【ノベル・伊東葎花】
今日、学校で男子とケンカした。
だって、サンタクロースはいないって言うんだもん。
私は絶対いると思ってる。プレゼントだって、毎年くれるもん。
家に帰ってママに聞いた。
「ママ、サンタクロースはいるよね」
「そんなことより、今夜は冷えるから温かくして寝るのよ」
…そんなことって言われちゃった。
今、世界中が燃料不足で大変なのは知ってる。
イブなのに、イルミネーションも暖房も自粛なの。
お店は早く閉まっちゃうし、地球全体がどんより暗い。
テレビも毎日「新しい燃料が見つからないと人類滅亡」とか言ってる。
でもね、私はそんなことよりサンタクロース。
今日は寝ないで、サンタクロースの写真を撮るの。
私をバカにした男子を見返してやるんだから。
私は、ベッドにもぐりながら、その時を待った。
すると、午前0時を過ぎた頃、窓の外が一瞬明るくなった。街中が真っ暗だから、すぐにわかった。サンタクロースが来たのかも。
耳を澄ますと、ピコピコと電子音のような音が聞こえた。
サンタクロースは鈴の音と共に来ると思っていたけど、今どきは違うんだ
写真を撮ろうと窓を開けると、緑色の少し小さめの人が飛び込んできた。
あれ、サンタクロースは赤い服を着たおじいさんだと思っていたけど違う。緑色だ。
「いやあ助かった。船が故障しちゃってさ。地球って寒いね」
サンタクロースが言った。
サンタクロースは、そりに乗って来ると思っていたけど、船で来るんだ。
「あ、仲間が助けに来てくれた」
サンタクロースが指さす先に、角が生えた黄色い生き物がいた。
これがトナカイ? 本物のトナカイを見たことはないけど、角があるし、きっとそうだ。
「お邪魔しました。ありがとう地球人」
サンタクロースがトナカイと一緒に帰ろうとしたので、私は慌てて呼び止めた。
「あの、ちょっと待って…、プレゼントは?」
「ああ、親切にしてくれたお礼ね。地球人、意外としっかりしてるね」
サンタクロースは、持っていた袋から赤い石を取り出してポイと投げた。
「石かよ!」と思ったけれど、世界中が不景気なので文句は言えない。
「じゃあね」とサンタクロースは、あっという間に出て行った。
きっとたくさんの家を回るから急いでいるんだ。
「あ、写真!」
慌ててシャッターを押したけど、UFOのような白い光が写っただけだった。
ああ、失敗。
写真は撮れなかったけど、サンタクロースに会えた興奮でなかなか眠れない。
それに、どういうわけか部屋の中が夏みたいに暑くて、毛布を全部蹴飛ばした。
サンタクロースからもらった赤い石は、暗い部屋で不思議な光を放っている。
なんだろう、これ。
この石が、燃料不足の地球を救うエネルギー源になる物体だと知るのは、少し後の話。
地球を救ってくれたのはサンタクロースだって、私は信じてる。
(作家)






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