【コラム・玉置晋】5月26日に皆既月食がありました。本州には雲がかかっており、全然見えないというつぶやきにあふれていたのですが、茨城県では月食後半の20時ぐらいに雲の切れ間から見ることができました。
この時、宇宙天気防災研究者として足元を警戒していました。空には地球の影に入った月、直径1万3000キロの地球、はるか150万キロ先にある太陽。5月22日に太陽から放出された電気を帯びたガスの塊(コロナ質量放出=CME:Coronal Mass Ejection)が、足元から月の方向に通過中でした。
地球の磁場によるバリアは、電気を帯びたガスの進路を曲げて、僕らを守ってくれました。2019年12月から始まった第25太陽活動サイクルは、2025年の極大期に向けて徐々にその力を解放しつつあります。しっかりと宇宙の状況を見極められるように、大学院で研さんしております。
内臓の周りに見えてはならないモノがある
先日人間ドックを受けたら、お医者さんに「内臓の周りに見えてはならないモノがありますね」と怒られました。スマホの万歩計によると、僕の1日当たりの歩数は推奨されている1万歩からほど遠い2000歩。見えてはならないモノとは内臓脂肪です。
宇宙には、あるはずなのに光学的に観測できないモノがあります。1980年代に始まった全天サーベイミッションは、宇宙の大規模構造の存在を明らかにしました。でも、この構造を形成させるには、観測できる物質だけではあまりに軽すぎる、観測できる物質は全体の5パーセントにすぎない―という衝撃的な結果でした。
残りはダークマター(暗黒物質)やダークエナジー(暗黒エネルギー)と予想されています。ダークマターのうち、ニュートリノのような観測の難しい素粒子をWIMP(Weakly Interacting Massive Particle)と言います。弱虫(WIMP)という意味ですね。そして、ブラックホールや白色矮星(わいせい)のように暗くて見えない天体をMACHO(MAssive Compact Halo Object、マッチョ)と言います。
うちの奥様は「細マッチョ」が好きだと言います。お医者さんから「見えてはならないモノ」なんて言われている場合じゃないのですよ。(宇宙天気防災研究者)