月曜日, 8月 25, 2025
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ビューティフルネーム《短いおはなし》42

【ノベル・伊東葎花】

敬老の日に、嫁が食事に誘ってくれたの。
孫たちに会うのは久しぶりよ。楽しみだわ。

「お義母さん、いらっしゃい」

「今日はお招きありがとね」

「わーい、おばあちゃんだ」

「おばあちゃん、こんにちは」

「まあまあ、孫たちも大きくなって」

孫は全部で5人いるの。
高校生を筆頭に、一番下はまだ3歳。
みんなかわいいわ。
だけどねぇ、年のせいかしら。名前がなかなか覚えられないのよね。

「ええ~と、一番上のあなたは確か、月ちゃんだったかしら」

「違うよ、おばあちゃん。わたしは月の姫と書いて、月姫(かぐや)だよ」

「ああ、そうだった。かぐやちゃんね。2番目のあなたは、大ちゃんだったかしら」

「違うよ、おばあちゃん。僕は大きい河と書いて、大河(ナイル)だよ」

「あ、ああ、ナイルくんね。3番目のあなたは、真くんよね」

「違うよ、おばあちゃん。僕は真珠の星と書いて、真珠星(スピカ)だよ」

「あ、ス、スピカくん…。そうだったわ。4番目のあなたは、鈴ちゃんだったかしら」

「違うよ、おばあちゃん。わたしは鈴の音と書いて、鈴音(べる)だよ」

「ああ、そうそう、べるちゃんね…。え~っと、一番下の子は?」

嫁の後ろから、可愛らしい女の子が顔を出した。

「お義母さん、すみません。この子、人見知りで」

「会うのは初めてだもの。仕方ないわ。それで、名前は、雪ちゃんだったかしら」

「違いますよ、お義母さん。この子は雪の女王と書いて、雪女王(エルサ)です」

「ああ…エルサちゃんね。ああ、もう、みんな難しい名前で覚えられないわ」

「ねえ、おばあちゃんの名前は何ていうの?」

「おばあちゃんの名前は簡単よ。だってひらがなだもの」

「ふうん。じゃあ、紙に書いて」

孫たちが持ってきた紙に、私は大きく名前を書いた。

「ほら、これがおばあちゃんの名前よ」

『ゑゐ』

「え? 何、この字?」

「ひらがな?」

「何て読むの?」

「ゑゐと書いて、ゑゐ(えい)よ」

「えええ~、おばあちゃんの名前がいちばんスゴイ!」

「おばあちゃんの名前、すごいキラキラネームだね」

「月姫(かぐや)も大河(ナイル)も真珠星(スピカ)も鈴音(べる)も雪女王(エルサ)も、みんな素敵な名前よ。おばあちゃん、ちゃんと覚えたからね。今度、俳句仲間に自慢するわ」

「おばあちゃんの名前も、カッコいいから学校で自慢するね」

「あらうれしい。長生きはするものね」

こんなに名前をほめられるなんて、親に感謝ね。

 (作家)

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