金曜日, 7月 1, 2022

坂本栄

重要案件で蚊帳の外 つくば市の陣笠議会 《吾妻カガミ》130

【コラム・坂本栄】総合運動公園計画が2015年の住民投票で覆されてから7年。つくば市は3月、ずっと放置されていた用地を民間に売り払うことを告知。これに反対する声が市民から湧き上がり、本サイトのコメント欄にも賛否の意見が書き込まれています。ところが、議会はこの重要案件で「蚊帳(かや)の外」に置かれ、その役割を果たしておりません。 130を超える意見については、コラム129「公有地売却に見る『逃げ』の…市長」(3月21日掲載)のコメント欄をご覧ください。また、記事「一括売却へ…公募開始 総合運動公園用地」(3月8日掲載)、記事「…(市長)リコール運動へ…受任者集め…」(3月10日)では、ことの経緯がリポートされています。 購入手順とは大違いの売却手順 この公用地売却について、①(賛成は少ないのに)なぜ市民の声を無視するのか、②なぜ議会にその是非を諮らないのか、③なぜ民間売却に固執するのか―と、前回コラムで疑問を呈しました。②の市が議会承認は不要と判断した理由は、用地は市土地開発公社が保有し、市の直接財産ではないから、議会の同意は必要ない―ということだそうです。 用地は広い意味で市の財産ですから、この説明は何か変です。「売却」が「購入」の逆のプロセスだとすれば(購入がゼンマイを巻く作業なら売却は巻いたゼンマイを解く作業)、購入のプロセスを見れば、売却の正しい作法が見えてくるはずです。そこで、購入の経緯を調べました。

公有地売却に見る「逃げ」のつくば市長《吾妻カガミ》129

【コラム・坂本栄】つくば市が総合運動公園用地跡の売却要項を発表しました。この土地をどうするかは五十嵐市長の政治案件ですが、売却の手順にはおかしな点がいくつかあります。売却に反対する市民団体は市の動きに怒り、市長解職(リコール)運動を開始しました。これから数カ月間、つくば市は騒々しくなりそうです。 事業提案(プロポーザル)方式で行われる売却の詳細やスケジュールについては、「一括売却へ10日公募開始 つくば市旧総合運動公園用地」(3月8日掲載)、「一括売却へつくば市公募開始 リコール運動へ市民団体は受任者集め…」(3月10日掲載)をご覧ください。 市民の声も議会の役割も無視 おかしな点その1は、売却が市民の支持を得ていない(市民の声から逃げている)ことです。コラム125「公有地売却に見る つくば市の牽強付会」(1月31日掲載)でも書いたように、市が行ったパブリックコメント(意見募集)では、77人のうち売却に賛成は2人、残りは反対か対案提示か分類不可でした。2択方式(賛成か非賛成)で分けると、賛成はたった3パーセントです。 パブコメではサンプルが少ないから、住民投票とか無作為アンケート調査で改めて市民の声を聴いてみよう―というのが五十嵐流だと思いますが、わずかな賛成にもかかわらず、市長は民間売却に打って出ました。きちんと調査するのが恐かったのでしょうか?

つくば市長の批判封圧は広報作戦の一環 《吾妻カガミ》128

【コラム・坂本栄】前回と前々回は五十嵐つくば市長の<元市議提訴~和解取り下げ>について検証しました。126「…市民提訴 その顛末を検証する」(2月7日掲載)では、杜撰(ずさん)な提訴など問題点を4つ指摘。127「…元市議の市政批判はウソだった?」(2月21日掲載)では、安易な目玉公約作りなど疑問点を3つ示しました。 こういった作業をしているうち、市長による元市議提訴が広報作戦の一環であったことに気付きました。今回はこの問題を取り上げます。 「発信の在り方を根本から検討」 2020年10月の選挙で再選された五十嵐市長は、選挙後最初の記者会見で「発信の在り方を根本から検討したい」と述べ、その理由として、①市の施策を知らない市民が多かった、②対抗候補も市政の基本を知らなかった、③市政について相当いい加減なことを書く人もいた―ことを挙げました。 詳しくは、記事「発信の在り方 根本から検討」(2020年11月5日掲載)、コラム95「つくば市長の『上から目線』」(2020年12月7日掲載)をご覧ください。

つくば元市議の市政批判はウソだった? 《吾妻カガミ》127

【コラム・坂本栄】前回「つくば市長の市民提訴…を検証する」(2月7日掲載)では、五十嵐市長による<元市議提訴~和解取り下げ>の経緯をチェック。市長の振る舞いについて、その適格性に問題がある、大人の常識が足りない、広報理念に反する動きがあった、「言論の自由」が分かっていない―と指摘しました。 しかし五十嵐さんは、提訴の誤りは認めながらも、元市議の亀山さんが発行したミニ紙の市政批判記事にはウソが多いと、相変わらず主張しています。提訴時(2020年11月)は22カ所、取り下げ時(2022年1月)には8カ所を挙げていますが、今回は運動公園用地問題に絞って、五十嵐さんの言い分を検証してみます。 「返還交渉」という訴訟テクニック 2016年の市長選挙で五十嵐さんが掲げた目玉公約は運動公園用地関連でした。2020年の市長選の前に、ミニ紙はこの問題について「都市機構(UR)への返還 あれは一体どうなった」(写真右)と、用地返還が実現していないことを批判。これに怒った五十嵐さんは、公約は「返還」ではなく「返還交渉」だったのだから、記事はウソだと指摘。今でも同じことを言っています。 市長選で配られた討議資料(写真左)を調べたところ、大字タテ見出しは「総合運動公園問題の完全解決へ」、「運動公園用地返還交渉を進めます」は中字ヨコ見出しでした。「完全解決」とは、用地UR返還+陸上競技場建設のことですから、公約の主眼は「返還」でした。

つくば市長の市民提訴 その顛末を検証する 《吾妻カガミ》126

【コラム・坂本栄】ミニ紙に市政を批判され、ウソが多いと発行人の市民を訴えた市長。ところが裁判に勝てないと気付き、取り下げを図ったものの、条件付きの和解を拒否され、逆に「追訴」で裁判を補強した市長。それでもダメと分かり、無条件取り下げをのんでもらい、自ら裁判の幕を引いた市長。つくば市長の市民提訴の顛末(てんまつ)はこんな流れでした。 原告・市長の取り下げ声明(1月20日)は記事「名誉毀損訴訟を取り下げ 五十嵐つくば市長、FBで公表」(1月20日掲載)で、被告・市民(亀山元市議)の記者会見(同1月21日)は記事「当初、口外禁止を条件に和解案 …つくば市長」(1月21日掲載)で、ご覧ください。五十嵐さんの1人芝居に終わった感がある裁判のあらましが分かります。 よく調べずに高齢市民を提訴 発信力がある市長が80歳の高齢市民を提訴(2020年11月、被告が知るのは2021年1月)するという、このユニークな裁判沙汰については本欄でも5回取り上げました。今回はその続きです。 五十嵐さんの当初の主張は、亀山さんが発行する「つくば市民の声新聞」の市政批判記事は虚偽が多く、市長としての名誉を傷付けられた、だからその損害を賠償せよ―というものでした。ところが、記事は市長個人を批判したものでなく、市政の不出来を批判したものだから、民法の名誉毀損にならないことが分かった―これが取り下げの理由、その1です。

公有地売却に見る つくば市の牽強付会 《吾妻カガミ》125

【コラム・坂本栄】つくば市の「高エネ研南側未利用地土地利用方針」を読んで、「牽強付会(けんきょうふかい)」という四字熟語が浮かびました。「自分の都合がいいように強引に理屈をこじつけること」という意味です。市はこの未利用地を民間に一括売却する方針を打ち出し、市民に意見を求めましたが、強引に大方の市民は賛成とこじつけたからです。 運動公園用地 強引に民間一括売却へ つくば市長の五十嵐さんにとって、高エネ研南側未利用地(総合運動公園用地)問題をどう片付けるかは最大の課題です。そこで、市民の声を聴いて市政を進めるという「五十嵐スタイル」に沿って、民間一括売却案を市民がどう思っているか、パブリックコメントの手法を使って意見を聴取しました。 その内容が議会に配られた「…土地利用方針」に出ています。その概要や市議と市側の質疑応答については、記事「『反対は一部』と民間一括売却 パブコメ受け最終方針…」(1月11日掲載)をご覧ください。 意見を寄せた77人のうち、A:明確に賛成した人が2、B:賛成も反対もせず別の利用法を提案した人が57、C:明確に反対した人が6、D:反対して別の利用法を提案した人が7、E:その他が5人―と分類されています。市は、Bの57人は反対ではないから基本的に賛成とこじつけて解釈、「民間一括売却は支持された」と結論付けたそうです。

市民派つくば市長 市民運動に敗北《吾妻カガミ》124

【コラム・坂本栄】つくばセンター広場改修は五十嵐市政の注目施策でしたが、市民グループの反対キャンペーンによって撤回に追い込まれました。市民運動の延長で市長になった五十嵐さんが市民運動に敗北したこの流れ、市政の原点を忘れてしまったことが敗因だったようです。 3改修案の1つを取り下げ センター広場改修計画のポイントは、エスカレーターを2基設置する(うち1基は途中で取り下げ)、広場を囲む外壁の一部を造り変える、ノバホールとセンタービル間の外階段をスロープ化する―など、ここをデザインした著名設計者・磯崎新氏の意匠をあちこちいじるほか、利用者の安全を軽視するものでした。 これに対し、学園都市のシンボル的な構造物に傷を付けるなと、市民グループ「つくばセンター研究会」が猛反対。市は結局、広場に手を入れるのを諦めました。詳しくは「…改修計画を大幅見直し」(2021年12月7日掲載)をご覧ください。 つくば駅側のセンター地区を改修する計画は、ゾーンA:センター広場改修(上記2パラ目参照)、ゾーンB:ノバホールやイノベーションプラザ改修(市民活動施設の整備)、ゾーンC:センタービル1階改修(まちづくり会社による貸室などの整備)―の3本柱で構成されています。 改修プランの3分の1に当たる「ゾーンA:センター広場改修」案は、策定作業上のミスだったことになります。

《吾妻カガミ》123

【コラム・坂本栄】「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます」「(希望も込めて)2年続いたコロナ禍も今年は収まるのではないでしょうか。縮こまっていた消費が活気づき、経済はV字回復すると思います。心配は、自信過剰気味の中国と焦り気味の日米欧がうまく折り合っていけるかです」「『NEWSつくば』は立ち上げてから4年がたちました。全国紙や研究者からも注目され、地域に必要なメディアに育ちつつあります」 以上は、私の年賀状からの転載です。改めて、今年も本サイトへのご支援、よろしくお願いします。 原稿料を昨年12月からアップ! 「登録されているライターは、記者経験者が5人、市民記者が15人ぐらいです。市民記者は、大学教授や大学生を含む、いろいろな分野の人が参加しています。記者経験者は、元地域紙、元専門紙、フリージャーナリストと多彩です」「市民記者には車椅子記者もおります。元筑波大生で、主に身障者問題をリポートしています。朝日新聞がその取材活動に関心を持ち、10月20日付朝刊の『ひと』欄に紹介されました」 以上は、私が属していた通信社のOB会報へ送った近況報告からの抜粋です。車椅子記者・川端舞さんの取材・執筆ぶりについては、「ひと」欄から少し引用させてもらいます。 「取材する時は介助者がメモをとるが、質問は必ず自分でする。介助者に任せることはできるが、同じように言語障害のある人でも、気兼ねなく話せる社会になってほしい―その思いが勝る」「執筆は左手の人さし指1本でパソコンを打つ。障害者や貧困世帯支援に目を向け、昨年2月以来約50本の記事を書いた。報酬は1本6000円。その中から取材を手伝う介助者への報酬も支払う」

総合運動公園問題 つくば市政の重荷《吾妻カガミ》122

【コラム・坂本栄】今年もいろいろなことを取り上げてきました。最終回はつくば市の総合運動公園用地跡処理問題を話題にします。五十嵐さんを市長に押し上げる強力なテコになった運動公園問題。今では五十嵐市政迷走のシンボルになっています。因果な話です。 用途限定・一括・民間売却 市長5年目の五十嵐さん、このほど用地跡処理の最終案(?)をまとめました、市民の反応を踏まえ、この案に沿った形で「GO !」を出したいようです。その概要と意見聴取の手続きについては、記事「…運動公園用地を一括民間売却へ … 防災拠点は大幅縮小」(11月11日掲載)、同「売却の目安は68億5000万円…」(12月1日掲載)をご覧ください。 ポイントは、事業提案による土地の利用を「工業団地」「物流倉庫」など4分野に絞り、民間にまとめて売却し、敷地内に防災倉庫と防災広場をつくってもらい、それを市が借り上げる―というものです。入札に際しては、用地取得額+借入金利息=68.5億円を念頭に置いてほしいと言っています。 この処理案については様々な声が聞こえてきます。市が保有し続けてスポーツ施設などに活用すべきだ、学園都市らしく研究機関用に残すべきだ―など民間売却に反対する意見。工業団地や物流倉庫は周囲の雰囲気になじまない―など利用形態への異議。市は売り払って財政難対策の足しにしたいと言っているが本当か―など売却の理屈に対する疑問。

市民グループがつくば市長を追撃 《吾妻カガミ》121

【コラム・坂本栄】今年5月に市民グループから「センタービル再生事業」の進め方がおかしいと指摘された五十嵐つくば市長。今度は「1期目退職金22円」はおかしいとその政治スタンスが追及されています。センタービル問題(監査請求→住民訴訟)に続く退職金問題(監査請求)。五十嵐さんの周辺がまた騒々しくなってきました。 22円市長は624万円を賠償せよ! 市に対する新たな監査請求は、五十嵐さんが2016年の市長選挙で掲げた公約「市長特権の退職金廃止」をめぐるものです。実際は、退職金ゼロは制度上無理と分かり、議会で特例条例を通してもらい(2020年9月18日)、最少額の22円を受け取りました。市民グループ(代表=酒井泉さん)は「自分を犠牲にして市民のために尽くす市長」像を市民の間に広げることを狙った選挙戦術と批判。公職選挙法上も問題があると主張しています。 退職金問題の監査を求めて、市に出された文書(11月16日付)のポイントはいくつかあります。その内容を紹介する前に、議論になっている数字を押さえておきます。退職金受け取りに備えて市が自治体職員退職金プール組合に払い込んだ金額=624万円、規定による1期分の市長退職金=2040万円―です。 ポイント1は、市長は22円しか受け取らず、市が払い込んだ624万円はムダになったのだから、市は市長に624万円の損害賠償を求めよ―。その2は、退職金制度では2040万円もらえることになっていたのに、受け取らなかったのだから、市は退職金プール組合に払い込んだ624万円を返してもらえ―。その3は、そもそも22円条例が問題なのだから、市は同条例が違法であることを認めよ―。いずれも面白い視点です。 順番が逆になりましたが、ポイント3の違法性は、公職の候補者は寄付行為をしてはいけないとしている公選法199条3に照らして、22円退職金は市に対する寄付(金額は624万円マイナス22円)に当たるから違法だ、という主張です。監査結果はどうなるでしょう? センタービル問題の方は、コラム113「五十嵐つくば市長...

五十嵐つくば市長 批判封じに新手 《吾妻カガミ》120

【コラム・坂本栄】ミニ新聞の記事に名誉を傷付けられたとして、五十嵐つくば市長が発行人の亀山元市議を名誉毀損(きそん)で訴えたことについては、本欄でも何度か取り上げました。この裁判は進行中ですが、事情通によると、名誉毀損のほか、公職選挙法上も問題だと、ダブルで発行人を追求するそうです。市政批判記事を「ボツ」にしたい五十嵐さん、焦りが見えてきました。 ミニ新聞提訴は2本立てに 公選法によるものは、ミニ紙発行人が「当選を得させない目的をもって公職の候補者又は公職の候補になろうとする者に関し虚偽の事項を公にし、又は事実をゆがめて公にした」(235条第2項)から、亀山さんを罰せよという組み立てと聞いています。 要するに、五十嵐市政を厳しく検証した記事は、市長再選を妨害するための虚偽の記事だったという主張です。記事が虚偽(フェイク)なのか事実(ファクト)なのかを争う点では名誉毀損係争と同じですが、公選法違反を追加することで、市政批判封じを強化する作戦のようです。どこかの非民主国を想起させるような動きで、学園都市も変な街になってきました。 知り合いの弁護士に感想を求めたところ、「市民による市政批判に対しては、言論で対抗するとか、市民との対話によって理解を求めるのが、民主主義の基本。強い力を持つ市長が、市民の言論活動を罰せよと裁判に持ち込めば、市民の自由な活動を萎縮させる。言語道断」ということでした。権力監視を編集方針に掲げる本サイトの執筆者としても、このコメントに100パーセント同意します。

センタービル問題 まだ続く迷走《吾妻カガミ》119

【コラム・坂本栄】つくばセンタービル改修で市の迷走が続いています。市にはこの程度の事業も企画・実施する力がないのかと思ってしまうほどです。久しぶりにこの問題を取り上げ、首をかしげざるを得ないところを整理してみます。 3カ月前の「五十嵐つくば市政 揺らぐその原点」(8月2日掲載)では、広く市民・市議・識者の意見を聴いて事業を進めるという五十嵐市政の原点が、センタービル改修事業では失われているのではないかと指摘しました。市政の基本スタンスを自ら崩し、それをどう繕うかと焦り出したことが、迷走の背景にあるようです。 市民を軽視 議会も軽視 市報10月号を見て思わず笑いました。センタービル改修説明の下に、この事業について意見を募集しているとの告知があったからです。現施設の一部解体が10月半ばから始まるというのに、今ごろ意見募集とはおかしなことです。五十嵐市政の基本からすれば、事業立案段階で市民の声を聴かなければならないのに、着手後に意見を聴くとは順番が逆ではないでしょうか。市民軽視です。 市の議会対応にも笑いました。記事「『資金調達現在進めている』 改修工事費用でまちづくり会社」(10月16日掲載)によると、議会(全員協議会)に呼び出された第3セクター(センタービルの一部改修と施設運営を担当する会社=市が筆頭株主)の専務(市から派遣)が、改修の資金計画を示すよう迫る市議の質問から逃げ回ったというのです。議会軽視です。

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日本はプーチンのロシアになるのか 《ひょうたんの眼》50

【コラム・高橋恵一】プーチンのロシアの理不尽なウクライナ侵攻を見て、日本の危機と防衛力の強化が叫ばれている。よくメディアに登場する「専門家」は、防衛省関係者・自衛隊幹部OB、あるいは旧大日本帝国の残影が残る関係者が大半だ。 「専門家」の解決策は、ロシアを押し返して、妥協できるところで停戦するシナリオだろうが、それまでにどれだけのウクライナ人が死ななければならないのだろう。ロシアの兵士は何万人死ぬのだろうか。世界の穀倉地帯の混乱で飢餓に陥る人々は16億人を超すとも予測されている。 プーチン大統領は、核兵器使用もいとわないという、無茶ぶりだ。NATO欧州加盟国は、防衛費をGDPの2%に増額するという。長期戦略として効果的かどうかも疑わしいが、少なくとも今のウクライナには間に合わない。 現在の日本の防衛予算は世界第8位。取りざたされているGDPの2%になれば、米国、中国に次いで、世界3番目の軍事費大国になる。 プーチンの侵略行為が、先の大戦のナチスドイツや大日本帝国軍の行動によく似ていることを考えれば、日本の防衛力強化は軍国日本の復活ともとられ、世界や日本国民が受け入れるとは思えない。世界は、そう見るのだ。 当然、中国もロシアも北朝鮮も、対抗して防衛力を強化する。それどころか、日本を警戒する意味で、韓国、台湾、フィリピンなどとの緊張も高めてしまうかもしれない。米国も、軍事産業部門以外からは、歓迎されないのではないか。

安売りカメラ店 《写真だいすき》9

【コラム・オダギ秀】また昔の話で、ゴメン。でも、店への愛を込めて書きたいのだ。とても若いころ、写真家仲間が頼りにしていた安売りカメラ店のことだ。 新宿の裏通りのその店は、間口が2、3間ほどだったろうか、住宅のような、お店とは思えないようなところだった。ガラスの引き戸を開けて入るとカウンターがあり、商品は並んでいない、カメラや写真の材料を売る店だった。近所にかつて浄水場があったので、その名前が付けてあった。 カウンターで「トライ、長巻き、2缶」のように言うと、無口な細っこいアンチャンが奥の棚から品物を持って来てくれた。貧しいカメラマンたちには、ありがたい安売り店だった。品物は並んでいないから、何というどんな商品か、価格はいくらならいいのか、わかる者だけが出入りする店だった。プロ機材ならまず手に入ったし、価格に不満なこともなかった。安かったのだ。 1年ぐらいしてからか、天井に穴を開け、2階の倉庫から品物をひもで吊り下げるようになって、品ぞろえとスピードが少し増し、店員も2人から5人くらいに増えたと思う。 昔、写真は、フィルムという感光シートか、それを細く巻いたロールで撮影していた。フィルムはパトローネという小さな金属ケースに巻き込まれていて、パトローネには36枚撮影分のフィルム入り、というのが普通だった。 プロやそのタマゴたちはパトローネ入りではなく、ずっと長くてコスパのいい100フィート入りの缶を買い、適当な長さにフィルムを切って、使用済みのパトローネに詰め、フィルム代を安くあげるようにしていた。

つくばの坂路で実証実験 森林総研に電動四足歩行ロボット

森林総合研究所(つくば市松の里、浅野透所長)は28日、ソフトバンク(本社・東京都港区、宮川潤一社長)と取り組む「電動四足歩行ロボット」による実験を公開した。スマート林業の実現と脱炭素社会をめざし、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受け、21年度からロボットの歩行実験を行っていたもので、6月から研究所内の施設で実証実験を開始した。 取り組むのは「NEDO先導研究プログラム/農山村の森林整備に対応した脱炭素型電動ロボットの研究開発」。傾斜角度が30度までの斜面の上り下りが全自動で出来るアメリカ製の四足歩行ロボットを採用して、森林環境において、高精度な自動歩行がどこまで可能になるか、通信の改善をどのように実現するか、など実地に検証する。 造林作業向けに開発 従事者の高齢化や担い手不足から、わが国の木材自給率は40%程度に留まり、国産材の供給力の強化が林業の課題になっている。近年は特に木材を伐採した後、新たに苗木を植えての「再造林」が進まないことが悩みになっているそう。 抜根や下刈りなどに人手を要するうえ、傾斜地での作業となるため労働負荷が大きい。この「造林」作業にマッチした走行性能を有するモビリティーの開発を目指している。具体的には、シカの食害対策のため設置する防鹿柵の点検、苗木の運搬、森林資源の調査・計測などの作業を想定している。 21年度は森林総研と連携協定を結ぶ北海道下川町で、造林地や急傾斜地、積雪などの環境下で電動四足歩行ロボットの歩行能力について調査・検討を行った。一定の条件下であれば斜面や障害物などがあっても安定した歩行ができることが分かった。

500号の大作も 県つくば美術館で「茨城の美術セレクション」展

茨城県で活躍中の作家たちの作品を展覧する「茨城の美術セレクション」展が28日、県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まった。県の美術界を代表する27人の作家による日本画6点、洋画16点、彫刻5点を展示する。 今年1月に県近代美術館(水戸市)で開かれた「第12回現代茨城作家美術展」に出品した100人の中から27人、27点の作品を選抜して展示する。19日までの県陶芸美術館(笠間市)に続く移動展覧会で、来年3月1日から12日には県天心記念五浦美術館(北茨城市)開催と、それぞれ異なる作品の展示となる。 昨年の開催では約1400人が来場した。作家自身が来場者に技法や制作への思いを話す「ギャラリートーク」が毎回好評だが、今回は来場者との対面スタイルでは実施せず、会期終了後にYouTubeでトークの動画を配信予定だという。 会派やジャンルの垣根を越えた大作が一堂に会する。展示された作品の中には、500号の大きさの絵画2つで構成された筑波大学名誉教授、玉川信一さんの作品「愚者の階梯(かいてい)」や筑波大教授、仏山輝美さんが自らの顔や手をモチーフとして描いた作品「月光」など、生と死を感じさせるような作品が並ぶ。 県美術展覧会事務局(水戸市千波町)の学芸員、天羽かおるさんは「生と死のテーマは作家が生きていく中で突き当たる必然。現役の作家が今まさに感じていることを表現している。コロナ禍以後は、作品にじっくり対面し丁寧に見られている方が多くなった。肌感覚だが、以前より特に男性で、お一人で来場される方が増えているように感じる」と話す。 市内から訪れた男性は「図書館に寄ったついでに見に来た。近代的な感じの作品が多く、おもしろい展覧会」と話した。(田中めぐみ)