【コラム・坂本栄】つくば市では、総合運動公園用地跡を民間に売却する計画と陸上競技場を廃校跡に造る計画が進んでいます。いずれも五十嵐市長が「完全解決」を公約した案件の具体化です。しかし、運動公園用地跡売却は市民に不評ですし、陸上競技場案もコンセプトに物足りないところがあり、すんなり進むかどうかわかりません。

運動公園用地跡売却は、元の所有者に返すという目玉公約の実現に失敗し、扱いに困った土地をどう使うかorどう処分するか―いろいろ検討した結果です。用地返還とセットの主公約だった陸上競技場の建設案も、どこにandどんなものを造るか―あれこれ検討した結果です。

両方をまとめて解決するには、誰が考えても、未利用の運動公園用地跡に使い勝手のよい陸上競技場を造るのがベストです。しかし、五十嵐さんは(7年前に住民投票で撤回に追い込んだ)前市長時代の計画の一部を採用するのは避け、未利用地は民間に売り払い、陸上競技場は県立高の廃校跡に造ることになりました。

前市長(政敵)の計画をコピーしたくないという政治判断が、合理的な解決策を退けたようです。政治とは窮屈なもので、政治が行政を歪めたと言えるでしょう。

運動公園用地の民間売却に反対する市民

市民の多くは運動公園用地の民間売却に反対しています。コラム125「公有地売却に見る…牽強付会」(1月31日掲載)では、市の意見聴取に応えた市民の90パーセントが売却に反対だった、という数字を紹介しました。

こういった市民の声に押され、民間売却に反対する住民運動「つくば市長リコール住民投票の会」も立ち上がりました。その新聞折り込み資料(青字部をクリックすると一部が読めますの)では、用地売却を「研究学園の危機」と指摘、売却を推進する市長の解任を呼び掛けています。

リコールの会は、未利用地を国あるいは市の公有地として残し、研究機関用や陸上競技場用として使うべきだと主張。研究機関ベルトにある運動公園用地の売却に反対しています。

アクセス性と拡張性に劣る陸上競技場案

陸上競技場案は「物足りない」と先に評しましたが、詳細はコラム99「そろそろ決着?…2大案件」(2021年2月1日掲載)をご覧ください。つくば市の競技場案(第4種公認)は、県営笠松(第1種、ひたちなか市)、水戸市営(第2種)との比較ではもちろん、石岡市営(第3種)、日立市営(同)、龍ケ崎市営(同)に比べても、格落ちだからです。

また、建設用地の廃校跡(7ヘクタール)を運動公園用地跡(45ヘクタール)と比べると、拡張性(他スポーツ施設の増設)、アクセス性(主要道路への経路)などで、前者は後者より格段に劣ります。近隣市町村と組んで、運動公園用地に県営の第1種公認を造らせる―学園都市にはこちらが似合うのではないでしょうか。

要は、五十嵐さんの「総合運動公園問題の完全解決」は、つくば市の将来に禍根を残す恐れがあるということです。学園都市の特性を無視した公有地売却、県南の中核市には中途半場な競技場―になりそうですから。これらを回避するには政治的な障害を取り除くしかない?(経済ジャーナリスト)