【コラム・坂本栄】寄稿「つくば洞峰公園市営化で市長が隠していたこと」(4月2日掲載)で、酒井泉氏は市の広報紙「かわら版」30号では市民が共有すべき事実が伏せられていると指摘、市長は民主主義の基本が分かっていないと批判しています。私は、①交渉力の乏しさ、②財政運営の甘さ、③市民調査のおかしさ―について指摘しておきます。

明らかな事実A:器量不足

コラム175「… 県案丸呑みの不思議」(1月15日掲載)で、「県から公園を無償で譲り受けるに至るプロセスで、知事と市長の間でまともな話し合いが無く、…維持管理費を丸々押し付けられた」と書きました。

国と県が主導して建設した学園都市の洞峰公園は、県の財産であると同時に市民が自慢する公園です。こういった施設の運営方法をめぐって、知事と市長の意思疎通が2年にわたり不十分であったというのは異常です。

175で引用した市議の発言によると、「市長が知事にアポを取って話し合ったことは一度もない。何度も直接協議するよう求めたが、その気配すらなかった」「一部市民から県の計画に反対する声が出たあと、市長は県に懸念を伝えたとSNS(ネット発信ツール)に書き込んでいた」そうですから、市長の交渉力(首長に必須の器量)には疑問符が付きます。

明らかな事実B:甘々財政

洞峰公園問題は、園内の野球場に設けるアウトドア施設の運営益を公園管理費の足しにしたい県と、都市公園をいじらないよう求める市がぶつかる形で始まりした。結局、公園部分どころか体育館施設も市に移管されましたから、管理費負担の面では県の勝利でした。

「かわら版」では、公園市営化で「…樹木が立ち並ぶ緑豊かな環境」が維持できると、プラス面を強調しています。新規財政負担(マイナス面)に触れたのは「維持管理費約1億5000万円/年度 目標使用年数(80年)を実現するための施設修繕費約3500万円/年度」の1行だけです。財政面での敗北を知られたくなかったようです。

171「…『劣化』容認計画」(23年11月20日掲載)でも取り上げたように、1億5000万円+3500万円の年間経費は、園内施設を修理~修理で済ませ、老朽化しても更新しない「ケチ・ボロ」計画です。こういった雑な施設維持に加え、将来必要な体育館建て替えなどを考えると、甘々で無責任な財政運営です。

明らかな事実C:誘導操作

「かわら版」では、洞峰公園を無償で譲り受けることの是非を聞いたアンケート結果を紹介しています。それによると、「賛成」+「どちらかといえば賛成」が74%だったそうです。

172「…市の変な調査」(23年12月4日掲載)で、「これは市民の判断を『昰』に誘導する手法であり、市民の声をきちんと聞く調査とは言えません」と書きました。そして、この種調査の基本である回答者無作為抽出を避けており、「調査の体を成していない」と指摘しました。

市の調査は、希望者だけに回答用紙を箱に入れさせる+市のHPに書き込ませる方式ですから、賛成者を動員することで結果を操作できます。市民の声を公平に聞くには、新聞やテレビが実施する世論調査方式(回答者を無作為に選ぶやり方)でなければ意味がありません。「賛成74%」はこういった誘導操作で作られた数字です。

クリアになった迷走の構図

緑地部の現状を維持し市の負担を抑える方策はなかったのでしょうか? ありました。例えば、153「…住民投票が必要?」(23年3月20日掲載)で示した霞ケ浦総合公園方式(土浦市と県が共同管理)です。体育館などは県に任せ、緑地部などを市が管理する方式(管理下の野球場はいじらない)で、これなら市の財政負担は半分以下で済みます。

試しにアウトドア施設を認め、迷惑施設と分かったら撤去させる手もありました(逆に大騒ぎするような施設ではないことが分かったかもしれません)。これなら市の負担はゼロです。いずれの策も、力量不足(A)では無理だったでしょう。結果、財政負担(B)が生じ、AとBをごまかすために市論操作(C)に動いた―これが洞峰公園問題の構図です。(経済ジャーナリスト)