【コラム・坂本栄】つくば市にとっては重いテーマ「総合運動公園問題」について、五十嵐立青市長はやっと処理方針を公表しました。市原健一前市長がぶち上げた総事業費370億円(うち土地代66億円)の大プロジェクト。市民の反対に遭って白紙撤回に追い込まれ、市原さんが4選出馬を諦める一因になった案件です。

逆に五十嵐さんにとっては、反対運動をテコに市長選に臨み、当選の主因になった案件です。ということは、この問題の処理を誤ると市民のブーイングが起きるでしょうから、厄介な政治テーマと言えます。

処理のポイントは、本サイトの記事「総合運動公園用地売却へ 事業提案の公募開始 つくば市」(4月26日掲載)をご覧ください。用地に関心がある業者さんは、市HPの「高エネ研南側未利用地の事業提案を募集します」をチェックしてください。

募集要項を読むと、土地処分のプロセスが2段構えになっており、市の慎重な姿勢が伝わってきます。まず、事業提案(46ヘクタールの土地をどう使うか)を募集、気に入った利用計画を採用したあと、利活用する事業者(土地買い取り業者)を選ぶという段取りです。市としては、お荷物の土地は手放すが、買い手の使途には口を出すというわけです。

おやっと思ったのは、受け付けを拒む提案もあると断っていることです。住宅系用途(戸建てやマンションなどの住宅団地?)、それから大規模な百貨店・総合スーパー(ショッピングモールの類い?)はご遠慮ください、と。どこか誘導したい事業体があるのでしょうか?

万博やTX並みの大プロジェクト

市原さんが総合運動公園計画を公表したとき、私は「なかなか面白いプランだ」と思いました。つくば市の歴史の中では、科学万博(1985年)、TX開通(2005年)に並ぶような大プロジェクトだったからです。

施設は、公式陸上競技場、総合体育館、ラグビー兼サッカー場で構成され、今年の茨城国体、来年の東京五輪での活用も想定されていました。スポーツ施設が集積する水戸市に比べ、つくば市は東京に近いという地の利もあり、両イベントのあと、プロスポーツの誘致も期待できました。

ほぼ同時に、市原さんは土浦市との合併を提案、茨城初の中核市(当時の要件は人口30万以上)を誕生させ、県の臍(へそ)をつくばに移す構想もぶち上げました。運動公園計画は、「県都」を県央から県南に移す企(たくら)みとセットだったのです。

しかし、運動公園計画も隣接市との合併構想も、市民の反対(前者は住民投票で81%が否、後者も市民調査で85%が否)で潰(つい)えました。前向きの話でも後ろ向きの話でも、首長のセンスと政治力(特に市民を説得する力)が大事だと思うこのごろです。(経済ジャーナリスト)

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