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よみがえる新日本紀行花火師編《見上げてごらん!》47

【コラム・小泉裕司】今回は11月19日放送のNHK BS「よみがえる新日本紀行」に登場した、そうそうたる花火師の顔ぶれを紹介したい。「新日本紀行」は1963年10月から82年3月まで19年続いた30分の紀行番組。NHKのホームページによると、「日本各地の風土紹介だけではなく、そこで生きる人々の物語や話題など人間の記録を中心にすえた紀行ドキュメンタリー」とある。私が小学生のころ、担任の先生に社会科の宿題として見るよう言われ、中学生になっても見続けた。

「よみがえる新日本紀行」は「新日本紀行」を最新デジタル技術で色鮮やかな映像によみがえらせ、加えて、番組で描かれた取材地の「現在」を新たに取材している、2022年4月から続く40分番組。過去から現在への空間移動が興味深く、西新宿や築地など個人的趣味で録画している。

このうち、花火師を取材した番組は「煙火師群像/愛知県三河地方」と「夜空の詩人たち/秋田県大曲市」の二つ。いずれも時代は変わっても変わらぬ花火師の心意気を描いており、花火愛好家にお薦めしたいアーカイブ映像。残念ながら再放送の予定は見つからないので、今回は「大曲」を紹介したい。

夜空の詩人たち/秋田県大曲市

この番組、実は2024年10月5日にBS4Kで初回放送済みのBS再放送。1981年、秋田県大曲市(現大仙市)で開催された「全国花火競技大会」を支える要人や大会に挑む県内外の花火名人たちの奮闘を描いた名作。なんて心に響く、素敵なタイトルなのだろう。

地元の花火師を支えるだけでなく、全国の花火師との緻密な連携で大会を支える実行委員長の佐藤勲さん。小型トラックで500キロの長距離を運転し到着した茨城県真壁町(現桜川市)の「筑北火工」の花火師をねぎらう姿は、おもてなしの気持ちに満ちている。「題名のイメージに合う花火を上げてもらいたい」と大会に寄せる思いを語った。

2017年には、最も創造性が豊かであると認められた作品(創造花火)に贈られる佐藤さんの名前を冠した特別賞が創設された。

土浦火工の北島義一氏のもとで3年間修行した北日本花火興業(秋田県大仙市)3代目の今野正義さんは、農業と兼職の農民花火師。自宅の窓辺でトランペットを吹く正義さんの長男義和さんは、4代目を決意し、「音楽の世界を光で描いてみたい」と夢を語った。

就業して10年。競技大会で優勝するなど、現在まで数々の輝かしい成績を積み重ねてきた。卓越した型物花火の技術や音楽と融合した花火の創造など、煙火業界の発展に寄与した偉大な功績が評価され、昨年度は「現代の名工」、今年度は「黄綬褒章」に輝いた。

永久保存の価値ある影像

「花火は花火師の個性が出るもの」と語るのは、小松煙火工業(秋田県大仙市)4代目の小松忠二さん。後を継いだ5代目忠信さんは、市内5業者のリーダーとして「見る人々がいかに楽しんでもらえるか」を追求し続ける。

このとき、すでに日本煙火協会の要職を歴任するなど煙火業界の重鎮であった武藤輝彦さんも登場。著書「日本の花火のあゆみ」や「ドン!と花火だ」などは、私のバイブル的資料として書棚に鎮座している。

茨城県明野町(現筑西市)の新井煙火店の新井茂さん。同じ旧明野町で森煙火工場を創業した初代森清さん(現在は森武さんが2代目)がそれまで働いていた新井煙火店は、現在は廃業したとのこと。

群馬県の菊屋小幡花火店の4代目小幡清秀さんは、故郷への想いを赤とんぼにイメージした作品を出品。多重芯割物花火においては名人の域にあり、「四重芯の小幡」とも呼ばれた。2023年、土浦のスターマインの部で、5代目知明(としあき)さんは、故郷の上毛カルタをモチーフにした「風神雷神」で内閣総理大臣賞を受賞。父の系譜を紡ぐ郷土愛満載の作風を愛するコアなファンは数多い。

雨降りしきる中、創造花火の部で優勝した作品は「紫陽花」。花火師は川畑宏一さん、土浦火工の2代目。この年は、北島義一さんが逝去した2年後で、十八番(おはこ)の紫、青や紅の牡丹(ボタン)花火が次々と開花する美しい映像は、アーカイブとして永久保存の価値がある。

放送43年、次代へ継承

番組後半では、番組放送後43年たった2024年の大会を取材。打ち上げの準備に余念がない今野義和さんは、花火作品への思いを「筒の中で静かに出番を待っている花火玉を『役者』として生かしてあげたい」と語った。花火を芸術の世界にまで築き上げたひとり、今野さんならではの哲学に感銘。

デジタル技術を駆使した音楽花火の世界を追求する息子の貴文(たかのり)さんの奮闘も紹介。40年前の番組に登場した花火師の息子世代が、今や業界をけん引する存在となり、父から受け継いだ技と最新のデジタル制御などを融合させて夜空を彩る様子が描かれている。

時代が変わっても、多くの観客を魅了するために、一発一発に魂を込める職人たちの哲学や情熱は変わっていないことを強く感じ取ることができる。冨田勲さん作曲の名曲「新日本紀行のテーマ」で幕を閉じる。

今野さん親子とのご縁

2008年、大曲で花火鑑賞士試験を受験したときの講師のお一人が今野義和さん。「もっとも難しい色は何色か?」の私の愚問に、答えは「黒色」。黒色は光を吸収するゆえ、闇に溶け込んでしまう。誰も想像もつかない数々の名作、奇作を世に出してきた今野さんの究極が「黒い花火」だったのかも知れない。禅問答の奥にある答えの本質に気付けなかった自分が、今さらに恥ずかしい。

息子の貴文さんとは、今年9月の常総花火大会前夜、市内の居酒屋で親睦を深めた。とても穏やかな語り口の裏にある、並々ならぬ花火への情熱に深く感銘。常に父親と比較されることが多いと思うが、豊かな感性と創造性を磨き上げて、「らしさ」を極めてほしい。来年、常総での再会を期して、本日はこれにて、打ち留めー。「シュー ドドーン パッパッパッ!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

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