約30点の力作が並ぶ卒業制作展の中に、かわいらしいパッケージデザイン「おみたまのタマゴ」がある。鶏卵生産量日本一を誇る本県の中で、ナンバーワンの生産地である小美玉市の卵にスポットを当てたプロダクトデザインだ。制作者は土浦生まれの横田綺寧(あやな)さん。「小美玉が鶏卵の一大生産地であることはあまり知られていない。地域にあるものの価値を知り、地場産業の発展に貢献できたら」と話す。担当教員の高嶋啓准教授は「地域産業への目の付けどころとデザインセンスが秀逸」と評価する。

筑波学院大学経営情報学部
ビジネスデザイン学科メディアデザインコース4年
横田綺寧さん(23)

―小美玉の鶏卵の商品パッケージに取り組んだのはなぜですか。

3年次必修の発展科目の影響が大きかったと思います。卒業研究につながる実践科目で、地域の課題を発見し企業や自治体にプロジェクトを提案する科目です。いつもの授業は先生の指導に基づいて行われますが、この科目は学生が自主的に学び販売促進のためのデザインを考案します。

テーマは自由で、地域の社会資源を調べていたら小美玉市の鶏卵生産量が県内トップと知りました。土浦在住の自分も知らなかった地域の産業に目を向けてもらおうと、卵のパッケージデザインに決めました。

―特に留意したことや完成までに時間を費やしたことはありますか。

小美玉をPRし差別化を図るためのロゴマークデザインから始めました。淡いイエローをバックに「鶏卵王国」の王様をイメージして王冠とひげを配し、新鮮さと温かみを伝えるデザインにしました。また、パッケージは贈り物に最適な木箱入りと、紙パック、プラスチックの3パターンに。木箱は卵が割れないようにわらを敷きました。

手描きの素案から仕上げまで半年以上かかりました。思いのほか時間をとられたのが宝箱に見立てた木箱探しで、大きさがピッタリでイメージ通りの木箱を探して雑貨店を歩き回り、最終的にインターネットサイトで手に入れました。

―作品を見る人に伝えたいことはありますか。

卒業制作のための予習と復習をしたことで地域にあるものの価値を知り、地元への愛着が生まれました。小美玉の鶏卵だけでなく、茨城には全国1~3位の産出額を誇る農産物が数多くあることを知ってほしいと思います。

清潔感と温かみが伝わるロゴマークで差別化を図った、小美玉市産の卵パッケージ。左は宝箱に見立てた木箱入り=同

―メディアデザインコースで学んだ感想を聞かせて下さい。

地元の県立高校を卒業して美大に入学するための予備校に進みましたが「自分が本当にやりたいことと違う」と悩み、翌年当大学のデザインコースに入学しました。4年間デザインの勉強に専念し、一人でロゴマークから販促まで考えてデザイン力を試される卒業制作は励みになりました。担当の先生に言われた「デザインは伝達手段で人に伝わらなければ意味がない」に少し近づけたかな、と思っています。

―卒業後の進路は決まりましたか。

土浦駅近くのデザイン事務所に入社が決まっています。仕事はイベント告知の情報発信ですが、卒業制作のようなパッケージデザインやウェブサイトのデザインもしたい。そのために日々創造力を磨いておこうと思っています。

(聞き手・橋立多美)

➡筑波学院大学の関連記事はこちら