水曜日, 12月 1, 2021
ホーム コラム 岩松珠美

岩松珠美

《介護教育の現場から》4 重度訪問介護サービスのこと

【コラム・岩松珠美】新型コロナの感染拡大に抑制がかからない。基礎疾患を抱える方や高齢などのリスクを抱えている人々には、感染予防の強化が求められているが、今回は介護保険法による訪問介護とは制度が異なる「重度訪問介護」を取り上げたい。障害者総合支援法による事業で、訪問介護員が利用者の住まいを訪問し、生活全般の援助を行う介護サービスである。 常に介護が必要とされる方(原則65歳未満)がこのサービスを受けることで、住みなれた環境で生活が続けられることを目指している。 対象は、「重度の肢体不自由、または精神障害・知的障害により行動上著しい困難があり、常時介護を要する状態」にある方。具体的には、交通事故などで四肢を欠損したり、脊椎損傷によって全身まひになった人や、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病などの難病にかかり、寝返りを打つことも難しいような重度の疾患を抱えている方が多い。日常生活を支えるために、3人の介護者が8時間・3交代が必要である。 現場に求められる人材の質 重度訪問介護の利用者数は年々増加しており、2016年は全国で1万463人に達した。この介護を担う事業所は、2016年時点で約7300カ所ある。訪問介護員は、居宅介護に従事可能な介護福祉士や介護職員初任者研修などの資格所有者、または重度訪問介護従事者養成研修修了者などである。 利用者によっては、家族がいる夜間は介護サービスを利用しないこともあるが、原則的には、利用者に必要な身の回りの援助のすべてに携わる。また、利用者ができることは見守り、援助の必要性が生じたときのために、利用者の近くで待機することも大切である。人工呼吸器装着の利用者の痰の吸引や胃ろうなど医療的ケアが必要で、コミュニケーションの難しい重度障害者のケアをできる訪問介護員は少ない。

《介護教育の現場から》3 シンガポールの外国人介護者

【コラム・岩松珠美】筆者は15年ほど前、学生のシンガポール海外研修に引率で参加したことがある。同国は多民族国家であり、マレーシア、インドネシアなど広くアジア圏から出稼ぎ労働者を受け入れている。その中で、家事労働(高齢者介護を含む)の出稼ぎ労働者は、住み込みで家族に準ずる形で仕事をしている。 家族主義の思想が強いシンガポールでは、高齢者介護は家庭で行うのが一般的であり、その手助けのために、外国人家事労働者が雇われている。また、子育て世帯の保育も住み込みで担っている。  これら外国人出稼ぎ労働者の活用を効果的に進めてきたことが、隣国マレーシアでの女性の社会進出の原動力ともなってきた。社会的地位を高めてきた女性たちは、子どもたちの多額の教育費を負担する。将来の老後の生活をきちんと支えてもらえるように、子供に教育という投資を惜しまない。 出稼ぎの家事労働者は、Sパスという雇用保険に準ずる社会保険制度も保障されている場合、賃金や身分保障は安定することになる。もちろん、本国で看護師などの資格を取り、シンガポールに出稼ぎに来るとSパス取得者とされ、退職年齢時までの雇用や家族妻帯もできる体制になっている。 高齢者向けケア施設は高額 シンガポールにも高齢者向けケア施設などがあるが、費用は高額だ。社会保障費用は、義務的な個人の積立基金から支出するのが原則で、経済成長以前に現役世代だった現在の高齢者には、十分な積立金がないという問題もある。高齢者介護には、月額数万円で雇える外国人家政婦を使う家庭が多く、政府も雇用税の優遇などで奨励している。

《介護教育の現場から》2 介護における外国人労働力

【コラム・岩松珠美】現在日本で働く外国人介護職は4つに分類される。第1分類は経済連携協定(EPA)事業の一環で、インドネシアやフィリピンなどから受け入れているEPA介護福祉士候補者。第2分類は日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」をもつ外国人。筆者が勤務する専門学校の学生がこの区分に該当する。 さらに、第3分類は技能実習制度を活用した技能実習生、第4分類は在留資格「特定技能1号」を持つ外国人である。いずれも、5年の日本滞在中に国家資格「介護福祉士」を取得できれば、永続的に日本で介護職としての就労が可能となる。 実際、来日の時点での日本語能力や介護知識・技術については、大きなバラツキがある。第2分類の学生たちは日本語学校で、半年から1年学び、それから介護福祉士の養成校に進学し、2年間、日本の生活文化や介護について専門的に学ぶ。 これらの学生たちに比べると、EPA候補者、技能実習生、特定技1号職は、日本語や日本文化、介護の専門的知識・技術を学ぶ時間が短く浅い。日本の日常生活に不自由しない力と介護に必要な基礎的技能に求めるラインをどこに引くのか―教育と技能訓練に対する考え方の違いに現れているように思う。 外国人介護労働力は欠かせない 茨城県労働局の調べ(2019年)によると、県内で働いている外国人労働者は約3万7千人で、茨城は全国11位である。うち医療福祉分野で働く人は670人いる。

《介護教育の現場から》1 介護福祉士養成学校のいま

岩松珠美さん 【コラム・岩松珠美】今年の春先は未知なるコロナ感染症の流行に見舞われた。皆が今の日常生活の当たり前さについて見直しを迫られている。 文部科学省の学校基本調査(2016年)によると、高校を終えた約116万人の進路は、大学が54.7%、専修学校が16.4%という。その中では、医療系の国家資格が取れる学科や専攻が人気のある分野と聞く。しかし、介護福祉や社会福祉について専門的に学び、介護福祉士や社会福祉士などの資格取得を目指したいと思う生徒は決して多くはない。 介護福祉士養成施設協会の報告(2019年)によると、加入している大学、短期大学、専門学校を卒業して、福祉現場に就職した学生は5697人。そのうち、17%が職業訓練生、6.7%が外国人留学生だった。 そのような状況の中で、私は今春、新3K(きつい、汚い、給料安い)といわれる介護現場のイメージをどう払拭できるかよりも、介護の仕事は「多くの人々の生き様に触れる『感謝と感動の仕事』である」ことを伝えたいと思い、介護福祉士を養成する新設の専門学校に赴任した。迎えた学生は全員が留学生の10人。 実践の場での学びが大事

Most Read

吾妻鑑に見る常陸守護、八田知家 《ひょうたんの眼》43

【コラム・高橋恵一】都道府県魅力度最下位・茨城県の地元ひいきの立場からすると、鎌倉時代から戦国末期まで、筑波地方を支配した小田氏の祖、八田知家(はった・ともいえ)の知名度を上げる必要があると思う。 知家の茨城での評価は、出自不明で旧来の支配者、大掾多気(だいじょうたけ)氏をだまして領地を奪ったなどとする評価がつきまとっている。知家の親は、宇都宮座主(ざす)の八田宗綱(むねつな)で、領域南端の五行川と小貝川が合流する手前(旧下館市)の「八田」に居館(きょかん)を置き本拠の地としていた。 源義朝(みなもとのよしとも)が下野守(しもつけのかみ)であったこともあり、八田宗綱や小山政光(おやま・まさみつ)と源義朝とのつながりは深く、小山政光の妻(寒河尼=さむかわのあま=八田知家の姉)は、頼朝の乳母になっており、知家は、保元の乱で源義朝に従って少年武者として戦闘に参加している。頼朝(よりとも)の挙兵に、小山一族や宇都宮一族がいち早く駆け付け、頼朝から信頼される御家人となった。宇都宮・八田氏一族と小山氏一族は連携して、鎌倉幕府を支える強力な勢力を保った。 頼朝は、富士川の戦いに勝利すると、まず、関東を抑えることを優先した。当時、常陸国は平氏の知行国であり、大掾多気氏を本宗(ほんそう)とする常陸平氏一族と那珂川以北を治める佐竹氏は、平家の家人として頼朝追討の指示を受けており、反頼朝あるいは日和見の立場にあった。 頼朝は、常陸国の国府まで出向いて、佐竹氏を降伏させ、鎌倉への帰途に「八田館」に立ち寄った。吾妻鑑(あずまかがみ)には、「小栗重成(おぐり・しげなり)の小栗御厨(おぐりのみくりや)の八田の館」とあるが、御厨の荘官が小栗氏であり、御厨エリアの中にある八田氏の舘を指していると読むのではないか。小栗氏は小栗に館を持っており、極めて近い八田に別の舘を持たないであろう。源頼朝が立ち寄ったのは信頼度の高い八田氏の居館とするのが自然だろう。 奥州攻めの東海道大将軍に

絶滅危機と観測継続に立ち向かう 国立環境研 寄付金専用サイト立ち上げ

国立環境研究所(つくば市小野川)は30日、寄付金受け入れのための専用サイトをリニューアル公開、特に「絶滅の危機にひんする野生生物の遺伝資源保全」と「全国の調査員を募集して行う生物季節モニタリング」の2つのプロジェクトに注力する。研究力強化、社会貢献、環境人材の育成などを目的に、8月に寄付金制度を改正、研究テーマなどから使途をあらかじめ特定し、一般に支援を呼び掛ける募集特定寄付金が設けられたことから、先行する2プロジェクトで活用を図った。 このうち生物季節モニタリングは、日本全国に市民調査員を募集し、気象庁が行ってきた生物季節観測を継承しつつ、現代的な形で発展させるネットワーク構築を目指している。モニタリング調査員の募集は、8月から始まっており、すでに392人が応募している。寄付金は、調査道具や旅費の支給など多くの調査員に参加してもらえるような体制つくりや自動観測技術の開発に役立てる考えでいる。 生物季節観測は、季節の遅れ進み、気候の違い・変化を的確に捉えることを目的に、観測方法を統一して気象庁が1953年に開始し、全国の気象台・測候所58地点で57種の動植物を対象に開花や初鳴きなどを観測してきた。しかし、近年は気象台・測候所周辺の生物の生態環境の変化から、標本木の確保や対象種を見つけることが困難となるなどして、2021年以降、植物6種目9現象だけを残してその他の観測が廃止された。継続しての調査は各方面から望まれたことから、国立環境研究所は気象庁、環境省と連携して、新たな「生物季節モニタリング」を立ち上げた。 環境研気候変動適応センターの辻本翔平特別研究員は「一度は無くなってしまった全国規模での観測体制をぜひ再構築して次の世代につなげたい。気候変動から継続が難しくなったものだが、気候変動だからこそ観測し続ける意義がある」と研究所の動画チャンネルに出演して寄付を呼び掛けている。 「野生生物の遺伝資源保存」寄付金募集のページ=同 もう1つの「野生生物の遺伝資源保存」は絶滅危惧種の細胞(体細胞や生殖細胞)を生きている状態で凍結保存するプロジェクト。これによって絶滅危惧種の生理機能や遺伝情報を安定的な状態で将来に残すことを目指している。

長大など4社グループに決定 つくば・洞峰公園の整備運営事業者

パークPFI制度(公募設置管理制度)を活用して洞峰公園(つくば市二の宮、約20ヘクタール)を整備・運営する事業者を公募していた茨城県(8月15日付)は、2022年度からの整備運営事業者を、大手総合建設コンサルタント会社、長大(東京都中央区)を代表法人とする「洞峰わくわく創造グループ」に決定した。 構成法人は▽イベント企画運営会社「TSP太陽」(東京都目黒区)▽会員制総合スポーツクラブ運営会社「東京アスレティッククラブ」(東京都中野区)▽現在、指定管理者として洞峰公園を管理・運営している「筑波都市整備」(つくば市)の計4社。 選定委員会(委員長・町田誠公園財団常務理事)が10月25日、最終決定した。募集のコンセプトである「研究学園都市にふさわしい総合公園として、自然樹林や洞峰沼を生かしつつ、スポーツや様々なレクリエーション活動が楽しめる拠点」にふさわしい提案だと評価された。応募は、わくわく創造グループのみだった。 事業期間は来年4月1日から最長20年間。10年間で更新する。 ドッグラン、BBQ、グランピングも 創造グループの事業コンセプトは「新たな洞峰公園ライフの創出~すべての講演利用者がわくわくできる公園づくり」。これまでの豊かな自然や美しい景観など既存ユーザーに愛され続ける公園づくりに加え、にぎわい創出による新たな利用者層を誘致できる公園づくりに取り組む。

黄色いイチョウ、翡翠色のぎんなん 《土着通信部》47

【コラム・相澤冬樹】銀杏を「いちょう」と読めば街路樹、「ぎんなん」と読めば農作物になる。前者はほぼ雄(オス)の木が並木を作り、後者は雌(メス)の木が畑に植わっている。雌雄異種といい、公園や社寺の古木は雌雄入り乱れる(?)形だ。イチョウ栽培歴30年、農事組合法人、つくば銀杏生産組合(石岡市半田)代表の櫻井和伯さん(66)にウンチクを含め語ってもらった。 組合名にある銀杏は「ぎんなん」。櫻井さんが土浦、石岡の圃(ほ)場で栽培しているのは久寿、喜平などの接種済銀杏樹木(接ぎ木で繁殖した雌木)で、販売もしている。これまでに県内外に1万本近くを植えてきた。かたや自宅わきの加工場で生産しているのは「実」の方、食用の部分は種子の中にあり、厳密に言えば「胚乳」という。9月半ばになると櫻井さんの植えた銀杏畑から、栽培農家が果肉を削いだ銀杏の種子を持ち込んでくるので、蒸して殻を割り「実」を取り出した上で選果する。 加工後の色合いが特徴的。「翡翠銀杏(ひすいぎんなん)」と呼んで商標登録している。最上級ランクの「特選翡翠」は鮮やかなグリーンをしている。黄味が加わるほどに「翡翠(ライトグリーン)」「シャトルルーズイエロー」と並ぶラインアップ。分かりやすいたとえでいうと「枝豆から大豆への色合いの変化に似ている」、味は未熟感に好みが分かれるが「まろやかさ」が身上という。 蒸して冷凍保存で緑色を保つ翡翠銀杏 鮮やかなグリーンや未熟感にはわけがある。ぎんなんは実が青いうちに、落果を待たずに収穫してしまうのだ。機械で一気に実を落とす。今年の場合で9月18日ごろから摘み取りが始まり、特選翡翠は最初の10日間が勝負、次の10日間だとライトグリーンになってしまう。手早く収穫し、蒸す加工で黄化にストップをかけ、冷凍保管して出荷を待つ形だ。 市場出荷はしておらず、スーパーや小売店では購入できない。櫻井さんによれば「固有名称は勘弁してほしいが、高級ホテル、レストランを中心に取り引きしている」そうだ。翡翠銀杏は素揚げや天ぷら料理などで提供されているという。高級食材だ。