木曜日, 5月 13, 2021

玉置晋

《食う寝る宇宙》80 火星探査「魔の7分間」

【コラム・玉置晋】ウチの大事な家族である犬の「べんぞうさん」の体調がすぐれません。この数年、検査で腎臓の数値が悪かったので、腎臓ケアの食事に変えていたら、今度は肝臓の調子が悪くなり、手製の食事に替えましたが食欲がなく、昨日も仕事のお休みをいただいて獣医さんに連れていきました。2008年に我が家にやってきたこのワンコ、人間でいえば70歳くらい。70歳だったら、まだまだバリバリ働いている人いっぱいいるぞ。どうか元気になってくれ。 こういう時に限って、仕事の締め切りやら、確定申告の準備やら、異様に忙しい。2月19日早朝に、たまった領収書と悪戦苦闘しながら、NASA(米航空宇宙局)のライブ中継をみていました。NASAジェット推進研究所の火星探査機「パーシビアランス」が火星への着陸を試みている真っ最中です。 これまで各国で試みられてきた火星探査の成功率は半分以下。火星周回への軌道投入、大気圏突入、軟着陸のためのパラシュートの展開―すべて難易度が高い。地球から火星までの距離は光(電波)の速さでも10分かかるので、探査機に事前にプログラムしておき、自己判断させなければならないのです。特に探査機の大気圏突入の時間は、「魔の7分間」として恐れられているそうです。 着陸成功にガッツポーズ 火星の大気圏突入時には、時速2万キロという高速移動しているために、ものすごい勢いで探査機前方の大気を圧しつぶします。圧しつぶされた大気の分子が激しくぶつかり合って、熱が発生します。火星の大気だと2000℃程度に加熱されるので、高温に耐えねばなりません。 そして、着陸点に向かう軌道を修正しつつ、適切なタイミングでパラシュートを開く。しばらく降下した後、「スカイクレーン」と呼ばれるロケット推進で噴射する装置につるされながら、ゆっくりと着陸していきます。この間7分間。NASAの運用室の緊張感がパソコン画面を通じて伝わってきました。着陸成功が報じられたときは、思わず僕もガッツポーズ。

《食う寝る宇宙》79 宇宙飛行士と人工衛星の「試験」

【コラム・玉置晋】日本人宇宙飛行士の募集が今秋に予定されています。僕の周りにも宇宙飛行士を目指している人が何人かいるので、彼らを応援しています。JAXA(宇宙航空研究開発機構)のホームページを見ると、宇宙飛行士の募集・選抜・基礎訓練に関する意見募集や情報提供依頼が出ています。どのような選抜試験になるのか興味津々です。僕は受験するのかって? いやいや、まずは腹のぜい肉をどうにかしろと奥さんに言われておりますよ。 人工衛星も試験を受けなければ宇宙には行けません。宇宙に行くということは過酷です。ロケット打ち上げ時の音響レベルは飛行機エンジンの近くぐらいで、ロケットの噴射による振動は地球重力に匹敵する加速度となります。丈夫じゃないと壊れてしまいます。 そして、無事に宇宙空間に到達したらさらなる困難が。高真空、±100℃の温度差、高い放射線量―。特に放射線は、僕が研究している「宇宙天気」に大きく依存します。地上で素晴らしい働きをしている電子機器でも、耐性がなければ地球一周も持たず機能を失ってしまうでしょう。 小型衛星環境試験設備シェアリングサービス 人工衛星が、ロケットで宇宙に運ばれるのに耐えられて、宇宙空間でも健全に動作することを確認するために、地上で試験を行います。電気性能試験、電磁適合性試験、機械環境試験、熱真空試験、放射線耐性試験など、様々な試験が必要ですが、申請や機材の準備、試験場や試験人員の確保などのノウハウがないと難しくて、これまで宇宙参入の障壁となっていました。 ここに目をつけた人が、僕が所属する宇宙コミュニティ「ABLab」の仲間にいます。「小型衛星環境試験設備のシェアリングサービス」と題して、宇宙ビジネスアイデアコンテストS-booster2019に応募し、見事JAXA賞を受賞しました。そして準備期間を経て、2021年度からサービス提供を開始します。詳細は本サイトの記事「JAXA認定ベンチャー...

《食う寝る宇宙》78 「3分間宇宙天気」スタートへ

【コラム・玉置晋】高校生や大学生のとき、興味がある宇宙関係のイベントを見つけては出かけて行ったものです。必要とあれば、泊りがけで行くこともありました。でも社会人になって忙しくなると、なかなか出かけることは難しくなりました。 ところが、昨年から続くコロナ禍で様々なイベントがオンライン化されています。主催者側としては苦肉の策ということが多いようですが、日本中、いや世界中のイベントに気軽に参加できますので大変助かります。 昨年、学会などに自宅から参加できたのは大変新鮮な出来事でありました(例えばコラム71「おうちで宇宙環境シンポに参加」)。そして、イベントに参加するだけでなくて、遠隔地を拠点とするコミュニティーに加入することも可能になりました。自宅から新たな出会いが生まれたのです。 宇宙コミュニティー「宇宙人クラブ」 関西を拠点とする宇宙コミュニティー「宇宙人クラブ」(代表:福海由加里さん)で、宇宙天気防災に関する講演をさせていただく機会がありました。このクラブは、宇宙ビジネス新規事業のタネ創出を目指すコミュニティーです。関西の電気メーカーの有志が中心となり、2018年に設立されました。 福海さんは、「誰でも、いつからでも、自分の未来に挑戦できる。地球上の頑張るすべての人類のそれぞれの人生を応援したくて」、クラブを立ち上げたそうです。だから、社外にも開かれたコミュニティーとしたそうです。今や350人以上の個性的なメンバーが集まっています。

《食う寝る宇宙》77 「できれば平坦な登山をしたい」

【コラム・玉置晋】ゼイゼイ、ハアハア。震える膝をさすりながら岩に腰掛ける僕と妻。後ろから登ってきた2組の家族が「お先に失礼します」と追い抜いて行きます。山道を登り始めてから、どれくらいの時間が経ったでしょう? 疲れていると時間の流れが遅く感じます。 そして、疲れると変なことを考えます。ちょっとお付き合いください。アインシュタインは時間が一定でないことを理論的に予想しました。僕らに「お先に失礼」と追い抜いて行った家族が持つ時計の時間の進み方は、静止した僕らから見て、ほんのちょっぴり遅れます。あまりにもわずかな時間なので、僕らの日常でこの時間の遅れを感じることはありません。 でも、もっと速く動く物体。例えば、航空機に乗せた原子時計の進みは、ごくわずかに遅れることが実験で確認されています。速度ともう一つ時間の流れをつかさどるものが、物理の世界にあります。重力が大きいほど、時間の流れは遅くなります。地上が重力の井戸の底にあるとすると、人工衛星が飛行する高度だと重力は小さくなるので、時計は早く進みます。 極めて精密な時刻情報を発信しているGPS衛星に搭載されている時計は、地上と比べて毎秒100億分の4.45秒だけ遅く進むように調整して、つじつま合わせをしています。時間は一様に流れないというのは、紛れもない事実です。 ロコモティブ・シンドロームと宇宙飛行士

《食う寝る宇宙》76 年末の大掃除と宇宙のゴミ

【コラム・玉置晋】本来、本コラムは沖縄旅行の合間に書くつもりだったのですが、残念ながらコロナ禍が収束せず、旅行は断念しました。会社には事前にお休みの申請を出していたので、わが家は大掃除を行っています。 旅行がなくなってしまったので、わが家の奥方もご機嫌ナナメのご様子で、僕としては暗雲が通り過ぎるまで低姿勢で地雷を踏まぬようにと、気をつけてはいるのですが、「ほら、そこ、汚れ落ちてない!」と。しまった、大掃除という地雷原に迷い込んでおります。 宇宙のゴミに関するお話は、SFの中では随分昔から題材になっていますが、今や現実の問題として日本のみならず世界中で議論されています。この原稿を書いている時点(2020年12月22日)で、4万7295個の宇宙物体が登録されています。これは観測可能な10センチ以上のものです。 このうち3万9021個は宇宙ゴミ(Space Debris)として分類されています。1万7702個は大気圏に突入して燃え尽きましたが、残りは軌道上を高速で飛び回っています。 10センチ未満の宇宙ゴミはもっと沢山あるのですが、現時点では観測・公開はされていません。放っておくと、これからどんどん増えていきます。運用中の人工衛星に宇宙ゴミが接近する場合は逃げる必要があるので、衛星運用者はとっても困っています。 宇宙ゴミを回収する仕事が、ビジネスとして成立する世界が出来つつあります。日本の民間会社も数社参入してきているので楽しみですね。僕が研究している宇宙天気も宇宙ゴミの掃除とも関係していて、太陽活動が活発な時期は宇宙ゴミが大気圏に落ちて掃除されやすくなります。

《食う寝る宇宙》75 「はやぶさ2」を見た子供たちの未来は?

【コラム・玉置晋】2020年12月6日未明には、ムクムクっと起き出してテレビをみていたので、寝不足の中で本原稿を書いています。はやぶさ2から分離したカプセルが大気圏に突入し、大気との摩擦熱で発光しながら、帰還する姿にはウルウルしてしまいました。 2014年12月3日に地球を飛び立ってから6年の歳月が経っていました。はやぶさ2の本機はカプセルを分離後、地球を離脱して、次なる目的地に向かいました。 このニュースを見た子供たちの中から、宇宙を目指す人材がたくさん生まれるに違いないと考えています。私の母はこのニュースを見て、母が子供のころに読んだ絵本の話をしてくれました。絵本には「将来、動く歩道ができるだろう」「将来、人類は月に行くかもしれない」と書いてあったそうです。 15年後、母は高校の教員になり、修学旅行の引率で東京を経由した際に、初めてエスカレータに乗ったそうです。1960年代初頭のことだと思います。そして、1969年に人類は月に降り立ちました。今、はやぶさ2のニュースを見た子供たちが活躍する15年後、どの様な世界になっているのか。 どうか、次の15年後にどうなっているのかと、希望を持てる世界であることを願います。 中国は月でサンプルを採取

《食う寝る宇宙》74 野口さん打ち上げ時の宇宙天気は?

【コラム・玉置晋】11月16日9時27分(日本時間、米東部時間は15日)、野口宇宙飛行士が乗ったスペースX社の新型民間宇宙船「Crew Dragon」が米ケネディ宇宙センターから同社のFalcon 9ロケットで打ち上げられました。10分後には国際宇宙ステーション(ISS:International Space Station)に向かう軌道に投入され、打ち上げ成功となりました。 ちなみに1段目ロケットは海上のドローン船に「着陸」し、再利用されるという凄技も成功させています。その後、Crew Dragonは、27時間かけてISSに接近し、11月17日13時すぎにドッキングに成功しました。 Crew Dragonは、2019年3月に「Crew Dragon Demo-1」という無人テスト飛行(宇宙服を着たダミー人形を搭載)、2020年5月に「Crew Dragon Demo-2」という有人最終テストを成功させました。そして、今回、実運用初号機に野口さんが搭乗しました。このコラム「かっこいい宇宙船の打ち上げ!」(6月5日掲載)でも書きましたが、この宇宙船はとにかくカッコいい。昭和生まれの僕としては、ようやく21世紀がやってきたと、やや興奮気味です。

《食う寝る宇宙》73 宇宙に行きたい人、注目!

【コラム・玉置晋】文部科学大臣が10月23日の記者会見で、JAXAが13年ぶりに宇宙飛行士を募集すると発表しました。僕の周りにも宇宙飛行士を目指す若手が何人かいて、ちょっとざわついています。2021年秋ごろをめどに募集を行い、その後は5年に1度のペースで継続して募集するとのことです。今後の恒久的な月開発を視野に入れた動きでしょうね。 まだ募集要項は出ていないので、前回の募集要項を参考にすると、(1)日本国籍を有すること(2)大学(自然科学系)卒業以上であること(3)自然科学系分野における3年以上の実務経験(4)宇宙飛行士としての訓練活動、宇宙飛行活動に柔軟に対応できる能力を有すること(5)訓練時に必要な泳力(水着及び着衣で75メートル泳げること、10分間立ち泳ぎが可能であること)(6)円滑な意思疎通が図れる英語能力を有すること(7)宇宙飛行士活動に適応できる医学的・心理的特性を有すること(8)日本人宇宙飛行士としてふさわしい教養等を有すること(9)10年以上JAXAに勤務かつ長期間海外勤務が可能なこと(11)所属機関の推薦が得られること―。 具体的には:JAXAホームページを参考にしてください。 10年以上前の要項なので、現在とは求められる能力は変わってくると思います。今後、どんな募集要項が出てくるか楽しみです。でも、(5)の泳げること―というのは、地球帰還時や緊急時の脱出の際、海上で待機する可能性もあるので、間違いなく残るでしょうが、僕は子供のころから泳ぎが苦手でねえ。宇宙飛行士を目指す子供たちは、しっかり泳げる練習をしておいてください。 ハロウィン・イベントにざわつく心 11月になりました。先月、我が家では調子にのって、ハロウィン柄の使い捨てマスクを1箱購入したのですが、ハロウィンが終わったにもかかわらず、数十枚、使わずに残ってしまいしました。

《食う寝る宇宙》72 「自助」「共助」が大事!「防災国大」に参加

【コラム・玉置晋】10月3日、防災推進国民大会(通称:ぼうさいこくたい)というイベントに参加しました。名前の通り、一般~専門家向けの防災を学ぶことができるイベントです。 僕は太陽フレアなどで、将来、社会インフラなどに甚大な影響を与える可能性がある宇宙天気災害に興味があって、大学院で研究をしています。そのため、地震や水害といった僕らがすでに被害を被っている災害の研究動向や社会の対応状況を勉強しておきたいと考えています。そこで、大学の先生から、このイベントをご紹介いただいたというわけです。 様々な講演を聴いて気になったのは、自分で守る「自助」、みんなで守る「共助」、国や自治体による行動「公助」の3つの「助」が必要だということを、皆さん述べておられた点です。 自助や共助は、僕ら自身のアクションになるけど、イザというときの備えができているかといえばちょっと自信がない。本コラムでは宇宙天気防災研究者という肩書になっていますが、本人の防災意識を問われると、ちょっとつらい。 本イベントの参加レポートは大学院の授業単位にも考慮されるそうなので、ちょっと本気で聴いています! 今年はオンラインで開催されており、発表の動画(https://bosai-kokutai.com/)はアーカイブされています。みなさんもよかったらいかが?

《食う寝る宇宙》71 おうちで「宇宙環境シンポ」に参加

【コラム・玉置晋】10月7日、JAXAさん主催の「宇宙環境シンポジウム」に参加、講演させていただきました。一昨年は神戸大学が会場で、茨城から新幹線を使った日帰り弾丸ツアーでした。昨年は東京都市大学横浜キャンパスが会場で、自家用車で向かったのですが、首都高で道を間違えて、渋谷駅前から「遅刻しちゃうよ~」と、下道を泣きながら横浜に向かいました。 今年の宇宙環境シンポジウムはオンライン。自宅からパソコンでアクセスして講演を聴講、さらに発表できるのはうれしいことです。上はYシャツを着ていましたが、下はパジャマだったことは、ここだけの内緒です。 ノーベル物理学賞 今年も宇宙分野 今年のノーベル物理学賞は宇宙分野から選出されました。ブラックホールの形成の証明、銀河系中心の巨大ブラックホールの存在を明らかにした、イギリス、ドイツ、アメリカの3研究者が受賞しました。 昨年は宇宙論や太陽系外惑星に関する研究が受賞していますので、2年連続で宇宙分野から選ばれました。ノーベル物理学賞は、宇宙・素粒子分野と物性分野が1年毎に選出されるのが恒例でしたので、驚きました。 オンライン授業か...

《食う寝る宇宙》70 新たな太陽活動サイクルが始まった!

【コラム・玉置晋】2019年12月より新たな太陽活動サイクルに突入していたことが公式発表されました。太陽活動には活発な時期(極大期)と静かな時期(極小期)があります。この欄(コラム67)で「間もなく、新たな太陽活動サイクルの始まりが宣言されることでしょう」と述べましたが、アメリカの航空宇宙局(NASA)からプレスリリースが出ましたので、その一部を抜粋して紹介します。 NASAプレスリリース 太陽サイクル25がここにある。NASA、NOAAの科学者はそれが何を意味するのか説明する。 第25太陽活動サイクルが始まった。火曜日(9/15)のメディアイベントで、NASAと米国海洋大気局NOAAの専門家は、新しい太陽周期に関する分析と予測、そして宇宙天気の活発化が地球上の私たちの生活と技術、そして宇宙の宇宙飛行士にどのような影響を与えるかについて話し合った。 NASAとNOAAが共催する国際的な専門家グループであるソーラサイクル25予測パネルは、2019年12月に太陽の極小値が発生し、新しい太陽周期の開始を示したと発表した。我々の太陽はとても可変なので、このイベントを宣言するには実際の数ヶ月後までかかることがある。科学者は太陽周期の進捗(しんちょく)状況を追跡するために太陽の黒いシミ(黒点)を観測する。黒点は太陽活動に関連しており、太陽フレアやコロナ質量放出などの巨大な爆発の起源として、光、エネルギー、太陽物質を宇宙に噴出す可能性がある。

《食う寝る宇宙》69 オンラインで宇宙講演会

【コラム・玉置晋】今年は、新型コロナの影響でリモートワークをしている方も多いかと思いますが、講演会も軒並みオンライン開催になっています。 先日、オンラインサロン「Remote Campus(通称リモキャン)」で講演させていただく機会がありました。リモキャンは、水戸市出身の会社員、永田聡さんたちにより、今年3月に立ち上げられました。以来、ほぼ毎日、子どもから大人まで登壇しています。会場を使った講演ではなく、すべてインターネット上での講演です。 僕は今年4月に宇宙ビジネスサロンABLabで「宇宙天気プロジェクト」を立上げました(コラム64参照)。そこでは、「宇宙天気キャスタ」や「宇宙天気インタプリタ」(コラム49 、コラム50参照)といった、社会の現場で草の根的に活動する、宇宙天気の知見を持った人材の発掘を行っていることに触れました。 オンライン講演会では、聞き手も発言することができます。また、チャットを用いて文字入力も可能なので、議論が成立します。これらの機能を使って、様々な立場の方々と白熱した議論を行うことができました。 講師側はボコボコにされることもありますので、ちょっと恐ろしい機能ではありますが、有益なコメントを得ることもできます。原因はどうあれ、おうちで宇宙講演会を楽しめる時代になったのは、なかなか素敵だと思います。

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街の記憶 東京・つくば 《遊民通信》16

【コラム・田口哲郎】 前略 「木綿のハンカチーフ」などで知られる作詞家、松本隆さんは2012年に東京から神戸に移住したそうです。当時雑誌記事で読んで、衝撃を受けました。松本さんは生粋の東京人です。生まれ育ちは港区青山、慶應義塾に通い…と、シティ・ボーイの体現者です。のちの渋谷系につながる、いわゆるニューエイジの山手文化を生み出し、けん引してきたことはご存知の通りです。 都心文化を屈託なく表現できる人は、上京者の街でもある東京にはそれほど多くいません。その松本さんが東京を離れたことは、一個人が地方に引っ越したという事実以上の何かがあるに違いないと思わせられました。東京がかつての東京では無くなったという旨の発言をされていました。 コロナ前の東京は色々限界だったのかもしれません。諸々(もろもろ)が集中・蓄積しキャパシティ・オーバーとなり、はち切れる寸前でした。そんな東京をコロナ禍が襲いました。東京は破裂せず、しぼみ始めました。今後も東京は東京として続くでしょう。でも、かつての東京はもう戻ってこないでしょう。 恐らく、かつての東京、例えば第2次大戦前の東京は戦後の東京とは全く違う東京でした。戦前の東京を戦後に語ったところで、それはノスタルジーに過ぎないわけですが、街の記憶は人をなんとも言えない感覚に誘います。沈みゆく東京は、これから無数の記憶の華に飾られるでしょう。

「大規模事業評価行わないのは違法」 18人が住民監査請求 つくばセンタービル改修で

つくば市が取り組んでいる総事業費約10億3800万円のつくばセンタービルリニューアル事業について、10億円以上の事業は大規模事業評価を行うと市の要綱で定められているにも関わらず、事業評価の手続きが踏まれていないのは違法だなどとして、元大学教授の酒井泉さん(72)ら市民18人が12日、市監査委員(高橋博之代表監査委員)に対し、すでに支出された約7000万円の返還請求と未支出額の支出差し止めを求めて住民監査請求をした。 同要綱は、住民投票で白紙撤回となった市総合運動公園事業を教訓に、五十嵐立青市長が2018年9月に定めた。10億円以上の大規模事業と市長が必要と認める事業を実施する際には、評価会議を設置し、事業の必要性や妥当性などの評価を行うことなどが定められている。 監査請求によると、同リニューアル事業は10億円を超えるのだから「同要綱の対象であることは明らかであるが、市はこの要綱に従った評価を全く行っていない」としている。 一方、大規模事業評価をめぐっては、今年3月議会で、飯岡宏之氏(自民党政清クラブ)と山中真弓氏(共産)が一般質問し、それぞれ大規模事業評価を実施するようただしたが、市は、約10億3800万円のうち、まちづくり会社「つくばまちなかデザイン」への市の出資金6000万円はリニューアル事業の事業費ではないなどとし、10億円を超えないのだから大規模事業評価を実施しないとした。 監査請求した酒井さんは「議会で質問した議員がいたが、数の力で無視された。議会が道理を通すことができなくても、市民は道理を通すということをはっきりさせたい」と話した。 監査請求ではほかに、まちづくり会社は市が出資する第3セクターであるにもかかわらず、総務省が2014年に出した「第3セクターの経営健全化指針」に基づく検討を行っておらず、市の出資金6000万円の支出は公金支出のための必要な手続きを欠いており違法だと指摘している。

ほうきの力で「魔女のフェスタ」 29日 旧筑波小に集結

つくば市国松の旧筑波小学校を会場に、29日開催する「魔女のフェスタ」の準備作業が佳境を迎えている。2018年以来3年間、人の手が入らずにいた校舎を利活用する廃校リノベーション企画。フェスタ実行委員会(いしざき緑子代表)は校長室や各教室の大掃除から始め、ほうきの力で学校ばかりか地域社会にも魔法をかけた。 29日は校庭に飲食店のキッチンカーやテントが並び、3階建ての校舎全体に占いや癒し療法、手づくり品、子供向け工作教室のワークショップなどが展開する。10日現在、その数は95店になった。10代から80代の「魔女」が集結する。 いしざきさんは昨年、学校近くの国松地区の古民家に移住して、アロマテラピーの教室「魔女の学校」を開設(2月17日付)。誕生日が4月30日で、ドイツの魔女祭り、ヴァルプルギスの夜にちなむ「世界魔女デー」であることから、自身「魔女」と称して活動を行ってきた。2019年4月には石岡市内で「魔女のフェスタ」を催したことがあり、旧筑波小でも開催を計画した。 「地区に子供たちがいないわけではないのに、放課後や休日に声がしない。校庭に集まって遊ぶ様子がない」のを残念に思ったためだ。 音楽教室のいしざきさん=旧筑波小

対象拡大も利用は1件 つくば市障害者向け発電機購入補助、道半ば

人工呼吸器を使用している障害者を対象に、つくば市が2019年4月から開始した停電時のための家庭用発電機購入補助制度について、昨年4月に利用条件が緩和されたにもかかわらず、実際の利用はいまだに1件にとどまっていることが分かった。 市の購入補助制度は当初、人工呼吸器を常時使用する障害者を対象に、停電時も医療的ケアができるよう、家庭用発電機の購入を最大10万円補助するものだった。しかし対象者は人工呼吸器を24時間、常時使っている人に限られた。夜間のみ使用する場合など「医療機器の電源確保が必要なのに、発電機の購入補助を利用できない」という声が多く寄せられた。そのため、20年4月に市は、補助の対象を1日1回以上人使用する者に広げた。 補助制度のもとになったのは、医療的ケア児の親の会「かけはしねっと」(根本希美子代表)が2018年に市議会に提出した請願だ。同会は当初から、できるだけ幅広い人が補助の対象になることを望んでいた。実際に補助制度が始まってからも、対象を広げるように市に働き掛けた。「補助の対象が広がったのは一歩前進だが、人工呼吸器に限らず痰(たん)吸引機など電源が必要な医療機器を使用している人なら対象になるように、もう少し対象を広げてもらえるとさらに良い」と、同会代表の根本さん(43)は話す。 制度の周知も課題 市障害福祉課によれば、新しく補助の対象が拡大してから補助制度の利用相談が複数あり、支給に向けて準備を進めているケースもあるという。しかし5月6日時点で実際に支給が決定されたのは、対象拡大前の1件のみ。補助の対象を拡大したことについて、市ホームページに掲載されている制度要綱を更新したり、障害者手帳取得時に窓口で説明しているが、幅広い周知が課題だ。 「昨年から市ホームページも新型コロナに関する情報があふれていて、4月に補助の対象が拡大されたことの周知が十分ではなかったと感じる。必要な家庭に情報が届いていないかもしれない」と根本さんは心配する。