【コラム・坂本栄】つくば市にある茨城県営洞峰公園の運営方法をめぐり、県と市が対立、市民の間には分断が生じています。本欄ではこの問題を何度か取り上げてきましたが、今回は対立と分断の起因を整理して、県と市、市民が納得できる策を探ってみます。

維持管理費をどう捻出するか?

県の考え方は、▽園内にグランピングなどのレジャー施設を設けたい、▽その目的は、公園の維持管理費の一部を施設運営会社の収益で捻出することにある、▽同時に、新しい施設は県の観光振興策にも合致し、県の魅力度向上に寄与する、▽新施設を迷惑に思う利用者に配慮し、レジャー施設には利用ルールを設ける―と要約できます。

この計画に対し、公園の日常的利用者が、▽園内にレジャー施設ができると、自然公園の形が壊れる、▽そのような施設は公園になじまないので、公園の現状を変えないでほしい―と反対。市は日常的利用者の側に立ち、▽県の改修計画には賛成できない、▽維持管理費は、公園運営の民間委託でなく、体育館などの利用料引き上げで捻出したらよい―と主張。

要するに、公園運営に民間の知恵を導入し、県財政から出る維持管理費を浮かせ、公園にキャンプなどを楽しむ場としての役割も持たせたいとする県と、今の公園の形は変えず、維持管理費は県財政ではなく、施設利用者に負担させたらよいとする市の対立です。

市長対案を県知事は明確に拒否

複雑なのは、つくば市民は一つにまとまっておらず、県の改修計画に賛成する市民と反対する市民がいることです。県の調査では、賛成市民39%、反対市民27%でした。市民の間に分断が生じているわけです。賛成したのは洞峰公園をあまり利用していない市民、反対したのは日常的に使っている市民と推測されます。ちなみに、県民の賛成は50%(反対は27%)でした。

上のような市民と県民の世論を踏まえ、大井川知事は記者会見で、つくば市の対案(施設利用料値上げ)を明確に拒否。計画の基本(民間委託によるレジャー施設設置と維持管理費捻出)は変えない方針を打ち出しました。

その発言は、▽利用料値上げ案は施設利用者の負担を重くさせ、バランスに欠ける、▽民間委託で運営費用をまかなう県の計画は変えず、近く必要な手続きを開始する、▽県が実施した調査では、県民はもちろん、つくば市民も改修に賛成する人が多かった、▽公園をつくば市に無償で移管するという選択肢もあり、そうすれば市の考え方で運営できる―と整理できます。

徹底抗戦/市民説得/市営移管

日常的利用者に押されて対案を用意し、それを県に示した五十嵐市長は、知事の拒否に遭い、対応を迫られています。市長の選択肢は、▽27%の反対市民を背にして反対運動を展開する、▽39%の賛成市民の意を汲(く)んで県案を呑(の)むよう反対市民を説得する、▽知事が用意した対案(市営に移管→市が自由に運営)に乗る―に絞られます。

本欄では、知事と市長の思考癖を踏まえ、この案件は迷走すると予想。市は「公園を買い取ったら」と提案しました。反対市民を説得できないのなら、運営方法をめぐる県との対立の深刻化を避けるために、市に譲ってもらうのが賢い策でしょう。(経済ジャーナリスト)

<参考> 洞峰公園問題記事と関連コラム

▽記事「…大井川知事…利用料金値上げを否定」(11月20日掲載

▽記事「…利用料値上げを …市長、県に要望…」(11月2日掲載

▽記事「…年明けにも手続き開始…知事 市管理なら無償譲渡」(12月2日掲載

▽144「…洞峰公園問題…県と市の考えが対立」(11月7日掲載

▽139「上り坂の市と下り坂の県のおはなし」(8月15日掲載

▽134「県営の洞峰公園、つくば市が買い取ったら?」(6月6日掲載