【コラム・坂本栄】つくば市が総合運動公園用地跡(高エネルギー加速器研究機構の南側)の処理について迷走しています。民間の企業に処理案を出してもらい、執行部がこれで行こうと同案を採用、市民の声も聴いて固めようとしていたら、議会も決定プロセスに積極的に加わることになったからです。民主的な手続きではありますが、執行部の姿がかすんできました。

議会の動きについては、本サイトの記事「【総合運動公園問題】つくば市議会が特別委を設置 売却日程いったん足踏み」(9月27日掲載)をご覧ください。見出しに「特別委」とあるのは「高エネ研南側未利用地調査特別委員会」のことです。

この問題については、執行部が「冷めている」のが気になります。民間に案を「考えてもらい」、その案に市民から異議が出てきたと思ったら、今度は議会に「どいていて、われわれがやるから」と言われました。執行部には処理案をつくる自信がないのでしょうか? 一度決めた案を自ら推し進める力もないのでしょうか?

市長という政治家の仕事と要件

五十嵐立青市長はなぜ引けているのか、私の見立ては先のコラム「懸案問題処理に見る つくば市のスタイル」(9月2日掲載)で述べました。2016年の市長選挙で五十嵐さんを当選させたエネルギー(前市長が提案した総合運動公園計画への反対運動)が、この問題の処理を誤ると、2020年の選挙で負のエネルギー(不手際への批判運動)に転じると心配、クールに構えているのではないか、という分析です。

五十嵐さんがこの問題の処理で、「(民間に)考えてもらい」「(議会に)どいていて」と言われ、これを受け入れて議会依存になったのは、自らのコミットメントを控えめにして、負のエネルギーを最小化したい、政治リスクを回避したい、と考えているからではないでしょうか。

行政のプロセスで、民主的な手続き(市民の声を聴き、議会の意見に従う)は当然です。しかし、施策の提案に必要な情報を豊富に持っているトップがリーダーシップに欠けると、ものごとは進みません。そしてトップは、提案した施策がベストであることを、市民に粘り強く説かねばなりません。

本サイトの記事「【総合運動公園問題】つくば市の売却方針に異議相次ぐ イーアス規模の商業用地に懸念 住民説明会で」(9月7日掲載)によると、五十嵐さんは市民説明会に出ず、受け答えは担当課長に任せていたそうです。これでは私の「勝手なリーダー論」の要件を満たしておりません。(経済ジャーナリスト)

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