木曜日, 3月 23, 2023

玉置晋

宇宙で髪を切る 《食う寝る宇宙》95

【コラム・玉置晋】前回のコラム「宇宙天気キャスター」で僕は痛恨のミスを犯しました。宇宙人クラブ代表の福海由加里さんの名前の漢字を間違えてしまい、NEWSつくば編集室に修正依頼を出すという御迷惑をかけてしまいました。謹んでお詫び申し上げます。現在、責任をとって頭を丸めるという企画が進行しております。坊主頭は幼稚園生のころ以来なので、ドキドキワクワクです。 頭を丸めるに当たり、宇宙飛行士の方は宇宙での散髪をどうしているのだろうと疑問に思いました。だって無重力環境だと、切った髪がそこら中に散らばってしまいます(まさに散髪!)。万が一、宇宙飛行士の皆さんが誤って吸い込んでしまったら、大変なことになります。機械類に紛れ込んで、ショートでも起こしたらと考えると、散髪なんてしている場合ではないのではと思います。 調べてみたら、普通にバリカンで散髪している動画がたくさん出てきて動揺しました。どうやらバリカンが特別な構造で、掃除機のようなものが付いていて、髪の毛は吸引される仕組みのようです。 動画の多くは同僚の宇宙飛行士に刈ってもらっているものでしたが、中には自分で刈っている強者も(日本のベテラン宇宙飛行士の方)。想像するに、無重力環境で自らバリカンを入れて、散った髪を確実に吸引するのは、難易度が高いと思います。散髪の訓練もされているのでしょう。 宇宙で洗髪もしたい 国際宇宙ステーションにはお風呂もシャワーもありません。無重力環境で水を扱うのは非常に危険です。水が機械に付着して故障の原因になるだけでなく、顔面にへばりついて窒息する危険性もあります。でも日本人としては風呂に入りたいし、それが無理ならシャワーを浴びたい。散髪の後ならシャンプーもしたい。

宇宙天気キャスター 《食う寝る宇宙》93

【コラム・玉置晋】9月19日、地球に帰還した宇宙船「クルードラゴン」から降り立った4人は全員が民間人でした。民間人だけで宇宙旅行を行ったのは世界で初めてです。宇宙旅行産業の始まりを告げるものというコメントもあります。後の時代、2021年は宇宙旅行元年と呼ばれるようになるでしょう。そして、宇宙旅行の前にチェックしなければならないのが宇宙天気です。 僕たちが毎日見ているテレビのニュース番組で、お天気について解説する気象キャスター。この気象キャスターに宇宙天気をレポートしてもらいたい。僕がリーダーをしている宇宙ビジネスサロン「ABLab」宇宙天気プロジェクトのミッションの1つです。 宇宙天気キャスターは,宇宙天気情報を一般の方々に分かりやすく伝える未来の職業です。「昨日より太陽活動が活発で、地球周辺の放射線が増加しています。不要不急の宇宙旅行は控えましょう。明日には回復する見込みです」。こういった解説を茶の間で視聴する時代は、意外とすぐかもしれませんよ。 コラム78で紹介した宇宙コミュニティ「宇宙人クラブ」(代表:福海由加里さん)では、まさに宇宙天気キャスターの試験運用を開始しています。毎月1回、宇宙天気概況を説明しています。最近では、NHKニュースの気象コーナでおなじみの斉田季実治さんによるレポートを配信しましたのでご覧ください。こちらまで。 アナウンサーとキャスターの違い 斉田さんに3分宇宙天気を実施していただくにあたり、当初は宇宙天気アナウンサーと紹介される予定だったのですが、「アナウンサー」ではなくて「キャスター」としてくださいと要望させていただきました。

宇宙天気を朝ドラに出すぞ! 《食う寝る宇宙》93

【コラム・玉置晋】僕がコラム54で「求ム!宇宙天気防災カリスマリーダー」と、看板人物の募集を出したのは2020年1月でした。その後、同年4月に宇宙ビジネスサロン「ABLab」で宇宙天気プロジェクトを設立しました。そこに加入してくださったのが、気象予報士の斉田季実治さんでした。 斉田さんはNHKの「ニュースウオッチ9」で気象キャスターを担当されており、ご存知の方も多いと思います。そんな斉田さんですが、将来、宇宙天気キャスターを目指しており、プロジェクトマネジャーになってもらえないかというお願いを聞いてくださり、ABLab宇宙天気事業の顔となっていただきました。 今年4月、斉田さんから相談があって、気象考証を担当するNHKの朝の連続テレビ小説で宇宙天気を話題にしてみないか、というものでした。このコラムでは宇宙天気という言葉を当たり前のように使っていますが、世の中の認知度はまだまだです。 朝ドラで宇宙天気が話題に出れば、たくさんの方に知っていただけるに違いない。というわけで、斉田さんとプランを練り始めました。物語の流れとしては、主人公は気象予報士で、その職場の民間気象会社で新規事業を提案するコンペが開催されます。その中で、ボツになる提案の中に宇宙天気を取り込むというものでした。 「面白いね、最高! 才能あるよ」

地球温暖化が宇宙ゴミを増やす? 《食う寝る宇宙》92

【コラム・玉置晋】それにしても今年の夏も暑い日が多いですね。ウチには室内犬(べんぞうさん)がいるので、仕事で出かけても冷房つけっぱなしで電気代が怖い。僕が子供のころ(昭和末期)は、もっと過ごしやすかった。地球温暖化問題が我が家の家計を直撃しています。 温暖化といえば、工場、発電所、自動車…。直接的であれ間接的であれ、私たちが生活するために、多くの二酸化炭素が排出されています。ほかにも、地球温暖化を引き起こす気体であるメタンが、家畜のゲップだけでなく、永久凍土が溶けて、地下で凍結されていたものが大気に大量放出されると懸念されています。 これらの物質は、太陽からのエネルギーを吸収して赤外線を出す特性があります。赤外線は電気コタツで想像できると思いますが、空気を暖める効果があります。その熱は地上近くでは厚い大気に閉じ込められて、どんどん熱がこもる。僕らが暑い暑いと言っているのは、このためです。 太陽活動が低調→紫外線量が減少 このコラムでも何度か取り上げている「宇宙ゴミ問題」。宇宙ゴミは運用を終えた人工衛星や打ち上げロケット、それらが衝突した破片で構成されています。高度600キロ以上の宇宙ゴミの多くは、僕らが生きている間に自然に落ちてくるのは難しいです。一方で、高度600キロ以下は薄いながらも大気が存在するため、宇宙ゴミにブレーキをかけることから、数年~十数年で大気圏に落ち、その数を減らす作用があります。 なんと、地球温暖化が宇宙ゴミを増やしているというのです。高度が高くなると大気が薄くなるために、熱は宇宙空間に逃げていきます。熱がなくて温まらなければ、大気を構成する分子や原子の移動が鈍いので、地球の重力に負けて下に落ちます。国際宇宙ステーションが飛ぶ高度400キロくらいだと、2000年以降、大気密度が2割も減りました。

国際宇宙ステーションから放出された謎の物体 《食う寝る宇宙》91

【コラム・玉置晋】社会人大学院生として、興味をもって取り組んでいる研究テーマの一つに、人工衛星の「落ちる問題」と「落ちない問題」があります。 「落ちる問題」は、地球の高層大気の温まり具合が大きくて、高度600キロ以下を飛行する人工衛星の周りの大気密度が増え、人工衛星への大気抵抗が増えること。結果として、人工衛星の速度が落ち、高度が落ちます。許容以上に落ちる場合、人工衛星の運用上よろしくないので、これを研究することはとても重要なことです。 「落ちない問題」は、いわゆる宇宙ゴミの問題に直結していて、高度600キロより高い所を飛ぶ人工衛星は、ブレーキをかける大気がほとんどないため、地球に落ちることなく、軌道上にとどまり続けます。実用衛星の多くは高度600キロより高いところに打上げられているので、落ちてくるのに数10年(高度700キロ)、数百年(同800キロ)、数千年(同1000キロ)かかりそうだということが分かりました。 このような研究を行っているので、宇宙空間にどんな物体が放出されているか、アメリカ軍が公開している宇宙物体の軌道データのカタログを定期的にチェックしています。 何らかの秘密ミッション? この軌道データのカタログをみると、2021年6月22日、国際宇宙ステーションから日本の機関が所有する新たな物体が放出されたことがわかりました。本コラムの執筆時点で公式の発表はありませんので、何らかの秘密ミッションが遂行されている可能性があります。

理科の自由研究 どうしよう 《食う寝る宇宙》90

【コラム・玉置晋】友人の宇宙ファミリー(コラム44参照)から「ウチの子の学校で、夏休みの宿題で理科の自由研究が必須になったのだけれど、よいテーマはないかなあ」と相談メールがきました。僕はすかさず、「じゃあ、宇宙天気について調べてみたら?」と、自分の研究仲間を増やすべく勧誘しています。 研究テーマの設定は、小中学生であろうと大学院生であろうと悩むものです。科学的な自由研究に取り組むコツを、気象学者の荒木健太郎先生が「科学的な自由研究とは?」と題してまとめてくださっています。参考にしてみてください。僕も先日、友人に教えてもらって、目から鱗(うろこ)が落ちました。 アクセス先はこちらです。「天気自由研究を大募集!『すごすぎる雲の研究』にチャレンジしよう!」 太陽の裏で大爆発 7月14日の夜中、人工衛星が太陽から広がるガスの様子を捉えました。ガスとは太陽の大気(プラズマ)で、これが宇宙空間に吹き飛ばされる現象を「コロナ質量放出(CME:Coronal Mass Ejection)」といいます。地球から、CMEは放射状に拡がって見えました。こういう場合は、地球方向に近づいているか、太陽の反対側に遠ざかっているか、どちらかです。

未確認飛行物体と遭遇 《食う寝る宇宙》89

【コラム・玉置晋】「ブブブブブーン」。犬のべんぞうさんと一緒に散歩していると、レンコン畑から奇妙な音を発する未確認飛行物体と遭遇しました。僕が住む茨城県土浦市はレンコンの出荷が日本一。家の近所にも広いレンコン畑があって、初夏にはハスの葉っぱが水面から出て、白やピンクのハスの花が咲き始めています。 そんな中から聞こえてくる異様な音に、べんぞうさんは怖がって、アスファルトにお尻をペタンとつけて、歩いてくれません。すると、遠くから「歩行者あり!」と、手を挙げて注意を喚起する方がいました。その方から数十メートル離れたレンコン畑の対面には、リモコンをもって何かを操作する人がいました。 そう、「ドローン」です。大きさはおよそ1.5メートル×1.5メートルと大型機です。ドローンのお腹には肥料が搭載されていて、広大なレンコン畑に散布していたのです。 ドローンとGPSと宇宙天気 実は、僕は少し前にドローンの操縦を習いました。それでわかったことは、風があるときにドローンが流されてしまうので、安定した操縦をするのは簡単ではないということです。そこで活躍するのが、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)です。 複数の人工衛星から発せられた測位信号をドローンが受信して、自分の位置を把握します。ドローンが自分の位置を保持するように、自律的に制御してくれます。通常はこの機能をオンして作業を行います。

「大気の窓」と3ミリの宇宙服 《食う寝る宇宙》88

【コラム・玉置晋】どうも最近、日に当たると手の甲が腫れるのです。インターネットで検索してみると、日光アレルギーというものがあるそうです。じゃあ日焼け止めを塗ってみなさいよと言われ、奥様の日焼け止めを借りてみたものの、腫れは治まらず。 さらに調べてみると、日光アレルギーの原因となる光の波長は可視光が多いとのこと。日焼け止めは紫外線を防ぐもので、可視光には防御力が限定的であるとのこと。宇宙天気防災研究を志しているのに、太陽からの攻撃に脆弱(ぜいじゃく)とは困ったなあ。とりあえず長袖を着ることにして、ひどいようなら病院に行こうと思います。 地球の大気は、厳しい日光から僕たちを優しく守ってくれています。人体に有害な波長の日光は、地球の大気がその大部分を吸収してくれています。大気に吸収されずに地表に到達しやすい波長領域が可視光や近赤外線で、「大気の窓」と呼ばれています。僕たち地上の生命は、この窓を通して降り注ぐ日光に適応した進化をしてきたわけです。 一方、地球は表面から、大気の窓を通して宇宙空間に赤外線の形でエネルギーを放射しています。二酸化炭素といった温暖化物質が増えてくると、大気の窓を塞ぐ効果があります。これが温暖化問題です。 地球はいかに幸せな場所か 大気の中でも特に僕たちを守ってくれているのは、高度10~50キロの成層圏にあるオゾン層です。紫外線は、エネルギーが高い順にUV-C、UV-B、UV-Aと分類されます。オゾン層は、エネルギーの高い320nm(ナノメートル)以下の波長であるUV-C、UV-Bを吸収してくれます。

宇宙の物質は弱虫とマッチョ 《食う寝る宇宙》87

【コラム・玉置晋】5月26日に皆既月食がありました。本州には雲がかかっており、全然見えないというつぶやきにあふれていたのですが、茨城県では月食後半の20時ぐらいに雲の切れ間から見ることができました。 この時、宇宙天気防災研究者として足元を警戒していました。空には地球の影に入った月、直径1万3000キロの地球、はるか150万キロ先にある太陽。5月22日に太陽から放出された電気を帯びたガスの塊(コロナ質量放出=CME:Coronal Mass Ejection)が、足元から月の方向に通過中でした。 地球の磁場によるバリアは、電気を帯びたガスの進路を曲げて、僕らを守ってくれました。2019年12月から始まった第25太陽活動サイクルは、2025年の極大期に向けて徐々にその力を解放しつつあります。しっかりと宇宙の状況を見極められるように、大学院で研さんしております。 内臓の周りに見えてはならないモノがある 先日人間ドックを受けたら、お医者さんに「内臓の周りに見えてはならないモノがありますね」と怒られました。スマホの万歩計によると、僕の1日当たりの歩数は推奨されている1万歩からほど遠い2000歩。見えてはならないモノとは内臓脂肪です。

宇宙の最前線に迷い込むハチ 《食う寝る宇宙》86

【コラム・玉置晋】5月の暑い日、僕が常駐するオフィスの窓からハチ君(恐らくアシナガバチ)が迷い込んできて、直上の蛍光灯に止まりました。どうしたものかと、10分ほど様子をみたのですが、動く様子がありません。仕方がないので、部屋のみんなに「電気消すよ~」と宣言しました。部屋を暗くして、ハチを明るい窓際に誘導しようとする試みです。夜、虫たちが電灯に集まるじゃないですか。あれと同じです。 この試みは見事に成功。でも、窓際であと一歩のところで出ていかない。とっさに、脇にあった30センチ×30センチほどの発泡スチロール板であおいだら、板が「ベキ!」と折れて、まるでドリフのコントのよう。新人の方に、「最近で一番大笑いしました」と言われる始末。先輩の面目丸つぶれです。 ちょうどこの日は誕生日だったのにツイてない。でも、ハチ君はびっくりして窓から出ていきました。ちなみに、ここは日本の宇宙開発の最前線の施設。こんな、ほのぼのした日がこれからも続いて欲しいものです。 軽くて丈夫なハニカム構造 さてこのハチ君、宇宙分野でも大いに役に立っているのです。 ハニカム構造とは、ハチの巣(英語でハニカム)のように、正6角形や正6角柱を隙間なく並べた構造です。ハチ君たちはハチミツを効率的に貯蔵する必要があります。どんな形状だと最も効率的か考えてみましょう。すべて同じ形状の組み合わせで面を敷き詰めることができるのは、3角形と4角形と6角形しかありません。それらの外周の長さが等しい場合、最も面積が大きくなるのは正6角形です。

トランポリンで宇宙へ 《食う寝る宇宙》85

【コラム・玉置晋】仕事から帰ってくると、6畳の僕の作業部屋兼寝室に、直径1メートル、高さ20センチメートルくらいのトランポリンが置いてありました。寝る場所がないぞ。 「最近さ、運動不足だからヨガでも習いに行こう」と、ウチの奥さんに提案されたのが3月上旬。行きつけの床屋でその話をしたところ、マスターから、「ヨガ教室は女性ばかりなので、そこに男性が入っていくのはなかなか勇気がいるよ」と妙な圧を受けて、おじけづいた僕。 奥さんに「いや、女性ばかりのところにおっさんが入っていくのは、ちょっと」と抵抗してみたものの、奥さんに「大丈夫、大丈夫」と押し返されて、市のヨガ教室に応募したのが3月下旬。しかし、コロナ禍のせいか、4月上旬、生徒が集まらず中止になりましたと通知があり、少しほっとしていました。 そしたら奥さん、次の手を打って、トランポリンがやってきたというわけです。インターネットで調べてみると、トランポリン・ダイエットがはやっているらしく、きっかけは、どうやら、NASA(米航空宇宙局)が宇宙飛行士の訓練にトランポリンを取り入れたことのようです。 トランポリン・ダイエットの成果は? トランポリンと宇宙の関わりといえば、2014年、ウクライナ情勢が悪化した時のこと。米国がロシアへのハイテク製品の輸出禁止措置を強化した際に、ロシアの副首相が「我が国の宇宙産業に対する制裁の影響を検討した結果、トランポリンを使って宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に送ることを米国に提案する」と言いました。

宇宙が観光地に 《食う寝る宇宙》84

【コラム・玉置晋】先日、映画館に行きました。どうしても、映画「シン・エヴァンゲリオン」を見たくて。ウチの奥様はエヴァには全く興味なくて、休日朝イチの回にオッサン1人で行きましたとも。僕はオッサンだけれども学生証を持っていますので、映画は学生料金で見ることができます。 ところが、今回、映画館のアルバイトスタッフの方に「学生ですか?」と、けげんそうに止められてしまいました。「学生証を見せてください」と言われたので、「はいはい、どうぞ。オッサンだけど社会人学生なのです!」と、学生証を確認してもらいました。すると、このスタッフさん、「おお、すごい、私も将来、社会人学生をやってみたいです」と言ってくれました。 社会人学生というステータスも悪くないね、とニコニコしつつ、自分がオッサンと認知されて止められたことに、ちょっぴりセンチになりました。 「シン・エヴァンゲリオン」の宇宙描写 新世紀エヴァンゲリオンが最初にテレビで放映されたのは、1995~96年でした。僕が高校生のころです。巨大ロボット兵器エヴァンゲリオンに少年少女が乗り込み、使徒と呼ばれる謎の敵から人類を救うという、シンプルなお話では済まず、大変に難解なストーリ展開をしていきまして、実に25年にわたり僕の心をわしづかみにしてくれました。 95~96年の作中では、エヴァンゲリオンが「ロンギヌスの槍」を投てきし、衛星軌道上の使徒をせん滅しました。しかし、槍は地球の重力圏を脱して、月の周回軌道に移行し、現代の技術では回収不能であるというくだりがありました。

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桜と遠藤周作が教える 日本人の心 《遊民通信》61

【コラム・田口哲郎】前略 東京で桜の開花が宣言され、21日にははや満開。茨城県南の桜も咲き始めましたね。これからがとても楽しみです。毎年、この時期になると街のいたるところで桜が咲きます。満開もすばらしいですが、散りぎわも美しいです。 世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし(この世に桜がなかったならば、春の気分はおだやかだろうに) これは有名な在原業平の歌です。古代から日本人は桜を愛してきました。桜の花の咲き方は日本人の心を表している、なんて言われます。桜を見ながら、何もむずかしく考えなくても湧いてくる素直な感動、これが日本人の心というものなのかな、と思ったりします。 それにしても、日本人の心とはなんでしょうか? それについて深く考えたのは、前回も取り上げました作家の遠藤周作です。

若手社会学者 清水亮さんが紐解く 阿見・土浦「軍都」とその時代 

『「軍都」を生きる 霞ケ浦の生活史1919-1968』(岩波書店)は、社会学者の清水亮さん(31)が地道な資料調査やインタビューを積み重ね、戦前から戦後を描き出した新刊。予科練(海軍飛行予科練習生)につながる海軍航空隊があった阿見、航空隊からの来客で栄えた土浦の人々が、基地や軍人たちとどう関わりながら生活したか、さらに戦後なぜ自衛隊駐屯地を誘致したのかを紐解く。 等身大の人々の目線で歴史研究 土浦市の開業医で作家の佐賀純一さん、阿見町の郷土史家である赤堀好夫さんらが取材し聞き書きした記録や地元紙、常陽新聞の記事などの資料も多数引用され、当時の人々の声を拾い集めた生活史となっている。豊富な写真を交え、日常の中で起きたさまざまな出来事を取り上げながら、「軍都」が抱えていた問題や葛藤についても分析している。 清水さんは「俯瞰(ふかん)する歴史学とは一風違って等身大の人々の目線で、下から見上げる歴史を書きたかった。自分の解釈は出さず、事実を重ねて書いた。戦争は重たくて悲惨なテーマと思っている人、歴史に関心がない人にこそ読んでもらいたい。日常生活の中の等身大の歴史に触れてほしい」と話す。

(仮)のまま30回目の同人誌即売会 26日に土浦市亀城プラザ

同人誌即売会の第30回「亀城祭(仮)」が26日、土浦市中央の亀城プラザで開かれる。漫画やアニメの愛好者たちが集う交流イベントだが、仮称を思わすネーミングのまま、イベントは30回目を迎え、春に萌え(もえ)る。 亀城祭(仮)は漫画やアニメの愛好者たちが、読んだり見たりするのに飽き足らず、創作活動を始め、出来上がった作品を同じ趣味を持つ同士で売り買いする同人誌の即売・交流会。東京ビッグサイトなどを会場に大規模なイベントが開かれているが、地方でも同様に小規模な同人誌即売会が行われており、土浦では亀城祭(仮)がそれにあたる。 主催はコスモグループ。土浦市在住の女性会社員、三条深海さん(ペンネーム)が代表を務める。元々趣味で漫画を描くなどの活動をしていたが、県内で互いの作品を見せ合うなどして交流をする場を作っていきたいと同じ趣味の仲間に声を掛け、同市内で即売会「コミックネット」を開いたのが始まりという。 亀城プラザの大会議室や石岡市民会館を借りて、40小間程度の小規模な同人誌即売会を開催したが、会場が手狭になったため、2007年以降、亀城プラザ1階フロアを借り切る現在のスタイルになり、春と秋の年2回のペースで開催してきた。コロナ禍で20年の春、秋、21年の秋は中止となったが、参加意欲は衰えず、22年の2回の開催をこなし、今春第30回の節目を迎える。 この間ずっとタイトルから(仮)の字を外さずにきた。三条さんは、「イベントとしての発展への期待を込めて、今は(仮)である、という意味でつけている。また亀城祭という地域のお祭りがあるので、それとの区別のため名称を工夫した」そうだ。 イベントの参加者は毎回、延べ200人ぐらい。今回は出展者として50を超すサークルが参加する。1階フロアに約60台の机を並べて売り場とし、出展者の販売物が展示される。創作物は一次制作(自分で創作したオリジナル作品)、二次創作(元々あった作品に自分なりに手を加えたもの)がある。漫画やアニメだけでなく、手作りのアクセサリーや写真集などを扱う売り場もある。

磯崎新さんの思考をめぐる 「作品」つくばセンタービルで追悼シンポジウム

建築家、磯崎新さんの業績を振り返るシンポジウムが19日、つくばセンタービル(つくば市吾妻)のノバホールで開かれた。つくば市民が中心となる「追悼 磯崎新つくば実行委員会」(委員長・鵜沢隆筑波大名誉教授)が主催した。同ビルをはじめ、水戸芸術館などを手掛け、昨年12月に91歳で亡くなった磯崎さんをしのんで、県内外から約350人が訪れた。会場では、磯崎さんの「思考」をめぐってパネリストの白熱した議論が繰り広げられた。 来場者を迎える磯崎新さんの写真=ノバホールロビーに 登壇したのは、磯崎さんのアトリエ勤務を経て、建築分野で多数の受賞経験を持つ法政大学名誉教授の渡辺真理さん、横浜国立大名誉教授の北山恒さん、神奈川大学教授の曽我部昌史さん、2010年ベネチア・ビエンナーレ建築展で金獅子賞を受賞した若手建築家、石上純也さんの4人。登壇者それぞれが磯崎さんとの想い出を振り返ることから始まった。 「広島の廃墟」にルーツ 「ノバホールの入り口の壁と天井のパターンを手がけた」という渡辺さんは、1980年から95年にかけて磯崎新アトリエに勤務し、センタービル建築にも携わった。入社当時、磯崎さんは「街の全てをデザインする意気込みで取り組んでいた」と振り返る。