水曜日, 7月 9, 2025

筑波山神社で秋の御座替祭

【鈴木宏子】筑波山山頂と中腹の神が夏と冬に住まいを替えるとされる筑波山神社(つくば市筑波)の秋の御座替祭(おざがわりさい)が1日、筑波山で催された。 みこしを担いで山を登り、男体山と女体山山頂の本殿にある神衣(かんみそ)を新しい衣に取り替える「神衣祭」(かんみそさい)、中腹の拝殿で舞いを捧げる「奉幣祭(ほうべいさい)」、神衣が納められたみこしを担いで氏子が住む中腹の集落を巡る「神幸祭(じんこうさい)」の3つの祭りが、早朝から夕方まで続けられた。 神幸祭では、天狗の面を付けた猿田彦を先頭に、太鼓の合図で、赤や黄色、白など色とりどりの装束をまとった100人を超える一行が、江戸時代からある急斜面の参道「つくば道」をゆっくり登り、地域の発展と平穏を祈った。沿道では観光客らが行列を写真に収める姿が随所で見られた。 祭りの日にだけ渡ることができる神社境内入り口の「神橋(じんきょう)」は、今年5月から修理中だが、この日は渡れるように工事が中断され、一行は、塗り替えのため朱色が落とされた神橋を渡り、拝殿に向かった。 岩佐弘史宮司は「きょうは快晴に恵まれ、絶好の秋日和。ご来賓の方から筑波山が日本夜景遺産に認定されたというごあいさつがあった。筑波山がいつまでも愛される山であってほしい」と話した。 毎年、みこし担ぎの助っ人として参加している流通経済大学(龍ケ崎市)ラグビー部4年の平井継之助さん(22)は「めったに経験できることではないので関係者の方々に感謝したい」と話した。今年は部員10人が参加しているという。 千葉県流山市から夫婦で訪れた70代の女性は「6年前に来て2度目だが、すばらしい祭り」と感激した様子だった。 一方今回は、氏子総代有志らが岩佐宮司の解任を神社本庁に要求した騒動が表面化した直後の御座替祭となった。氏子の1人は「今年は行列に参加した氏子の数も、沿道に出て行列を迎えた住民の数もいつもの年より少ないのではないか」と話した。

「井戸のある暮らし」展 沼尻墨僊の鑿井図公開 土浦市立博物館

【谷島英里子】土浦の井戸の歴史を紹介するテーマ展「井戸のある暮らしー人々の生活をうるおす」が12月2日まで土浦市中央の市立博物館で開かれている。井戸のある暮らしを通して、土浦の各時代の人々と井戸とのかかわりが分かる展示となっている。 江戸時代後期、土浦城下の人々は良質な水を求めて江戸から職人を呼び、堀抜井戸を造った。作業の様子を地球儀を製作したことで知られる土浦生まれの地理・天文学者沼尻墨僊(1775~1856)が絵巻「鑿井図(さくせいず)」に描き記した。 1798年(寛政10年)作の鑿井図は、旧中城町の不動院境内に掘られた掘抜井戸の地鎮祭から竣工までの過程と井戸掘り用具が詳細に描かれ、長さは10㍍に及ぶ。同館によると、それまでの井戸と同じように人が地中を筒状に掘削したあと、先端に特殊な道具を付けた木製のさおを上下させ、より下層の水脈まで管状の井戸孔(あな)を掘り抜く方法だったという。 また井戸掘り技術を描いた鑿井図は、明治以降にかんがい用水の確保を目的に千葉県の上総地域で考案された、堀抜井戸の代表的な工法「上総掘り」にも影響を与えたとされる。 展示では、市内で最も古い神明遺跡(同市常名)の井戸跡、土浦城初代藩主・土屋数直が善応寺(同市真鍋)にある「照井」の井戸から湧き出る水を城内に通す整備をした時の資料、江戸時代の上水道整備に用いられた木製の「継手(つぎて)」、水を多方向に流す箱型の枡など40点が展示されている。 期間中の関連行事は次の通り。▽展示解説会11日(日)午後2時~2時30分。▽土浦二高茶道部による呈茶3日(祝)午後0時30分~3時。茶券200円。先着100人。▽記念講演会「沼尻墨僊『鑿井図』と江戸の掘抜井戸」24日(土)午後1時30分~3時。講師は袖ケ浦市平岡公民館の能城秀喜さん。定員70人、聴講無料(当日午前9時から整理券配布)。 同博物館の入館料は一般105円、小中高生50円。問い合わせは電話(029・824・2928)まで。

土浦に新イメージ 浮世絵調ポスター好評

【鈴木宏子】相撲と軟式野球の茨城国体リハーサル大会に向け、同国体土浦市実行委員会(事務局・同市教育委員会国体推進課)が制作した浮世絵調のポスターが好評だ。市職員の若田部哲さん(42)がボランティアで描いた。「古い歴史がある土浦は、浮世絵調のイメージがマッチしているのではないか」と若田部さんは新たな土浦のイメージを模索する。 ポスターは、8月19日に国体リハーサル大会として霞ケ浦文化体育会館(同市大岩田)で開催された第57回全国教職員相撲選手権大会と、11月2~6日、J:COMスタジアム土浦(同市川口)など県内6カ所で開催される第26回東日本軟式野球選手権大会=メモ=の2種類ある。 相撲選手権は、霞ケ浦や帆引き船、筑波山を背景に、力強い筋肉が強調された力士が両足を踏ん張って組み合う姿が浮世絵調に描かれている。軟式野球選手権は、青い稲妻と赤い炎を背景に、対戦チームのピッチャーとバッターが互いににらみ合う緊迫した瞬間が描かれている。 相撲選手権のポスターは例年、高校生などからデザインを公募していたが、今回は地域紙にイラストを描くなど実績がある若田部さんに制作を依頼し、ポスターのほかチラシやプログラムにも使用した。市民のほか共催の日本相撲連盟からも「味がある」「躍動感がある」などと好評で「ポスターをもらいたい」などの問い合わせもあったという。 同実行委は、続く11月2日開幕の軟式野球選手権のチラシデザインも若田部さんに依頼。A4判で1500枚を印刷し公民館など市公共施設に置いて大会をPRしている。 若田部さんは土浦駅前、アルカス土浦1階市民ギャラリーに勤務し、土浦の風物や自然をほのぼととしたイラストで描いてきた。浮世絵調はこれまでとはまったく異なる作風だ。今年3月、サイクリング拠点としてリニューアルオープンした土浦駅ビル「プレイ・アトレ土浦」のオープニングイメージポスターが浮世絵調だったことに触発されたのがきっかけという。「隣の新しいイメージのつくば市と比較して、歴史ある土浦市は浮世絵調が合っているのでは」と話す。 メモ 【茨城国体軟式野球競技リハーサル大会兼水戸市長旗第26回東日本軟式野球選手権大会】全国トップレベルの大会の一つで、東日本23都県代表の実業団28チームが出場し11月2~6日までの5日間、土浦、牛久、水戸市など6市で開催される。県内からは県代表の筑波銀行のほか常陽銀行、筑波病院など5チームが出場する。

買い物楽しんで 福祉施設が高齢者無料送迎 土浦で11月スタート 

【谷島英里子】自宅近くにスーパーがない、免許を返納して離れたスーパーまで行けないなど、買い物弱者の高齢者を無料で送迎する「買い物支援サービス」を土浦市民間社会福祉施設協議会(上方仁会長)が11月から始める。買い物が困難な高齢者の負担を軽減するのが狙いだ。同協議会は市内の社会福祉施設間の交流などを目的に2007年に設立。市内34の福祉施設で構成され、行政や同市社協と連携して防災事業などを実施している。 同協議会に所属する34福祉施設のうち、11施設が買い物支援サービスに協力する。利用者の学校区内にある施設の車が利用者宅を訪れ、店舗へ送迎する。買い物支援サポーターも同乗して介助を行う。申し込みは同市社協の事前面談などが必要という。 利用対象は次の通り。▽市内在住の65歳以上の高齢者▽一人で車の乗降ができる▽要介護認定2までの人▽車を所有せず、公共交通機関の利用に不安がある▽長距離歩行が困難▽親族や知人の支援を受けることができない人など。 上方会長によると、買い物の代行や宅配とは違い、買い物そのものを楽しんでもらいたいと送迎に限定した。現段階では利用者数が判断できないため、当面は月1回の運行となる。上方会長は「各施設が地元地域に貢献できれば」と話す。民生委員や区長、回覧板などを通して広報を行い、市民に利用を呼びかけることにしている。 ◆「買い物支援サービス」協力施設 ▽一中地区=滝の園▽二中地区=静霞園、窓愛園▽三中地区=もりの家▽四中地区=飛羽ノ園▽五中地区=こほく▽六中地区=なごみ▽都和地区=つわぶき、はなのえん▽新治地区=シルトピア、憩いの里 問い合わせは市社会福祉協議会福祉のまちづくり係(電話029・821・5995)まで。

日常にあるもの題材に 「続・平熱日記」の斉藤裕之さん 牛久で個展 11月11日まで

【鈴木萬里子】NEWSつくばのコラムに「続・平熱日記」を連載している牛久市在住の画家、斉藤裕之さんの個展「平熱日記Vol.8」が同市南のタカシサイトウギャラリーで開かれている。 斉藤さんは「日常にあるもの」を題材に、金網を切り漆喰(しっくい)を塗った土台にアクリル絵の具で描く独自の作風が持ち味。多くがはがき2枚前後の小作品だが、色彩の奥行きが深いせいか、大きな広がりを感じさせる。 今展は90年代、フランスに留学していたころの抽象画の作品3点を加えた40点が展示されている。留学当時の作品は偶然アトリエで見つかった。斉藤さんは「当時、夜な夜な描いていたのを思い出した。今の作品と基本的に変わらない。今も当時と同じように描いているなあ」と感慨深そうに話した。 小作品には、山口県の実家から送られてくる瀬戸内海の「いりこ」を描いた6作品が含まれる。「描く題材がない時は、だしに使う小魚いりこを描く。いりこは1つとして同じ形のものがない」。平熱日記展ではおなじみの画題で、作者の確かな目線と描き続ける情熱が伝わってくる。 個展初日に訪れた牛久市の男性(47)は「NEWSつくばの平熱日記を楽しみに読んでいます。斉藤さんの絵はリアル感があり、平面に描いているのに立体的に見える。きっといつか我が家に飾りたい」と話した。 ◆会期は11月11日(日)まで。開廊午前10時~午後6時(月曜休廊。問い合わせは同ギャラリー(電話029・872・8951、ホームページはhttp://www.saitoh-cofee.com) ◆斉藤さんのコラム「続・平熱日記」は毎月第2,4火曜日に掲載。常陽新聞発刊当時からコラムを担当されたが、昨年休刊してNEWSつくばとなり「続・平熱日記」とした。ひょうひょうとした人柄が描き出すエッセイは面白いとファンが多い。

グローバル化に挑んだ生き様知って 幕末から明治の所蔵記録公開 筑波大図書館で特別展

【田中めぐみ】今年は明治元年(1868年)から150年の年に当たる。これを記念して政府は明治150年に関連する取り組みを推進している。筑波大学中央図書館(つくば市天王台)では、幕末から明治の動乱を生きた人々を記録した貴重な所蔵資料を公開したいと、特別展「グローバルに挑む群像-幕末から明治へ-」を29日より開催している。 特別展は3部構成となっている。第1部で、神田湯島にあった江戸幕府直轄の学問所「昌平坂学問所」の儒者が条約交渉にどのように関わったかをうかがい知ることのできる資料を展示。第2部では長州藩士の記録など、幕末の動乱を生きた人々の様子を記した資料、第3部では明治を拓いた名著を展示し、計49点の所蔵資料を公開している。 同大は東京教育大学を前身としており、1872(明治5)年に昌平坂学問所跡地に設立された師範学校の流れをくんでいる。昌平坂学問所と縁の深い同大は、同学問所に関する文書を多数所蔵しているという。 今回の特別展を企画した同大人文社会系の山澤学准教授は「歴史は現代を見るためのかがみだ。大学所蔵の記録資料からは、激動の時代の中、堂々としたたかに生きた人々の様子が見えてくる。開国というグローバル化に挑戦した人々の様子を知ることは、同じようにグローバル化の波にさらされている現代の我々がどのように生きればよいか、生き方の参考になると感じている。」と話す。 同大附属図書館は毎年特別展を開催し所蔵の貴重資料などを一般公開している。昨年は「江戸の遊び心-歌川国貞の描く源氏物語の世界-」を開催し、約2800人が来館した。 ◆「グローバルに挑む群像」の会期は11月30日(金)まで。入場無料。開館時間は午前9時~午後5時。11月10日(土)午後1時30分からは、山澤准教授による特別講演会を開催する。西郷隆盛について記した資料などを取り上げ、時代によって人物評価がどのように変わったのか論じる予定だという。問い合わせは電話029・853・2376(同館古典資料担当)

中高生もクレオ再生案に意見 28日つくばでタウンミーティング

【橋立多美】つくば市主催のタウンミーティング「会える市長with中高生」が同市吾妻の商業施設Bivi2階つくば総合インフォメーションセンター交流サロンで28日に開かれ、市内の中高生と近隣の高校に通学する14人が五十嵐立青市長と意見交換を行った。 五十嵐市長は「市長と会える」をキャッチフレーズに、就任3カ月後の2017年2月から市内6地区で市民と語らう会を開催してきた。中高生を対象とした今回のミーティングは初の試み。 「最近気になる」として生徒たちが質問したのがクレオ再生問題だった。「つくば市議会(全員協議会)で市議会議員の賛同を得られないのはなぜか」の問いに市長は「周辺地区の住民はクレオ再生より他にやって欲しいことがあり、議員は地区を代表している」。また「すぐ近くに中央図書館があって図書館は必要ないのではないか」「クレオは寿命がきているのではないか」などの質問が相次いだ。市長は「中央図書館は子どもと大人の共有施設で『子どもの声がうるさい』という意見がある。子どもたちが伸び伸びと本に触れることができる図書館を設置する」「クレオは築33年。専門家に調べてもらったところ建物は頑丈であと20年から30年は使えると言われた」と答えた。そして「クレオ再生問題についてはもうちょっと待ってほしい」と話した。 学校に関する意見も挙がった。「(公立中学の)バスケットボール部に所属しているが他の部とシェアしているため体育館が使えず練習できない」という声に、会場にいた門脇厚司教育長が「学校によって体育館が使えない状況は把握している。今春開校した、みどりの学園は工事が順調に進んで年内の完成を見込んでいる」と回答。市長は「TX沿線の小中学校の児童数が増加している。決められた予算の中から教育環境を整備していく考えで、小中学校の普通教室のエアコンは今年整備を終えた」と補足した。 また「夏休みに中央図書館で自主勉強をするが席が足りない」「TX沿線に県立高校を開校してほしい」という要望が上がった。ほかに「義務教育に異文化交流を取り入れたら外国人への理解が深まるようになる」「つくばは緑が多い。落ち葉をごみにせず、回収して堆肥化し、土に戻す『落ち葉銀行』に取り組んではどうか」という提案がされた。 生徒たちからは「自分の意見を言うことが大切だと分かった」「市民の一員なので市政に関心をもっていこうと思う」といった声が聞かれた。

1日借り切り「わんわんランド」で学園祭 つくば国際ペット専門学校

【鈴木宏子】つくば国際ペット専門学校(つくば市沼田、生徒数275人)の学園祭「第11回犬友祭(けんゆうさい)」が28日、隣接の犬のテーマパーク「つくばわんわんランド」を1日借り切って催された。 犬の訓練士や美容師、動物看護師などを目指す学生たちが、クイズ大会やドッグレース大会など手作りのイベントを開いて、これまで学んだ成果を披露した。約1540人が来場し、犬との触れ合いを楽しんだ。愛犬を連れて参加した家族連れなども目立った。 クイズ大会は、災害時の犬のしつけ方をテーマに、犬の訓練士などを目指すドッグトレーナーコース2年の横須賀奏水さん(19)、宮脇菜奈さん(19)ら7人が実施した。災害時に迷子になるペットが多い中、迷子にならず飼い主と一緒に避難できるようになるための日頃のしつけ方を13問のクイズにし、参加者に〇×で答えてもらった。実際のしつけ方法などを撮影したビデオも同時に上映した。 宮脇さんは「地震が来たら、持ち運びできるゲージに入るようしつけたり、ゲージを怖がらないよう日頃からしつけてほしい」などと話していた。 愛犬のビーグル犬を連れて夫婦でクイズ大会に参加したつくば市の会社員、小武内猛さん(59)は「災害時のしつけを知ることができ参考になった」と感想を話した。 ドッグレースには、入学直後から毎日一緒に過ごしている伴侶犬「パートナードッグ」=6月2日付け=16頭が、学生と一緒に出場し、3レースが展開された。ペットケア総合コース2年の和気彩乃さん(20)と入岡佑花理さん(19)によると、犬同士の相性などを考慮して、各レースの出場犬を決めるなど工夫したという。

高齢者と保育園児 毎日交流し楽しみ共有 葛城デイサービスセンター

【鈴木萬里子】つくば市西大橋寺前、葛城デイサービスセンター(石川佳一施設長)では、利用者の高齢者と、隣接のかつらぎ保育園(舘野清子園長)園児らとの交流が毎日行われている。午後のひとときを一緒に過ごし、互いに刺激を受け、楽しみを共有するユニークな試みだ。 同センターは1998年に創立され、当時から高齢者と園児との交流を大切にしてきたという。午後3時のおやつの時間になると、保育園の年長児5人が交代でやってくる。一緒におやつを食べて、ゲームをするなど世代間の交流を自然な形で行っている。壁には園児らの顔写真が貼られていて、名前をすぐに覚えっられるように工夫されている。 園児の1人は「家にもじいじとばあばがいるけど、ここにもたくさんいるので来るのが楽しい」と笑顔で話してくれた。高齢者からは「毎日子どもと触れ合うのが楽しい」「びっくりするくらい大人みたいなことを言うので驚く」などの声も聞かれた。一点を見つめて無口だった男性が園児の話にうなずく様子も見られた。石川施設長は「子どもには高齢者の笑顔を引き出す力があり、皆さん自然に笑顔になる。核家族化が進んで高齢者と触れ合う機会の少ない子ども達にもいい経験になると思う」と世代間の交流の効果を語った。 ソプラノ歌手招き音楽会も 24日は「世代間交流イベント—童謡・唱歌を一緒に歌いましょう」が、同保育園のホールで催された。園児とお年寄り約130人が集い、楽しいひとときを過ごした。 出演はNPOポポロ(日本と世界の愛唱歌をうたう会)。NHK教育テレビで「うたのおねえさん」として活躍したソプラノ歌手の山田昌子さんら3人のステージだ。石川施設長が以前ポポロのコンサートを聴いたことがあり出演を依頼した。 披露されたのは童謡と唱歌を中心に全16曲。園児たちとお年寄りが唱和した。園では普段から童謡を歌ったり唱歌をよく聞いているそうで、どの子も飽きることなく楽しそうだった。 デイサービス介護士の一人は「利用者は歌が好きな人が多いので、とても楽しそう。耳の遠い人も口ずさんでいたので安心しました」と笑顔になった。石川施設長は「地域の皆さんが施設を見に来るのはハードルが高いと思う。この様なイベントの機会に来てもらい、サービスや考え方を実際に見てもらえたら」と話している。

未来のアニメーター必見! つくばのウィットスタジオに未知なる可能性

【高校生ライター・加藤涼芳】「進撃の巨人」と言えば、広い世代に愛されている漫画の1つである。奇妙ともいえるストーリー設定でありながら不思議な魅力を放つこの漫画をアニメ化したウィットスタジオ(本社・東京都武蔵野市)に迫る。 アニメを作ってみたい人に朗報  つくば市にウィット茨城スタジオがある。同市産業振興センター(同市吾妻)内に設けられ、人材の育成をコンセプトとし企画制作活動をしている。来年4月からの新卒者を含む新規採用の募集もスタートしており、地域に根ざした新たな形のアニメ制作の可能性に挑む。 茨城スタジオでは、まず短編アニメやご当地オリジナルグッズの作成など短期間でできるものから手掛け、さらに、地元の商業施設や学生との連携なども視野に入れていきたいとのことだ。 茨城スタジオを担当するのは同社制作担当の山田健太さんだ。つくば市は人材育成に適していると話す山田さんから、将来アニメ制作の仕事につきたいと思っている人にアドバイスをもらった。①考えているものを、具現化することを楽しむ②自分の意見を持ちつつも、他人の意見に耳を傾けコミュニケーションを大切にする③アニメーションの画面の作り方を理解する―の3つだという。  膨大な時間と尽力が必要  ウィットスタジオでは、企画→脚本→絵コンテ→作画→加工、納品までを他社のスタッフとの関わりを持ちつつ仕上げている。 企画・脚本・絵コンテでは、いろいろな設定の材料が必要になる。脚本作成に週1回のペースでシナリオライターとの打ち合わせをし、大量の絵コンテ作成には、アニメ監督をはじめ社内スタッフから社外発注も含め対応する。中でも作画には、膨大な時間と労力を要する。1枚の絵を複数の人がチェックし加筆しながら作業を進めていく。 キャラクターの色や背景の色彩の個々の設定、また、同じ対象物の色でも明るいところと暗いところでは色味を変えて塗るなどの細かな指定をする。設定の詳細が書かれた指示書の作成・作画の変更等を重ね最終画面の決定に至る。素材の合体の後、最後に光の処理を加える。こうして出来た原画60枚で映像8秒程度にしかならない。 手掛けたスタッフ1人ひとりの妥協のない熱い思いが原画1枚1枚に注ぎ込まれ、戦闘シーンの速い動きをも滑らかに描き出し、見る者すべてを魅了する作品ができ上がる。たくさんの人と協力し合い、分業しつつ数年単位の年月を1つの作品に費やし作成する。 取材の際、見せていただいた原画からは神聖さを感じるほどの迫力があった。機密資料ということで写真を掲載できないのが残念だ。 同社制作担当スタッフの山田さんは「パソコンを使って1秒間に例えば8~12枚の絵を何層分も重ねて描くなど、1枚ずつ手作業で行うのでやりがいがあります」と話してくれた。山田さんいち押しの作品は新感覚・青春ロードムービーと話題になった「ローリングガールズ」だそうだ。 学校対抗アニメコンテストなど地域活性化に期待 ウィット(WIT)スタジオのWITとは、和田丈嗣社長を初めスタッフの名前の頭文字(W・I・T)を連ねて出来たものと、英語のWITからできており「機知(その場に応じてとっさに機転きかせる)に富んだ」という意味がある。物づくりに携わる人たちならではの頓知のきいたネーミングだ。ウィットスタジオには、そんなアイデアに満ちたスタッフがたくさん所属し、アニメの企画制作業務を行っている。 同スタジオは長編アニメーションだけでなく、プロモーションビデオやテレビの番組宣伝ほかゲームのオープニング等も担当している。 山田さんが特に印象に残っているのが、スカイツリー展望台で流した映像の作成だったという。通常、縦9:横16の画面比率に対し、縦9:横96という横長の大画面への挑戦は、苦労もあったが技術の飛躍的発展につながったと笑顔を見せてくれた。 今後アニメを見る際、アニメ企画制作の角度から鑑賞するのもまたひと味違う楽しみ方になるだろう。アニメ制作には数年単位の年月と膨大な尽力を要することは前に紹介済みだが、地方でそれをどうカバーするかが最大の課題であろう。また、地域活性化の一助として学校対抗アニメコンテストや動画甲子園などと銘打った企画の実現に期待したい。(土浦日本大学中等教育学校5年)

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