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鈴木宏子 -検索結果
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事業協力者に戸田建設など 桜土浦IC周辺に産業用地開発へ
常磐道桜土浦インターチェンジ(IC)周辺で土浦市が検討を進めてきた新たな産業用地の創出について、事業計画策定や造成工事、企業誘致などを一括して担う事業協力者が準大手ゼネコンの戸田建設(東京都中央区)など3社でつくる共同事業体(JV)に決まり、25日、土浦市役所で、地権者団体と戸田建設などが基本協定を締結した。安藤真理子市長らが立ち会った。
同ICと国道6号バイパス建設予定地に近接する同市中村西根の約33ヘクタールに物流倉庫や工場などを誘致する。着工は早くて2028年ごろ。同市で工業団地が新たに造成されるのは1996年以来。
開発事業は、地権者らが今後、土地区画整理組合を設立して実施する。具体的な計画策定、測量、設計、造成工事、企業誘致などは戸田建設など3社でつくるJVが担当する。地権者は84人で、現在97%が農地や山林などの民有地となっている。昨年1月時点で地権者の90.1%の仮同意を得ている。
総事業費は約50億円。ほかに市が道路や公園、水路など公共施設の整備費用として8億円を負担する。事業費に充てるため地権者は自分の土地を平均73%提供する(平均減歩率)。造成後は、33ヘクタールのうち15.5ヘクタール(保留地)を売却して事業費をねん出する。
事業協力者は戸田建設のほか、物流・商業施設の開発などを手掛けるデベロッパーの日鉄興和不動産(東京都港区)、不動産事業や解体事業などを手掛ける大洋(東京都中央区)の3社。地権者団体の桜土浦IC周辺地区土地区画整理組合設立準備委員会(中村雄一会長)が今年1月、事業協力者を公募し、応募があった2JVの中から選定した。中村会長は、戸田建設が圏央道常総IC周辺の「アグリサイエンスバレー常総」の開発に関わった実績から選んだと説明し「道の駅常総やトマト、イチゴ農園などを視察した。経験ある戸田建設に安心してお任せしたい」と述べる。戸田建設は事業全般、日鉄は企業誘致、大洋は地権者の合意形成などを担当するという。
事業提案で戸田建設らは①広域交通ネットワークを生かした新たな産業拠点の創出②豊かな自然環境との調和を目指す環境共生サステナブル産業都市を掲げた。「環境共生型に特化したまちづくりを行い、地域ブランドとして、他地区と差別化できるまちづくりをしたい」とする。昨今の建築資材や人件費の高騰に対しては「リスクを加味した事業計画をつくりたい」としている。
一方、地権者の平均減歩率が73%になることについて準備委員会の中村会長は「70%を超える減歩率は他地区でもなかなかないと思っている。地区は畑が半分ぐらい、山林が半分ぐらいで、畑はほとんど作っていない状態、管理するのに耕して草が生えないようにしている。山林は奥の方に入るとごみの山。山林の中に昔は農道があったが、今は農道なのか分からない状態。そういう状態をこれから先、次の世代まで続けて、残していくかを考えた時に、こういう機会しか、地域をもっときれいにする機会がないのではないか。地域の皆さんに、皆の大切な財産をもっときれいに、有効に使っていきましょうと話している。そういうことだったらと、90%を超える賛同をいただいている」と語った。
同市は、2019年に県が新たな産業用地の開発を推進する「未来産業基盤強化プロジェクト」を発表したのを受けて、20年から検討を開始した。21年にはゼネコン、デベロッパーなど民間事業者を対象にヒヤリングを実施、高い評価が得られたため、桜土浦IC周辺を候補地とし、22年から地元説明会、23年には地権者意向調査を実施してきた。昨年6月には同地区の地権者団体である準備委員会が設立された。(鈴木宏子)
筑波大と日本国際学園大の学生3人がデザイン スイーツ店がプリン販売
筑波大学(つくば市天王台)と日本国際学園大学(同市吾妻)の学生3人がデザインした商品パッケージラベルが、つくば市桜と守谷市けやき台に計2店舗あるチーズケーキ工房&(アンジー)のプリン3種類のパッケージデザインに採用され、販売されている。
プリンは、茨城県を代表する新たなご当地グルメを決める「シン・いばらきメシ総選挙2024」のスイーツ部門で守谷市代表として出場し、上位10位のファイナリストに選ばれた「ご褒美 いばとろリッチプリン」(税込み626円)と、同店がつくばの学生など向けにお手頃価格帯のスイーツとして新たに開発した姉妹品の「ブルーベリーとろ生チーズぷりん」(同302円)と「濃厚お芋のブリュレプリン」(410円)の3種類。
筑波大芸術学群2年の吉田有希さん(19)と、同大同学群3年の吉野侑良さん(20)、日本国際学園大経営情報学部3年の田麦梨々花さん(20)がそれぞれパッケージラベルをデザインした。吉田さんのデザインは「いばとろ」の文字を、ひらがなを使わず、アルファベットや数字、句読点を用いてユニークに表現している。吉野さんは「ブルーベリープリン」の文字を、実家の祖父が庭先で栽培しているブルーベリーの木をイメージしてデザインした。田麦さんは素材が一目で分かるよう、お芋のイラストを入れ、さらに濃厚さが伝わるようにソースのデザインにもこだわった。
パッケージラベルにはデザインした学生の名前がそれぞれ記載されている。3人には、賞金と副賞のプリンが贈られた。3人は「大変光栄で、うれしい」などと話す。
同店オーナーで県南、県西を中心に飲食店を展開する「いのいち」(本社つくば市天久保)の市村剛社長(49)と、筑波大出身で同市天久保で筑波大生向けにリサイクル品を販売したり家電のリースサービスなどを提供する店「つくばローカルコミュニティ」を経営する山根和仁代表(49)が、デザインコンペを企画し実施した。
両大学の学生約50人から応募があり、同店のスタッフらが審査し選考した。日本国際学園大はデザインの授業の一環で取り組んだ。同大からはほかに、商品化はされなかったが、経営情報学部4年の笹尾栄太さんのデザインが社長賞に選ばれた。
いのいちは22年前につくば市内で居酒屋を創業した。飲食店事業を拡大する中、市村社長によると、たくさんの筑波大生がグループ店でアルバイトをしてくれたことから、恩返しできないかとつくばの大学生を対象にデザインコンペを開催した。今回新たに販売するブルーベリーとお芋の2種類のプリンは、大学生が帰省する際などに、ちょっとした手土産になるつくばのスイーツにしたいと開発したという。
山根代表は「地域の企業とつくばの学生が協力して新しい商品やサービスをつくり、地域を盛り上げることができれば」とし「今後も地域の企業のニーズに応えてコンペを開催していきたい」と話す。(鈴木宏子)
協議会スタート 洞峰公園の管理・運営方針など提言へ つくば市
2024年2月、県からつくば市に無償譲渡された洞峰公園(つくば市二の宮、約20ヘクタール)の今後の管理・運営方針などを市に提言する同市の「洞峰公園管理・運営協議会」(委員長・藤田直子筑波大芸術系環境デザイン領域教授)が11日スタートした。同日、第1回協議会が市役所で開かれ、昨年6月に同公園で開催した市営化スターティングイベントのような協議会のスターティングイベントを、今年6月ごろに開催することなどを決めた。
当初予定より1年遅れの設置となった(1月3日付)。委員は16人で、生物多様性や環境教育、まちづくりなどの学識経験者5人、洞峰公園などで活動する住民団体の関係者2人、公園を管理する委託事業者1人、造園会社の団体関係者1人、県と市の行政関係者7人で構成する。委員の任期は2年。
都市公園法の規定に基づき公園利用者の利便の向上を図るため必要な協議を行う協議会で、同公園の生物多様性の保全方針、公園施設の維持管理と更新方針、公園施設の運営方針などを、市長に随時、提言する。
協議会の組織の構成は、16人の委員による「委員会」と、公募市民がテーマごとに各テーブルに分かれて意見を出し合う「分科会」の2層構造となり、分科会で出た市民の意見をもとに委員会が協議して市長に提言する。
分科会は①生態系保全など「環境」②施設の維持管理と更新など「施設管理・運営」➂子育てと子どもの遊び場など「教育」の3つの分科会をつくる案が事務局案として出されている。6月ごろのイベント開催後、各分科会ごとに市民の公募を開始する予定で、応募があった市内外の市民全員が参加できるようにする。
分科会の運営方法は、テーマ別に市民が各テーブルに分かれて意見を出し合う。各テーブルでは筑波大の学生が司会者役となるほか、学識経験者の協議会委員1~2人が各分科会全体のまとめ役となる。今年度のスケジュールは、各分科会をそれぞれ1回、計3回程度開催する予定だ。
議会の2025年度予算は委員の謝礼などが計240万円。一方、分科会に応募する市民には無償で参加してもらう。
11日の協議会では併せて、公募で参加する市民が分科会に参加できなくなった場合などに意見を書き込める場などとして、筑波大発ベンチャー企業が開発した意見交換プラットフォームを活用することなども報告された。
協議会の設置に向けては昨年3月に、市長や議会議員、学識経験者など9人による準備会を設置して、3月、4月、12月の計3回準備会を開き、協議会の組織や運営方法などについて非公開で協議してきた。
市が県から洞峰公園の無償譲渡を受けるにあたってはこれまで、県が負担していた公園の維持管理費が新たに市の負担になることから維持管理費の負担軽減ほか、体育館・プール、新都市記念館など施設の長寿命化費用の負担軽減などが、市議会や市民説明会などで指摘されてきた。(鈴木宏子)
湖岸線日本一 霞ケ浦沿岸15市町村の魅力を一堂に 土浦市職員がイラスト展
若田部哲さん
土浦市職員、若田部哲さん(49)のイラスト展「日本一の湖の ほとりにある 街の話」が8日から、土浦駅前の土浦市民ギャラリーで開かれている。土浦市やつくば市など湖岸線の長さ日本一の霞ケ浦沿岸と筑波山周辺15市町村の名所や特産品、祭りなど地域の魅力を、計150点のイラストで紹介している。
若田部さんはNEWSつくばのコラム欄で2022年7月から毎月1回、「日本一の湖のほとりにある街の話」と題して、霞ケ浦沿岸地域の魅力をイラストと記事で紹介し今年3月までに計32回連載している。今回はNEWSつくばに掲載されたイラストも含め一堂に展示している。
展示作品は、稲敷市の大杉神社、阿見町の予科練平和記念館、つくば市のペデストリアンデッキ(遊歩道)など。大杉神社はかつて、巨大な杉の木が霞ケ浦のどこからでも見えて航路標識の役割を果たしたと言われていることから、空を覆うように杉の木を描いている。予科練は「戦争を経験した方々がおり、今という平和な時代がある」という同館学芸員の言葉をイラストに添えている。ペデストリアンデッキは松見公園、つくばセンタービル、洞峰公園それぞれの風景を描いている。大学時代に都市計画を学んだ経験からペデストリアンデッキは、「歩く」という人間の基本的な行為を安全に楽しめて人と人が交わるところという思いを込めている。
休日などに土浦市内や霞ケ浦周辺を巡り、実際に足を運んで、現地で話を聞いて感じた魅力を、各市町村それぞれ10点ずつ紹介している。いずれも色鮮やかな版画のような作品で、現地で撮った写真をもとに手描きで輪郭線を描き、パソコンに取り込んで着色している。イラストの大きさはいずれも縦横18センチ×27センチ、色合いはグレーをベースに、いずれも2色の濃淡で表現している。グレーは全作品に統一して用い、15市町村のつながりを感じられるようになっている。
若田部さんは筑波大大学院芸術研究科修了後、建築設計事務所に勤務し、2009年に土浦市職員になった。これまで土浦市内の昭和レトロな老舗を紹介するイラストと記事を常陽新聞(2017年に休刊)に連載などしてきた。霞ケ浦沿岸地域に着目したのは2017年に滋賀県の琵琶湖のほとりで開催された全国市町村職員研修会に参加したことがきっかけ。各地の自治体職員に霞ケ浦を紹介したところ、琵琶湖に次いで2番目の大きさなのに霞ケ浦を知らない職員が多かった。アピールするなら日本一のものと考え、霞ケ浦の湖岸線の長さが日本一であることから「日本一の湖のほとりにある街の話」と題するホームページを2019年に開設した。すでに300点以上のイラストを描き、発信している。
若田部さんは「自身が住む街を振り返ることはなかなかなかったり、見過ごしている場所もあると思うので、こんな場所があるということをご覧いただければ」と話し、「イラストで巡る霞ケ浦、筑波山の旅という展示なので、改めて行ってみたいというところがあったらぜひ実際に訪れていただければ」と語る。(鈴木宏子)
◆イラスト展「日本一の湖の ほとりにある 街の話」は若田部さんとNEWSつくばの共催。8日(火)~20日(日)、土浦市大和町1-1 アルカス土浦1階 土浦市民ギャラリーで開催。入場無料。若田部さんのホームぺージはこちら。NEWSつくばのコラムはこちら。
日本国際学園大4年の犬嶋美雨さん 拡張体験デザイン協会賞を受賞
仮想空間と現実空間の触覚の認知を研究
日本国際学園大学(つくば市吾妻)経営情報学部メディアデザインコース4年の犬嶋美雨さん(22)がこのほど「拡張体験デザイン協会」(会長・持丸正明 産業技術総合研究所人間拡張研究センター長)による2025年のグッド体験デザイン学生賞(Good Experience Design Student Award)を受賞した。犬嶋さんの卒業研究だったバーチャル空間での体の感覚の研究で、これまできちんとデータをとった実験が無かったことから、高く評価された。
メタバースなど仮想空間の中に入り込んだ感覚になる、ゴーグルのようなヘッドマウントディスプレイという装置を頭に装着して実験した。仮想空間の中と現実空間とで同時に、手で触った対象物表面のでこぼこの感触が異なる場合、脳が自分の体をどう認識するかを研究した。何度も繰り返して、異なる触覚の対象物を手で触ると脳は、目で見える仮想空間の中にある手が触った触覚を、現実の自分の手の触覚と一致させようとして、仮想空間の方の映像でつくられた手を、自分が実際に感じた触覚だと認識してしまうようになることを具体的なデータで示した。
27日、同協会運営委員長の大山潤爾 産総研主任研究員が同大を訪れ、犬嶋さんに賞と盾を手渡した。2025年の学生賞の受賞者は全国で2人。同賞は2023年から授与しており犬嶋さんは7人目。
犬嶋さんは「まさか受賞できるとは思ってなかったので、ひじょうに光栄」と語る。卒業後は介護職として働く予定で「卒業研究で体の認知に関することを調べたので、就職後も高齢者の体に関する認知についての知見を深めるのに役立てていければ」と話していた。
東京大学名誉教授で同大の横澤一彦教授の指導を受けながら実験を重ね、日本心理学会 注意と認知研究会でも発表した。
横澤教授は「日本国際学園大学に移ってから(犬嶋さんの学年が)初の卒業生になった。仮想空間の中の人間はどのような行動をするのか調べたいと思っていた。学会で発表し多くの質問が出て、新しい挑戦ができたと思う」と話した。
同協会の大山運営委員長は「バーチャル空間というと一般的に視覚と聴覚だが、これからは触覚や匂いなども加えた研究が進んでいく。視覚と触覚が同時にある体験について、ちゃんとデータをとって本当に効果があるかを調べることが大事。そういう研究を奨励したいということで選ばれた」などと述べ、「触覚がある方が体験がリアルになるといわれているが、どれくらいの精度でどれくらいの触覚を再現すれば、よりリアルで楽しい仮想空間になるかが分かるようになるのではないか」と話している。(鈴木宏子)
日本国際学園大4年の犬嶋美雨さん 拡張体験デザイン協会賞を受賞
仮想空間と現実空間の触覚の認知を研究
日本国際学園大学(つくば市吾妻)経営情報学部メディアデザインコース4年の犬嶋美雨さん(22)がこのほど「拡張体験デザイン協会」(会長・持丸正明 産業技術総合研究所人間拡張研究センター長)による2025年のグッド体験デザイン学生賞(Good Experience Design Student Award)を受賞した。犬嶋さんの卒業研究だったバーチャル空間での体の感覚の研究で、これまできちんとデータをとった実験が無かったことから、高く評価された。
メタバースなど仮想空間の中に入り込んだ感覚になる、ゴーグルのようなヘッドマウントディスプレイという装置を頭に装着して実験した。仮想空間の中と現実空間とで同時に、手で触った対象物表面のでこぼこの感触が異なる場合、脳が自分の体をどう認識するかを研究した。何度も繰り返して、異なる触覚の対象物を手で触ると脳は、目で見える仮想空間の中にある手が触った触覚を、現実の自分の手の触覚と一致させようとして、仮想空間の方の映像でつくられた手を、自分が実際に感じた触覚だと認識してしまうようになることを具体的なデータで示した。
27日、同協会運営委員長の大山潤爾 産総研主任研究員が同大を訪れ、犬嶋さんに賞と盾を手渡した。2025年の学生賞の受賞者は全国で2人。同賞は2023年から授与しており犬嶋さんは7人目。
犬嶋さんは「まさか受賞できるとは思ってなかったので、ひじょうに光栄」と語る。卒業後は介護職として働く予定で「卒業研究で体の認知に関することを調べたので、就職後も高齢者の体に関する認知についての知見を深めるのに役立てていければ」と話していた。
東京大学名誉教授で同大の横澤一彦教授の指導を受けながら実験を重ね、日本心理学会注意と認知研究会でも発表した。
横澤教授は「日本国際学園大学に移ってから(犬嶋さんの学年が)初の卒業生になった。仮想空間の中の人間はどのような行動をするのか調べたいと思っていた。学会で発表し多くの質問が出て、新しい挑戦ができたと思う」と話した。
同協会の大山運営委員長は「バーチャル空間というと一般的に視覚と聴覚だが、これからは触覚や匂いなども加えた研究が進んでいく。視覚と触覚が同時にある体験について、ちゃんとデータをとって本当に効果があるかを調べることが大事。そういう研究を奨励したいということで選ばれた」などと述べ、「触覚がある方が体験がリアルになるといわれているが、どれくらいの精度でどれくらいの触覚を再現すれば、よりリアルで楽しい仮想空間になるかが分かるようになるのではないか」と話している。(鈴木宏子)
「救急隊に過失なかった」つくば市第三者委が調査報告 3歳男児 搬送されず重度の障害
高熱を出したつくば市の3歳男児(当時)が2023年4月16日未明、救急車で病院に搬送されず、その後、急性脳症と診断され重い障害を負った事案で、市が設置した第三者委員会「市救急隊不搬送事案検証委員会」(委員長・関健太郎弁護士)が26日、検証結果をまとめ、「男児は緊急搬送の必要性がある状態になく、救急隊には搬送義務があったとは言えず、過失はなかった」などとする報告書を出した。
報告書によると、男児は1週間ほど前から体温が上がったり下がったりし、同年4月15日、医療機関を受診した。かぜと診断され、せき止め薬などを処方された。その日の夜中、男児の体調が悪化し、翌16日午前0時50分、家族は119番通報して救急車を呼び、40.8度の熱があり、けいれんのような震えが止まらないこと、ぐったりして受け答えができない状態であることなどを伝えた。
午前1時ごろ救急車が到着。父親が男児を抱きかかえ両親は玄関の外で待っていた。屋根下に移動し、救命士はそこで男児を観察、男児は発熱しているが、意識、呼吸、脈拍、顔色などに異常はなく、震えはけいれんではなく発熱や寒さからくるものであるから救急搬送の必要はないと判断した。救命士は、家族が自家用車で向かうのであれば病院を選定することを家族に伝え、病院に電話連絡し、現場を引き上げた。
家族は自家用車で病院に向かい、午前1時30分ごろ到着した。到着後、男児は呼び掛けにも反応がなく、けいれん発作などが繰り返し起こるけいれん重積などと判断され入院。20日に急性脳症と診断された。
男児の家族は不搬送とした救急隊の判断を問題視し、つくば市は24年3月、第三者による検証委員会を設置した。救急隊に過失があったか、救急隊の活動規程や隊員の教育・訓練に過失はなかったかなどついて1年間にわたり計7回、委員会を開き調査した。救急活動記録、各病院の診療記録のほか、救急隊員と男児の家族にそれぞれ聞き取りなどをした。搬送しなかったことと、男児が重度の障害を負ったことの因果関係については検証対象ではないとしている。
検証方法は、救急搬送について、県が定める救急搬送と医療機関の迅速な受け入れについての基準と、15歳以下の小児・新生児の救急搬送・受け入れの実施基準に基づいて、救急隊に過失があったかなどを検証した。
けいれんだったと認定できない
検証結果は、救急隊員と家族との間で男児の状態に対する供述が異なっているとしながら、男児の意識レベルについて、救命士は現場に到着した際、子供の泣き声を聞き、病院の診療記録にも救急車が到着したときに一度泣いたという記載があることなどから、救急車到着時点では男児に重度の意識障害はなく、ぐったりまたはうつろな状態ではなかったとした。男児に震えがあったことについて「(救急搬送の必要がある)けいれんであったとの認定はできなかった」とし、小児・新生児救急観察基準票に基づいても「救命士が観察した時点で救急搬送が必要とされる状態にあったとまでは認定ができない」と結論づけた。
一方で救命士は、脈拍数、体温、血圧、酸素飽和度の測定をしていなかったと指摘しながら「観察に不備がなかったわけではないが、一通りの観察はしており、不備のない観察をしたとしても救急搬送が必要とされる結果にはならなかった」とした。
検証結果について委員長の関弁護士は「コメントが難しい。議論が多岐にわたる事案で、冒頭に検証委員会として何をやるかを提示している。話をし出すといろいろなところまで波及してくる。救急業務は病院、医師、全体として成り立っている。そういう意味でもコメントがしずらい」と話した。
検証結果について五十嵐市長は「過失の認定には至らなかったが、当時の救急活動に問題がなかったとは思っていない。観察項目の省略があったと報告を受けた。結果に影響を与えなかったとはいえ、本来丁寧に行うことが必要だと思っている。消防は誰からも頼りにされる存在である必要があるので、今回の事案を教訓として今後適切な救急活動が行われるよう管理者として努めていきたい」と話した。
青木孝徳消防長は「過失はないものとされたが、当時の救急活動によって検証委員会を設置することになったこと、相手様にご負担を生じさせたこと、市民の皆様の信頼を損なう結果となったことに対しては反省している。今後は同じことを繰り返さないよう職員教育を徹底して、市民に信頼される消防行政を目指したい」と述べた。
家族「納得いかない」
一方、検証結果は同日、家族にも報告された。市消防本部によると「(家族として)納得いかない。ありえない」との意見が出されたという。(鈴木宏子)
現金取扱でつくば市が虚偽報告、県「非常に悪質」 生活保護 特別監査
つくば市の生活保護行政に関する不適切な事務について、県が同市に対し異例の特別監査を実施している問題で、昨年末、県が特別監査結果を同市に通知し、現金の取り扱いについて、同市が県の監査に虚偽報告を行っていたとして「非常に悪質」「誠に遺憾」だと指摘していたことが情報開示請求で分かった。
特別監査の結果は昨年12月25日に同市に出された。総括的事項として①現金の取り扱いに関する一般監査での虚偽報告のほか、②誤支給に伴う保護費返還決定事務の遅延③生活保護費返還金の不適切な債権管理の3点について指摘している。
①現金の取り扱いに関する一般監査での虚偽報告ついては、同市が生活保護費を受給者に支給するにあたって、2019~23年度にかけて現業員(ケースワーカーなど)が現金の取り扱いを組織的に行っていたにもかかわらず、市は県に提出した同年度の監査調書に虚偽の回答を行い県に提出していた、さらに23年度の事務監査でも事実と異なる説明をしていたとし、市に対し「監査において虚偽の報告を行う行為は非常に悪質であり、生活保護行政に対する社会的信頼を損なうものとして誠に遺憾」だと指摘、「二度と同じ過ちを繰り返さないよう対策を講じ」、要因を分析した上で改善に向けた取り組みを報告するよう求めている。
現金の取り扱いに対しては、会計検査院が2007年度決算検査報告で、実地検査した全国212の福祉事務所のうち42カ所で現業員が生活保護費を取ったり、失くしたりしたなどがあったことから是正改善を求め、厚労省は現金の取り扱い手順や決済権者を明確にした事務処理規定の整備や、現業員の出納業務への関与の縮減や事務処理方法の見直しなどを求めていた。
市によると、内部規定はあったが組織内に周知徹底されず、引き継ぎもされなかったため適切に運用されなかったとしている。昨年1月、県から確認があり、その後是正したとしている。
特別監査で県が指摘した②誤支給に伴う返還決定事務の遅延に関しては、県の指摘を受け同市が昨年7月に発表した、一時扶助による障害年金の診断書料の誤支給、障害者加算の誤支給、重度障害者加算の誤支給などの(24年7月20日付)その後の対応について、保護費の返還決定事務が遅延している例があるので「返還決定事務を遅滞なく行い、返還金にかかわる国庫負担金を適切に精算する」ことを求め、遅延の要因を分析した上で、改善に向けた取り組みを報告するよう求めている。
➂生活保護費の返還金の不適切な債権管理については、同市が昨年8月に発表した生活保護費の過支給分の返還金にかかわる不適切な事務などについて(同8月21日付)、期限までに過支給分を返還できなかった受給者などに対し行うこととされている催促や催告にかかわる記録がない例、受給者など死亡した場合の相続人調査が適切に行われていない例が認められたほか、不納欠損にかかわる事務が遅延している例が認められたなどとして、厚労省の通知に基づいて適切な債権管理を実施し、さらに不適切な債権管理の要因を分析した上で、改善に向けた取り組みを報告するよう求めている。
特別監査結果について県福祉人材・指導課は「継続して指導中の案件」だとしている。(鈴木宏子)
新たに5課で残業代未払い つくば市 全庁調査結果
生活保護業務などを担当するつくば市社会福祉課職員に対し、残業代(時間外勤務手当て)と特殊勤務手当ての未払いがあった問題を受けて(24年5月9日付)、他の課にも同様の未払いなどがなかったか、同市が昨年6~7月に全庁的な調査を実施した結果、新たに社会福祉課以外の5つの課で残業代未払いなど不適正な労務管理があったことがわかった。12日の市長定例会見で明らかにした。
市人事課によると全庁調査の結果、不適正な労務管理として職員から「(時間外勤務を)1時間以上やらないと(手当てが)付かない」「夜7時以降(の勤務)でないと付かない」「所属長に(時間外勤務手当ての)申請が認められない」など課の慣習や所属長の認識不足に関する回答が寄せられたという。
全庁調査は昨年6~7月、非正規職員を含む約3900人を対象に、実名で回答することを条件に庁内のネットワーク回線でアンケート調査を実施し、1203件の回答があった。そのうち不適正な労務管理があったと回答した職員にヒヤリングなどを実施し、新たに5つの課で残業代の未払いがあったとした。
今後は5つの課の職員を対象に、法的に未払い分を請求できる過去3年間にさかのぼって、対象人数や未払い時間などについて調査するとみられる。5つの課の名称は現時点で未公表。
一方、市社会福祉課職員に対する特殊勤務手当てと残業代未払いのうち(25年3月6日付)、まだ支払われていない残業代の支払い対象者は14人だとした。支払い時期について市人事課は、25日が最終日の市議会2月会議に未払い金の遅延損害金の議案を追加提案するのは難しいとし、できるだけ早期に支払いの手続きを進めたいとするにとどまっている。(鈴木宏子)
「地層に弱点、絶対に再稼働ダメ」脱原発など訴え市民団体がつくばで集会
3.11から14年
東日本大震災から14年が経った11日、「さよなら原発!守ろう憲法!」と題した昼休み集会&パレードがつくば駅前のつくばセンター広場で開かれた。市民団体「脱原発ネットワーク茨城」共同代表の小川仙月さんが登壇し「東海第2原発は地層に決定的な弱点がある。絶対に再稼働してはダメ」などと訴えた。
市民団体「9条改憲NO!市民アクションつくば連絡会」と「『東海第二原発いらない首都圏ネットワーク』つくば」が主催した。東日本大震災翌年の2012年3月11日から、毎年開催している。約60人が参加し、集会後つくば駅周辺をデモ行進した。
小川さんは、原発が立地する地層について「ほとんどの日本の原発は海岸線の半島の先端に立地し、『解放基盤面』という固い地層の上に立っている。例外は東海第2原発と柏崎刈羽原発。東海第2原発は地表からマイナス370メートルのところでないと解放基盤面に相当する固い地層が出てこない。地層に決定的な弱点がある。防潮堤問題も本質的な問題は地層。原発を建ててはいけないところに建てた」などと話した。
震災当時、8歳と3歳の子どもを連れて福島県いわき市から自主避難し、現在都内で暮らす「福島からの避難生活を守る会」の鴨下美和さん(54)と長男の全生(まつき)さん(22)もスピーチした。美和さんは、14年経っても続く避難者の苦難を語り、夫の祐也さんが大腸がんを患い昨年は10回の入院を経験したこと、心臓にも異常が見つかったことなどを話し「福島県では急性心筋梗塞で死亡する割合が全国平均の2倍になっている。不思議なことがたった今、福島で起きている」などと話した。さらに国が2017年に提供を打ち切った避難住宅から退去しなかったため、東京都から訴訟を起こされていることなどを語り「夫は心労がかさんで心も体も疲れてしまって、それでも裁判を闘わなくてはならない」などと話した。
全生(まつき)さんは、17歳の時にローマ教皇の前でスピーチした手紙を読み上げ「汚染された大地や森が元通りになるには僕の寿命の何倍もの歳月が必要。大人たちは汚染も被ばくもこれから起きる可能性のある被害も隠さず伝える責任がある。うそをついたまま、認めないまま先に死なないでほしい。原発は国策。そのため原発を維持したい政府によって被害者の間に分断が生じ、傷ついた人同士が互いに隣人を憎しみ合うよう仕向けられてしまった」などと訴えた。
主催者を代表して山本千秋さんは、石破政権が第7次エネルギー基本計画で原子力を最大限利用すると方針展開したことに対して「世界は再生可能エネルギーに切り替えていく方向で大きく動いている。日本は逆走している。日本は再生可能エネルギーの道を進んでいくべき」などと述べた。
参加者の一人で、震災の翌年から毎年参加しているという市内に住む女性(75)は「震災で亡くなった人の鎮魂と、原発を絶対に止めないといけないという思いで毎年参加している」などと話していた。(鈴木宏子)
重機を配備、技術系人材を養成へ 災害ボランティアトレーニングセンター開所
7日、日本財団つくば研究所跡地
つくば市南原、日本財団つくば研究所跡地に、日本財団ボランティアセンター(東京都港区、山脇康会長)の災害ボランティアトレーニングセンターが7日、開所した。災害時に重機を操縦してがれきや土砂の撤去などを行う技術系ボランティアを養成する施設で、ショベルカーやダンプカーなど重機16台と資機材を配備する。災害発生時は重機や資機材を災害現場に貸し出す。民間の災害支援拠点としては国内最大規模という。
研究所跡地約5.7ヘクタールのうち、約1.2ヘクタールに開所した。施設は、座学の研修などを行う2階建ての「研修棟」、重機などを駐車する「重機ステーション」のほか、盛り土やU字溝などが設けられ、がれきや土砂の撤去、U字溝の泥かきなど災害現場を想定した重機の操縦方法を学ぶ「訓練フィールド」がある。車両は、小型から大型までショベルカー9台とダンプカー4台など車両16台と、投光器などの資機材を配備する。訓練フィールドには今後さらに家屋の模型を設置し、重機で床板をはがし、泥をかき出す訓練などもできるようにするという。
同センターのスタッフのほか、技術系災害ボランティアとして全国各地の災害現場で活動する団体のスタッフなどが操縦方法を指導する。日本財団ボランティアセンターに登録している災害ボランティアのうち希望者を対象に、技術レベルに応じた幅広い研修を実施する。1日30人程度の研修を月3回程度、年間1000人程度の研修受け入れを予定している。受講料は重機の燃料代等、実費(2000円程度)で実施する。
同研究所跡地では開所に向けて2年前から準備が行われてきた。仮開所の期間中も訓練フィールでは重機の操縦方法などを学ぶ講習が実施されており、仕事とは別に災害ボランティア活動をしている消防士らが重機の操縦方法などを研修などが開催されてきた(23年5月23日付)。今回、研修棟、重機ステーションが完成し正式開所となった。
開所式では日本財団の笹川陽平会長が「災害が起きると行政だけではどうにもならないことがある。一人でも多くの国民の参加によって助け合っていかなくてはならない。重機の使い方を学んでいただいて、具体的な技術を身に付け、高度な救援活動に参加いただきたい」などとあいさつした。
日本財団ボランティアセンターの山脇会長は「被災地に寄り添った活動を行うためには(重機や資機材を扱うことが出来る)技術系のボランティアと(炊き出しや傾聴などを行う)学生のボランティア両方が復旧復興に欠かせない。災害ボランティアトレーニングセンターは重機を配備し災害現場でいち早く活動できる人材を育成し、重機の貸し出しを行う。有事の際、迅速に活躍できる施設になる」などと話した。
同センターに配備する重機の選定に関わった都内の技術系災害ボランティア団体「災害エキスパートファーム」の鈴木暢さんは「(災害ボランティアの)経験の中からフットワークがいい小型重機を選定した。(被災した)住宅などは狭い場所があったり、裏山が崩れていたり、土砂が道路の側溝を埋めるなどの状況がある。人の手で1日50人から100人かかる動きを重機1台でできるし、女性でも重機を扱える。訓練では、現場で事故を起こさない、自分たちもけがをしないことが大事になる。大きな災害に立ち向かえる免疫を養っていけたら」と話す。
テープカットの後は、災害ボランティア活動で実際に重機を動かした経験のある岩手県花巻市消防本部消防士の藤岡茜さん(28)のほか、東洋大学4年の横尾幹さん、東京学芸大学3年の白鳥里桜さんらが重機を操縦して、盛り土の土砂を掘ったり、U字溝の泥をかき出すなどした。藤岡さんは昨年3月、能登半島で災害ボランティア活動をし、重機を操縦して倒壊した民家のがれきを撤去するなどしたという。藤岡さんは「(つくばのセンターで)これからもっとトレーニングを積んで、よりスムーズに災害現場で活動できるようにしたい」と話していた。(鈴木宏子)
未払いの特殊勤務手当て 17人、延べ700日分に つくば市生活保護業務
昨年末に計19万円支払う
市職員から指摘を受け、つくば市が昨年5月に明らかにした市社会福祉課職員に対する特殊勤務手当てと残業代(時間外勤務手当て)未払いのうち(2024年5月9日付)、生活保護業務に従事する職員の特殊勤務手当てについて、市は昨年末、未払い分を請求できる過去3年間にさかのぼって、職員17人に同手当て計19万1675円を支払った。同手当ては1日当たり275円で、3年間で延べ697日分が未払いだった。支払いが遅れたことによる遅延損害金(遅延利息)について5日、市議会2月定例会議本会議に専決処分の追加提案があり分かった。
市人事課によると、昨年末に支払った特殊勤務手当ては、2021年1月~24年3月まで3年3カ月分で、昨年12月26日付で支払われた。遅延損害金は17人のうち、受け取りを希望した6人に計5403円が今月4日に支払われた。
一方、未払いの残業代については、2024年4月~10月の7カ月分について、職員18人に対し計197万5111円が昨年2月21日にすでに支払われているという。延べ何時間分が未払いだったかについて市人事課は「計算してない」としている。残業代についても過去3年間にさかのぼって支払う予定だが、残りの支払いについては現在精査中だとし、支払い日などは現時点で未定。4日は、すでに支払われている197万5111円の遅延損害金について、18人のうち受け取りを希望した5人に計1万6054円が支払われた。
損害遅延金は、特殊勤務手当てと残業代未払分合わせて2万1457円で、いずれも人事課の予算から流用したという。
特殊勤務手当ての未払いは2024年2月、残業代の未払いはさらに半年前の23年9月、市社会福祉課職員から指摘があり判明した。特殊勤務手当て未払いの原因について市社会福祉課は、各職員で業務の解釈が異なっていたことが原因だったとした。残業代未払いの原因については、当時の管理職が、できるだけ申請しないよう不適切な指導を行い、職員が申請しにくい状況になっていたとし、監督責任から、五十嵐立青市長が給料を2カ月間10%、副市長2人が1カ月間10%減給した。さらに不適切な指導をした管理職に対し処分を実施するとしているが、処分はこれからという。
市は加えて、社会福祉課以外にも同様の未払いがないか全庁的に調査を実施するとし、全庁的調査は昨年6~7月に、管理職の不適切な労務管理について、実名を名乗ることを条件に全庁的に実施された。実名で回答した職員にヒヤリングが実施され、新たに分かった社会福祉課以外の未払いについても今後、未払い額の調査を実施するとしている。
今回、特殊勤務手当て支払いの対象となった職員の一人は「時間外手当て未払いの方は3年分が支払われて初めて全容が分かると思うが、なぜ未払いが発生したのか、どうして支払いが遅れたのか、遅れたことによる遅延損害金の発生や、責任がどこにあるかなどが明らかになってほしい」とし「遅延損害金は不適切な労務管理や支払い手続き事務の遅延の結果であり、一時的にせよ市民に負担をかけてしまったことは一職員としてはひじょうに心苦しい」と話している。(鈴木宏子)
ウイーンのピアニストが演奏会 つくばの音楽家が無料開催
「家族連れで聴いてほしい」
ウィーンを代表するピアニストの一人で、ウィーン国立音楽大学教授のクリストファー・ヒンターフーバーさんのピアノ演奏会が3月12日、つくば市竹園、つくばカピオホールで開かれる。子供たちを含め家族連れで聴いて感動を持ち帰ってほしいと、同大出身でつくば市在住のチェンバロ奏者、橋本麻智子さん(75)が代表を務める市民団体「ウィーンつくば市民交流の会」が入場無料で開催する。
ヒンターフーバーさんは同大ピアノ部門の部長を務め、CDがドイツで「最良で最も魅惑的なピアノ録音」の一つに選ばれるなど高く評価されている。世界各国で演奏活動を行い、日本にはウィーン・フィルの首席奏者とたびたび来日するなどファンも多い。
演奏会を主催する橋本さんは日本のチェンバロ奏者の草分けで、同大チェンバロ本科を卒業、世界各国の国際音楽祭やスイスや中国の招へいコンサートにも招待され、国内外で演奏活動を行ってきた。
1995年、研究者の夫と共につくばに転居。20年ほど前からはクラシック音楽の普及にも尽力し、カスミの社会貢献事業「『わたしの企画』応援します」に応募して、子供たち100人がベルリンフィルの演奏家と合奏するワークショップを開催したり、同市ふれあいプラザで幼児や未就学児を対象に毎月2回、子供たちがクラシック音楽に触れたり、絵を描いたりする「親子で遊ぼう『芸術ごっこ』」をボランティアで開催するなどしてきた。
国内外で共演してきたウィーンフィルやベルリンフィルの演奏家をつくばに招いて、同市北条にある江戸時代後期に建てられた蔵「宮清大蔵」で共演するなどしてきたほか、20世紀の最も偉大なフルート奏者、J.P.ランバル氏へのオマージュ(献辞)として開催した「つくばフルートコンクール」の実行委員長を務めるなどしてきた。親友でもあった国際的バイオリニスト、故若林暢さんの業績を顕彰しクラシック音楽の普及と振興に努める若林暢音楽財団の代表も務める。
「20年くらい前から、クラシック人口が減ってきて若い人がクラシックに興味をもっていないと感じられ、50代半ばぐらいから一般の人にもクラシック音楽に関わってもらえる活動をスタートさせた」と振り返る。
「コンサート会場で生まれる、皆で感動を分かち合う何ともいえない空気感が、演奏家の見事な演奏を生み出す場面を何度もみてきた。すばらしい聴衆との巡り合いがあって演奏家が育つ」と思いを話し、「家族そろって一緒の演奏を楽しんで、うちに帰って感動を分かち合ってくれれば」と語る。
3月12日のピアノ演奏会は、ヒンターフーバーさんのトークもあり、大学の教え子でピアニストの吉兼加奈子さんが分かりやすく解説する。注目の若手フルート奏者、瀧本実里さんの演奏もある。
会場には募金箱を設置し、全額を「日本ユニセフ協会」と、つくばの市民団体「アジア友情の会」「筑波メディカルセンター紡ぎの庭」の活動に寄付する。(鈴木宏子)
◆クリストファー・ヒンターフーバーさんのピアノ演奏会は3月12日(水)、つくば市竹園1-10-1 つくばカピオホールで開催。開場は午後6時30分、開演は7時。演奏曲目はバッハ/リストの前奏曲とフーガ BWV 547、ベートーヴェンのピアノソナタ8番 ハ短調 作品13「悲愴」など。チケットは事前予約が必要。定員は約300席で、満席になり次第締め切る。
災害時は被災者や応援者受け入れ コンテナホテル、谷田部IC近くにオープン
東日本大震災きっかけ
常磐道谷田部インターチェンジ近くのつくば市台町にコンテナ型のビジネスホテル「HOTEL R9 The Yard(アールナイン・ザ・ヤード)つくば」が26日オープンする。開業を前につくば市は1日、同ホテルを運営するデベロップ(本社・千葉県市川市、岡村健史社長)と、災害時に同コンテナを市の災害対応に利用する協定を締結した。
災害時は市の要請に基づき、市が被災者や外部の応援人員の受け入れなどに利用する。市によると、県内で同社と災害協定を締結したのはつくば市が13市町村目になるという。
コンテナホテルは2011年の東日本大震災をきっかけに誕生した。コンテナメーカーでもある同社は震災後間もなく被災地に入り、コンテナ型備蓄倉庫を寄贈したり、復興作業をする従業員向けの仮設宿泊施設を建設した。岡村社長は、被災者が多くの避難所で生活に大きな負担を強いられている状況を見たとし「宮城県南三陸町に支援に行き、避難所で子供がじっとしていられなくて家族が外で車中泊している姿を見た。石巻市から作業員の宿泊施設として建設してほしいと要請を受け、長期間、快適に過ごせることが分かり、これだったら成り立つと思った」と振り返る。
石巻市で利用されたコンテナの宿泊施設を2017年、栃木県佐野市に移設してコンテナホテルとしてオープンしたのが始まりで、現在はつくば市も含め全国98カ所に3611室が展開されている。これまで、新型コロナ感染拡大時にトレーラーやトラックで移動させ、都内の病院でPCR検査施設として利用されたり栃木県では臨時の医療施設として利用されるなどした。
施設は一つのコンテナ内が一つの客室になっていて、各部屋にベッド、ユニットバス、冷凍冷蔵庫、電子レンジなどが備えられている。つくばは敷地面積約3000平方メートル。客室はツインが7室とダブルが49室の計56室ある。駐車場は56台分を備える。各部屋の広さはいずれも13平方メートルで定員は各2人。平日は周辺の工業団地などのビジネス客、土日は観光客やレジャー客などの利用を想定している。
備蓄を推進
防災や減災への新たな取り組みなどを掲げる一般社団「地方創生戦略研究所」(代表・井手義弘元県議)の紹介で災害協定締結に至った。同研究所は、災害時に仮設住宅としていち早く利用できる移動可能なモバイル型仮設住宅の備蓄を進めたいと、自治体との防災協定締結を推進している。
19日は現地見学会が開かれ、五十嵐立青つくば市長らがコンテナホテルを見学した。五十嵐市長は「全国でこれだけ災害が頻発している中で、全国各地に応援職員を派遣することも多い。コンテナホテルは平時はホテルとして運用し、有事は被災者も活用できる。全国に安心安全と経済活性化を広げてほしい」とし、岡村社長は「レスキューホテルとしてこれまでに7度、要請を受けて出動した。有事には動かして、被災した場所に行く存在であることを知ってもらい、お役に立ちたい」などと話した。
災害時に利用する場合、費用は市が市が負担する。利用料は1室1日7000円で、移動して利用する場合はトラックやトレーラーでの運搬費用がかかる。市危機管理課は「災害時に指定避難所の利用が難しい被災者や、応援に来る職員の受け入れなどでの利用を想定している」としている。
同社のコンテナは、タイヤが付いて災害時にトレーラーで移設する車両型と、釣り上げてトラックの荷台に乗せて移設する建築型がある。つくばの56室はいずれも建築型になる。災害時に移設先で仮設住宅などとして利用する場合は、電線や上下水道につなぐことが必要になる。(鈴木宏子)
◆「HOTEL R9 The Yardつくば」の宿泊料金はダブルルームが1人1泊6200円、2人8700円、ツインルームが1人6200円、2人9700円。詳しくは同ホームページへ。
若者の奨学金返済支援や市役所DX化推進 土浦市25年度当初予算案
花火大会は雑踏警備に重点
土浦市の安藤真理子市長は17日、2025年度当初予算案を発表した。一般会計は前年度当初比3.2%増の585億6000万円、特別会計などを加えた総額は同比2.5%増の1013億8000万円で、一般会計は2015年度に次いで過去2番目の予算規模となる。
新規事業として、若者の奨学金返済支援や就職活動支援を実施する(342万円)ほか、保育所入所選考作業にAIマッチングサービスを導入する(588万円)など市役所のDX化推進に取り組む。昨年、延期日の警備員を確保できず中止となった土浦全国花火競技大会は、今年は雑踏対策を最重要課題とし、市から昨年度と同額の8500万円を補助する。雑踏対策は自主財源を増やすなどして対応するという。
来庁希望日時の予約も
若者の奨学金返済支援は、市内に住み市内で就職している20代の若者に前年度に返済した奨学金額の2分の1を支援する(上限10万円)。就職活動支援は、県内に就職し市内に居住を希望する大学生などに就職活動にかかった交通費を補助する(上限4260円)。
市役所DX化はほかに、市民課や福祉の窓口の混雑状況をリアルタイムで配信したり、来庁希望日時を予約できるようにしたり、自分の順番が近づいたらメールで知らせるなどの窓口受付システムを導入する(1545万円)。
48施設の保守管理を一括委託
学校教育は、2028年4月開校に向けて上大津地区統合小学校の基本・実施設計などを実施する(2億3299万円)ほか、不登校生徒支援のため市内全中学校に設置している校内フリースクールの支援員を4人から6人に増やし校内フリースクールを常時開設できるようにする(1294万円)。
公共施設の管理では、小中学校や公民館、児童クラブなど48施設の清掃や点検、巡回、修繕、植栽管理などの業務を一括して民間に委託し(1億9120万円)、保守管理に民間のノウハウを活用して業務を効率化する。老朽化している市保健センターは施設の更新工事と併せて「ZEB化」と呼ばれる断熱化、省エネ化の改修工事を行う(1億232万円)。
土浦スマートICは詳細設計
昨年事業化が決定した常磐道桜土浦インターチェンジ(IC)-土浦北IC間に設置する「土浦スマートIC(仮称)」は詳細設計と地質調査を実施(8614万円)する。併せて同スマートIC整備とつくばエクスプレスの土浦駅延伸を見据え、開発候補地の事業スキームの検討や民間開発事業者へのヒヤリングなど開発候補地調査検討事業(809万円)を実施する。
桜土浦IC周辺に計画されている産業発展を促す拠点整備については、昨年、9割を超える地権者の仮同意を得て土地区画整理組合の前身となる準備委員会が結成されたことから、新たに施工地区を決定するための区域界測量、埋蔵文化財試掘調査、組合設立に向けた地権者合意形成などを実施する(6097万円)。
ほかに老朽化した荒川沖消防署と南分署を統合し、2027年度に向けて新消防署を完成・移転するための基本設計などに1億1726万円を計上する。
財源不足、28億円繰入
歳入は、法人市民税が9.1%減少すると見込む一方、個人市民税は定額減税の終了や賃上げに伴う給与所得の増加などから10.9%増を見込むなど、市税全体では3.4%増を見込む。一方歳出は、人件費や社会保障関係費の増加、物価上昇の影響などによって全体が増加したことなどから、財源不足をまかなうため財政調整基金から28億3000万円を繰り入れる。2025年度末の基金残高は121億900万円、市債残高は755億5400万円になる見込み。(鈴木宏子)
事故原因巡りNEXCO東日本とつくば市が裁判 5年前の常磐道斜面崩落
一審敗訴、議会に控訴を提案
5年前、谷田部インターチェンジ(IC)近くのつくば市今泉、常磐道下り車線で、道路脇の斜面が崩落し、一時通行止めになった事故で、斜面が崩落したのはつくば市が高速道路脇の市道の側溝の管理を怠り、雨水を高速道路の斜面に流出させたためだなどとして、高速道路を管理するNEXCO東日本がつくば市を相手取って、斜面の復旧工事費の一部など計約1450万円を損害賠償請求し、裁判になっていることが分かった。
今年2月4日、一審判決が東京地裁(高木勝己裁判長)で出され、つくば市側が全面敗訴し、市に対し同額をNEXCO東日本に支払うように命じる判決が出された。市は判決を不服として13日、同日開会の市議会2月定例会議に一審判決の取り消しを求め東京高裁に控訴する議案を提案。同日開かれた市議会都市建設委員会は全会一致で控訴について同意した。14日開く本会議で改めて審議し、議決が得られれば市は東京高裁に控訴する方針だ。
側溝の管理に瑕疵
斜面が崩落する事故は、2020年1月29日未明に発生した。幅3メートル、高さ10メートルにわたって崩れ、高速道路の路面にも土砂が流出した。同日午前4時25分に通報があり、その後、谷田部インターチェンジからつくばジャンクション間が4時間半にわたって通行止めになった。NEXCO東日本は計約9440万円かけ斜面をさらに強固に復旧した。そのうち事故前の状態に復旧する工事にかかった費用など約1450万円を市に支払うよう求め、市と協議、しかし双方かみ合わず、2023年5月、NEXCO東日本は国家賠償法に基づきつくば市を相手取って東京地裁に損害賠償請求を起こした。
一審でNEXCO東日本は、高速道路脇の市道の側溝(幅72センチ、深さ80センチ)に土砂が堆積し、側溝の排水機能が十分に機能していなかったことから、前日の1月28日夜から29日未明にかけての降雨で市道が冠水し、市道から高速道路の斜面に雨水が流入して斜面の表土が徐々に削り取られ、特に削り取られやすい砂層部が短時間にえぐられたことが原因で斜面が崩落したと主張。高速道路脇の市道は通常あるべき安全性を備えておらず、つくば市の管理に瑕疵(かし)があったなどとした。
これに対し市は、崩落した高速道路の斜面は夏季は草が覆い茂っているが、事故が発生した冬季は草が枯れ、雨水が表土を侵食する機能が大幅に失われていた、冬季は大雨になることはまれで、予見することはできず、崩落事故は不可抗力で発生したものなので、市は国家賠償法上の責任を負わないなどと主張。さらに一級建築士が調査した責任の所在についての見解書を証拠として提出し、集中豪雨による自然災害だったなどと主張した。
一審判決は、市の主張を全面的に退け、事故はやや強い雨が1時間程度継続し、市道の路面から雨水があふれて斜面に流れ込み、土砂を含む雨水が斜面の表面を削り取ったことによって生じたとした。やや強い雨という程度だったにもかかわらず流れ込んだのは、市道の側溝に隣接の農地から流出した土砂が堆積し、排水機能が十分機能しない状態にあったためで、側溝が有すべき安全性を欠いており市の管理に瑕疵があったとした。さらに2018年に同一箇所で小規模な斜面崩落事故があり、その際NEXCO東日本はつくば市に対し側溝の土砂を撤去するよう依頼しており、NEXCO東日本に責任はない、などとした。
2年前、現場確認のみ
13日開かれた市議会都市建設委員会では、2020年の事故の2年前の2018年に市が、NEXCO東日本から側溝にたまった土砂を撤去するよう依頼を受けていたことについて質問が相次いで出された。市道路管理課は、当時、担当職員が現場確認を実施したが、どうするか検討し、2年後に事故が起こるまで側溝の土砂撤去を実施していなかったなどが明らかにされた。同課によると、事故直後の2020年1月29日から約400メートル区間の側溝の土砂を撤去し、撤去後、側溝の排水機能は回復したという。(鈴木宏子)
つくばから世界へ チアリーディング2チームが世界選手権に挑戦
5月に米国で開催されるクラブチーム対抗の世界大会、チアリーディング世界選手権大会「ザ・サミット2025」に、つくば市内で活動する小学生から高校生までの2チームが出場する。同市二の宮を拠点に活動する「つくばオールスターチア」(奥寺由紀代表)と、みどりの南の「フェニックス チアリーダーズ」(横田久美子代表)だ。大会を前に、2チームとも練習に熱が入る。
2度目の出場 つくばオールスターチア
「つくばオールスターチア」は2023年に次いで2度目の出場となる。トップチームメンバーは小学5年から高校2年まで19人。そのうち8人が2年前にも世界の舞台を経験した。今年は新たなメンバーを加え、8位だった2年前を上回るさらなる上位入賞を目指す。
筑波大出身で団体代表を務める奥寺由紀さんが2004年にチームを創設した。奥寺さんは同大学院修士課程でスポーツ健康科学を学び、修了後、チアリーディングの本場、米オレゴン州立大学に留学した。帰国後つくばで教室を開き、2009年に日本初のチアリーディング専用ジムを開設したパイオニアだ。
「子育ての一環として、楽しみながら子供たちの成長を助けることができれば」と2003年にチアリーディング教室をスタートさせたのが始まり。現在、県内外の4歳から大学生まで220人が専用ジムに通う。一般クラスの生徒たちは筋トレなどの基礎トレーニングや組体操、床運動などの練習を通して体力をつけ、地域のイベントや祭り、スポーツ大会などにも出演して演技を披露し、観客や選手を応援し励まし元気づける。
世界に挑むトップチームのコーチは、つくばオールスターチア1期生で米国オレゴン州立大チアリーダー出身の井出華絵さんだ。演技指導のほか、選手に合わせた振り付けや演技の構成も指導する。選手は現在、週3回のチーム練習を重ねる。
今年のトップチームについて井出コーチは「まじめで、チアのことをよく考えて研究し、上手になろうと熱い気持ちをもって練習している子が多い」と話し、「大会では、上手な演技にとどまらず、見る人が感動や元気をもらえるような演技ができたら」という。
キャプテンで土浦三高1年の鈴木亜弥奈さん(16)は「今までの練習の成果を発揮し、自分たちの納得する演技を世界に見てほしい」と意気込みを話す。
5月の世界選手権大会を前に、選手たちは今月9日に国内大会の予選に出場する。決勝は3月30日に行われ全国優勝を目指している。
念願の出場権 フェニックス チアリーダーズ
「ゴー フェニックス! ジャスト ドゥ イット!」
全体練習を前に選手たちの掛け声が会場に響く。円陣を組むのは、つくば市みどりの南を拠点に活動するチアリーディングチーム「フェニックス チアリーダーズ」の選抜メンバー16人。ユニティというチーム名で、5月に開催される世界大会へ向けて、練習に熱を込める。
フェニックス チアリーダーズは2016年につくば市で生まれたクラブチーム。同市みどりの南にある専用練習場、ニューバランスアリーナで練習を積んでいる。現在、3歳から高校生・大人のクラスまで全部で70人ほどの生徒を抱える。当初は5人から始まり、設立8年目を迎えた昨年11月に開催された国内大会で2位を獲得し、念願の世界大会「ザ・サミット」への出場権を得た。
クラブチームを立ち上げた同団体代表でヘッドコーチの横田久美子さんは競技の魅力を「人を応援し、励まし、元気づけるスポーツ」だと言い、「『スタンツ(組体操)』や『タンブリング(床運動)』など華やかで高度な技が見る人を魅了するが、技の後ろに選手が積み上げた多くの努力がある。ここに至る過程も感じられる演技をすることで、見る人が元気になる演技をしたい」と言い、「子ども達にとって一生に一度あるかないかの経験。ただ出るのではなく、これまでのプロセスや本番に臨むメンタルが人生の糧になるはず。彼女らと時間を一緒に過ごせるのは私にとっても幸せなこと」と夢の舞台への思いを語る。
キャプテンの柴原あかりさん(14)は「(世界大会出場が)決まった時は、夢の舞台に立てるとうれしさが込み上げた。本番ではこれまでの練習の成果を発揮して、みんなの気持ちを一つにし、いい演技をしたい」と意気込みを語った。
チアの聖地で開催
世界選手権大会は、世界各地で行われる予選大会を経て出場権を獲得したクラブチームによるもので、チアリ―デングの聖地、米国フロリダ州オーランドにあるディズニーワールドリゾートで開かれる。2チームは小学6年から高校1年などが対象となる16歳以下の部に出演する。1チーム16人以上で構成するのが条件で、2分30秒の競技時間内に音楽に合わせて繰り出す技の完成度や美しさなどを競い合う。演技中の表情や声も重要な審査の対象になる。(鈴木宏子、柴田大輔)
◆つくばオールスターチアは世界大会出場のサポーターを募っている。詳しくはチームの公式サイトへ。フェニックス チアリーダーズは、大会に参加するため選手16人、コーチ3人が米国への渡航等にかかる費用約1100万円への寄付を募っている。クラウドファンディングも準備中。活動の詳細はチームの公式サイトへ。
つくば市副市長に篠塚英司元市総務部長 市議会に提案へ
任期満了により昨年12月22日に退任したつくば市の飯野哲雄副市長の後任として、篠塚英司元市総務部長(62)の選任が13日開会の市議会2月定例会議に提案される。
篠塚氏は1986年、合併前の旧谷田部町役場職員となり、2015年から観光物産課長、17年から経済部次長、18年から経済部長を務めた。20年からは総務部長を歴任し、23年3月末、市職員を定年退職。その後2年間、市の業務から離れていた。つくば市在住。
同市の副市長の定数は2人。昨年12月、2期8年務めた飯野氏が退任し、現在、副市長は松本玲子氏一人となっていた。
13日開会の2月定例会議初日の本会議に、五十嵐立青市長が篠塚副市長の選任について提案し、即日採決される。松本副市長との役割分担は就任後、改めて決めるという。
2月定例会議にはほかに、総額1273億2500万円の2025年度当初予算案(2月3日付)、香取台中学校の新設を見直すことによる高山中学校の生徒数急増に対応するため隣接地に増築校舎用地約1.4ヘクタールを県から4億6300万円で取得する財産取得議案(24年12月10日付)など報告3件、議案36件の計39件が提案される。
会期は13日から3月25日までの41日間。会派代表質問は2月27日、一般質問は28日、3月3、4、5日の4日間。(鈴木宏子)
自動運転バス購入、ユースクリニック開設 つくば市25年度当初予算案
7年連続過去最大を更新
つくば市の五十嵐立青市長は3日、2025年度当初予算案を発表した。一般会計は前年度当初と比べ13.9%増の1273億2500万円、特別会計などを加えた総額は同比9.6%増の1933億7400万円で、7年連続で過去最大を更新する。
主な新規事業として、2027年度の定常運行を目指し自動運転バスを購入などする(実証事業負担金1億4800万円)。中高生から20代までの若者が、体や心、性の悩みなどを保健師や助産師にオンラインや電話、対面で相談できる「若者のためのユースクリニック」を市大穂保健センターに開設する(設置費120万円)。ほかに地域に開かれた新しい学校施設の在り方として旧谷田部庁舎跡地の利活用や近接する体育館、市民ホールの複合化の検討を含めた谷田部小学校建て替えの基本構想と基本計画を策定する(1680万円)。
ほかに主な事業は、市内に道の駅を2カ所整備するための基本構想を策定(4600万円)、旧上郷高校跡地に陸上競技場を整備するため校舎解体と設計を実施する(4億9200万円)。旧岩崎保育所用地は茎崎給食レストランと貯蔵庫を整備するための設計などをする(1300万円)。廃校となった旧田水山小学校は2026年度オープンを目指し芸術文化創造拠点として校舎改修などをする(3億9600万円)。
予算規模が過去最大を更新する要因として、児童手当が昨年10月から所得制限の撤廃や高校生までの支給延長など大幅拡充されたことに伴い前年度比25%増の67億8700万円を計上すること、2年目となる中根・金田台地区小学校建設事業が前年度の約2倍の40億5800万円になること、市役所庁内のネットワーク基盤整備費事業に8億8200万円を計上することのほか、子育てや福祉など民生費、国の人事院勧告に伴う市職員の人件費の引き上げ、物価高による材料費や資材費の増加などが予算規模を押し上げているとしている。
市債残高見通し過去最大に
歳入は、人口増などに伴い個人市民税7.9%増、法人市民税が26.8%増、固定資産税5.1%増を見込む。市税収入が歳入全体の44.6%を占め、自らの税収で財政をまかなっていけるとされる不交付団体となる見込みだ。不交付団体は2016年度から10年連続。一方、中根・金田台地区小学校の建設、香取台小学校拡張用地の取得(13億7500万円)などに市の借金である市債を発行する予定で、2025年度末の市債残高見込みは過去最大の1321億6000万円になる見通し。
新年度当初予算案は、13日開会の市議会2月定例会議に提案される。(鈴木宏子)
「ほとんどが賛同」 産業用地候補地で初の地権者説明会 つくば市
圏央道つくば西スマートIC周辺
つくば市が検討している、工場や物流倉庫などが集積する新たな産業用地について(1月10日付)、市内4カ所の候補地のうち最も評価が高い「圏央道つくば西スマートIC周辺地区」(同市高須賀など約74ヘクタール)で25、26日の2日間、地権者説明会が開かれた。
地区別に計4回開かれ、地権者約250人のうち4回で計約200人が出席した。市は併せて地権者の意向調査を実施、集計はこれからだが、市によると、ほとんどの出席者から計画に賛同する意向確認書が書面で出されたという。
市は今回の地権者説明会の意向確認を元に今後、事業を進めるか否かを決める。事業計画や開発手法、今後のスケジュールなどは未定だが、地権者全員の同意を得て、全面買収で実施する方針だ。
27年来の懸案
同地区は昨年12月26日、地域経済をけん引することを目的とする地域未来投資促進法に基づく重点促進区域として経産省が同意した。重点促進区域になれば、開発の際に手続きが簡略化されたり、税制優遇などを受けることができる。一方、昨年12月の市議会定例会議では、市が提案した同地区の埋蔵文化財試掘調査費に対し、議会から「地権者への説明が先」だとする意見が出て、調査に待ったがかかった。
25、26日の説明会では、市から事業の目的や対象区域、経緯などについて説明があった。ほかに地元住民から、今月11日、地権者の合意形成を図ることを目的に、同地区の区長や土地改良区の役員らが住民団体「圏央道つくば西スマートインターチェンジ周辺地区連絡協議会」(木村守昭会長)を結成したこと、同地区内に農業の振興を図るための農振農用地37.4ヘクタールなど集団農地をもつ真瀬土地改良区が23日に理事会を開き、事業計画を推進することを決議したなどの報告があった。
説明会で連絡協議会の木村会長(78)は「27年前、7人の区長から『この地域は(TX沿線開発などの)開発から取り残されてしまうので、にぎやかにしてほしい』との要望が出され、昨年亡くなられた会長が市につないで、63ヘクタールのアグリパーク計画(バラ園や市民農園など)が立てられ設計までされた。第1期の20ヘクタールは地権者全員の同意までいただいて、市は約19億7000万円の予算を市議会に上程したが、1票差で否決されアグリパークはできなかった。その後も地域の皆が喜ぶものを完成させたいと、昨年亡くなった会長が市と話し合いながらここまできたという状況」と27年来、地域の懸案だった経緯を話し、「会長の遺志を継いで、皆が喜ぶようにやっていきたい」と述べた。
真瀬土地改良区の山田守理事長は「74ヘクタールのうち半分が農用地。農振(農業振興地域)を除外するのは大変な仕事で、農水省と話をすると何年もかかるが、地域未来投資促進法という法律で特例を受けることができる。地域住民から陸の孤島だと言われていた真瀬地区に開発の話が出るのは初めて。今、農業者の平均年齢は70歳前後で、あと5、6年で農業ができなくなる。土地を有効活用してほしいという声があり、土地改良区としても全面的に(産業用地計画を)やっていきたい」と話した。
出席した地権者から反対意見は出ず、質問も少なかった。
高齢化し農業で食べていけない
説明会に参加した地権者の男性は取材に対し「せっかくのチャンスなので、やってもらった方がいい」と話していた。木村会長は「農業では食べていけない状況があり、農家は高齢化し、いくら土地をもっていても、草刈りをやらなければならなかったり、税金がかかる」と話し、産業用地の開発について今後「地元の雇用が拡大するよう、製造業の立地を要望するなどしていきたい」と話した。
市によると、区域内に上郷院内山遺跡があることから、市議会に再度、予算を提案し、5月中旬から9月上旬ごろまでの間、文化財の埋蔵状況を確認するための試掘と確認調査を実施する予定だという。(鈴木宏子)