採用したいという企業が増えている現状がある。
今回参加対象のハノイ工科大学は、日本の東工大レベルと言われるベトナムきっての理工学系大学。ほかにハノイ工業大学、ハノイ交通運輸大学、ハノイ大学など。ベトナムにおいて筑波大など日本の大学が協力し、質の高いカリキュラムを提供している日越大学も含まれる。
参加者は、理系技術者では機械、電気電子、IT系など、文系では通訳・翻訳、貿易業務などで500~800人を想定する。オンライン化によりハノイ近隣以外からも参加しやすくなったため、さらに増えそうな見込み。昨年は日本に留学しているベトナム人学生や、現地日系企業からのステップアップを図る就業者の参加もあったそうだ。
出展企業は北海道から関西までと広域的だが、運営会社であるセキショウキャリアプラスのネットワークを生かし、約4分の1は茨城県内の会社だ。中堅以下の企業でも知名度や企業規模に左右されずフラットな目で見てもらえる。過去の説明会では大企業を上回る40~50人が着座した例もあり、国内学生向けの企業説明会でもなかなか見られない盛況だったという。
企業の将来性を広げる外国人材
「言葉の問題や住環境の提供、生活支援など、コストは日本人よりも正直かかるが、そこさえクリアすれば確実に優秀な人材が採用できる。5~10万円のプラスで、しっかりとした日本語教育を受けさせることもできる」と小田倉さん。
外国人材の受け入れは、組織のダイバーシティ(多様性)を高めるという副次的な効果もある。異なる価値観と接することで、従来は当たり前として見過されてきた企業文化や商慣習などが見直され、社内制度の改革につながった例もあるという。「今後ますますグローバル化が進み、人の行き来が盛んになる中で多様な文化を知り、新しいニーズをつかむことがビジネス展開上不可欠になる」と、同社営業部長の飯田理文さん。
新興国であるベトナムは、今後いっそうの経済発展が予想され、中国に替わる投資先として注目を集めている。企業からは新たなマーケットや海外拠点と見込まれ、また国内でのインバウンド需要の増大にも寄与しそうだ。その際にはベトナム人社員の存在が、大きな力になると期待されている。(池田充雄)
◆SEKISHO JOB FAIR(ベトナム高度人材合同企業説明会・面接会) 説明会が11月6日、面接会が12・13日。申し込みは9月30日まで。日本企業はZoomミーティング(事務局提供リンク)によるオンライン参加となる。詳細は専用Webサイトまで。
里山保全活動と安全管理 《宍塚の里山》81
【コラム・佐々木哲美】今回は里山保全活動の主力チーム「里山さわやか隊」における安全の取り組みを取り上げます。
認定NPO「法人宍塚の自然と歴史の会」は、1989年の設立当初から、自然や歴史の調査や学習だけでなく、森林・小川・池の整備、ごみ拾い、観察路の草刈り、小川の整備、オニバスの復元、休耕田の復田―など、里山保全の実践活動に市民参加で取り組んできました。
特に、1990年2月、宍塚大池湖畔の通称「ゲンベーヤマ」で「雑木林のフレッシュアップ」活動を立ち上げ、山主さんの指導を受けながら、森林の下草刈り、間伐などを開始しました。その後、1998年2月に「里山さわやか隊」と組織化し、月2回の定例活動をはじめ、種々の保全作業を行っています。
里山さわやか隊は、設立当初から「楽しく汗を流すことにより里山の保全に役立つ」をモットーに活動し、大勢の方の参加をいただき、30年以上続いています。
活動が活発化するにつれて参加者も増え、チェーンソーや刈払い機を扱う頻度も増し、ケガの心配が出てきました。ボランティアは労働者ではなく、自主活動ですから、ケガをしても自己責任です。ケガをするときは労働者も悲惨ですが、ボランティアはもっと悲惨です。
チェーンソー作業では民間保険に加入
そこで3つの対策を考えました。
参加者の安全:ボランティア参加者がケガをしないために、安全教育の開催、ヘルメットなど服装の装備、朝礼・ラジオ体操、ミーティングなど日常安全管理を実施する。被災者の補償:万が一ケガをしても補償が受けられるように、ボランティア行事保険、ボランティア活動保険などへの加入。特にチェーンソーを使用する作業はボランティア活動保険の対象外なので、民間の傷害保険やグリーンボランティア保険に加入する。当然、職員やアルバイトを雇用する場合は労災保険に加入する。主催者の責任:ボランティア活動における行事主催者は、民事の安全配慮義務違反で訴えられる可能性がある。万一の活動団体に起因する災害や物損事故に備え、傷害賠償保険に加入する。
里山さわやか隊の隊員は、おそろいのヘルメット、ビブスを着用し、ほぼ全員がチェーンソーや刈払機の法令に基づく有資格者であり、作業開始前の朝礼・ラジオ体操、ミーティングは定着しています。私たちは、ボランティア参加者が、楽しく、ケガせず、安心して活動できるように努めています。(宍塚の自然と歴史の会 副理事長)
つくば市が1位 2020観光客数 コロナ禍響き県内4割減
茨城県観光物産課は2020年の観光動態調査結果を発表した。市町村別では、272万9000人の入込客数(延べ人数)があったつくば市が県内1位となった。3位だった19年の425万9000人から減少したものの、コロナ禍の影響は、大洗町やひたちなか市の海水浴場、ひたち海浜公園などでより顕著な入込客数の減少となって表れた。
県全体の20年(1~12月)の観光入込客数は3854万4000人で、前年と比べ40.2%減った。観光消費額は2101億円で15.5%減となった。
減少した主な観光地は、国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)103万人減、茨城空港(小美玉市)80万人減、イベントでは水郷潮来あやめまつり(潮来市、開催中止)が72万人減、土浦全国花火競技大会(土浦市、中止)が65万人減。
市町村別の入込客数は、2位が大洗町(昨年1位)で271万5000人、3位は阿見町(同6位)の265万3000人、4位は笠間市(同5位)の262万6000人、5位はひたちなか市(同2位)の198万4000人だった。3ランクアップの阿見町はアウトレットモールの集客が大きい
1人当たりの観光消費額は、宿泊が2万3617円(19年は2万5023円)、日帰りは3763円(同3559円)だった。利用交通手段は圧倒的に自家用車が多く全体の84.8%を占めた。(山崎実)
コロナの次は格差解消だ 《ひょうたんの眼》41
【コラム・高橋恵一】9月15日現在の65歳以上の高齢者人口の推計値が発表され、総人口に占める割合は、29.1%とされた。2位のイタリア(23.6%)、3位のポルトガル(23.1%)を大きく引き離して「金メダル」だ。人類の悲願である長寿のおかげなのだが、どうも世間の雰囲気はマイナーなイメージで捉えているようだ。
首相の引退や総選挙を控えて、コロナ対策からこれからの日本のあり方が議論されている。コロナ禍は、世界中に経済社会の課題を突き付けたが、単にコロナ感染流行の前に戻ればよいというわけではなかろう。コロナ禍で露呈した課題は、感染症対策のお粗末さだけでなく、社会生活のあり方、会社・職場でのあり方、学校生活のあり方、病院や施設のあり方も問われた。
しかも、それぞれの分野での雇用・賃金の格差、休業や休暇制度の格差、非正規雇用など、社会の弱い分野に顕著に現れた。しかも、面倒なことに、地球温暖化やプラスチックごみよる膨大な海洋汚染、国際社会が求めるSDGs、巨大地震や豪雨洪水への備えなど、後回しにできない課題が山積みなのだ。
人間は、どうしても未来に希望を持ちたいので、足元のコロナ禍の見通しも対策も不十分なまま、コロナ後の施策がにぎやかである。
超々高齢社会の社会保障費割合の縮減、デジタル化の推進による経済活力の拡大、規制改革の推進など、華々しく経済再生復興策が提唱されるのだろう。マイナンバーカードの100%保有、キャシュレス決済の推進、ワクチン接種証明のスマホ利用などなど、IT技術を最大限に取り込んだ諸改革が進められようとしているのだ。
日本経済の最弱点は個人消費の弱さ
しかし、大きな疑問が2つある。1つは、デジタル化を利活用する技術能力を政策当局が持っているのかという点である。コロナ対策においても、10万円の給付がマイナンバーと住民基本台帳のリンクがされてないために大幅に遅れ、臨時給付の意味をなくしてしまったこと。休業補償金、コロナ接触確認アプリ(COCOA)など、例示すると切りがないのだ。
要するに、政策当局が自分で考えず、システム設計から運用まで業者に丸投げだったということだろう。日本の公的部門におけるソフト施策の外部委託は数十年前からだが、公的部門が、自らシステム設計をできない事態は、今回は指摘だけにしておくが、深刻な問題なのだ。
2つ目は、キャシュレス決済などデジタル化を前面に出した取引だが、今のままだと、ますます格差拡大になってしまうのではないか。例えば、カードによる決済のシステム管理会社には、個々の取引でほぼ消費税の50%に相当する手数料が入るのだ。この業務をすべて国営で行えば、財源不足は解決してしまうかも知れないのだ。
日本経済の最弱点は個人消費の弱さである。小泉改革以降、改善されない。アベノミクスで企業業績を上げ、もうけを投資や賃金に回すはずだったが、企業の内部留保になってしまった。個人の所得が改善されなければ、日本経済の回復はない。給与の改善ではなく、個人への給付制度を具体化する時だ。(地図好きの土浦人)
秋最大のごちそう 新米 《県南の食生活》29
【コラム・古家晴美】ようやく猛暑の盛りを過ぎ、実りの季節が到来する。採れたての栗や落花生を目にされた方も多いだろう。今回は秋最大のごちそう、新米を取り上げてみたい。
現在、米といえば新潟県や北海道、秋田県を思い浮かべるが、令和2年の水陸稲収穫量を見ると、茨城県は全国7位で、堂々ベストテン入りしている。県南地域でファンが多い地域ブランド米と言えば、「北条米」だろう。
筑波山麓の桜川沿いに広がる平野には、筑波山の岩石のミネラル分をたっぷり含んだ水も注ぎ込んでいる。つくば市北条、筑波、田井、小田の4地域で生産されているこの米は、適度な粘りと甘み、冷めても照り輝きと旨(うま)味が失われないことから、最上ランキング特Aと評されるのもうなずける。
この地域の明治時代の記録によれば、米は農業産出額の7割以上を占めていた。そして、様々な野菜、果物、畜産が生産経営されている現在でも、つくば市の農業産出額を見ると、2位の野菜を大きく引き離し、米が1位に輝いている。立派な米どころだと言える。(令和元年市町村別農業産出額=推計=)
生産者に敬意を表していただく
ところで、この時期、何段階かで収穫の労をねぎらうご馳走が作られてきた。稲刈り開始にあたり、赤飯や混ぜご飯を食べる(土浦市、つくば市、麻生町)。また、稲刈り完了を祝うのに、赤飯やぼたもちを作り、神棚や仏壇に供え、手伝ってもらった家には重箱に詰めて配る(土浦市、つくば市、牛久市、麻生町)。あるいは、新米で油揚げ、人参、かんぴょうが入ったカリアゲメシを炊き、神棚、仏壇、オカマサマに供えた(つくば市)。
そして、脱穀を済ませた後、新米を臼でひき、オカマノダンゴという団子を作り、オカマ様に供え、近所にも配った。一度にたくさんの団子を作り、毎日ゆで直して餡でくるんで食べた。地域により、あるいは時代的な変化により、これらすべてがそろっているわけではないが、収穫の喜びとそれまでの労苦がうかがえる。
新米を特別に扱うのは、農家だけではない。阿見町大室のOさんは、現在でも新米を人からいただくと、「食べ初め」として、炊いたご飯に、尾頭付きの魚、ヌッペ汁(大根、人参、ゴボウ、里芋)を添え、感謝を込めて神仏に供えてからいただく。
新米で卵掛けご飯も魅力的だが、新米に(無論、生産者の方に対しても)敬意を表していただくと、一段と味わい深いものになるのではなかろうか。(筑波学院大学教授)
つくば駅周辺 商業地、住宅地とも7年連続県内1位 21年地価調査
茨城県は21日、2021年の地価調査結果を発表した。県内で最も地価が高かったのは商業地、住宅地いずれもつくば市吾妻のつくば駅周辺で、7年連続1位となった。商業地は上位5位のうち2地点をつくば市内、住宅地は4地点をつくば市内が占めた。
つくば市(調査地点46地点)全体では、全用途平均変動率は前年より0.8%上昇し、0.1%下落となった前年から上昇に転じた。0.8%上昇は、守谷市と並んで県内で最も高い上昇率となる。
市全体の平均価格は1平方メートル当たり8万900円で、前年同様、守谷市に次いで県内で2番目に高い価格となった。
用途別では商業地(7地点)の平均価格は16万9400円で、2.9%上昇(前年は1.2%上昇)、住宅地(36地点)の平均価格は6万8900円で、平均変動率は0.3%上昇(20年は0.3%下落)した。工業地(2地点)は2万2600円で2.8%上昇(同0.7%上昇)した。
商業地は調査地点7地点のうち6地点で地価が上昇した。上昇地点について県は、TX研究学園駅及びつくば駅から徒歩圏内の商業地域に位置しており、研究学園駅から徒歩圏内は、宅地分譲が進展し、背後住宅地の人口が増加していることに加え、新規店舗の立地が見られ、繁華性、集客力が向上していることから土地需要が高まっているとしている。つくば駅から徒歩圏内については、クレオに商業施設がオープンしたほか、駅近隣エリアにマンションが建設中で、背後住宅地人口の増加、繁華性や集客力の向上が見込めることから土地需要の高まりが続いていると分析している。
住宅地は調査地点36地点のうち12地点で地価が上昇した。上昇地点について県は、つくばエクスプレス(TX)沿線の住宅地域で、大規模商業施設や各種店舗、小学校に近く、住環境に優れていることから、従来から土地需要が高いことに加え、新型コロナの感染拡大に伴うテレワークの普及などもあり、都心方面からの需要者層も見られ、新型コロナ感染拡大前の状況よりも土地需要が高まっているとしている。
工業地は調査地点2地点いずれも上昇した。県は、圏央道ICに近接し、研究施設や工場が集積する工業団地に位置しており、圏央道の県内全線開通による交通利便性の向上に伴い、IC周辺で、特定のテナントの要望に応じてオーダーメードで建設され賃貸されるBTS型物流施設の竣工が続くなど、土地需要の高い傾向が続いているとしている。
土浦市は下落幅縮小
土浦市(同34地点)の全用途平均変動率は前年と比べ0.1%下落し、コロナ禍で0.2%下落した20年と比べ下落幅が縮小した。平均価格は1平方メートル当たり3万8400円。
用途別では商業地(8地点)の平均価格は6万1900円で、前年と比べ0.4%下落(前年も0.4%下落)した。住宅地(24地点)の平均価格は3万2200円で、平均変動率は0%と昨年と同じとなった。20年は0.2%下落だったことから今年は横ばいに転じた。工業地(2地点)は1万9000円で0.6%上昇(同0.6%上昇)した。
商業地で上昇した地点はなかった。住宅地は調査地点23地点のうち2地点で上昇した。県は上昇地点について、JR常磐線の土浦駅から概ね徒歩圏内の市街地中心部は上昇しており、旧来からの市街地として根強い人気を誇ると共に、同一需給圏として競合するつくば市、牛久市、取手市などに対する割安感と相まって、土地需要が高まっているとしていると分析している。
工業地は調査地点2地点いずれも上昇した。県は上昇した工業地について、常磐道土浦北ICに近接し、向上や倉庫が集積する工業団地に位置し、より都心に近い千葉県に対する割安感から土地需要が高い状況が続いているとしている。
新型コロナの直接影響大きくない
県全体の全用途平均変動率は0.4%下落となり、前年の0.7%下落と比べ下落幅が縮小した。用途別では住宅地は0.5%下落、商業地は0.2%下落となり、住宅地と商業地の平均変動率は1992年から30年連続で下落となった。一方、コロナ禍で下落幅が拡大した昨年と比べると下落幅は減少した。工業地の平均変動率は0.3%上昇となり、16年から6年連続で上昇しており、昨年と同率の上昇となった。
県は下落幅が縮小した要因について、商業地は、昨年は新型コロナの感染拡大により一時は先行きの不透明感から取引停滞や減退も見られたが、飲食店やホテルなど収益性が大きく低下した業種を除き収益性の悪化は限られ、オフィス街では回復傾向となったと分析している。
住宅地は、昨年は感染拡大で、買い主が内覧等を控えたことで一時的に土地需要が減退したが、オンライン内覧の普及も相まって、土地需要の回復傾向が続いているとしている。
工業地は、昨年は感染拡大による景気の悪化や先行きの不透明感により企業が新たな用地取得や設備投資に慎重になり、地価の上昇傾向が鈍化したが、首都圏に近い県南や県西地区のインターンチェンジに近い工業地域では流通業務用地の需要が依然として高く、地価の上昇が続いているとしている。
県は、リーマンショックによる資金調達環境の急激な悪化や東日本大震災による災害リスクの高い土地の急激な需要減退と比べると、新型コロナが地価に直接的に与える影響は大きくないとしながら、引き続き注視が必要だとしている。
地価調査制度は、適正な地価の形成を図ることを目的に、国土利用計画法に基づき都道府県が7月1日を基準日として県内540点の標準価格を判定している。
「合理的配慮」義務づけに民間向け助成 障害者差別解消法改正でつくば市など
今年5月に改正された障害者差別解消法の学習会が18日、市民団体「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」(事務局・水戸市)主催でオンライン開催された。障害者への「合理的配慮」を民間事業者にも義務づけたことを受け、参加者からは「民間事業者が合理的配慮を提供することを支援する制度がつくば市にもある。うまく活用してもらえれば」という意見が聞かれた。
市民団体がオンライン学習会
学習会には県内の障害者や支援者、県議会議員、つくば市議会議員など、約50人が参加した。内閣府障害者政策委員会の委員長である石川准さんが、障害者差別解消法の改正点や残された課題について解説した。
今回の改正では、民間事業者も「合理的配慮」を提供することが義務化された。合理的配慮とは、障害者が他の者と同等の生活を営むために必要な環境の調整である。例えば、車いすでも店に入れるように、入り口にスロープを付けたり、聴覚障害者に筆談で対応すること。2016年施行の障害者差別解消法で、行政機関等は、過重な負担でない限り、合理的配慮を提供することが義務化されたが、民間事業者は努力義務とされていた。
改正法が実際に適用されるのは「3年以内」という。自治体や事業者の準備期間が必要との理由だが、民間事業者は配慮の必要な範囲を見定め、計画的に進める対応が求められる。
合理的配慮を提供するには、スロープや筆談ボードの購入などの設備投資が必要だ。「―つくる会」では2018年に、当時から民間事業者等の合理的配慮提供にかかる費用を助成する独自制度があった兵庫県明石市の職員を呼び、内部向け学習会を行った。その後、加盟する障害者団体が各市町村に呼びかけた結果、2018年につくば市で民間事業者等への合理的配慮助成制度がつくられたのを皮切りに、現在は県内5市で同様の助成制度が実施されている。
差別解消法の対象にウェブサイトも
石川さんは「ウェブサイトやモバイルアプリもオンライン上で接客する店舗と言えるのだから、差別解消法の対象となる」と強調する。建物や交通機関のバリアフリーは法的な基準が設けられ、障害者の求めに応じた合理的配慮も進む一方、視覚障害や聴覚障害などで、情報を獲得しづらい障害者が他の者と平等にウェブや書籍を利用するための法整備は進んでいない。
ウェブサイトで字幕の付かない動画が掲載され、パソコンのアプリケーションは音声読み上げソフトで認識できないものが多い。音声読み上げソフトで認識できるテキストデータではなく、認識できないPDF画像で作成された選挙公報もあるという。
「しかし、ウェブサイト等も差別解消法の対象になるため、字幕付き動画や画像のテキスト化など、合理的配慮を求められたら対応しなければならない」と石川さんは説明した。
小規模店なりの合理的配慮
参加者から「民間事業者の合理的配慮を進めていくために、自治体の役割は何か」「小規模店などは過重な負担という理由で、合理的配慮を提供しなくていいことになるのか」と質問され、石川さんは「茨城でも進められているように、合理的配慮を提供する民間事業者への助成制度を各自治体で作ることで、事業者からの相談に柔軟に対応することができる。合理的配慮は事業者にとって過重な負担でないことを要件にしているが、小規模店なりの合理的配慮があるはずで、小規模店だから何もやらなくていいということではない」と回答した。
参加した市議会議員からは、「今まで選挙公報を画像ファイルで作ってしまい、視覚障害者が読めないものにしていた。誰でも情報を得られる選挙公報を考えることから始めたい」などの感想が聞かれた。
