【コラム・坂本栄】都市と田園が混在する研究学園つくば市。6つの町と村が合併して生まれた経緯もあり、農業関係でも面白い話があります。多くの方にとって「つくば市の農業委員会って何?」だと思いますが、今回は、このほど変更された農業委員の選び方、この委員の中から選ばれた会長の適格性について、気になったことを取り上げます。

何が引っかかるのか? 本サイトの記事「地区別人数制や農地法違反をめぐり紛糾」(5月20日掲載)が事実関係を伝えています。問題は2つあります。旧町村別の委員枠が地区別のバランスを欠く形に変えられたこと、農地法違反の過去を持つ人が会長に選ばれたこと―です。

記事の付表を使って計算すると、旧谷田部町の農地面積は市全体の24%、農家戸数は26%です。ところが、24人で構成される農業委の地区別枠が変更され、谷田部地区の委員数は25%から17%に減らされました。6人→ 4人です。2人減分は旧大穂町と旧豊里町に1人ずつ配分されています。旧谷田部町が不公平に扱われていないでしょうか?

会長選びも変です。I氏(旧桜村地区)とT氏(旧谷田部町地区)が争い、I氏=13票:T氏=11票で、I氏が選任されましたが、I氏は会長としての適格性に問題がありました。農地を転用する手続きをせずに駐車場として使うという、農地法違反の過去があったのです。農業委の信頼性が揺らぐのではないでしょうか?

市が会長選に実質関与?

なぜこんなことが起きたのでしょうか? 解明する前に、農業委員会とはどんな仕事をする所なのか、簡単にまとめておきます。所有する農地を転売したいとか、住宅用や産業用に転用したいとか、農家から申し出があった際に、YESかNOかを判断するのが主な仕事になります。つまり、環境上も経済上も大切な農地を守る役割を与えられている農業委は、農地の転売や転用を承認ないし否認する公的機関です。

田園→都市が進む学園都市つくばのように、住宅用地や産業用地へのニーズが強いところでは、農業委はとても大事な組織といえます。別の見方をすれば、売り手・貸し手の農家はもちろん、買い手・借り手の事業者、売買・賃貸の仲介者にとっても、気になる組織です。

こういったことを考えると、会長選び=委員の多数派固めが激しくなるのはよく理解できます。この結果に決定的な影響を与えたのが、T氏の出身地区・旧谷田部町の委員枠2人減だったことは言うまでもありません。

気になるのは、地区別枠を変更したのが市であるということです。新地区別枠が会長選任結果の主因になったのか、結果は多数派固めの努力によるものなのか、何とも言えません。しかし、I氏会長就任にプラスに作用する仕掛けを整えた市には、不自然なものを感じます。本サイトの「知らせぬまま『各地区3人以上』に変更」(5月28日掲載)の記事からも、I氏陣営と市の親密度が透けて見えるからです。(経済ジャーナリスト)