「すさまじいエネルギー」 初期の貴重な作品公開 小林恒岳遺作展

50年以上人目に触れなかった新興美術院新人賞受賞の大作「輪」=かすみがうら市の四万騎農園石蔵ギャラリー

【鈴木萬里子】昨年6月、85歳で逝去した郷土の日本画家、小林恒岳(こうがく)の「遺作展―歿後一周年記念」が、かすみがうら市上土田の四万騎農園石蔵ギャラリーで開かれている。50年以上、人目に触れなかった初期の貴重な作品のほか、郷里の高浜から見た筑波山や、居を移した吾国山中腹(石岡市)から見た霞ケ浦の風景など、小品から大作まで30点余りが展示されている。

会場入口に展示されている大作「輪」は連作8枚のうちの4枚。恒岳が1963年に描いた抽象画で、新興美術院の新人賞を取った。妻で詩人の硲杏子(はざまきょうこ、本名=志津江)さんが、今年12月13日から北茨城市の県天心記念五浦美術館で開催される「追悼―小林恒岳展」の出品作品を整理していた時に見つけた。

「65年高浜に戻った時に梱包したままだった作品。闇の中から突然出て来て非常に驚いた。描いていた頃の苦しかった暮らしぶりなどを思い出した。力強いこの絵に、すさまじいエネルギーを感じる。梱包したままだったのが幸いし、散逸することなく初期の貴重な作品を皆さんに見ていただける」と話していた。

画の指導を受けた土浦市の尾島和子さんは「輪の連作は2㎝も盛り上げ技法で描かれている。こんなのは見たことがなく、先生の穏やかな優しい作品とは違う、初期の前衛的で激しい画に感動した。ほかにも初めて見る作品があり驚いている」と話した。

作品整理の中で今回見つかった「花鳥風月の内 桜」などの作品も展示されている。

今回見つかった作品「花鳥風月の内 桜」に見入る来場者ら=同

小林恒岳は土浦一高から東京芸大に学び、父親で日本画家の巣居人(そうきょじん)が創設した「新興美術院」で活躍した。田中角栄の列島改造論で日本中が湧きたっていた70年代に環境破壊を憂える作品を発表。作品「蒼」では、霞ケ浦の風景に、悲し気な水鳥や月を描き、環境破壊に警鐘を鳴らした。

会場には色とりどりのアジサイの鉢植えが置かれている。石岡と土浦で恒岳から指導を受けた生徒らが、アジサイが好きだった師の1周年を「紫陽花忌」としてしのび、展示したという。

◆会期は6日(水)まで。入場無料。開館時間は午前10時~午後5時30分。問い合わせは四万騎農園石蔵ギャラリー(電話0299・59・2038)

大谷石造りの四万騎農園石蔵ギャラリー